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もしも人生をやり直せるとしたら俺は過ちを繰り返さない  作者: 大神 新
俺は一ノ瀬梨香と添い遂げる
3/18

第85話:笑顔だけではなく、涙もまた癒しである

 結局、夏休みはひたすら勉強の日々だった。

 救いだったのは、何だかんだと一ノ瀬と過ごせた事だ。

 あれから多少ギクシャクしたものの、良好な関係は続いている。


 同じ予備校なので昼休みは一緒にご飯を食べて過ごした。

 短い時間ではあるが、夜はふたりで歩くことも出来る。

 恋人同士のような甘い時間はほとんど無かったが、穏やかな日々だった。


 そして、夏休みが終わり、新学期が始まる。


「今年の文化祭は一緒に回るか?」

「うーん、少しでも勉強したいから、行くとしても2日目だけかな……」

 俺の誘いに一ノ瀬は申し訳なさそうに答えた。


 我が校では3年生も文化祭には普通に参加できる。

 ただ、クラスの出し物は辞退、あるいは縮小するクラスもあった。

 俺のクラスは普通にやるそうだが、参加は任意という形式だ。

 体育館でやる有志の催しなんかは本気で参加する人も多い。


「それでいいと思うよ。後夜祭にも行きたいでしょ?」

「うん……」

 このところ、一ノ瀬は少し元気が無かった。本気で心配だ。


 だけど、変に気に使うと余計に気疲れさせてしまうかもしれない。

 俺は出来るだけ、いつも通り接する他に無かった。


「皆にも会えるだろうし、その日だけは勉強のことは忘れて楽しもうよ」

「……そうだね、わかった!」

 一ノ瀬は気持ち切替が上手い、きっと大丈夫だ。


「ふふふ、楽しみだねえ」

 彼女らしい微笑みにほっとする。


 過去も含めて6回目となる文化祭。正直に言って俺の方が楽しみだった。

 一ノ瀬と普通に過ごすのはこれが初めての事になる。

 出来るのなら、少しでも彼女を笑わせてやりたい。

 このイベントが彼女にとって気晴らしになってくれると良いのだが……。



 ――文化祭2日目。


「高木くーん!」

 こっちに向かって手を振る姿がたまらなく可愛い。


 一ノ瀬とは校門で待ち合わせた。

 俺達はまだ付き合っているということを公にしていない。

 なので教室を避けたというわけだ。

 ……すでにバレバレである説は否定できないがな。


「どこか行きたいところある?」

「えーっとね、ここと、ここ。あと、これは食べたい!」

 パンフレットの地図を見ながら次々と行先を指さす。


 ずいぶん前に、遊園地に行った時のことを思い出した。

 うん、今日は彼女の好きにさせてあげよう。

 そもそも、俺にはそんなに行きたい場所などない。


「おー、凄いよ、コレ! 良く作ったねえ」

「確かに、折り紙でこんなの作れるんだ」


「うわ……、これ結構怖いかも」

「お前、お化け屋敷駄目じゃなかったっけ?」


「あーん! 外れた! 高木くんやってみてよ」

「いや、俺そういうの得意じゃないからな?」


 校内は他校の生徒や保護者など、一般客も多い。

 装飾も多く、普段とは違った風景だ。どこに行っても喧騒で溢れている。

 廊下に差し込んでくる日差しも相まって、楽しそうな雰囲気で満ちていた。

 そんな中をふたりで歩く。


 一ノ瀬と文化祭をまわるのはとても楽しかった。

 しかも今は恋人同士なのだ。心から幸せだと感じる。

 横顔を見て切なくなることもない。ただ、胸の奥が暖かかった。

 ずっと、こういう時間が欲しいと思っていたんだ……。


「はい、高木くん、口開けてー!」

「おい! お前は、それは無理だぞ!?」

 一ノ瀬は熱々のたこ焼きを俺の口に運ぼうと企てている。相変わらず悪い顔だ。


