第1回イベント④
短めです。
先に言っておくと、達也は真っ当な人です。
【達也/ロイ視点】
「せあぁ!!」
最後の一人を〔天叢雲剣〕で斬り伏せるとロイはようやく一息つくことができた。
イベントが開始してから次々に襲いかかるプレイヤーを片っ端から斬り続けて結構な時間が過ぎ、現在ロイの周りには誰もいない。
「手応えのあるプレイヤーはあまりいないもんだなぁ...」
ロイはなんとなく不満を感じていた。
自分が半分も力を出さないうちに相手は光になって消えているので、先ほどからずうっと不完全燃焼なのだ。
思えば、最後にそこそこ力を出して戦ったのはナギとPvPをした時だったな。
ナギはどうしているのだろうか。
上位10人くらいには入ってそうだな。
指をスライドさせ、画面を操作して確認する。
ナギの名前を探すと...
「8位か....」
ナギの名前が上から8番目に表示されていた。
10位まで見たかぎり、ナギ以外の全員がβテスターのプレイヤーだった。
これはナギにも二つ名がつきそうだ。
公式でアリエルさんは“死神“、フレイヤは“巫女“、そして自分が“勇者“だ。
なんと恥ずかしい二つ名をつけてくれたんだ運営は!!?
自分の装備のせいでもあるんだろうが、いくらなんでも“勇者“って...
厨二病だと思われても仕方がない。
現に他のプレイヤーからは名前を呼ばれるときに、若干ニヤニヤして呼ばれる。
あんな辱めはもうたくさんだ。
今回のイベントでナギにはなんとしてでも二つ名を勝ち取ってもらわなくては!!!
そう意気込んだところでロイに声がかけられる。
「見つけたわよぉ、ロイくぅん♡」
その瞬間、ロイは固まった。
この聴き慣れた声は....
ロイはギギギと音が鳴るように後ろを向いた。
そこにはなんと、ビキニを着た身長2メートル超え、筋肉モリモリのガチムチなおっさんがボディビルのポーズを取っていた。
「ぷ、プリティガールさん....」
思わず顔が引き攣ってしまうロイ。
そんなロイを見ながら彼女は唇に人さし指を当て、首を傾げながら、腰をくねくねさせて近づいてくる。
「こおんなところで会えるなんてぇん♡運命としか思えないわぁん!!さぁ!あたしと一緒に近くの男どもを漁りにいきましょう♡」
ばちん!!と音を鳴らしてウィンクをする彼女にロックオンされたロイは即座に反対方向に足を踏み出すが、その瞬間に目の前に回り込まれた。
そのまま肩に担がれ、ロイは彼女に運ばれていく。
「プリティガールさん、俺は男には興味ないんですが...!」
ロイは必死にもがきながら拘束から抜け出そうとするが、身体能力だけでは彼女の腕力には勝てない。
「いやぁねぇ♡あなたは興味なくてもあたしたちは興味あるのよん!あたし率いる
『聖・漢の娘快楽協会』にはね!」
あなたもいつかは漢の娘に目覚めるわよん♡と言いながら歩き続ける彼女。
そんなことにはなりたくないと心底思うロイであった。
そんな彼女とは実は古い付き合いなのである。
はじめて彼女と会ったのは他のオンラインゲームでの格闘闘技場だった。
パッツパツなマイクロビキニ姿で対戦相手の顔面にひたすら拳を叩き込む彼女を見て、ロイは心底恐怖した。もう色々な意味で。
見た目が強烈すぎて関わるのをやめようと思ったが、ふとこちらに視線を向けた彼女にロックオンされてしまい猛烈なアタックを食らった。
そして今の関係に至る。
「そんなことよりぃん♡!大事な話よ。」
急に真面目な顔をしてロイに語りかけた彼女にロイも真面目な顔になる。
「この『Liberal Online』なんだけど...どうもおかしいのよ」
「おかしい?」
突然語られたおかしいという発言に疑問を抱き、ロイは怪訝な顔をする。
プリティガールはそのまま語り始める。
「あたしの方でもこのゲームのことを調べてみたけれど...正直な話、何もわからなかったのよ」
「何も...というのは?」
「もちろん、何もかもよ。制作会社も不明なのよ。突然世間で有名になったのに話題に上がるのは技術面のことばっかりで製作者のことは全く出てこない。」
インターネットで検索をかけると公式のHPは見つかるが、その中身は全てゲームの紹介だ。
それ以外の情報は全く出てこない。
「それと同時に、現実で一部の人による動きがあったのよ。今回のイベントで上位に入った人に対しても多少接触はあると思うわ。」
あたしが掴んだのはこんなところかしらね、と言って会話を終えた彼女は大きく伸びをした。ピチピチのビキニがさらに引っ張られ大事なところが強調されている。
「あぁ、ありがとう。もう少し気をつけるか...」
そう言ってロイは剣を抜き、後ろにナイフを持って忍び寄っていたプレイヤーを切り捨てた。
「おぉん!!かっこいいわぁぁん♡あんなこと話したけど、せっかくのイベントも参加しなくちゃね!!」
プリティガールはそう言って腕にガントレットを装着すると、両手の拳を合わせガキンッと音を鳴らす。
「ふんぬぁ!!!」
そしてすぐ近くにいたプレイヤーの顔面に拳をお見舞いし、勢いよく回転したそのプレイヤーはそのまま光となって消えていった。
「相変わらずの剛腕だなぁ...」
「あらやだ!こんないたいけな少女に向かって剛腕だなんてぇん♡ぶっ飛ばすわよぉん!!」
拳を振り回しながらそういう彼女は全く少女には見えない。
その間にも他のプレイヤーと斬り伏せながら移動するロイ。
立ち止まると、その後ろにはプリティガールが背中合わせで立っていた。
「ここはちょっと協力しておきましょうか♡」
「まぁ、しょうがないな。」
そう言って構えた二人。
「「早くこの場所を切り抜けようか!」」
そう言って駆け出す二人はとても息が合っており、周囲からは変な誤解を受けるのはまた別の話である。
BL展開はありません。
楽しみにされていた方いらっしゃいましたら、申し訳ないです。