閑話 香織の出会い
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私が渚くんに初めて会ったのは小学生の時だ。
小学校にて、達也の隣の席に座っていたのが渚くんだったのだ。
当時の私は少々気の強い小娘といった感じで、掃除を手伝わない男子に
『ちょっと男子ぃ!掃除手伝ってよ!!』
と言えるよう女子であった。
そして達也は今とは違い、隅っこでオドオドして周りに流されて自分の意見を言えないような男の子だった。
外見はどこからどうみても女の子なのだが、自己紹介の時に男と言っていたので教室内では疑問の声が響いていた。
渚くんはとても活発な子で、圧倒的な統率力で瞬く間にクラスメイトをまとめ上げていた。
クラスメイトたちはそんな渚くんを信頼していたと思う。
私と達也は教室の隅っこでおとなしくしているタイプであり、彼とは正反対。
そんな状態は入学から3ヶ月経った時でも変わることはなかった。
「....早く終わらないかな...」
給食の時間、私は達也と2人で給食を食べながらそう考えていると、
「プリンいらねーならもらうぜ!!」
「あ...」
同じクラスの身体の大きい男の子が達也の机からプリンを持っていってしまった。
しかし達也はその男の子が怖いらしく、何も言うことができない。
「ちょっとたかしくん!そのプリンは達也のだよ!!達也に返して!!」
私はそういってたかしくんに詰め寄った。
「うるさい!!こいつが残してるから俺が食べてやるんだ!」
「残してるんじゃなくて、まだ他のご飯を食べてるんだよ!!」
「うるさい!女のくせに!こうしてやる!!」
「きゃ!!」
そういってたかしくんは私を突き飛ばした。
しかし、私は尻餅をつくことはなかった。
「大丈夫?」
「...あ...」
倒れそうになった私を支えてくれたのは渚くんだった。
渚くんは私を椅子に座らせると、たかしくんに言った。
「ねえたかしくん?」
「な、なんだよ!このプリンはもうおれのだぞ!!」
「おねえちゃんがいってたんだけど、ひとのモノをとったら“どろぼう“なんだって。このままだとたかしくんどろぼうになっちゃうよ?」
「!!」
たかしくんにそう言い放った渚くんは、そのまま反応を待つ。
「う、うるさい!!おんなみたいなやつに言われたくない!!」
たかしくんがそう言った瞬間、笑顔だった渚くんから笑みが消える。
「「ひっ...」」
たかしくん、達也が微かに声を漏らした。
「....返しなさい。」
「....ウルウル」
「返しなさい」
「...(;’^’;)ボロボロ」
徐々に鬼のような顔になっていく渚くん。
「か・え・し・な・さ.....」
「ご、ごめんなさいぃぃぃぃ!!!!!」
たかしくんの目から涙が滝のように溢れ出し、プリンを机に叩きつけて廊下に逃げていった。
廊下では「たかしくん!?」という先生の声と追う足音が響いていた。
「大丈夫だった?」
「ひっ!!」
渚が達也に声をかけると、達也はものすごく怖がって渚を見上げた。
「こら達也!!渚くんにありがとうって言わなきゃ!!」
「あ...あ、ありがとう....」
達也がオドオドしながらもお礼を言うと、渚くんはニコッと微笑んで
「どういたしまして」
そう言った。
もしかすると、この時だったのかもしれない。
私が渚くんのことを気にし始めたのは。
その日から、私と達也は渚くんとよく遊ぶようになった。
渚くんのことはたくさん教えてもらった。
兄妹のこと、料理のこと、運動のこと。
渚くんと接するようになってから達也もオドオドした感じがなくなり、積極的にクラスに混ざりに行くようになった。
6年生の時には同学年の女子にひっきりなしに告白されるようになっていた。
身長も伸び、小学6年生の時点で160cmという高さになっていた。
対する私も身長は150cmまで伸び、身体も多少女性らしく成長していた。
この頃から男子からの呼び出しが増えていたが、全て断っていた。
そして渚くんだが、まぁまぁ伸びていた。
