【ある聖女の手記 part1】
どうしてこの世界は苦痛や悲しみでこんなに満ちているのだろう。
泣き崩れる彼。私は精一杯思い付く限りの言葉で慰めた。しかし、語られる真実を前に、その悲哀が自分ごときに到底癒せるものではなかったのだと思い知らされる。彼の背負う運命の残酷さに私は震える。
かける言葉さえ見つからず私は抜け殻のようになった彼を見守る。心配する反面、これでいいと私はどこか安堵していた。このまま彼が立ち直ること無く折れてしまう事を期待してしまう。
彼は優しすぎる。だからこそこれ以上苦しんで欲しくなかった。私は彼の敗北を願う。
数日後、彼は立ち上がった。「世界を救おう」と声をかけられたのだ。なんだか訳がわからなくなって気付けば私は泣いていた。溢れる涙を拭いながら私は疑問に思う。
どうして彼はこんなに自分を苦しめるのだろう。
どうして彼の立ち上がる姿がこんなにも嬉しいのだろう。
「私はまずあなたを救いたいのです」思わず口から出た言葉に彼は申し訳なさそうに笑った。
旅立ちの日、彼のもとへ向かうとそこには先客がいた。顔馴染みの二人だ。あんなことがあったのに懲りずに同行するらしい。私が軽口を叩くとお互い様だと笑われる。
これから先の冒険の旅は間違いなく苦難の連続となるだろう。それでもこの関係だけは変わらないでいて欲しいと切に願う。




