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圧倒的な差

お待たせしました。


たくさんの肩に読んでいただけて嬉しい限りです。


この作品を執筆するきっかけになった作品が最近漫画化されていたことを知り、嬉しくて跳ねていました。

いつか自分の作品もそうなったら嬉しいな...と思います。


これからも応援をよろしくお願いします。






「お前が...お前がナギちゃんを...?」


『あぁ?この腕と脚を見てわからねぇか?』


フレイヤの震えつつ激情を押さえつける声に対し、サタンは煽るように右手に持ったナギの腕と脚をヒラヒラと振る。


次の瞬間その場からフレイヤの姿がかき消え、フレイヤの刀とサタンの鉈が火花を散らしていた。


『物騒な野郎だな。そんなにあいつと同じ目に遭いたいのか?』


「お前ぇぇェェェぇええエェエエエ!!!!!」


怒りで周りが見えなくなっているフレイヤが単独でサタンに突っ込んでいる間に、ロイとフレイヤはナギの状態を確認する。


「シル、ナギの怪我はどうだ?」


「酷すぎる、あんまりだよ...お姉ちゃんがこんなになっちゃうなんて...これが現実なら出血多量で死んでいたと思う。本当にここがゲームの中でよかったと思うよ。」


涙をこぼしながらも怪我の様子を見て回復薬を振りかけるシル。その様子を見てロイは一つ気がかりなことがあった。


(HPは確実に全損してるはずなのに、なぜリスポーンしないんだ?というかこのゲームはこんなに出血がリアルじゃなかったはずなんだけど...まるで現実と同じみたいだ。)


切断箇所である腕や、千切られた脚はどう見ても全年齢対象ではない。絶え間なく溢れ出す血液や肉の側面など耐性がない人が見たら思わず吐いてしまうほどにはグロテスクだ。


そしてこのゲームはここまで過激な描写はなかったはずなのだが...


ここでロイは初期のナギとの会話を思い出した。ナギが一人で赤熊と戦った後のことだ。



『それに、熊に腕噛まれたり斬られたりしたんだけどさ、すんごく痛かったんだよ。現実でもやられたらあれくらい痛いんだろうなぁ....』



ゲーム内で痛みを感じていることに疑問は残っていたが、その後はナギが怪我を負ったということもなく痛みに関して情報があったわけではないので、そのバグは修正済みなのだと思っていた。


しかし万が一、そのバグが治っていなかったとしたら...?


今この場にいるプレイヤーの様子を見る限り、痛みが遮断されているとは思えない。グレイルや他のプレイヤーはナギほどひどい怪我はないものの、口から血を流すほどのダメージを追っており、その痛みを確実に感じている。


そしてナギは腕の切断や脚を引きちぎられる時、そして刀で刺し貫かれる痛みを現実と同じ尺度で体感していることになり、その後もログインしている限り怪我の継続的な痛みが続く。現実の渚はベッドの上でただひたすら壮絶な痛みに耐え続けることになる。


「ナギを今すぐログアウトさせないとまずいな...」


ロイはメニュー画面からGMへの連絡を試してみるが、案の定応答はない。『サービス向上のため〜』という自動アナウンスが流れるのみだ。


他プレイヤーの強制ログアウトなんてできるとは思っておらずそのままにしておくよりはいいと試したが、結果はこの通り。


「あいつを倒してこの状況を打開しないと無理なのか...」


涼しい顔をしてフレイヤと戦っている敵を見ていると、最初こそ手元の武器を使って戦っていたが、今はフレイヤの刀を指で受け止めている。


「シル、ここでナギを守っててくれ。俺はフレイヤに加勢してくる。」


「わかった。気をつけてね?」


シルの心底心配した声に頷くと、ロイは剣を抜いてフレイヤの元に走っていった。








「武器をしまうなんて!舐めた真似してんじゃないわよ!!!」


「お前なんて武器なんか使わなくても余裕だからなぁ!!」


ブチギレたフレイヤの刀による猛攻を魔力を纏った指で全て抑えているサタンは、別のことを考えていた。


(あの方の復活のためには《大天使の羽根》と肉親の身体が必要らしい。大天使の羽根はさっき採った。数年前、破壊神によって殺されたあの方の記憶は地球上から消されているらしいが、俺が倒したあの小娘は彼の方の向こうの身体の肉親らしい...腕と脚は手元にあるから条件は満たしているが、どうせなら全身持って行ったほうがいいんだろうな...)