小学生としては平均的な程度の身長になり、運動能力はさらに開花。運動会では無双していた。
当時道場に通っていることは先生と私たちしか知らなかったため、ひっきりなしに運動系クラブへの勧誘がされていたらしい。
渚くんは全て断っていたそうだ。
そして...渚くんも告白されることがとても多かったようだ。
女子、だけでなく男子にも。
女子に対しては普通に断っていたらしいが、私はなんとなくモヤモヤを感じていた。
問題は男子だ。
同学年や下の学年。ましてや近所の中学生男子にまで告白を受ける始末。
流石の渚くんも顔が引き攣っていた。
しかしほとんどが渚くんを男子と知らずに告白してきていたようで、男子だとわかると素直に引き下がっていた。
しかし中には「男でも構わない!!!」と言う生徒もいたらしく、渚くんは全力で断って逃げてきたそうだ。
最近の小学生ってすごい...と語っていた渚くんの顔は今でも忘れない。
その流れは中学に上がっても変わらなかった。
達也は部活には入らず、中学1年生にして校内一のイケメンの座を獲得していたそうな。
当時の人気者の女子生徒まで虜にしてしまったことで男子の先輩からは目の敵にされていたそうだ。
しかし同学年や、後々入学してくる後輩からの信頼は厚い。
運動も勉強もできるイケメンという超優良物件だった。
私もそれなりに勉強は頑張っており順位も上位にいたし、運動も渚くんほどじゃないけどできた。入学直後からも告白が絶えなかったが、全て断っていた。
しかしそのせいで、他の女子生徒からの嫉妬がやばかった。
当時学校の頂点に君臨していたの女子の先輩が好意を抱いていた男子生徒が私に告白をしてきたことで、その先輩にあからさまな敵意を向けてきていた。
最初からいじめのような嫌がらせを受けていたが、大したことじゃないと気にしてもいなかった。
そんなある日、私の下駄箱にある手紙が入っていた。
長々と好意のような文面が書いてあるが、簡潔にいうと放課後に屋上まで、ということだった。
差出人は不明。
一見ラブレターのようにも見えるが...
「ねぇ達也。」
「ん?なんだよ」
「果たし状?が入ってた。」
「果たし状?...ラブレターみたいだけど、文字が女子じゃねぇか。」
「そうなの」
明らかに女子生徒が書いたであろう文字が並んでいる。
これは...何か嫌な予感がする。
「まぁ行って確かめてみますか。」
「大丈夫か?ついていこうか?」
「大丈夫だよ。達也は先に帰りな。今日はイベントクエスト周回するんでしょ?」
「そうだな、お前と2人で周回した方が早いから早めに帰ってこいよ。」
「おっけい」
そう言って私は教室に入った。
授業が全て終わった後、
「香織!一緒に帰ろ?」
渚くんが満面の笑みで私に話しかけてきた。
この幼馴染の可愛さは核爆弾レベルでやばい。
なんとなくなでなでしたくなる。
かわいい。
「ごめんね。屋上に呼び出されてて。」
「あぁ、香織モテるもんね。じゃあ待ってようか?」
「いいや、大丈夫。先に帰ってて。」
渚くんの誘いを断らなければいけないなんて...
差出人、許すまじ。
「そっかぁ、じゃあまた明日ね!!」
渚くんはそう言って教室を出た。
「...さて、いきますか。」
そうして私は屋上へと向かった。
この学校の屋上は本来は閉鎖されているが、鍵が壊れているらしく自由に出入りできる。
教師はこれが壊れていることを知らないため、生徒たちが自由に使用できている。
屋上に出ると、そこにいたのは...
「何か御用ですか、先輩」
「ふん、素直に来たことだけは褒めてやるわ!!」
元学校の頂点の女子生徒とその友人たちだった。
「あなた、最近調子乗りすぎなのよ!!1年生のくせに!!」
「篠原くんを侍らせながら牧村くんにまで手を出すなんて...」
「とんだ尻軽ビッチね!この泥棒猫!!」
「.....」
「なんとか言いなさいよ!!」
なんとか言いなさいって言われても....
達也は双子の兄だし、牧村先輩には興味ないし....
