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暴虐の力

前回のお話を追記しておりますので、途中までしか読んでいないよ!と言う方は戻っていただいたほうが良いかと思います。こいつ誰?とはならないと思いますが、突然何?とはなりそうです。





『門の前にいた天使はワンパンで沈んじまったが、お前らはどうだぁ!?』


サタンの咆哮で突風が巻き起こり、ナギ達の背後の扉が壊れて吹き飛ぶ。次の瞬間サタンは地面を窪ませるほどの踏み込みで飛び出した。


目の前に迫ってきた拳をナギは正面から〔身体強化〕した腕で受け止める。強化してもなお骨に響く衝撃にナギは顔を歪めると、外側からの大振りの蹴りを敵の顔面に叩き込んだ。


「っ!!??」


サタンは特に痛がる様子もなくナギの蹴りを顔面で受け止めると、ナギの足を掴んで振り回し、空中に放り投げた。


『っ...っははは!!!効かねぇなぁ!!??前に戦った時はこんなもんじゃなかったぞ!?もっと本気出せやぁ!!!』


サタンはそこからさらに勢いを上げて連続で拳を繰り出す。マトモに打ち合うのは危険と判断したナギは攻撃を受け流すことにした。


息を吐く暇もなく連続で繰り出される拳はナギの動体視力を凌駕しており到底目で追えるスピードではなかった。ナギはほとんど直感で受け流していたものの全てを捌き切れるわけはなく、ナギの頬にはかすり傷が増えていく。


『わざと手加減してるのかは知らないが、そうやって舐めた戦いをするのなら俺にだって考えがあるぞ』


手加減するつもりなければ手加減できるほどの余裕など全くないナギに向かってサタンは冷めた口調でそういうと瞬く間にナギに肉薄し、右腕を大きく振りかぶる。


『〔滅源波動〕』


サタンの拳から得体の知れない黒いエネルギーが溢れ出し、振りかぶった右腕を包み込む。


咄嗟に危険を感じ取ったナギはサタンから大きく距離を取ろうと背後に跳ぶが、その足をサタンが左手で掴んだ。


『とりあえずどっかいけ』


大きく振りかぶったサタンの右腕がナギの腹部にめり込み、腕を包んでいたエネルギーが拳を伝ってナギの腹部で暴発する。


「がはっ...」


腹部を襲う爆発するような衝撃で息が止まったナギは胃酸を吐き出し、そのままの勢いで空の彼方に吹き飛ばされ見えなくなってしまった。


サタンは腕をぐるぐる回すと、他のプレイヤーに向き直った。


『そういうわけで、あいつが本気を出すために俺のサンドバックになってくれや。』


サタンはどこからか大きめの鉈を取り出し、グレイルに斬り掛かる。自分の大剣で鉈を受け止めたグレイルはあまりの一撃の重さに膝をつく。


「っ..あの嬢ちゃんは全力で戦っていたが?」


グレイルは自分が知る限りの情報でナギの実力を推定していたが、先ほどの一連の攻防は間違いなく全力だと思いそう言うと、サタンは『ハンッ』と鼻で笑った。


『あんなんが全力なわけねぇだろ?もし全力だったなら俺は最初の蹴りで死んでる。なぜ手加減しているのかは知らねえが、俺はお互いに全力で戦うことを望んでるんだ。あんな舐めた真似するんだったら、あいつが全力を出すまで俺はお前らを嬲ることにする。』


そう言うが早いかサタンはグレイルを除く全プレイヤーの腹部に一撃を喰らわせ、戦闘不能にした。


「この数のプレイヤーが一発で...!!??」


『俺は戦いが大好きだ。この戦いを全力で楽しむことが大好きだ。お前が今から死ぬのはあいつが舐めた行動を取ったからだと言うことをしっかりと覚えとけ。』


次の瞬間、グレイルの視界が拳で埋め尽くされた。







彼方にぶっ飛ばされたナギは空中でなんとか体勢を整え、即座に元いた場所に向けて全速力で飛んでいた。

腹部一帯に蠢くエネルギーの余韻が少し気持ち悪いが我慢できないほどではない。


視界にうつる情景が移り変わる中で、ナギはあの悪魔が言っていたことが妙に気にかかっていた。


僕が手を抜いていた?