「えー、嬉しくないの……?」

 そんな泣きそうな顔をするなよな。演技だというのは分かっているんだぞ。


「……いただきます」

 しかし、俺は逆らえなかった。


「熱っ!」

「あはははは! はいこれ!」

 一ノ瀬は大笑いしながらも飲みかけのお茶を渡してくれた。


「うー、口の中をやけどしたかも……」

「ごめんねー。でも大丈夫、高木くんならすぐ治るよ」

 なぜか嬉しそうな顔なのが複雑だ。でも、大笑いしてくれたのは良かった。


「まったく、お前は。俺の事を何だと思っているんだ?」

「うーん……、手のかかるペット?」

 そこはちゃんと彼氏だと言って欲しい。


 お茶を返して、楽しそうな表情を見る。

 少しは息抜きになったかな。

 それなら少しぐらいの悪戯なら黙って目をつぶってやるよ。


「あ、次、体育館行かないと!」

 そう言って俺の手を引く一ノ瀬。

「おう、そうだったな」

 俺は彼女の後に大人しく続く。何をしていても、俺は楽しかった。


 体育館は基本的にステージを使って有志団体が演目を行っている。

 観客側にはパイプ椅子が並べられており、基本的に自由席だ。

 人気の演目なんかは座れないこともある。

 照明は大抵暗い状態だが、映画館よりは明るい。

 空いた席を探すのにはふたりなのでそれほど苦労しなかった。


 今日はこれから、一ノ瀬の友達がバンドで演奏するらしい。

 彼女の性格を考えると一緒に出たかっただろうな……。

 そう思うと胸が詰まる。でも、楽しそうな横顔を見て、少し安心した。


 俺の方は思わず舞台袖に目が言ってしまう。久志(ひさし)君と麻美(あさみ)ちゃんが見えた。

 それに数人の文化祭執行部と思われる生徒が忙しそうにしている。

 去年の自分たちを思い出す。

 やはり、どうしても寂しい気持ちになってしまうな――。



「次はどうしようか?」

「まだ後夜祭までは時間あるけど……、本部テントに顔出してみるか?」

 あっちには美沙(みさ)ちゃんと正樹(まさき)君が居るはずだ。


「えー、迷惑じゃないかな……?」

「大丈夫だよ、顔を出すだけだし」

 確かに、本部テントは忙しいだろう。けど、去年は彩音(あやね)先輩も来てくれた。


「じゃあ、ちょっと行こうか」

 そう言った一ノ瀬は嬉しそうだ。やっぱりふたりより、皆の方がいいよな。


「高木先輩!? 来てくれたんですか!」

「お疲れ様、今、大丈夫?」

 今日の美沙ちゃんはサイドテールか、相変わらず可愛いなあ。


「正樹! ちょっとこっちの対応してくれない!?」

「ああ、分かった」

 ……あんまり大丈夫じゃなさそうだった。


「流石だね、美沙ちゃん。格好いいよ」

「……どっちかって言うと可愛いの方が嬉しいです」

 美沙ちゃんはむくれ顔だ。


「それはついさっき思ったよ」

「本当ですかあ? でも高木せんぱいだからなあ」

 なぜ信用してくれないのか。


「さて、先輩。手伝ってくれるんですよね?」

「えっ、いいの?」

 俺はその提案に少し驚いた。


 3年生が手伝うのはちょっと問題な気がする。

 彩音先輩も北上(きたかみ)先輩も、引退したは後は手を出さなかった。

 なんて言うか、俺たちはもう部外者なのだ。


「今は猫の手も借りたいんです、お願いしますよ」

「それじゃ、遠慮なく」

 そう言って、俺は美沙ちゃんの隣に座って接客を手伝う。


 いいじゃないか、部外者だって。

 手伝いたい、そう言う気持ちはずっとあったんだ。

 固定観念に囚われるのは良くない。ちょっとぐらいなら構わないだろう。

 それに、一ノ瀬の事も気になるんだ。


「私も手伝って良い?」

「高木先輩が良くて梨香(りか)先輩がダメなわけないじゃないですか!

