診察と襲来
前半は病院に行ってます。
後半は・・・まぁ日常です。
ゲームはしてないです。
「鈴木さ〜ん、診察室へどうぞ〜」
看護師さんに呼ばれた男性がてくてく歩いているのを見ながら、渚は自分の名前が呼ばれるのを待っていた。
ここは駅の近くにある病院。
身体の痛みが長く続いていたので、原因を知りたくて診察に来た。
今まで病院にかかったことがなかったため、今回はじめましてなのである。
一応言っておくと、幼いときの予防接種の時に病院に来たことはあるけど自分の体調不良で来たことはないってことね。
だから朝食の時にあそこまで騒がれたわけなのだが。
受付で保険証を渡した時、看護師のお姉さんが「男...?」と訝しんでいたが、気にせずそのままにしてもらった。
次々に人が呼ばれていく中、渚は待合室に備え付けのテレビで流れているニュースをぼんやりと眺めていた。
病院内だからかテレビの音声はなく、字幕が表示されている。
周囲に騒ぐ人はおらず、小さい子が母親に話しかける声が響いている。
次々に待合室に呼ばれていく中、渚は30分ほど座って待っていた。
「久里山さ〜ん、3番の診察室へどうぞ〜」
名前を呼ばれた渚は立ち上がると、そそくさと待合室へ歩を進めた。
扉を開けるとそこには白衣のお医者さん。
女性の方だった。
「本日はどうされましたか?」
女医さんは笑顔で症状を尋ねた。
「えっと、少し前から、全身が痛くて...」
「全身が痛みますか、どんな感じに痛みますか?」
どんな感じか...
「えーっと、なんて表現したらいいかな...なんだか全身をギュッと押し込められてるみたいに痛むんです。でも逆に全身から体の中身が飛び出してくるような感じもあります。」
症状?を聞いた女医さんは顎に手をやって唸りはじめた。
やはりよくわからなかったようだ。
まぁしょうがないと思う。こんな表現じゃあ僕だってわからない。
「それじゃあ色々検査して見ましょうか。」
その後、色々な検査をした。
X線にMRI検査、CT検査、エコー検査も血液検査もやった。
慣れないことをやったので結構疲れてしまった。
「はい、お疲れ様でした。」
看護師さんが僕の荷物を預かってくれていたので、その荷物を受け取る。
全部の結果がわかるまでに少々時間がかかるみたいだ。
「2週間後に結果がわかりますのでお待ちください。」
2週間後に受診の予約を取り、診察は終わった。
処方箋を持って薬局に行き、数分待つと薬が処方された。
痛み止め14日分、朝と夜に1錠ずつの服用とのこと。
薬を受け取った渚は、寄り道せずに自宅へと歩いて帰っていった。
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「で、どうだったんだ?」
昼ごはんを作る渚に対して達也はソファに座りながらそう聞いてきた。
昼ごはんのラーメンの麺を茹でるためのお湯を沸かしつつ、チャーハンの具材の焼豚を刻む渚はふと顔を上げた。
「うーん、まだ原因はわからないらしくて。色々と検査したから2週間後にもう一度病院に行かなきゃいけないんだ。」
あの検査で痛みの原因がわかるのかどうかは知らないが、重い病気でなければ問題ないと思っている。
日常生活には支障がないから、結果を気長に待っていよう。
「そっかぁ、じゃあ結果が出るまではまだ安心できないね。」
紗良が渚の横で食器を片付けながらそういうと、その横で香織も頷いている。
続いて紗良が言った。
「お母さんたちとお姉ちゃんに連絡したら、すぐに帰ってくるって言ってたよ!」
「んん?!!ゲホッ...ゴホ..」
フライパンに油をひき温めている側でグラスから麦茶を飲んでいた渚は、驚きによって水分が変なところに入ってしまい途端に咳き込んだ。
「..ホントに?」
「ホントに。」
口を布巾で拭いながら渚は紗良に尋ねると紗良はこくんと頷きながら答えた。
一人暮らししてる姉はわかるとして、海外出張している両親が帰ってくるのは簡単じゃない。
飛行機のチケットもこの時期はあまり取れないだろうから。
しかしその件は解決済みらしい。
「もう飛行機のチケット取ったって言ってた。1週間以内に日本に来れるらしいよ?お姉ちゃんは明日中にはうち来るって言ってた。」
そう言った直後、リビングに玄関を開ける音が鳴り響いた。そして、
「なぎさぁぁぁぁあああ!!!無事ですかぁぁぁぁあああああ!!!?」
リビングのドアを開けて駆け込んできた女性。
その女性はそのまま台所に立つ渚に勢いよく抱きついた。
「ぐえっ」
急に抱きしめられ、顔を女性の胸元に埋める渚は息が強制的に止められる。
そんなことには気がつかないこの女性は怒涛の勢いで話し出す。
「病院に行ったなんて聞いたけど大丈夫!?私の知り合いの病院に詳しく検査してくれるところがあるから今すぐいきましょう!いや、それよりもベットで安静にしていた方がいい?とりあえず...」
「おかえりお姉ちゃん。とりあえずお兄ちゃん窒息しそうだから離してあげて。」
紗良が耐えかねてその女性もとい久里山家の長女である亜紀にそう言った。
「え?...あぁぁ!」
亜紀は慌てて渚を放し、渚はようやく息を吸うことができた.
