近接特化は伊達じゃない
文字数少なめです。
あらかじめご了承ください。
「ふんぬぉ!!!」
カエデの大きな掛け声とともに振るわれる棍棒。そしてその棍棒を〔龍鱗腕〕を発動した拳で相殺するナギ。
「次は横振り!」
「はい!」
カエデの攻撃を相殺するたび、ナギの腕には凄まじい衝撃が走る。
〔龍鱗腕〕を発動しているのにもかかわらず、棍棒による打撃はナギに確実にダメージを与えてくる。
しかし、棍棒の扱いが上達するにはこの方法が一番効率がいいのだ。
この状況に至るまでを説明すると、時刻は一時間ほど前にさかのぼる。
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「じゃあ始めようか。」
「はい師匠!」
ナギがそう声をかけると大きな声で返事をするカエデ。背中に背負っていた棍棒を両手に持って構えたところで、ナギは再度カエデへ声をかけた。
「それじゃあ、一回ぼくに思い切り攻撃してもらえる?」
「え!?攻撃ですか!?」
ナギの発言を思わず聞き返すカエデ。
「カエデの現段階のステータスを知りたいからね。遠慮しなくていいから!」
両腕を胸の前で構え、打撃攻撃を受ける準備をするナギにカエデは若干困ったような顔をした。
「そ、そうですかぁ?じゃ、じゃあ遠慮なく...」
カエデはそう言うと棍棒をホームランバットのごとく振りかぶり、
「うおぉおらぁぁあ!!!!」
「!!」
カエデは渾身の力でナギを棍棒でぶっ飛ばした。
種族による恩恵で物理攻撃が大幅強化されているものの。40ものレベル差があるためそこまでダメージは喰らわないだろうとナギは思っていた。
しかし実際はナギは遠くにぶっ飛ばされ、滝壺の壁にめり込むように叩きつけられた。
打撃をもろにくらった腕は、ビリビリとしびれが残っている。
「っ!...まじか..がはっ」
なにこの威力!?彼女はまだレベル2のはずなんだけど!?
ナギは自身のHPゲージを確かめると、3割程度HPを削られていた。
あの一撃で3割なんて...
「だっ大丈夫ですか!?」
カエデが慌てて駆け寄ってくる。
いきなり吹き飛んでいったから心配してくれたようだ。
「大丈夫だよ。」
「そ、そうですか?よかったぁ...死んじゃったかと思いました...」
ナギの返事にカエデは深く息を吐いて安心したように声をあげる。
確かにカエデ側から見たら、棍棒で吹き飛ばされた相手が滝壺に突っ込んで壁に叩きつけられていたら死んだと思うのも無理はない。
実際、カエデと僕のレベル差がそこまで開いていなければ死んでいただろう。
ちなみにナギの現在のステータスはこんな感じである。
名前:ナギ
種族:龍種
性別:女
所属ギルド:なし
Lv.41
HP:505
MP:640
STR(筋力):595
VIT(生命力):200
AGI(敏捷性):655
INT(知力):260
MND(精神力):250
LUK(運):33/100
満腹度:62%
所持スキル(戦闘):
〔龍魔法〕Lv.49(種族固有)
〔龍鱗腕〕Lv.40(種族固有)
〔龍鱗脚〕Lv.5(種族固有)
〔龍の威圧〕Lv.5(種族固有)
〔龍化〕Lv.2(種族固有)
〔格闘術〕Lv.63
〔錬成武装〕Lv.21
〔纏気〕Lv.10
所持スキル(日常)
〔龍の翼〕Lv.30(種族固有)
〔身体強化〕Lv. 33
〔MP回復強化〕Lv. 43
種族特性:
《龍の鱗》・・・物理攻撃力上昇及び物理、魔法攻撃力耐性上昇。
称号:
【単独制覇者】【森の主を超えし者】【バトルロイヤル5位】
装備:(服装)・・・ユニーク装備【赫血】
装備:(武器)・・・【妖刀“穿血刃“】
一体カエデのステータスはどんなものなのだろうか...
