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前の世界で運営者に消されたNPC姉妹が新しい世界で生きて行く  作者: あいか
序章 この世界で妹と再会するまで
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63話 夢の出来事


 異様な事態、異常な場所、異質な結果、おかしな事だらけだ。

 アルテアの話で、フレデリックの亡骸と思っていたヒトガタを調べるが、薄く黒い紙のような質感、柔らかいのに破れる事はなく魔法道具(マジックアイテム)というより、呪物と思う方が納得できる気がする。

 他に何も残っていない、そもそも身につけている魔法武器(マジックウェポン)や防具はあの程度の魔法で消滅するはずがない、もっと早く違和感に気がつくべきだった。


 「ラキアを呼んだから、もうすぐで来るから見てもらおっか」


 アルテアはラキアに連絡してこちらへ来るように伝えたらしい、念話以外に離れても伝える手段があるなら今度教えてもらおうと思う。


 正直、今思い返しても戦いの最中も違和感を感じていた。

 ここが変というのがなく、全体的に感じた違和感、フレデリックは最初こそ私を閉じ込めたが、あれ以降使ってこなかった。強めの結晶化を使ったが、あれ以外殆ど攻撃魔法を使っていない、他の属性魔法も使わなければ、最大威力の黄金(アウルム)の剣も使わなかった。私達を殺す気なら殺せたはず、私が中途半端な覚悟だったのも反撃を受けなかった事にもある。何か狙っていると思ったが、多分違う、使えないが正しく、理由はこのヒトガタだと思う。


 考えているとラキア、シャーリー、マリーが戻ってきて、一番にシャーリーが私を心配し、マリーも心配してくれた。


 「アニエスお嬢様、本当にお怪我はありませんか?」


 「うん、大丈夫、怪我じゃないけど、ちょっと頭が痛くて怠い程度だから」


 そう言うと、ラキアは失礼致します。と黄金の目で私を直視して、魔力減少による一時的な症状なので、少しお休み下さい。と言われてしまった。


 シャーリーの手際は良く、様々な道具を取り出し地面に寝ても汚れない様に簡易的なベッドが作られた。


 「えっと、これどこから持って来たの…」


 「商業街の治療院から少々借りてます」


 いやいや、うん…それでもういいやと私は諦め、横になる。いつもは嫌というマリーも優しく、私の横に来てくれたので、安心できた。


 「ごめん…シャーリー…眠い、何かわかったら起こして…」


 屋外のモヤモヤした赤い空、瓦礫が視界に入る様な場所でベッドに横になるなんて、初めての事に少し恥ずかしいけど、瞼は重く自然と閉じてしまうのだった。


 目が覚めるというより、夢で目覚めたというのだろうか、真っ暗の闇が広がるかと思うと、辺りが眩く光り輝き、黄金の城が眼下に現れた。

 

 「知ってる…黄金城、フレデリックの居城…」


 ゲームの設定では、フレデリックは小さな国の支配者、神の身技と呼ばれる通常属性とは異なる黄金魔法を継承する者。

 私、アニエスが魔法バランスの乱れを防ぐ為に話し合いに行き、力に酔いしれた当時のフレデリックと戦闘になり倒す話だったはずだ。

 その後、私の弟子に入り、黄金城はイベント戦で使われた場所となる。目が痛くなる黄金の輝きは正直な話、皆が嫌っていた。フレデリックは後にいざという時以外は使用しなくなるのだが、趣味が悪いとしか思えない居城と思う。

 

 変な感じがする。私はゲームの設定でしか、この城の事を知らない、フレデリックと戦ったのも設定で作られた話のはずだけど、既視感がある。見た事がないはずなのに知っている。AIのアップデートで自我が芽生えたのはかなり後のはず、この出来事はゲームのサービス開始された時には終わっている。なのに何で、見た事があるのだろう。


