森の主への挑戦①
お待たせしました。
1章が終わってから全話の章付け?をやろうかと思います。
それまではこのままの表記となりますが、ご了承ください....
ナギが目を開けるとそこは日が暖かく照りつける噴水の前。
前日と同じく周囲にはNPCやプレイヤーで溢れている。
しかし噴水の前に立っている人は全員プレイヤーだ。
ホームを設定していないうちは必ずそこがログインの場所になるようだ。
そんなことはさておき
今日は森のさらに深いところへ狩りに行こうと思っている。
自分の装備を買うためのお金を集めようと思ったのだ。
達也から聞いたのだが、装備というのは店で売られている一般的なもの、生産職のプレイヤーが製作するもの、いわゆるプレイヤーメイキングだ。モンスター討伐によるドロップ品などに分けられる。
店で売られているものは基本的に当たり障りのない装備だ。大きなハズレはないが、かといって当たりがあるわけでもない、値段に応じて付与効果や見た目が良くなっていくものだ。
服飾店で商品を選ぶようなものである。
生産職のプレイヤーが製作するものは、依頼する側が素材と依頼料を持ち込み製作を依頼するというもの。
これは出来栄えが生産職プレイヤーのレベルやスキルレベルに大きく左右する。
生産者のレベルと技術力が高ければ質の高い装備が製作できるのだが、低ければ質の低い装備しか製作できない。しかもそれは持ち込み素材のランクにも比例する。
その上、依頼料がとてもかかるのだ。
プレイヤー同士の個人的な取引となるため、依頼料の上限というものが存在しない。ふっかけようと思えば好きなだけふっかけられる。
初心者の所持金では手が出せない世界なのだ。
最後にモンスター討伐によるドロップ品である。
モンスターからの素材ドロップ率はモンスターのランクによって変動する。これは初日の角ウサギで確認したことだ。
そのうえモンスターのランクが上がるにしたがって総合的な強さも上がってくるため、討伐するのが困難となる。それに加えて素材ドロップ率が低くなっていく。
高ランクのモンスターほど素材が手に入りにくい。それゆえ貴重なのだ。
しかし、装備品のドロップはそこからさらに確率が低くなる。
そもそも、Aランク以上のモンスターからでないと装備のドロップはしない。
そのうえ装備のドロップ率は素材のドロップ確率のおよそ10分の1である。
とにかく確率が低い。
しかしその入手しにくさに見合うだけの強さを誇るのが、モンスターからのドロップ装備なのだ。
しかしナギはそんな高性能なものゲットする予定はない。
とりあえず初心者装備を変更できればそれでいい。
そのためには金がいる。
そのためにたくさん討伐して素材と金を獲得する。獲得した素材も売り、お金を手にする。
ナギの決めたプランはそんな感じである。
先日のPvPでナギは割と多めのお金を獲得していたのだが、ゲームの仕様がよくわかっていないナギはそれに気が付かなかった。
ちなみにロイたちには内緒である。特に理由はない。
さぁ、じゃんじゃん稼ぎに行こう!
そう意気込むとナギは意気揚々とモンスターのいるところへ向かって歩いていった。
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森についてからどれほど時間が経っただろうか。
出てくるモンスターを片っ端から屠り続けたため素材と金がだいぶ溜まってきたが、もう少し貯めた方が良さそうだ。
しかし、森のモンスターはどうして虫が多いのだろうか。しかもサイズが大型犬ほどの大きさなのだ。とても気持ちが悪かった。
ゲットした素材もどこに使うのかわからないものばかりだったのだ。
ムカデの足、蝶々の羽根、カマキリの爪などなど....
使い道がわからない。
しかも、たくさん狩ったためレベルも結構上がってしまった。
始める前はレベル8だったのだが、今では15である。
一体どれだけのモンスターを狩ったのであろうか。
というかこんなにポンポンとレベルって上がるもんなのかな。ステータスポイントもたくさん入ってるし。
後でロイに聞いてみよう。
しかし考えてみると角ウサギといい虫型モンスターといいランクが低めのモンスターばかり倒していたようだ。
というかもっと強いモンスターと戦いたい。
一方的に屠り続けるのにはもう飽きた。
強いモンスターと戦えば、もう少し楽しめそうな気がするのだが。
もう少し森の奥へ進めば強いのが出てくるのかもしれないな。
そう結論づけるとナギは森のさらに奥へと歩を進めるのであった。
熊だ。
大きな赤い熊だ。
牙を剥いてこちらを威嚇している目の前の存在に対してそんな感想しか浮かばない。
全身が赤い体毛に覆われており、大きさは小型トラックよりも少し大きいくらいだ。
特色すべきはその長い腕である。
歩きながら地面を引きずるその大きな両腕。それが丸太ほどの太さをしている。
その先にはその身体の大きさに見合った爪が備えられている。引っ掻かれたら全てが切り裂かれるほどの鋭さ。