 正樹の隣、お願いします」

 一ノ瀬はその言葉を聞いて凄く嬉しそうな顔をした。


 くっ、やるじゃないか、美沙ちゃん。

 一ノ瀬もきっと俺と同じ気持ちだったのだろう。

 アイツは妙に物分かりが良いところがある。

 俺が美沙ちゃんの申し出を断ったら、アイツも同じように断っただろう。


吉田(よしだ)ちゃん、(わた)ちゃん、今のうちに見回りお願い!」

「わかりました!」


 美沙ちゃんは見事に本部テントの指揮を執っていた。

 うーん、凄いなあ。去年の一ノ瀬を見ているようだ。


「さすが、文化祭執行部部長だね」

「まさか……私がこんなことするようになるとは思いませんでした」

 美沙ちゃんは本当に良くやっていると思う。前回の球技大会も大活躍だった。


「素直に凄いと思うよ。俺は尊敬します」

「……先輩は凄くなくても褒めるからなあ」

 そんな顔をしないで欲しいな。


「そんなことないよ、ちゃんと凄いと思っている」

 だから、俺は一ノ瀬のように美沙ちゃんの目をみてはっきりと言った。


「もう……ずるいです」

 そう言って、目を反らす。うーん、やっぱり可愛い。


「さ、こっち見てないで働いてください!」

 俺は思わず、笑ってしまった。


 何、この娘、恐ろしい。

 今、先輩に向かって働けって言ったよね? どんな心理?


 ……俺はこの娘にも勝てそうないなあ――。



「あー、疲れたあああ!」

 そう言って生徒会室になだれ込む。

「あー! 高木先輩だあ!」

 久志君が嬉しそうにこっちに来てくれた。


「お疲れ様!」

「先輩、来てくれてありがとうございます!」

 ああ、なんて優しいんだ。


「ありがとう、そう言ってくれて嬉しいよ」

 結局、お礼を言い合ってしまった。男同士なのに変な感じだ。



 奈津季(なつき)さんが奥の席から手を振ってくれている。

 中森(なかもり)大場(おおば)も生徒会室で待っていてくれた。

 こうして勢ぞろいするのはなんだか凄く久しぶりな気がする。


「花火大会以来だねー」

「そうだね、集まれて嬉しいよ」


 正樹君は花火大会の鑑賞会を、去年と同じように主催してくれた。

 何だか意志を継いでくれたようで、凄く嬉しい。

 でも俺は一ノ瀬が心配だったから、不参加にするつもりだったのだ。


 そんな俺を、彼女は許してはくれなかった。


 ――高木くんに来て欲しい、そう思っている人もいるんだよ?


 その言葉に何も言えなかった。

 それが解らないほど、今の俺は馬鹿じゃない。

 だから、その日だけは別行動だった。

 もちろん、帰ってからたくさん電話をしたけどな。


 それにしても、久しぶりの生徒会室は相変わらずだ。

 ほこり臭くて、狭くて汚い。

 そして、やっぱり居心地が良かった。


「それじゃあ、後夜祭行きますか!」

 正樹君が口火を切った。やっぱり、彼は恰好良いな。


 その言葉を皮切りに俺達はぞろぞろと生徒会室を出て校庭に向かう。

 文化祭が終わってしまうのは残念だけど、仕方ない。これは最後の楽しみだ。


「高木先輩、1年生にセクハラしないで下さいよ?」

「フォークダンスはセーフだよね?」

 美沙ちゃんに釘を刺されてしまった。でも手を握るのは不可抗力である。


「ごめん、高木くん、私帰る」


 その言葉は全く予想していない言葉だった。

 そのせいで反応するのが遅くなる。


「ごめんね! 高木くんは皆と一緒に居て!」

 そう言って、一ノ瀬は靴を履き替えるなり、昇降口を飛び出していった。


「ごめん、美沙ちゃん!」

「……いいですよ、行ってあげて下さい」

 美沙ちゃんはとても優しい声でそう答えてくれた。


 俺は上履きのまま一ノ瀬を追う。

 理由は分からない。けど、絶対にそうしなきゃいけないと思った。


「一ノ瀬! 待ってくれ」

「何で来るの!? 来ないでよ、私は良いから戻って!」

 そんなこと、出来るわけがない。


 どうしてだ? さっきまであんなに楽しそうにしていたのに。

 俺たちはこれから一緒に踊るんじゃなかったのか?