確かに正面から戦うのは危険な気がしたので回避+カウンターで応戦していたが、決して手を抜いたりはしていない。直感でしか剣筋を見切れない分いつもより全力だ。


しかし彼はナギが手を抜いていると言った。


「僕と誰を重ねているんだ...?」






ナギが大聖堂に戻ってきた時、その場に立っているのは一人だけであった。


その場にいたプレイヤーはグレイルを含め全員が地に臥しており、ナギのいない間にきた天使の援軍も根こそぎやられていた。


天使の首を掴んで持ち上げていたサタンはナギが戻ってきたことに気がつくと、その天使を投げ捨てた。


『遅かったじゃねえか。とりあえず邪魔者は片付けておいた。これなら本気でやれるだろう?』


鉈を構えてほくそ笑むサタン。ナギは無言で穿血刃を取り出し鞘から抜く。光に反射して赤い煌めきを発する刃にサタンはさらに笑みを深くする。


『我らの神聖なる天界を汚したのはお前か悪魔よ』


『私たちの部下をたくさん殺してくれたみたいだな...消すか』


突如気配を感じ背後から響く声にビクッとして振り返ると、そこには3対の白い翼を生やした天使の男女が剣と盾を構えて立っていた。


二人の姿を見たサタンは途端に表情を消し、頬をポリポリと掻く。


『また天使かよ。大天使に熾天使ね...確か〔大天使の羽根〕が必要だってジジイが言ってたっけ...』


次の瞬間、大天使の目の前に移動したサタンは天使が視認できない速度で鉈を振るった。


血飛沫が熾天使とサタンの顔に撥ね、その場に何かが落ちた。


『なっ...!!』


大天使が後ろに倒れ、ナギが苦痛に顔を歪ませながらその上に覆いかぶさる。


サタンは自分に飛んで来た血を舐め取ると、地面に落ちたソレを拾い上げる。


『おいおい、お前ら天使のせいでこいつの右腕が無くなっちまったじゃねぇか!!』


地面に落ちたそれは、サタンの鉈によって切断されたナギの右腕だった。


『龍の娘!!奴の攻撃から身を守ってくれたこと、感謝する!!』


熾天使がそう声を上げ、サタンへ攻撃を始めた。


空高くに飛び立ち戦闘が始まる。


『すまんな。私のせいで其方の腕が...』


「気にしないでください。それよりも奴はここで倒さないと...!!」


『しかし、それではまともに戦うこともできないだろう?』


「左腕があるので問題ないですっ!!!」


そう言ってナギは空中の戦いに参戦していった。


『...其方は本当に彼の方に似ているな...』




熾天使が片手剣と盾を巧みに使いサタンに斬りかかるが、サタンは涼しい顔をしながら鉈で攻撃を受け止める。


『天使との戦いに興味なんてねえんだよ。俺はあいつと戦えればそれでいいんだ。』


片手剣を掴み、盾を弾き飛ばしたサタンは鉈を熾天使に振るうと、目の前にナギが現れ穿血刃で攻撃を受け止める。


『おっ!!いいなぁ!!』


ナギは鉈を弾き無傷の足で踵落としを見舞う。わずかに距離が空くと、口に魔力を集中させた。


「〔龍魔法〕“龍星破砕砲“!!」


口から放った最大の攻撃魔法はサタンに直撃し、空中で大爆発を起こす。ナギはその爆発の煙の中を突っ込んでいった。


『いいぞいいぞぉ!!!その調子だ!!』


サタンが嬉しそうにこちらに飛びかかった。


そこからはほぼ互角の戦いとなった。サタンの巧みな攻撃は可能な限りナギが相殺し、大天使と熾天使の二人でサタンに攻撃する。サタンは攻撃を防ぎはしないものの二人の天使が繰り出す攻撃に苛立ちを覚えているようだ。ナギとの攻防の間に水を挿されまくっているのが気に入らないらしい。


しかしナギもそう長く持ちそうにないのが現状だ。サタンの攻撃は一撃一撃があまりにも重く、ナギの全力を持ってしても相殺できない威力。ナギの疲労と傷が徐々に増えていき、集中力も削られていくのを根性で堪えていた。


しかしその均衡もとうとう崩れてしまった。


少しよろけたナギの左足をサタンが掴む。ナギが離れようと〔龍魔法〕を繰り出すが、サタンは全く動じない。


『ジジイが言ってたのはこういうことか。半覚醒のうちに連れてこいっていうのは、俺たちが連れて来られる実力のうちに連れてこいってことだったんだな...残念だ。』


サタンはナギの左足を腿と足首で別々に掴むと、反対方向に引っ張り始める。


「がっ....グゥゥゥ!!!!」


力任せに引っ張るサタンにナギは痛みを堪えながら抵抗するが、がっちり掴まれているせいでその場から逃げられない。次第にナギの足から肉が裂ける音が響き始めた。


「あああああァァァァァァ!!!!!!」


感じたことのない苦痛に声を上げるナギ。大天使と熾天使が斬りかかるが、サタンは見向きもせずに攻撃を跳ね返し、逆に攻撃を加えて二人を地面に叩きつける。そして腕にさらに力を込め、ナギの左足は膝下で引きちぎられた。


『がっかりしたぜ本当によぉおおおお!!!!!』


ナギの左手から強引に穿血刃を奪い取ったサタンはそのままナギの胸にそれを突き刺し、ナギの髪を掴んで地面に投げつけた。


地面で砂煙が上がり、そこにはピクリとも動かないナギ。そしてちょうどそこに合流したロイたち一行。


周囲は絶望に包まれていた。






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