第1回イベント③
先週は更新できなくてすみませんでした!
今度はお休みしないよう頑張ります!
暖かく見守ってくれたら嬉しいです...!
【香織/フレイヤ視点】
「....3位か」
フレイヤは砂漠のエリアで画面を開きながら呟いた。
フレイヤが見ている画面にはイベント中のプレイヤーの暫定順位である。
イベント開催中、自身の順位と倒したプレイヤーの数、そして上位10人の名前をランキングで確認できるようになっている。
あと何人倒せば10位以内に入る、という考えをなくすために上位10人の倒したプレイヤー数は表示されない。
フレイヤの順位は現在3位、十分好成績なのでこのまま維持していたいところだ。
しかし、ここから戦いはどんどん激化していくだろう。フレイヤも本腰を入れて挑まないとあっという間にランキングから外れてしまう。
そういえば...
「ナギくんいなかったな...」
こういうVRゲームが主軸の小説なら、ゲーム初心者の子がとんでもない育成をして名を知られるものだと思っていたんだけど...
ラノベの読みすぎかな、そんな小説みたいなことは滅多にないか。
「どこ見てんだオラァ!!」
「ちょっとうるさいです」
そんなこと考えている間にも襲いかかってくるプレイヤーを手元の刀で片手間に細切れにしていく。
これでまた一つ、勝ち星が増えた。
しかし、少しペースが遅いか。
ここもプレイヤーの数が減ってきたし、移動してみよう。
「〔焔纏い〕そして」
念のため、フレイヤは二つのスキルを発動させた。
〔焔纏い〕とは自身の身体に火の粉を纏うことで火属性魔法の攻撃力上昇に加え、他属性の攻撃魔法のダメージ減少という効果を持っている。
さぁ、行こう。
そしてフレイヤは移動を始めた。
目に入ったプレイヤーを次々と薙ぎ倒しながら。
フレイヤは移動先を決めていたわけではない。目についた相手を倒しながら移動していれば気づいた時にはだいぶ移動しているだろうと考えていただけだ。
目の前に飛び出してきたプレイヤーの首を横薙ぎに振るった刀で跳ね飛ばす。
その後も次々に遭遇するプレイヤーを片っ端から斬り刻む。
そのままフレイヤはしばらく刀を振るいながら移動を続けた。
「ふっ」
寄ってきていたプレイヤーの最後の一人の首を斬り飛ばしたところでフレイヤは周囲を確認する。
「あれ?ここは...?」
フレイヤが気がついた時には場所は大幅に移動しており、海辺のエリアまで来ていた。
砂漠エリアから海辺エリアまでは割と距離があるのだが...
私はどんだけ集中していたのか。というよりプレイヤーにばかり目がいっていたせいで周りの景色を全く見ていなかったことに呆れる。
フレイヤははぁ…と息を吐くと刀を鞘へ収めた。
「随分とおとなしいじゃねぇか。」
「ん?」
聞き覚えのある男性の声が聞こえ顔をそちらに向けると、大柄の蒼い鎧の男がこちらに歩いてくるのが見えた。
「久しぶりだなァ、“巫女“のフレイヤ」
「“蒼剣“のグレイル...」
彼とはβテスト時代に会ったことはあるが、実際に戦ったことはない。
というか彼は、自身の身も心もをメッタメタのギッチョンギチョンにした“死神“のアリエルさんに執着していたため、こちらと戦うことはなかったのだ。
彼曰く、「格下は興味がねぇ」らしい。
「どうしたのグレイル。あなたがそんなに傷だらけになるなんて。誰と戦ったの?」
グレイルをこんなに傷だらけにできるなんてよほど強いプレイヤーだったのだろうか。少し興味が湧いた。
グレイルは自身の傷を見ながらあぁ、と呟くと。
「シルっつう魔法使いと一戦やったんだ。最後に上級魔法を喰らってな。まぁ倒したが。」
「・・・・・ほう?」
そうか、シルはもうやられてしまったのか。
フレイヤは俯きながら無言で刀を抜き、刀身を剥き出しにする。
「ん?」
フレイヤの雰囲気が殺伐としたものに変わったことを察知し、グレイルも背中の大剣を構えた。
「なんだ?シルっつうのはお前の知り合いか?」
グレイルは面白そうにフレイヤに問いかける。
「うん、リアルでの幼馴染でね。だから敵討ちをさせてもらおうかな。」
フレイヤは抜いた刀を片手に持ち、顔を上げた。
その時のフレイヤの顔は背筋が凍りそうなほど黒い笑顔だった。
グレイルもその顔を見て背筋がゾクゾクしたが、
「俺はアリエルの野郎と戦わなきゃいけねぇからな、こんなとこで死に晒すわけにはいかねぇんだよ!」
そう言ってグレイルは水属性魔法〔水膜〕を発動させた。
この〔水膜〕という魔法は発動中、水属性魔法の攻撃力上昇に加え他属性魔法のダメージ減少という効果を持っている。
〔焔纏い〕の水属性バージョンというわけだ。
火属性魔法を主に使用するフレイヤにとっては少々相性が悪い。
しかし、フレイヤも負けていない。
フレイヤも火属性魔法〔燐火〕を発動させ、自身のまわりに無数の火の玉を出現させる。
このスキルは自身の周囲を飛び回る火の玉がフレイヤの攻撃に合わせて自動で火属性魔法の追撃を行うスキルだ。
「お前もそこそこ有名なプレイヤーだからな。ここで俺の踏み台となってくれ。」
そういうとグレイルは足を踏み込んでフレイヤに迫り、大剣を振りかぶる。
そのまま勢いよく振り下ろした。
ガキン!!
