女の子は大変〜序章〜
第3章に入りました。
ここからは渚の女体化編になります。
女の子特有の話のネタといえば...あれだよなぁ
「あ!こういうの可愛くない!?」
香織が一着の服を手に持ち、渚の前にかざしながらそういった。
「おぉ!それ絶対似合うよ!!あ!こういうのもいいんじゃない!!?」
紗良が別の服を持ってきて渚の前に掲げた。
「あぁぁぁぁぁかわいィィィィィィ!!!!もうなんでも似合うね!渚く、、渚ちゃん!!」
「いや、わざわざ言い直さなくていいから!!」
香織の言葉に思わずツッコミを入れてしまった渚。
彼女らは今、近所のショッピングモール内で渚の洋服を見繕っていた。
次々に着せては脱がされ、着せては脱がされを繰り返し、渚はすでにヘトヘトだ。
どうしてこうなった...?
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「女の子に....なってる......?」
鏡に映った自分の姿に驚きを隠せず立ちすくむ渚。
紗良が遠慮がちに話しかける。
「え...お兄ちゃんなの...?」
「そうなんだけど...」
渚は自分が回転し全身鏡に映る自身の身体を見ながらそう呟くと、紗良は渚にツカツカと歩みより、正面から抱きついた。顔も渚の胸に押し付けてプルプルと震えている。
「さ、紗良...?」
「お........」
「お?」
紗良が顔をバッとあげた時、その顔は驚愕と歓喜の色を浮かべていた。
「お兄ちゃんが、お姉ちゃんになったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
紗良が発狂したように大声をあげてリビングを走り回り始めた。
「.....えーと、渚が性転換手術を受けた訳じゃないんだね?」
亜紀が確認するように渚に問いかける。
「いや、僕が自主的にそんなことするわけないでしょ?」
「まぁそっか、じゃなきゃ私たちが女装させるのを喜ぶはずだもんね。それにしてもこんな姿に...顔も大人っぽくなっちゃって...」
亜紀は渚の全身を隅々まで眺め、身体のあちこちを触り始めた。
「ふん...胸は私の方が大きいね。Cくらいかな?身長は大体160cmくらい...髪が伸びたりはなかったんだねぇ。私の双子って言ってもみんな納得しそうだな...声も更に高くなったか?」
「あの...お姉ちゃん?」
至る所をムニムニされ、さすさすされるこの状況に渚は戸惑いの声をあげる。
「ん?あぁごめんね。それよりも渚、この身体になってから何か気になることはない?」
渚は数秒考え、あっと思い出す。
「起きた時に気づいたんだけど、昨日まであった身体の痛みがなくなったんだ。」
「痛み...というとあの病院に行ったってやつのことかな?」
「うん、それのこと。」
亜紀はしばし考え、それではと話し出す。
「もう一度病院に行った方がいいだろうね。検査の結果を確認した方がいいと思う。何かわかるかもしれないし。」
その言葉を聞いて渚は病院の予約まであと何日か指をおって数え始めた。
その時
「おはよぉ...」
リビングのドアが開き、香織が入ってきた。
「朝から何を騒いでる.....の.....?」
「「「あ....」」」
全員が固まった。
口を半開きにして渚に視線が釘付けになる香織。
「.....」
「....香織?」
すすすすすす....
ガチャン。
リビングのドアが閉まり、香織が退出した。
「(そうよ、これは気のせいよ。渚くんが女の子になっちゃうなんて小説やアニメの世界じゃないんだから。確かに渚くんはかわいいけど、普通にそこらの女の子よりもかわいいけど、でも渚くんは男の子なんだから。まずは背が伸びたことを喜んであげなきゃ!)」
ドア越しに香織の独り言が聞こえてくる。内心は相当葛藤しているようだ。
ガチャ
「おはよう!渚くん!」
「おはよう、香織」
「本物だった」
「ちょっ!香織!?」
その後仰向けにぶっ倒れた香織をなんとか起こし、その後起きてきた達也と皐月も大混乱し、3人に状況を納得させるまでに30分かかった。
「....つまり、身体が女に変化したってことか?」
「うん、そゆこと」
髪の毛の水滴をタオルで拭き取りながら渚はそう答えた。
シャワーを浴びるつもりだったことを思い出した渚は、亜紀と紗良にわかる範囲で説明してもらい、その間に浴びに行った。
脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入る。
え?自分の身体を見なかったのかって?
見ましたとも。
身体を洗うためには、見なきゃいけないじゃないですか。
自分の身体だし、大丈夫でしょ!と思ってそのままシャワーを浴びました。
一人称視点ならなんの問題もなかったよ!
