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【吟遊詩人の男 part4】


「歓迎。旅芸人の方々ですね、お待ちしておりました。ささ、こちらへ御進み下さいまし」


街の中心部に位置する女王の城。絢爛豪華を具現化したような輝かしい建造物。その正門で俺達を出迎えたのは蜘蛛族の使用人だった。アラクネと呼ばれる多脚の魔族で上品に複数ある腕を前で組んで礼をする。皮膚は人と昆虫のそれが区画毎にハッキリと区切られており手足は硬い外骨格で覆われているが胴体や顔は人族のそれに近い。目の周りにはポツポツと円形の何かが付着しているが複眼だろうか。


「疑問。そんなにジロジロ見ないで下さいまし。私の躰が何処か人族の琴線に触れましたか?」

「おっと、すまない。初めて会う種族はついじっと見ちまうんだ。 許してくれ」

「吟遊詩人はおっぱい魔人だからねっ!」

「ちげぇよっ!!」


慌てて絵師の言葉を否定する。入城直後に使用人にセクハラをしただなんて噂がたったら大問題だ。人族の恥晒しになるつもりはない。種族を代表して芸を披露する事を自覚しなければ。


「拒絶。貴方はタイプではありません。諦めてくださいまし。ささ、荷物をお持ち致します」

「…………………」


静かに凹む俺をスルーしてアラクネは俺達から荷物を預かる。一見細く見えるその多腕は存外に強靭なようで台車で運ぶつもりだった人形箱も軽々と持ち上げた。人形使いは感心する。


「これは驚いた。蜘蛛族の腕力はここまで強いのだな」

「肯定。我々のような虫系統の種族は保有魔力が少ない分、体術等の近接戦闘を得意としています。いざと言う時には覚悟してくださいまし」

「……相手にはしたくないものだな」


敵勢種族は敵勢種族という事だろう。女王の客人とは言え警戒を怠る気は無いようだ。俺達は緊張しながらも彼女の案内で宮中に足を踏み入れる。

そして俺達三人は各々の再会を果たす事になる。



「あれから良い絵は描けましたか?」

「あれれっ。いつしかのお姉さんっ!」


絵師が再開したのは模倣種の従者。

亜人女王の影武者にして変幻自在の四天が一角。


「また会ったナ、老兵。ヒヒヒっ!」

「おいっ、アイツはっ………!」


人形使いが再開したのは小鬼族の指揮官。

魔族領の百鬼兵団を操る魔族の四天が一角。


「数日ぶりだな。人族の芸者よ」

「……………っ!!」(毎日会ってるけどなっ!)


吟遊詩人が再開したのは有翼種の国王。

魔族領にて四天を統べる超常の支配者。



魔族と人族。思惑渦巻く魔族領御前公演。

役者は揃い、幕が上がる。

そして人知れずゆっくりと運命の歯車が廻り始める。

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