「ほぉ」
フレイヤが刀で大剣を受け止めるとグレイルは声を漏らした。
フレイヤはそのまま刀で大剣を弾くと、グレイルの左下から斜めに斬り上げた。
グレイルも咄嗟に距離を取り、刀を回避する。そのままフレイヤに手をかざすと、無数の〔水槍〕をフレイヤへ放つ。
フレイヤも構えた刀で水槍を全て弾き、負けじと魔法を発動する。
「〔爆炎〕!」
着弾箇所で爆発する火属性魔法である〔爆炎〕を複数生み出し、グレイルの足元へ放った。
地面へと着弾したそれは砂を巻き込んで爆発し、砂煙を辺りに撒き散らす。
「うわ...ゴホ、ゲホ..。」
グレイルは手をパタパタさせて目の前の砂埃を吹き飛ばそうとする。
その隙にグレイルへと迫ったフレイヤ。
目の前までくるとフレイヤは身体を回転させ勢いをつけながらグレイルに刀を横薙ぎに振り抜く。
「おっと!!」
グレイルは地面に大剣突き立てフレイヤの刀を防ぎ、跳躍することでフレイヤと距離をとる。
「ちっ!」
フレイヤはその回転のままグレイルに炎の斬撃を放つ。
グレイルは空中で体制を整えると、自らも水の斬撃を放つことで飛んでくる斬撃を相殺する。
グレイルが地面に降り立つと、斬撃は数を増やしてグレイルへと襲いかかる。
斬撃の処理にグレイルが手間取っているその間に、フレイヤはグレイルとの距離を詰める。
フレイヤが振り下ろした刀はグレイルの大剣に止められ、火花を散らした。
そこからは二人の激しい打ち合いが始まった。
一見、フレイヤの攻撃を全て捌いているようにも見えるグレイルだったが、背丈ほどもあり金属部分の幅も大きい大剣と、斬ることに特化した刀では扱いやすさが段違いである。
つまり、グレイルには傷がどんどん増えてきていた。
「これは早々に決着をつけた方が良さそうだな...」
自らの傷だらけになった身体を見ながらそう考えたグレイルは上級魔法の準備を始める。
幸いここは海辺のフィールド、この魔法を使うにはベストな場所だ。
「残念だがこれで終わりにさせてもらうぜ!!」
グレイルはフレイヤを大きく弾くと、スキルを唱えた。
「〔大津波〕!!」
唱えた途端、地面がゴゴゴゴ...と鳴り出し、揺れ始める。
「...?」
フレイヤは周囲を見渡し、海の方を向いた時に音の正体を見つけた。
海から山をも越すほどの大きな津波が陸に向かって押し寄せている。陸にたどり着くのは10秒後くらいだろう。
「これは俺が今使える最上級の水属性魔法だ!あれから逃げるのは不可能だぜ!なぜなら〔大津波〕は攻撃対象が移動すればするほど幅を広げていくからな!」
フレイヤはなるほどと相槌を打った。つまりこの場所から移動しない方が他のプレイヤーを巻き添えにしなくて済む、ということか。
イベント上位を狙っている身にとって、グレイルにプレイヤーを根こそぎ奪われるのは避けたい。
つまり、この場所から動かずにあの攻撃から生き残ればいいわけだ。
「なんだ、簡単なことだね」
「はぁ?」
フレイヤは刀を納めると、抜刀の構えをとった。
頭の中を空っぽにし、精神力を高める。
津波をもうすぐそこだ。
「ははは!!!これで終わりだぁ!!」
喜ぶグレイルのすぐそばで、フレイヤか閉じていた目をスッと開ける。
「〔刀〕スキル 奥義“魔閃“...“雫絶“」
フレイヤが抜刀し下から切り上げると、その先にある津波が瞬く間に両断され、勢いを失って霧散した。
「...はっ!?」
グレイルは現実を受け止めきれず、狼狽える。
フレイヤが使ったスキルは、〔刀〕スキルのレベルを最高ランクまで上げた時に獲得できる奥義“魔閃“である。
これは単純に「なんでも斬る」のである。
発動条件は、斬る対象のものを視認してから3秒間の間、抜刀の構えをすること。
斬る対象のものによって名前が変わる。今回は水だったため水を斬る用のものだったが、もし技の選択を間違えた場合、やり直しになってしまうのだ。
「残念だったわね。」
フレイヤは納刀しながらグレイルに話しかけた。
放心していたグレイルだったが、すぐに気を取り直し大剣を構えた。
「せっかくだし私も魔法を撃たせてもらうわね。」
フレイヤが話しかけるとグレイルがニヤリと笑う。
「好きにしろ、どうせお前の魔法もシルが使ってた火属性の上級魔法〔大噴火〕だろう。あれじゃあ俺は倒せないからな」
フレイヤの悪戯っぽい微笑みにグレイルも自信に満ち溢れた笑みで返した。
火属性の魔法は水属性主体の自分には効果が薄いことはよくわかっている。だから今回も大丈夫だ。
グレイルはこの時、そう思っていた。
「そう?じゃあ遠慮なく」
そう言ってフレイヤは右手をグレイルへとかざす。
そして唱えた。
「火属性極大魔法...〔紅炎爆発〕」
フレイヤの手から尋常じゃないほどの熱を放つ炎が飛び出し、グレイルへと着弾した。
その瞬間、空間を揺らすほどの爆発音が全フィールドに響き渡り、数秒後に熱風が全フィールドを埋め尽くした。
震源地だった海辺のフィールドは...大きなクレーターが出来上がり、干上がった海水が所々に水溜りを作っている。
グレイルは、いうまでもないだろう。
瞬時に蒸発した。
クレーターのど真ん中の立ちながら、フレイヤは考える。
「....絶対にやりすぎた。」
極大魔法は流石に使うべきじゃなかったなぁ...と頭を抱えるのであった。
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