「...まぁいいわ、そんな尻軽ビッチにはこんな相手がお似合いよ!!」
彼女がそういうと突如私の後ろのドアから複数の男子生徒が飛び出し、私を羽交い締めにした。
その男子生徒は校内でも随一の不良であり、よくない輩と連んでいると噂されている生徒達だった。
そして、私に振られた男子生徒もいた。
「っ!!!離して!!」
私は必死に抵抗するが、その男子生徒の力が強くて抜け出すことができない。
「お!今日好きにヤッていい女ってこいつか?」
「うほ!上玉じゃん!!そそるねぇ!!」
「そいつは好きに犯していいから、写真を残しなさい。動画も撮るのよ。私に楯突いたらどうなるかをしっかり教えてやるわ!!」
「っっ!!!助け...むぐぅ!!!!」
助けを呼ぼうとしたところで口に布を詰め込まれ、声が出せなくなる。
「さぁ、始めよう!!」
そう言ってその男子はカッターで私の制服の正面を切り裂いた。
私の下着が露わになり、瞳からは涙が溢れる。必死に逃げ出そうとするが、動きが取れず布のせいで声も上げられない。
「ーーーーーーー!!!!!!」
「ほぉ、いい身体してんじゃねぇか...」
そう言って迫ってくる手に私は目をギュッと閉じる。
助けて!!達也!
助けて!!渚くん!!!
「なにしてんの」
屋上に響いた冷え切った声。
全員がその声の主を視界におさめると、身震いをした。
生物の本能として絶対に逆らってはいけないと感じるほどの威圧感を放つその人物。
学校内でも人気の高い生徒の一人。
そして香織の幼馴染。
渚だった。
「ーーーーー!!!」
渚は香織を視界におさめた瞬間、羽交い締めにしている生徒に膝蹴りをかまし、戦闘不能にする。
そして香織を抱き上げるともといた場所に戻ってきた。
その時間、わずか3秒。
渚は香織の口から布を出し、自分の羽織っていたブレザーを香織にかける。
「少し待ってて。」
渚は香織にそう呟くと、彼らに向き直り、
「ぶっ殺す」
と言った。
そこからはもはや蹂躙だった。
男子だろうが女子だろうが関係なく顔面を殴り、腕や足の骨を折った。
実行犯であろう男子生徒には顔の形が変わるほど殴った。
音を聞きつけて様子を見にきた先生に止められるまでそれが続いた。
先生は状況を見てびっくりしたらしい。
座り込む香織、屋上を彩る血液。
そして暴力を振るう渚。
先生が一番驚いたのは渚だったらしい。
常日頃から校則を遵守し、成績は学年1位。体力テストも校内1位。
優等生の代名詞として語られる渚がまさかこんなことを...という驚きである。
その後救急車が呼ばれ、関係者全員が病院に運ばれた。
件の女子生徒と実行犯の男子生徒は全員無期限の停学となった。
警察に被害届を出してもいいが、全員未成年であることからせいぜい少年院行きだろうと言われた。実刑判決はないみたいだ。
学校側としては問題にしたくないみたいだが、被害者は香織なので被害届は香織に判断を委ねた。
しかし実行犯の保護者から、渚を暴行罪で訴えるといった主張が出ていた。
確かに今回の件とは直接的な関係のない渚が飛び入り参加し、関係者をボッコボコに叩きのめしたことに関しては訴えが可能とのこと。
それを聞いた香織がある条件を出した。
渚の暴行罪で被害届を出さないのであれば、香織も強姦未遂の被害届を出さないと。
これには相手の保護者側も条件を飲まざるを得なかった。
判断を間違えれば子供が性犯罪者になるのだ。社会的に死ぬのは間違いない。
怪我は時間経過で治るが、社会的に死ぬのは不味い。
こう言った形で片がついた。
ちなみにこの事件は学校内で噂として広まっていた。
被害者の名前は伏せられており誰かはわからないが、加害者はフルネームで知られていた。
そのせいで性犯罪者としてのレッテルを貼られ、彼らは転校せざるを得なくなった。
こうして事件は幕を閉じた。
この時から香織は渚への好意を自覚し積極的にアプローチを始めるのだが、ラノベ主人公ばりの鈍感さで香織の好意に気がつくことはないのであった。
ん?と思ったらコメント欄で教えてください。
結論:香織は渚が好きです。
次回は本編に戻ります。
※渚と香織にデートして欲しいところ募集中!!コメント欄で募集します!!




