第1回イベント④ー❷
前回のお話に本来付け足そうと思っていたものです。
次回の更新はいつも通りに行います。
【達也/ロイ視点②】
「あなたを狙っているヒト、流石に多すぎじゃなぁい!?」
相手プレイヤーの顔面を拳で押しつぶしながら吹き飛ばすプリティガール。
「“勇者“って二つ名があるせいで変に有名になっちゃったんですよ!」
〔天叢雲剣〕を横薙ぎに振るって相手を両断しながらロイは答えた。
彼女と協力して戦いを始めたその後から次々と相手プレイヤーは姿を現し、ロイに襲いかかってくる。
その敵をひたすらに屠り続けた結果、彼の順位は5位から2位まで上り詰めていた。
「多分アナタに向かうプレイヤーは、“勇者“の認知度だけじゃないと思うのだけれど...」
プリティガールははぁ、とため息をつきながらそう呟いた。
実際、ロイに向かっていく男性プレイヤーは
「毎回毎回女の子侍らせやがって...」
「リア充は死すべし」
「イケメンには制裁を」
という怨念を纏いながら襲いかかってきている。
通常よりも多少なり力が込められている気がするのも気のせいではないだろう。
「〔天誅〕」
手を振り下ろすことで発動する
光属性の上級魔法〔天誅〕は対象の相手のレベルに応じた威力を持つ光の攻撃を放つ魔法である。上級なだけに威力も高く、武器や装備の防御力及び防御系スキルを貫通し対象のHPのみを削るという能力もある。
ロイのその攻撃に晒されたプレイヤーは抵抗できずに光の粒子となって消えていく。
「それにしてもプリティガールさん。相変わらず魔法使わないんですね。」
自分に襲いかかるプレイヤーを対処しながら横目で彼女を見てロイはそう言った。
先ほどから彼女に襲いかかるプレイヤーは、全員身体のどこかを陥没させた状態で光となって消えていっている。
「いやん♡この程度なら使うまでもないだけよん♡スキル自体は取っているわん♡」
地面から腕を引っこ抜きながらそう答える彼女は満面の笑みを浮かべており、その様子を見たロイは額に汗を浮かべる。
まぁこのまま二人で戦闘を続けていればどんどん順位も上がっていくだろうが、ひっきりなしに来られると疲れるからなぁ。
一思いに片付けてしまうのもいいな。
「プリティガールさん!俺が合図したら高くジャンプしてください!」
ロイは敵の短剣を自らの剣で弾きながらそう大声をあげた。
「何よ!大技でもするつもりなのかしらん!!?」
地面を拳で叩き割りながらプリティガールはそう答える。
ちなみに地面を叩き割っているその状況には決してツッコミを入れはしない。
彼女が親指だけを立てて了承のサインをしたのを確認し、敵プレイヤーとの距離をとる。
その場でロイは足を肩幅に広げながら膝を少し曲げ、剣を身体の横に構える。
そしてロイは自身の剣に魔力を込め始める。
「今!」
ロイがそう言った瞬間、プリティガールは高く跳び上がる。
「喰らえ!〔聖月大車輪〕!」
ロイが剣に込めた魔力を解き放つ。そのまま力強く踏み込み、横向きに1回転剣を振り抜いた。
ロイの近くまで迫っていたプレイヤーはロイの剣によって胴から切断され、比較的遠くにいたプレイヤーも剣から放たれた魔力の斬撃によって身体を刻まれる。
剣の衝撃によって地面から砂埃が舞い上がり、全てが収まる頃には周囲にプレイヤーは誰もいなかった。
その後、空中に飛び上がっていたプリティガールが降りてきた。
「あなたもなかなかかっこいい技を使うわねぇ♡」
「まぁ、伊達にこういうゲームやっていないんで」
渚や亜紀さんなら現実でもできるんだろうなぁ...と呟くとプリティガールが口を開く。
「今言ったその子たちもこのゲームやってるのかしらん?」
「えぇ、絶対戦いたくないですよ」
片方すでにランキング1位だしなぁ...と思いながら彼女の言葉を聞く。
「いつか手合わせしたいものねぇ...」
そんな彼女の言葉を聞きながら、ナギたちの状況をロイは考えたのであった。
一方その頃、荒野のフィールドでプレイヤーに囲まれる女の子が二人。
片方は赤と黒の衣装に身を包み、背中には龍の翼を生やした銀の髪の女の子。
もう片方は全身を純黒のスーツのような衣装に身を包み巨大な鎌を構える黒く長い髪の女性。
「こんな感じでお姉ちゃんと共闘するのは初めてじゃない!?」
「そうね!一人残さず消し炭にしてあげましょうね!」
そう言ってナギとアリエルは正面の敵プレイヤーに向かって駆け出すのだった。
次回はようやく主人公視点へと参ります。