 頭の中が不安でいっぱいになる。


 ……俺は、また何か、間違えたのだろうか。


「頼む、止まってくれ。頼むから!」

 結局、俺はいつかのように全力で走って一ノ瀬の手を掴んだ。


「離して!」

 悲鳴のような一ノ瀬の声に戸惑う。けれど俺はひるまなかった。


「どうしたんだ? 大丈夫か?」

「高木くん……」

 彼女はこっちを見ようとしない。


 ずっと、うつむいたままだ。どうしたらいいのか、俺にはわからなかった。

 校庭ではキャンプファイヤーの火が灯っている。

 でも、俺たちの周囲は薄暗いままだ。


「おいで、一ノ瀬」

 俺は、ただ優しくそう声をかけた。

「…………」

 一ノ瀬は諦めたようだ。黙ったままそっと近くに来てくれた。


 それから、少しだけ歩いてグラウンドが一望できるスタンドに腰を掛ける。

 一ノ瀬は黙って隣に座ってくれた。彼女が落ち着くまで、少しこうしていよう。


「高木くん……」

 しばらくすると一ノ瀬はやっとこっちを見てくれた。


 その顔を見て、心底驚く。一ノ瀬は今にも泣きそうだった。

 どうして、そんな悲しそうな顔をしているのだろう。 


「今なら、キスしてもいいよ?」

 そんな表情で、そんな台詞を言わないで欲しい。


 俺はどうするか、迷った。彼女の言う通り、キスをすることは容易い。

 前とは違う、大人のキスをしてやれば少しは気も紛れるだろう。

 でも彼女は今、自暴自棄になっているだけだ。そんなことで誤魔化したくない。


「嫌だよ」

 そう言って立ち上がり、一ノ瀬を抱きしめた。


 俺と彼女は身長が同じぐらいだ。だから普通に抱きしめると顔が見えない。

 俺は卑劣にも段差を駆使して、彼女の顔を自分の胸に押し当てた。 


「なんでよ?」

 少し窮屈そうにこっちを見て言う。不満げな一ノ瀬の声は少し震えている。


「いいんだよ、無理すんな」

「……何でそう言うこと言うの!?」

 その言葉が口火を切った。


「うう……」

「大丈夫だよ、誰も見てないから」

 俺は一ノ瀬の頭を抱きかかえるようにして、静かに頭を撫でる。


 一ノ瀬は泣いていた。だから俺はその顔を見ないようにする。

 悲しまないで欲しかった。どうしたら彼女を癒せるのか分からない。

 彼氏なのに、俺に出来ることはやっぱり何もない。


「文化祭、終わっちゃう……。もう嫌だ」


 一ノ瀬は俺の背中に手を回して、俺の服を掴んだ。


「我慢しなくていいんだよ」


 俺に出来ることは、ただこうして近くにいることしかない。

 時々、肩を震わせる彼女を黙って撫で続ける。


「もう、勉強したくない。どうせ私、受からない。

 なのに、なんでこんなに頑張らないといけないの?」


 頑張ったら、必ず上手くいく。

 結果が約束されているのなら、一ノ瀬も頑張れるだろう。

 けど……彼女の言う通りなのだ。一ノ瀬はきっと、受験に失敗する。

 頭ではそれを分かっているのに、勉強する以外の選択肢がない。


「お前はもう、十分に良くやったよ。少し休みな」


 気休めは言わない。「きっと受かるよ」なんて言葉、聞きたくないだろう。

 もういいんだ、俺はただ、一ノ瀬にこれ以上苦しんで欲しくない。


「高木くん……」

「俺は、お前に無理してほしくない。今年駄目でも、来年があるじゃないか」


 ある意味で、残酷な言葉だろう。来年も勉強しろ、そう聞こえるかもしれない。

 けれど、俺はそんな意味で言っているわけじゃないんだ。