「ごめんね!大丈夫!?」
「うん、なんとか....」
「亜紀さん、こっちくるの早かったですね?」
香織が亜紀に向かってそう尋ねた。
確かに、渚が朝食の時間に病院に行くと言ってからまだ3時間くらいしかたっていない。
「うん、あの渚が病気だなんて一大事だからね。いてもたってもいられなくて!」
亜紀は冷蔵庫からお茶を取りだし、グラスへ注ぎながら香織の質問に答える。
なんだか申し訳ないなぁ。
この痛みもすぐに収まってくれれば余計な心配かけずに済んだのに。
「何にもないといいなぁ。」
炒飯を炒めるフライパンを振りながら、渚の胸中には不安が残るばかりだった。
どうやら亜紀はもともと夏季休暇中にこっちに戻ってくる予定だったらしく、荷物もあらかじめ準備していたらしい。
夏季休暇の前半でやるべきことを終えた後にゆっくりするつもりだったそうだ。
そこに渚の体調不良の連絡が来たため、速攻でこちらにくることになったとのこと。
前半にやる予定だった課題はノートパソコンがあれば問題ないし、研究室の会議もテレビ通話のアプリを用いればここで済ませられるらしいので問題ないらしい。
自分が家にいるのだから、結果が出るまでは渚は休んでなさいという言葉に素直に甘えることにする。
それはまぁいいとして...
「お、お姉ちゃん...?これは一体...?」
渚は今自分が置かれているこの状況に困惑していた。
「久しぶりの渚成分を補給しなきゃ。」
あ、もちろんあとで紗良もね!と亜紀はサムズアップした。
休めと言われていたからソファに座ってぼんやりテレビを見ていたのだが、亜紀はそんな渚の両脇に手をやり持ち上げ自らの膝の上に乗せた。
つまり渚は今、ソファに座る亜紀の膝の上にいる。
座った状態で背中からひしと抱きしめられ、動くことができない状況になっている。
そんな渚の背中に顔をぐりぐりと押し付ける亜紀は安心したようにふぅと息をはいている。
「最近は本当に癒しが足りなくてね、この癒しを楽しみにしていたんだ。」
そう言いながら亜紀は渚の頭をなでなでし始めた。
「最近、道場の方はどう?」
亜紀は渚の格闘技の実力を十分に知っているので、近況について尋ねた。
「うん。免許皆伝をもらってからは指導する側にまわってる。」
「さすがだね!これから私とも手合わせしようか!」
実は亜紀、渚の通う道場を一足先に卒業している。渚にとっての先輩とも言えるのだ。
免許皆伝とまではいかないものの、卒業前の段階では渚は手も足も出ないほどであった。
久方ぶりの手合わせに渚も胸を踊らせる。
「うん、久しぶりにお姉ちゃんに相手してもらおうかな。」
渚の返事に亜紀は満足げに頷いた。
「よし!そうと決まれば行くぞ!」
そういうと亜紀は自宅内の武道場に向けて歩き出し、渚もそのあとをついていく。
その光景を見ていた紗良たち4人は全員同じことを考えていた。
(いや、休ませるんじゃなかったのか....)
しかし、二人の手合わせが気になるのもまた事実。
4人は二人の戦いを見にいくのだった。
変なところがありましたらご指摘いただけると幸いです。
次回、リアルでのPvPになります。