 夢の空間、ふわふわと浮かびながら入り口をすり抜けると全身黄金の騎士甲冑が辺りに置かれている。これは中に人が入ってはいない、黄金魔法で操り動かす魔法生命体だ。辺りを浮かび飛ぶ、黄金の魔物、これも魔法生命体となり、フレデリックはこれらを操り、周辺国を脅かしたのだ。


 「なんだっけ、黄金の時代を作るとかいう話だったっけ…違う、何かを防ぐ為の征服?細かくは思い出せないや」


 今考えると、あのフレデリックは召喚魔法も使ってなかった。冷静になれば気がついたはず、知ってる人の姿と声で焦り考える事をやめていたんだ。


 「私は馬鹿だ…何で気が付かなかったんだろう…」


 簡単な話、偽物、ヒトガタが答えなのだろう、普通に考えればこの世界に存在していても今この時代に生きては居ない、不老不死でもなければゲームじゃない為、生命には必ず寿命が存在するからだ。


 『ふふ、それがアニエス様の良い所でもありますよ』


 私の呟きに対して頭の中に知っている声が聞こえた。


 「えっ、嘘…フレデリックの声…」


 『ふふ、アニエス様の夢、その中で叶うひと時の事です。私の事を思って頂けたので、夢の中で私が再現できたのですよ』


 優しく聞こえる声に涙が溢れて止まらない、同じ声でもやはり違う、これがフレデリックなんだ。


 『紛い物を倒していただいた事、感謝いたします。アニエス様はある程度、分かっていたと思いますが、辛い選択をさせてしまった事は申し訳ございません』


 「えっ!現実の出来事知ってるの!?」


 『アニエス様が経験された事、記憶、感情、全てが夢で再認識できますので、起きた事象も分かるのですよ』


 「そう…なんだ…フレデリック…姿が見たいよ!」


 『ふふ、私は夢で現れた曖昧な存在、会いたいのは私もですが、それは叶いません。あくまで夢、現世とは違うのです。アニエス様の弟子の一人として、紛い物を壊した事に感謝を伝えたく、夢の中で再現した現象なのです。今は時が許す限り、昔のようにお話致しましょう』


 「私の記憶が再現してる夢なんだね…」


 夢、一度体験した事や知識として覚えている事を交えて再現したり、追体験したりする事もある。この体の私は殆ど夢を見ない、真っ暗な空間にいる事が多い私は、昔の私を知る者と会話ができる今が楽しく思える。


 あくまで私の夢だが、ゲームの設定を再現されているフレデリックと久しぶりに会話をして楽しい時間を過ごした。こんな夢なら毎日見たいと思えるほどにだ。

 私の記憶が作り出した幻、それでも今日この時まで起きた事を話して、返答が返ってくるのは楽しく思えた。

 

 『ずっとお話ししたいのですが、そろそろ、目覚めの時ですね。アニエス様、私はいつも貴方と共にあります』


 目覚めの時と言われて、夢から覚めたくないと思った。もしかすると夢の中なら他の私の知り合いに会えるのだろうか、それなら夢の中で生きても良いかもしれないそう思えた。

 

 『ダメですよ、ここは夢、その可愛らしいお姿を愛する者が待つ現世こそ、アニエス様の居場所です。夢はあくまで夢、仮に次私が夢に現れても今この時の話は覚えていないでしょう、そんな一時の幸福よりも長く、永遠に等しい喜びを現世で叶えるのが、アニエス様でしょう』


 夢特有の考えを読み取られ、可愛らしいと言われた事に恥ずかしくも嬉しく思えた。夢に溺れてはならない、夢が私の居場所ではなく、現世が居場所と言われて私は強く、あの世界で生き、マリエルと出会い、楽しく、人間として過ごす事を再度心に決めた。


 「ありがとね、私頑張るから!」


 『最後に1つ、心の中に私は居ます。アニエス様が危なくなれば、黄金の力を振るう事をお約束しましょう。私はいつまでも貴方と共にその事を忘れない限り、曖昧な私は存在し続けます』


 どう言う事かよく分からず、聞き返すが、辺りが明るくなり夢から覚める特有の感覚を感じた。


 「ありがと、フレデリック。また夢で会おうね」


 呟きはかき消されて、目が覚めた。

 