 ただ、逃げ道を作ってやりたかった。問題を少しでも遠ざけたかったんだ。


「うう……」

「よく頑張ったな」

 彼女自身はそう思っていないのだろう。

 きっと、「もっと頑張らないといけない」そればかりが頭を巡っている。


「私、生徒会に入らなければ良かったのかな……」


 何でそんな悲しいことを言うのだ。でも、何となくわかる。

 そうすれば、今、こんなに辛くなかったかもしれないな。


「去年の文化祭さ。アレ、お前が居なかったら成り立たなかったぞ?」

「え、何で急に去年の話?」

 少しだけ、声色が変わった。


 だから、視線を少しだけ下に落としてその顔を見る。

 目に涙をいっぱいに溜めていた。痛々しい表情だ。


「俺は、お前が生徒会執行部に居てくれて、本当に良かったと思っている」

 変わらずに頭を撫で続ける。効果があるかは分からない。


「皆も同じさ。お前に感謝している。お前は皆を助けてくれた」

 だから、そんな寂しい顔をしないで欲しい。


「ありがとうな、一ノ瀬。お前は本当に優しいよ」

「高木くん……」 


 それから、しばらくの間、一ノ瀬は俺の胸の中でむせび泣いた。

 かけてやる言葉はこれ以上、思いつかない。

 俺はその間、ただ傍にいることしか出来なかった――。



「高木くん、鼻水かみたい」

 一ノ瀬のその言葉で俺は彼女を離した。


「はい、これ使って」

「いいよ、自分のあるし!」

 そう言って、ポケットからちり紙を取り出す。


「なんか、恥ずかしい……」

 そう言って赤くなる。どうやら、少しはスッキリしたようだ。


「ごめんね、私のせいで後夜祭、終わっちゃったね」

「そんなことを気にしたら俺は怒るぞ?」

 俺にしてみればそれは迷惑でもなんでもない。


「やだ、怒らないで!」

「ふふふ、冗談だよ」

 ……なんだか、いつもと立場が逆である。


「ありがとね、高木くん。今日は凄く楽しかった!」

「そっか、それなら良かったよ」

 どうやら、いつもの一ノ瀬に戻ったようだ。


「明日から、また頑張らないとなー」

「それは……」

 俺は、彼女があんな思いをするのなら、頑張って欲しくない。


「そんな顔しないでよ、大丈夫、充電したから!」

 その表情で言われたら、これ以上は言えないか。


「分かったよ、でも無理しないでくれよな?」

「うん、その時はまた宜しく!」

 そう言って、一ノ瀬は笑った。


 彼女はとても強い女の子だ。いつも前向きで、後悔なんて一切しない。

 俺は知っている、こっちが彼女の本質だ。


 でも、完璧な人間なんていない。

 彼女だって、落ち込んだり、迷ったりすることはあるだろう。

 俺はそんな時、隣に居てあげたいんだ。


 支えてやる、なんて言えない。

 一ノ瀬は俺なんか居なくてもひとりで立ち直れる。

 俺はどうせ何も出来ない、黙って頭を撫でるぐらいがいい所だ。


 でも伝えてあげたい。彼女を必要としてる人が居ること。

 そして、自分が思っているよりも、君はとても素敵な人だということを。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一ノ瀬が、1周目でどれほど追い詰められていたか、それを突き放して、見放してしまった選択が、どれほど彼女を孤独にさせたのか、猛省しなければならないですね。 遠い受験生時代に聞いた話をふと思い…
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