文化祭DAY2前編!!
DAY2に入ります。
GWにお出かけはしましたか?
有給を使って最大10連休取れたら楽しそうだなと思っていましたが...
現実はうまくいかないものです。
※後編じゃなくて前編でした。
文化祭2日目。
朝の達也はどんよりした空気を漂わせていた。
「はぁ...」
「どうしたの達也?」
「渚...今日休んじゃだめか...?」
「え?体調悪いの?」
「いや、そういうわけじゃないけど。」
達也は朝食の席でトーストを齧りながらはあぁ...と深いため息をつく。
「休みたいなぁ...」
「ズル休みはだめだよ?」
渚の言葉に達也は悲壮な目をして項垂れる。
例の動画配信者の騒動は渚の乱入で幕を閉じ、当事者であった達也と香織は相当傷ついただろうと渚は考えていたが、達也が休みたい理由がそれではないことも渚は知っていた。
「いくらミスコン・ミスタコンに出たくないからって当日に休むのは良くないよ...」
渚の言葉に達也はテーブルにゴンっと顔を伏せる。
文化祭2日目の大トリであるミスコン・ミスタコン。グランプリを取ると文化祭の順位に加点されるため、最優秀賞を取るためには是が非でも取っておきたい称号だ。
「うちのクラスから達也が出場するのは前から決まってたんだから。体調不良ならともかくズル休みは良くないよ。」
「昨日のアレのせいですごく注目されてるんだぞ!あのバカどもが生配信してたせいで...まぁ渚が偶然パソコンとカメラ破壊したから大事にはならなかったけど。」
「そういえば、あの人のチャンネル昨日削除されてたよね。切り抜きは残ってたけど過去の動画も含めて全て見れなくなってた。どういうことなんだろう...」
渚の言葉に達也と香織がそれぞれ反応すると、同じテーブルについていた紗良がヨーグルトを食べながらボソっと呟く。
「あの配信者、昨日の夕方に『助けて』って呟いた後消息が掴めてなかったんですよね。その後公式も反応しないし...」
「そういえば昨日亜紀さんが帰ってきた時、微かに...いや、気のせいかな」
皐月がものすごく気になることを言っていたが、渚は時計を確認して少し慌て始める。
「まずい!今日は仕込みを早めにやることになってるんだ!早めに出るね!」
渚が食器を片付けて鞄を持ち、玄関に走っていく後ろ姿に香織が話しかける。
「あ!渚ちゃん!昨日言ったこと覚えてるよね?」
「うん!ミスコン前に一緒に文化祭回るんでしょ?迎えに行くから待っててね!」
渚はそういうと玄関から出ていった。
「....香織?」「おねえちゃん?」「香織ちゃん?」
「...何よ」
達也と皐月、紗良がニチャァ...という笑みを浮かべる。
達也が香織の背中をバシバシと叩く。
「いやぁ!!香織が渚をちゃんと誘うとはな!!」
「おねえちゃんてば、渚姉ちゃんのことだけは尻込みしすぎだったからね!!いやぁ良く踏み切った!!!」
「香織ちゃんもとうとう告白するのか...」
「こ、告白!?」
3人の言葉に香織は顔を真っ赤にして狼狽える。
その様子を見て3人はさらににっこりして独り言のように話し始める。
「恋人になる前の二人が文化祭を一緒に回り、一層仲を深める...」
香織がビクっとした。
「ミスコンの最後に香織が渚へ告白し、渚から恋愛的に意識してもらう...」
香織の頬がりんごのように真っ赤になる。
「渚姉ちゃんから告白の返事をもらい、二人はめでたく恋人に...!!」
皐月の言葉に香織は顔を上げる。
「本当にそんなうまくいくかな...?」
「いくに決まってる。種類は違えど渚は香織のことが大好きなんだぞ?意識せざるを得ないさ」
「...頑張るよ、私。」
少し躊躇いながらも決意した表情の香織に3人はにっこりと微笑んだ。
「(私たち、今日の文化祭行くから。ミスコンもミスタコンも見にいく。)」
「(香織ちゃんの告白を生で聴きたいからね。)」
「(ミスタコンは来なくていい。というか来るな。)」
3人のコソコソ話は香織の耳には届かなかった。
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「久里山さん!今日はもう大丈夫だよ!オムライスも作り終わったんでしょ?」
「本当?じゃあもう行こうかな。」
クラスメイトに促され、渚は調理室を後にした。
この後、渚は香織と一緒に文化祭を回る約束をしている。ミスコンの召集が始まる前までではあるが、それでも数時間は一緒に回ることができるはずだ。
香織と二人で行動するなんて、以前映画を見にいった時以来だ。他のお店がどんなものを出しているのか気になるところだ。
「...ん?」
渚がふと窓の外を見ると、クルル、ニーナ、ルークの3人が真っ白のスーツを着た男と敵対しているのが見えた。3対1という状況、校舎裏で激しい戦闘が繰り広げられているがそばには誰も近づこうともしない。何かの結界に阻まれているかのように。
クルル達3人はどうやら戦闘センスもずば抜けているようだ。渚の通う道場の門下生では全く歯が立たないだろう。しかし白いスーツの男はそんな3人の猛攻を涼しい顔で凌いでいる。
渚も手助けするために現場に向かおうとすると、白いスーツの男の視線が渚の視線とかち合った。
『また今度』
彼はそう口を動かすと、煙のように消えてしまった。
「...あの人、どこかで....?」
渚は記憶を掘り返すが、彼のような人物は全く思い出せない。渚が生きてきた中で密接に関わりのあった人物に関係していることは確かだということはわかる。しかしその人物が思い出せないのだ。まるでパズルのピースの一部が削り取られたかのように。
「...後でお姉ちゃんに聞いてみよう。」
姉や紗良であれば何か覚えてるかもしれないと思い、ひとまずこの出来事は頭の片隅に放り投げた。
それより今は香織だ。
渚は香織を迎えに教室へと向かった。
「香織ー、迎えにきたよ!」
「あ、渚ちゃん。」
「...久里山、またお前か...!!」
お客さんがたくさん入っている教室で、香織の腕を乙倉くんが掴んでいる状況。二人の顔は渚の方を向いているが、浮かべている表情は正反対だ。
「...出直そうか?」
「ううん、いいの。渚ちゃんはもう終わったの?」
「うん、オムライスは全部作った。他はみんながやってくれるって。」
「そっか。じゃあ行こっか。」
香織は佐々木さんに「時間だから行くね」と伝えると、渚の手を引いて教室を出る。
教室から出るとき、乙倉くんが渚を憎しみを込めた目で睨みつけているのが見えた。
香織は渚の手を引き、廊下を歩き始める。
「乙倉くんと何かあったの?」
渚の質問に香りは苦笑いで答えた。
「いや、大したことじゃないよ。乙倉くんに一緒に文化祭回らないか誘われたから断っただけ。お客さんの前でいう事じゃないよね」
「確かに。」
渚は相槌をうつと、香織ににっこりと微笑んだ。
「それじゃあまずどこに行こうか?」
「こことかいいんじゃない?行こ!」
二人はこうして文化祭を回り始めた。