....鏡を見るのは心の中の僕が全力で抵抗したのでやめておきました。
「それにしても、容姿の変化はあまりないんだな」
達也が食パンを頬張りながら喋る。
「まぁね、変わったのなんて身長と胸くらいでしょ。」
渚が髪をタオルで拭きながらそう答える。
「身長が伸びたのに合わせて顔も少し大人っぽくなってるよ。高校1年生の私くらいに」
亜紀が渚の写真をパシャパシャ撮りながらそう答える。
「香織はさ...なんか気づいたことはない?」
渚が自分のことをじっと見つめている香織に問いかける。
しかし、期待していたような答えは帰ってこなかった。
「それにしても.......かわいい」
「は?」
「渚くんがスッッッッッッッっごくかわいい。」
語彙力が旅行を始めた香織。
「いや、元々がすごく可愛かったんだけど、成長するとこうも可愛さが倍増するとはね?多少大人っぽくなったところがまたイイというか...」
ぶつぶつと独り言を呟き始めた香織の額に皐月が容赦なくデコピンを放つ。
バシン!!!!
「っっあだぁぁぁぁぁ!!!痛い“い“い“!!んんおおお“お“お”お“お“お“お“!!!」
女子とは思えない呻き声がリビングに響き、床を香織が転がり始めた。
「はい!渚兄ちゃんがかわいいのはよくわかったから!それよりも今日は出かける用事ができたから早く食べて!!」
「「出かける用事?」」
達也と渚が合わせて声を上げると、皐月が
「だって渚兄ちゃんが女の子になったなら、色々買いに行かなきゃいけないでしょ?服もそうだし下着も...女の子は色々必要なんだから!!」
と言った。
............えーと
「留守番してていい?」
「「「「ダメに決まってるでしょ!!!!!!!」」」」
渚の一言は女性陣から全力で拒否された。
そして今に至る。
「大人っぽい感じになったから、パンツスタイルも似合うと思うけど...」
「こういうスカートも似合いそうだね...」
「試しにこのシャツを着てもらおうか...」
こんな感じで香織と紗良から渡される服を次から次へと着せ替えをしていたため、渚はすでにヘトヘトだった。
店の中の服を全て着せられるんじゃないかと思うほどの量だった。
ちなみに亜紀と皐月は別の店へ服を見繕いに行っているためここにはいない。
達也は最初から来なかった。
購入した洋服の入った紙袋も両手に抱えて店から出たところで渚は一息ついた。
渚は元から女の子寄りの容姿だったが、性別が男だったのと渚が全力で嫌がったので女装させるのを多少は自重してくれていたのだろうか?
そんな気がする。
しかし渚が女の子になった今、彼女らの『おしゃれさせたい!!』という欲が大爆発しているように感じた。
でもこれで終わりだと思うとなんだか達成感を感じる。
「さぁ!次はこのお店を見に行こう!!」
「え、まだ見るの?」
「まだまだだよ!このお店の洋服もすごくかわいいんだよ!!」
そんな香織の言葉を聞いて頬を引き攣らせる渚であった。
「ねぇ、これって絶対やんなきゃダメなの?」
「ダメだよ。ちゃんと測ってもらってサイズが合っているやつを付けないと形が変になっちゃうんだから。」
「そうだよおに...渚お姉ちゃん。これからも成長するかもしれないんだから最初に慣らしておかないと。」
そう言って香織と紗良に引っ張られてきたのはショッピングモール内のとあるお店。
周囲には男性の客なんぞ一人もいない、お客さんは10割が女性のこのお店。
そう、男子だった頃には入るとは思いもしなかったこのお店。
女性用下着売り場である。
視線に映るカラフルな色の下着に囲まれて居心地の悪さを感じていると、香織が店員に声をかけた。
「すみません!採寸をお願いします!」
「はーい!じゃあこちらへどうぞー!」
そう言って店の奥を案内された渚は試着室の中へ入る。
「じゃあ採寸しますんで、上だけ脱いでもらってもいいですか?」
「あ.はい...」
言われるがまま渚はTシャツを脱ぐと、すぐに採寸が始まった。
メジャーで身体をくるくると巻いたり、長さを測ったりした。
自分はBと言われた。何がとは言わないが。
その後、店員さんが持ってきてくれたブラをそのまま渚へ装着し始める。何やら胸の周りをムニュムニュしながら、注意点などを説明してくれた。
こうして採寸が終わり、自分のサイズもわかったところで試着室から出ると、香織たち女性陣が勢揃いで待っていた。
「終わったみたいだね。」
「う、うん...」
「じゃあ、サイズもわかったし色々と探しに行こうか!」
「え!?今いくつか選んだじゃん!?他になんか必要なの!?」
最大の難関を突破したと思っていた渚はまだ試練があることに愕然としていた。
「そりゃそうだよ!普段使い用のおしゃれなやつはいくつか必要だし、寝る時用の楽なやつだとか、女の子の日用のやつとか...」
その言葉を聞いて渚はびくっとした。
言われてみればその通りだ。
今の自分は女子なのだから、絶対に来るはずなのだ。
女の子の日が。
しかもさりげなく「渚ちゃん」に呼び名変わってない?
「安心して、私たちが渚ちゃんに似合うものを選んであげるから!!」
呼び名を気にする暇もなく、渚はまた女性陣に引きずられていった。
渚の目からはすでに光は消えていた。
次回も引き続き、渚の女体化編ですね。
なんか足りないと思いましたらぜひコメント等で教えてください。