 「うう…朝?違う、どれだけ寝てた?」


 「アニエスお嬢様、お目覚めになりましたね。おはようございますでしょうか、この空間ですと時間感覚が殆どないのが困る事ですね。大体、1時間ほど眠ってましたよ。お体の調子は如何でしょうか」


 シャーリーに目覚めの挨拶をすると軽く背を伸ばす。かなり長い時間を夢で過ごした様に思えたが、1時間しか経っていなかった。怠い感じはスッキリ無くなり、大丈夫と言うと安心した様で、良かったですとシャーリーは言った。


 「起きたのね…アニエス、後で綺麗にしなさいよね」


 マリーの話を聞くと、寝てる間に抱きしめて、涙で汚されたと言っていた。夢の中の涙、現実でも流していたらしく、マリーが吸収したようだ。後で邸に戻ったらお母様から教えてもらう洗濯魔法で綺麗にすると言うと、約束よとツンツンした感じで言ってふわふわと飛んで行った。


 「あっ、アニエスちゃん起きたんだね。体の調子はどう?」

 

 「寝ちゃってごめんなさい、もう良くなりました。それで何かわかった事ありますか?」


 私が起きるのをアルテアやラキアは待っていた様で、今現在、わかった事を話してくれる様だ。


 「私からご説明いたします。この環境ですと、調べれる事が限られますので、仮の話とお考え下さい」


 ラキアが前置きでそう言うと、続けて話し出した。

 どうやら、アルテアが壊した深淵の核が変質した物、それがあの場に残されたヒトガタの様で、一定以上魔力が集まると、その場に存在する強い記憶を読み取り、記憶の一部がヒトガタに宿り動き出すとの事だ。

 置換された空間も人の記憶を再現した物らしく、場所が変わったのはそれが原因らしい、ヒトガタに戻ったのに置換空間が戻らない事は不明だが、共通するのは強い思いや記憶だった。


 「以上が今分かる事ですが、何か気になる事はございますでしょうか、分かる範囲でお答えいたします」


 ラキアの話、魔力で記憶を再現する魔法道具(マジックアイテム)、そんな物が存在しているなんて思ってなかった。再現には限界がある様だが、強力すぎる。それに何故、私の記憶が再現されたのか、何故フレデリックだったのか、アルテアやラキアも強者の記憶があるはずだ。それに私の記憶ならもっと強力な魔物や人物がいるはず、分からない事だらけだ。それに置換空間、この風景に思い当たる場所がない、私の知らないはずの場所が再現される理由、これも不明だが、どれも聞いたとして答えが返ってくるとは思えず、考えるのは後にしようと思う。


 今は特にないです。と答えるとアルテアがならボクから質問いいかな?。と言った。


 「もしかしたらこの空間を無理矢理壊さずに出るヒントがあるかもしれないから、教えてほしいけど、フレデリックだっけ情報を教えてほしいな、あんな強い者の記憶を持つ理由も教えてくれたら嬉しいかな」


 聞かれると思っていた。魔人は寿命が長く、下手な事を言うと変に疑われると思い、今まで話さなかったが、言い逃れる事は難しそうだ。


 「お二人の事を信じてるので、お話し致します。私は…」


 他の皆に話した様に話して、フレデリックは昔の弟子と話して、この空間については心当たりがないと伝えた。過去の話を細かく聞かれたらどうするかと考えていたが、アルテアが過去の出来事、審判の日で滅んだ旧世界の転生体だったとはね。と自ら納得する様に呟き何度か頷くと大体分かったからいいよ。と言われた。


 初めて聞いた言葉、審判の日とは神様が話した黒龍による世界の滅びの事だろうか、気になるが、これを聞くと話が全ておかしくなるので、頭の片隅に覚えておく事にした。


 「強いと思ったけど、アニエスちゃんは旧世界の知識、力を行使できるんだね。少し魔族領にある文献読んだだけだけど、機械が空を飛び、今よりも便利な魔法や道具が多かったとか、ボクにも魔法教えてほしいなぁ」