気になる。
「ねぇ、カエデのステータス見せてくれない?」
「いいですよ!こんな感じです!」
カエデが指をひょいひょい動かしてステータス画面を表示し、ナギはそれを覗き込んだ。
名前:カエデ
種族:幽鬼族
性別:女
所属ギルド:なし
Lv.3
HP:190
MP:150
STR(筋力):200
VIT(生命力):130
AGI(敏捷性):155
INT(知力):30
MND(精神力):25
LUK(運):15
満腹度:85%
所持スキル(戦闘):
〔鬼剛力〕Lv.1(種族固有)
〔金剛〕Lv.1 (種族固有)
〔怨魂〕Lv.1 (種族固有)
〔羅生門〕Lv. 1(種族固有)
〔百鬼夜行〕Lv. 0(種族固有)(未解放)
〔閻魔〕Lv.0 (種族固有)(未解放)
〔棍術〕Lv.2
所持スキル(日常)
〔身体強化〕Lv.1
〔気配察知〕Lv.1
〔HP回復強化〕Lv.1
〔瞑想〕Lv. 1
種族特性:
《鬼の心》・・・魔法系スキル取得不可。代償として物理攻撃力超上昇。物理及び魔法防御力上昇。
えっぐ!!!!!
え、なにこの化け物ステータス!!??
STR、VIT、AGIが初期のステータスとは思えん!!
STRだけでも同時期の僕の3倍はあるよ!?
「どうですかね...?」
「...すごすぎてどう伝えればいいのかわからない。」
「?」
カエデが期待をこめて聞いてくるのにそう言葉を返すしかできなかった。
このステータスを見る限り、戦闘に慣れれば魔法に頼らなくても余裕で戦うことができるだろう。
そうなれば、まずは主武器の棍棒の扱いに慣れさせよう。
「それじゃあ棍棒の扱いだけど、」
「はい!」
「細かい動きは気にしなくていい。この武器は大きくて重いから打ち合いには向かないから、相手を一撃で仕留めるつもりで振るうといいよ。」
「はい!」
ナギは〔龍鱗腕〕を起動させると、両腕を顔の前に構える。
「じゃあこれから僕がいいって言うまで攻撃してきて。ある程度振り回すのに慣れたらモンスター相手にやってみよう。」
「はい!了解しました!!」
このようなやりとりののちに冒頭に至るのである。
攻撃を相殺していたのでナギ自身にそこまでダメージは入らないものの微量のダメージが蓄積され、ナギのHPが半分ほど減り、打ち合いの勢いで生じた風の影響で周囲の木が若干傾いたタイミングで、ナギはカエデに声をかけた。
「じゃあそろそろモンスター倒しに行こうか!」
「はい!」
ナギはカエデを引き連れて森エリアへ移動するため歩き始めた。
「なんのモンスターを倒しにいきますか?」
カエデが興味津々といった表情でナギの顔を覗き込んでくる。
「そうだなぁ、せっかくだし僕の妹たちも呼んであいつを倒しに行こう。」
「あいつ..とは?」
ナギはある大きなモンスターを思い出しながら答える。
「...とてもいい経験値になるモンスターだよ。」
「と言うことで、よろしくね!シル、メイ!」
森のフィールドの前でナギは目の前の2人に声をかける。
シルとメイは受験勉強の息抜きとして一緒にクエストをやろうとログイン前に誘っており、好きなタイミングでログインするように伝えていた。
カエデとはお互いに自己紹介をさせ、クエストに参加する旨を伝えると
「一緒にクエストをやるのが3人に増えただけだし、気にしないよ!」
「むしろナギ姉ちゃんのお墨付きの娘が参加するなら心強いしね。」
シルとメイは好意的な感情をカエデに向けている。
「はい!よろしくお願いします!!」
カエデは身体を直角に曲げ、頭を深く下げた。
「さぁ!早速行こうか!」
「「おー!」」「はい!」
こうしてナギ一行は森の中へと足を踏み入れたのだった。
ステータス的に初期のナギがあまり強くないように見えるのは気のせいです。
龍はバランスの取れている種族なんです。
素の実力が化け物なので、ステータス値が負けていても当時のナギの方が強いです。