「っ!!!〔刀術〕“紫電一閃“!!」


別のことを考えていたサタンはフレイヤの速さに反応が遅れ、刀がサタンの首元をかすり体勢が崩れた。


そこにメイとカエデも参戦し、フレイヤはさらに追い打ちをかける。


「〔隠断〕!!」


メイが背後から短剣で首を狩に。


「〔羅生門〕!!」


カエデがバッティングの要領でサタンの頭を殴りに。


「〔魔閃〕“断裂“!!」


フレイヤが一瞬納刀し、胴を両断しようと。


それぞれが己の武器をサタンに向けて振り抜いた。


『お!!いい動きすんじゃねぇか!!!』


3人の連携にサタンは嬉しそうな顔をする。このままではサタンは体を切り裂かれて終わるところだ。


『だがまだ足りねぇな』


サタンは驚愕の身のこなしを見せた。


まず背後に迫るメイの首を顔も向けずに掴み、自分の身体を回転させて地面に叩きつける。そして回転の動きを利用してカエデの腹に蹴りを入れ吹き飛ばし、地面に叩きつけたメイを持ち上げ、迫るフレイヤの身体に投げつける。


目の前に迫るメイの身体を咄嗟に受け止めたフレイヤの腹を、力を込めたサタンの拳がメイもろとも吹き飛ばす。


壁に叩きつけられた3人は呻きながら地面に倒れた。


「ぅ...がは...」


「えほ、ゲホ...」


「う...メイ、カエデ...?」


フレイヤが二人に顔を向けると、反対側の壁にめり込んで気を失っているカエデ、そしてフレイヤの目の前で吐血し気を失っているメイの姿。


かくいうフレイヤも立ち上がるのが困難なほどダメージを負っている。


『情けねえなぁ。天使どもといいお前らといい、たった一撃でこのざまか。あの小娘はもうちょっと根性見せたぞ?腕を切り落とされてもこちらに向かってきたしなぁ?』


鉈を肩に担いでこちらに歩いてくるサタンをフレイヤは四つん這いのまま睨みつける。サタンはフンと鼻を鳴らすと、ナギに向けて歩き始めた。そこにロイが到着し、サタンの正面に立ち塞がる。


「ここから先は通さないぞ!命をかけてお前を止めてみせる!!」


『俺はあの小娘を持って帰れば十分だからな、お前らのような雑魚に構ってる暇はねぇんだよ。』


そういうが早いか、サタンはロイの目の前に一瞬で移動すると顔面に拳をお見舞いする。あまりの速さに防御が間に合わず、ロイはそのまま地面を転がっていった。


「ロイ!!」


フレイヤの呼びかけにうめき声で反応するロイだが、すぐに起き上がることはできないようで頬を腫れ上がらせながらもゆっくりと身を起こす。


再度ナギに向けて足を進めるサタン。ナギのそばに立つシルは震えながらも杖を構えると、ナギが目を覚ましゆっくりと身を起こした。


「お姉ちゃん...?」


「僕は...まだ...がはっ...たた..かえる....!」


胸に刺さった穿血刃を抜き取ると、杖代わりにして立ち上がるナギ。再度倒れそうになるところをシルが支えた。


その様子を見たサタンはニンマリと口角を上げた。


『そんな身体で何ができる?もう立ち上がるだけで精一杯じゃねえか。そんなに死にてぇなら別にいいが。』


サタンの言葉にナギは血を吐きながら答える。


「目の前で..人が...死にそうに....なって..いるのに....ただ..見ている..わけが...ないだろう...!!」


がはっとさらに血を吐くナギを見るサタンの目が細くなった。


「僕の手足が...動く..限りは..この人たちを...殺させはしない...!!」


『へぇ?じゃあもう片方ずつ切り落としてこいつらが殺されるのを見ることしかできないようにしてやろう』


鉈を光らせてこちらに歩み寄るサタンをキッと睨みつけるナギだったが、彼のいう通り動けるほどの余裕があるわけでもない。しかしここでやらなければさらに犠牲が出るのは必然だ。


翼を広げ、残る力を振り絞り宙に浮こうとしたところである声が響いた。



「いいねぇ!それでこそ渚だよ!!!」



次の瞬間サタンの顔面が大きく歪み、遠くの壁に吹き飛ばされた。入れ替わりでその場所に立っていたのは、純白のドレスアーマーに身を包んだ黒髪の女性。鎧の胸部と足鎧の側面には十字架が彫られ、靴腰には2振の剣を差している。


サタンの顔面を殴り飛ばした腕は振りかぶった状態のまま空中で止まっている。


腕を戻したその女性はナギに向かってにっこりと微笑む。


「色っぽさが出てるじゃないか、渚?」


「...師匠?」



渚に戦闘技術を叩き込んだ道場の師匠であり、未だ渚が勝利したことのない相手。



そんな彼女が目の横にピースを作り、腰に手を当てる。



「“撲滅聖女“ミーシャ。ただいま参上!!!」






〜中学生の時〜


渚「師匠!同級生の男の子から告白されたんですがどうしたらいいですかね?」


師匠「お前も男なんだから『僕に勝てたら付き合ってもいいよ』って言えばいいんじゃないか?」


渚「なるほど!ありがとうございます!!」


※師匠は結構脳筋です。

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