 おそらく、超級魔法以上の事だろう、実際使える魔法は多いが、この体では難しいのも多く、この場は後々考えると答えることにした。


 「それで私の話で空間を何とかできそうですか?」


 元々話すきっかけとなった空間の対処に話を戻すと、諦め顔で頭を左右に振りアルテアは答えた。


 「聞いて確信したけど、無理矢理以外無さそうかな、アニエスちゃんが心当たりないって言うなら、これ以上は無理かな、むしろ旧世界の魔法で解除する手段ないかな?」


 やられた気がする。元々、私から話を聞くつもりでこの流れを作ったのだろう、いつか話すつもりだったから良いが、変な誤解や認識は与えたくなかったので、信頼関係を築いた後にと思っていたのだ。


 「解除できる魔法は無いですね。というのも私は全ての魔法を知ってるわけじゃ無いですし、行使もできない魔法が多いです。あれば既に使ってますね」


 そうだよね。とアルテアは潔く引いたが、もっと話を聞かれるものかと思っていた。ゲームの世界をこの世界の昔話として話したが、作り話と思われてるのか、聞き出したかった事は無かったのか、それとも本質を感じ取っているのか分からないが、二人が聞かないのなら、これ以上は話す必要はないはずだ。


 「それにしてもお話を伺い、納得いたしました。そのお姿、人種ですとまだ子供、それでいて戦闘の経験があり、大人が泣き叫ぶ毒の痛みも耐えたり、しっかりした立ち振る舞い全ては昔の知識や経験を引き継いでいるから出来ることでしょう、魔王様も是非アニエス様を見習って立派に振る舞ってほしいものです」


 ラキアに言われてハッとしたが、やはり私の行動は歳相応じゃないよねと思い、なるべく歳相応の振る舞いを行おうと思った。

 想定外のアルテアへの話で、ボクを引き合いにしないでよと言っているが、今の姿はどう見てもボスみたいな見た目で、言い訳している姿は不釣り合いだと思う。

 

 「それで、アルテア様はどうやって無理矢理壊すのですか?」


 置換空間、結界内で起きてる事象なので、今のアルテアは魔王の剣を使い無理矢理壊す事ができるらしい、私が起きてから行うつもりだった様で、今もあの禍々しい姿を維持していた理由はこの為だった。


 「準備できたら、この空間を結界ごと壊すからね」


 「大丈夫です。壊してください!」


 オッケーと軽くアルテアは言うと、空中に翼で飛んでいく、ラキアの指示で1箇所に集まり、ふわふわと飛ぶマリーを私は掴むと、ラキアは綺麗な白い砂を中に撒いた。


 撒かれた砂は直ぐに半透明の半球状に変わり、簡易的な防御魔法を発動させた。


 「魔王の力を今ここに!魔王剣・断絶!」


 アルテアの一言で、その身に宿した魔王の力、魔力を右手に持つ魔王の剣に集めて振り下ろす、すると空間が裂ける様に亀裂が入り、天井部からパリパリとまるで殻が割れる様に壊れていった。


 断絶、剣技で似たのがあるが、それの応用版だろうか、あの力を振るえばフレデリックも倒せた気がする。そんな事を考えながら通常では見る事がない景色を半透明の半球状から見つめるのだった。


お読みいただき、ありがとうございます。


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何か気になる事があれば、お気軽にコメントをお送りいただければと思います。


曖昧な夢の出来事ですので、深く考えないでいただければと思います。

本物なら今のアニエスでは自己犠牲して勝ち目があるかどうか、アルテアの魔王形態は諸事情で一概に比べれませんが、勝ち目は薄かった感じです。

元々、連絡が途絶えた王都へ向かったはずが、変なことに巻き込まれてしまい…やっと結界から脱出です。

アルテア視点だと一連の出来事もだいぶ見方が変わりますので、いつか書きたいと思います。

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