そんな熊がなぜ僕の方を向いて立っているのだろうか。
森の中で急にひらけた場所に出たと思えばこの熊が僕の方を向いて立っていたのだ。
しかもこの熊、結構強いみたいだ。
今まで倒してきたどのモンスターよりも圧倒的に強い。
ブラッドベア(B)と表示されている。なんとBランク。
どれほど強いのかはわからないので気を張ったほうが良さそうだ。
そう考えたところで戦いが始まった。
くまが雄叫びをあげ、大きな丸太ほどの腕を振り下ろす。
ナギは咄嗟に後ろへ下がり、腕の範囲から逃れた。
ナギの当たらずそのまま地面へ振り下ろされた腕は地面を抉った。
「なるほど、攻撃力がすごく高いみたいだ。」
下手に食らうと一発で死にかねない。
そう考えるとナギは本気で相手をすることに決めた。
片足を一歩分前に出し、両手の拳を顔の前で構える。そして赤熊を正面から見据えた。
ナギが勢いよく飛び出すと、赤熊もこちらに向けて走り出す。
赤熊のスピードが思った以上に早く、お互いに数メートルの距離にまで迫った。
そのまま赤熊はその大きな右腕を横薙ぎに振り抜く。
「っ!!!やばい!!!」
ナギは正面に迫るその大きな腕を見て、左腕で受けようと慌てて構える。
構えた左腕に赤熊の横薙ぎの衝撃が襲う。
衝撃は思った以上に重く、ナギは遠くへ吹き飛ばされた。
パチンコ玉のように吹っ飛ばされ地面を転がるナギ。それに向けて赤熊は一つ一つがナギの胴体ほどの大きさの岩を放り投げてきた。
なんとか立ち上がろうと地面に腕を突き立てて飛び上がり、宙で一回転したのちに地面へ降り立つ。
それでも勢いは止まらずバランスを崩し倒れそうになるが、なんとか膝立ちの状態で耐える。
地面に長い引き摺られたような跡を残し、ナギはようやく止まった。
ダメージが残る腕を確認しながらナギはゆっくりと立ち上がる。
「・・・っつぁー。どんだけ重い攻撃なんだ。腕がイカレるかと思った。」
ビリビリと衝撃が残る腕を見ながらナギはボヤいた。
これは何度も食らうと本当に危ない。今も咄嗟にガードしなければ即アウトだった。
そう考えている間にもたくさんの大きな岩が飛んでくるのだ。
「あの腕をどうにかすれば怖くないかな?」
ひとまずあのバカでかい腕は先に封印してしまおう。
そう考えるか早いかナギは勢いよく踏み出した。上から降ってくる岩を走りながら避けていき、赤熊の正面へと迫る。
再度横薙ぎに振われた腕に両手を添え、勢いよく上へと飛び上がる。
そのままの勢いで赤熊の横顔に渾身の蹴りを叩き込んだ。
蹴りの衝撃で赤熊は多少よろめく。その隙を逃さず、赤熊の左側面からその長い腕の関節めがけて思い切り拳を振り抜いた。
ナギの拳は赤熊の左腕の関節部分にめり込み、ゴキッと音を鳴らす。
赤熊は咄嗟にきた痛みにグオッ!?と声を上げると横に来たナギを鋭い視線を向ける。そしてもう一方の腕でナギを叩き潰そうと腕を振り上げる。
「そんな大振りの攻撃には当たってあげないよ!」
ナギは振り下ろされた腕をすり抜け、赤熊の背後に立つと勢いよく膝裏に蹴りを入れる。
バランスを崩した赤熊が膝から崩れ落ちるとナギはその後頭部に手のひらを構え、〔龍魔法〕“炎“を発射した。
首から上をナギの炎が包み頭部を燃やしていく。頭部を丸焦げにされた赤熊はそのまま倒れた。
その数秒後には赤熊は光の粒子となって消えていった。
「....まぁこんなもんかな.....?」
赤熊に手応えを感じているとピコン!とレベルアップの通知が来た。
赤熊へ挑戦する前は15レベルだったのになぜか17まで上がっている。
こいつ一体でレベルが2も上がった....??
今までにないほど経験値とステータスポイントを獲得し、〔格闘術〕と〔龍魔法〕、さらには〔身体強化〕のレベルも上がっていた。
結構な格上相手だったということか?
その割には結構あっさりと倒せているような気がするけど....
ふと顔を上げると森の奥からさらにもう一体赤熊が出てきているではないか。
その後にもゾロゾロと赤熊が湧き出している。
今度は複数体同時に相手取らなきゃいけないということか....
ちょうどいい!!
気を取り直してここで延々と熊を倒し続けてレベルをあげよう!
Bランクのモンスターの素材も手に入るかもしれないし、お金もたくさん入りそうだ。
そう考えるとナギは新たな赤熊に向かって駆け出した。
しかし新たな赤熊と戦っている時、ナギは気づいていなかった。
自分の受注中クエストに新たな表記が追加されていることに。
『EXTRAクエスト【森の主への挑戦】が開始されました。
発生条件:ブラッドベアのソロ討伐
1stステージ:ブラッドベアソロ討伐 1/10
2ndステージ:ビッグブラッドベアソロ討伐 0/5
Finalステージ:エリアボス[ジャイアントブラッドベア]ソロ討伐 0/1
※一度離脱、または敗北すると討伐数はリセットされます。 』
最後までお読みいただきありがとうございました。
たくさんの人に読んでいただきとてもうれしいです!
これからもどうぞよろしくお願いします!!!




