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【ある聖女の手記 part7】

凌辱の日々は彼女を別の何かに変えてしまった。


彼女の身体は男達を愉しませる為に手を加えられ、意思を捻じ曲げるほどの強力な呪いがその肉体に刻まれていった。呪いの影響なのか彼女の肉体はより淫らに開発される。健康的な筋肉は次第に落ちていき、劣情を煽る贅肉へと変えられていく。

見ていられなかった。慰めの言葉はとうに尽き、いつの間にか私達は会話をしなくなっていた。


どれだけ弄ばれ、穢されようと彼女の心は折れない。それが逆に男達を興奮させる。

望みを捨てれば楽になれるのに。

飽きられればもう苦しまなくていいのに。

私なんて庇わなくてもいいのに。

彼女への拷問は罪悪感という形で私の精神をボロボロに蝕んでいった。毎日檻から彼女の泣き叫ぶ声が聞こえる。

耳を塞いで私は部屋の片隅でうずくまった。


ある夜、彼女が唐突に話しかけてきた。

久しぶりの会話だった。

彼女は自分の生い立ちを話してくれた。

貴族の家に生まれ何不自由なく生きてきた事。

親に婚約相手を決められたが悪い気はしなかった事。

次第に相手を愛するようになっていた事。

幸せだった日々の事。

そして子供が出来なかった事。

それが原因で愛する相手と離れ離れになった事。

何もかもが嫌になったそんな時、一枚の絵が自分を救ってくれた事を。


「『神が恐ろしい世界を描くのは美しいものを伝えたいからだ』」


もう聞く事が無いと思っていた彼女の芝居がかった美しい声。それは一つの魔法のように周囲に優しく浸透していく。


「君に頼みたい事がある。 実はある人と約束をしていてね。 それだけが心残りなんだ」


私は彼女の願いを今度は聞き入れる事にした。

その時の何処か安心したような顔が記憶に焼き付いている。


次の日。彼女は自殺した。

私が目を覚ますと縄で首を吊っていたのだ。

そこには一枚の血で描かれた絵があった。

この世への憎悪を煮詰めたような恐ろしい絵。まるで呪いが込められているようだった。


それを目にした兵士が倒れ込み、私は鍵を奪って脱走した。幸い見つかる事なく彼の牢を発見する事が出来た。彼は生きている。老人も生きてはいるが衰弱しており立ち上がる事が出来ないらしい。

私は未だ朦朧とする彼に彼女の死を伝えた。


暫く彼は言葉の意味が分からないという風に唖然としていたが、不意に涙を流し始め哀しみに慟哭した。正気を取り戻したのだ。

それからの彼はまさに鬼神のようだった。

領主の部下を次々と薙ぎ倒し、領主共々慈悲など無いとばかりに皆殺しにした。


血に塗れた彼はただただ泣いていた。

もう遅いのだ。何もかもが手遅れだった。

私は彼を抱きしめる。

彼女の為にも私達は前に進まなければならない。

託された想いを届ける為に。

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