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【吟遊詩人の男 part7】

「うむ、素晴らしい詩曲であっ……」

「クソのような芸ダ…!所詮劣等の為の遊戯であル…!ヒヒィヒ…!!」


女王の言葉を遮るように小鬼が不快な笑い声をあげる。予想外の野次に会場が凍りつく。


「そもそも魔族を見た事が無いという設定に無理があル。怪我が治るのが早すぎル。人族と魔族の恋だト…?甘ったるくて反吐が出」


次の瞬間。小鬼の部下の一人が水風船のように弾け飛んだ。何の前触れもなく。骨どころか鎧さえ砕けて。


「」


一人の魔族だった筈の肉塊が玉座を血と脂で汚す。

ポタポタと血液の音だけが会場に響く。

猛烈な威圧感。息が出来ない程のプレッシャー。


「さて、将軍。もう一度その興味深い感想を続けてくれたまえ」


ゾっとするような冷たい声。その響きにうっすらと怒気が滲む。部下を粛正したのは他ならぬ女王であった。その目の瞳孔は不気味なほどに開かれており何かの術を使用しているのかその瞳はうっすら妖しく光っている。


「………ワシはたダ、感想を言」


再び一体の魔族が爆ける。肉と脂、そして大量の血が周囲に滴る。不気味だ。先程と違い注視してもなお彼女が何をしたのか分からない。まるで過程を飛ばして殺したという結果だけが再現されるかのようだ。


怖い。明確な恐怖に躰が強張る。彼女の前に立ったその瞬間から俺達はその生殺与奪を握られていたという事だ。早くここから逃げなければ。心臓を直接掴まれたような不快感に襲われる。


その後何回か口を開こうとしたゴブリンを女王は部下の殺害を持って遮った。これが平和な国の正体。

圧倒的な強者がそれ以外の他者を封殺するディストピア。


「……進言。陛下、どうかその怒りをお納め下さいまし。人族が怯えております」


永遠にも感じる時間。終わらせたのは蜘蛛族の使用人の声だった。彼女は深々と膝を着き怯えながらも主人の慈悲を懇願する。部屋は血と肉塊の匂いで満たされていた。


「ああ、すまない。余りに不快な下衆だったものでつい、な。とにかく素晴らしい詩曲であった。汝らには是非、私直轄の宮廷詩人として仕えてもらいたい。毎度下城するのは些か難儀でな」


ソレはこれまでと変わらない凛とした態度で俺達に語りかける。何人もの魔族を手に掛けたとは思えない冷静さ。その力そのものではなくその異常なまでの二面性をこそ俺は恐れた。


もし断ったら?などと言える筈が無かった。

仲間達も先程から震えるばかりで声も出せない。

俺達は何も言わず縋り付くように跪いた。


「今日は素晴らしい日だ。吟遊詩人、今宵私の部屋に来ることを許す。そなたとはゆっくり話がしたかったのだ」


嬉しい筈の言葉。だが今の俺は何も感じる事が出来なかった。

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