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森の主への挑戦⑤

ボスとの戦闘、最終話です。


話が今までより結構長くなってしまいました。


お楽しみ頂けると幸いです。






次々に飛びかかってくる赤熊を空中でかわしながらナギは赤熊の首を次々と斬り飛ばす。



遠くの赤熊は“氷霜“のブレスによって空中で凍らせ、動かなくなった状態で踏みつけることで地面へと叩き落とす。



地面に落ちた赤熊は身体が粉々に崩れ、光の粒子となって消えていく。



そうすると討伐分の経験値とお金がナギの元に入ってきた。



どうやらボス熊が生み出した赤熊はちゃんとモンスター判定されているようだ。




しかし、今はそんなことを気にしてる場合ではない。



立て続けに襲いかかる赤熊を対処しながら、ボス熊の攻撃も避けなきゃいけないのだ。



赤熊は正直大した脅威ではないが、数が尋常じゃない。



振われる赤熊の爪を片方の剣で受け止め、もう片方の剣で胴体を両断する。



次の瞬間にはもう一体の赤熊が大きな口を開けて噛み付いてくる。


「いっ!!!!はなせ!!」



腕に牙が食い込む痛みに歯を食いしばり、その赤熊の顔面に剣を突き立てることで口を開けさせ、離れたナギはその赤熊を頭の上から剣を振り下ろす。


縦に両断された赤熊は左右に分かれて落ちていく。



次々に襲いかかってくる赤熊を斬り続けているうちに耐久力が切れたのか、両手の剣は光となって消えてしまった。



しかし赤熊はこっちの事情なんてお構いなしで襲いかかってくる。


振り下ろされる腕を掴み、地面に向けて投げつける。地面に向かって落ちていく赤熊に向かって〔龍魔法〕“炎“のブレスを放ち、消し炭にする。



しかしナギ目掛けて飛んでくる赤熊はその勢いが止まることはない。


振われる爪をかわしつつこちらの爪で脳天を貫く。


振り下ろされる腕を爪で斬り裂く。


赤熊の首を両手で掴み、勢いよく捻って千切る。


赤熊の腹部を殴り、拳を貫通させる。


高火力の“炎“を放ち、全身を焦がす。




ここまでずっと赤熊に集中していたから、意識外の攻撃に咄嗟に反応できなかったのだろう。



大きな岩がナギに向かって飛んできていた。


反応が遅れ、拳より大きめの石がナギの身体を打ち付ける。いくら防御力が高いとはいえ、ダメージを受けないわけではないのだ。ナギの体力は目に見えて減っていく。


「痛っったいなぁ!!うっとおしい!!」


次々に飛んでくる小岩に多少のHPを減らされるが、次の瞬間には全て蹴りで砕け散った。



そして最後にはナギの身体の数倍はある大きさの岩がナギに迫っていた。



ナギは拳に力を込めると、目の前に迫る大岩を砕かんと拳を振りかぶった。



しかし拳が岩に触れる直前、目の前の大岩が突如として砕け散り、気づいた時には大きな腕が目の前に迫っていた。


ボス熊は正面からの攻撃はかわされることを学び、岩の影になって見えない位置から攻撃を繰り出してきたのだ。



ボス熊の巨大な腕が振われ、ナギは周囲の赤熊もろとも地面へ叩き落とされる。



地面に背中をつくと間髪入れずに地面から土杭が飛び出し、ナギの身体を傷つける。



「がはっ.....はっ...はっ..まずいな....」



全身に響く痛みにナギは声を発するのも辛くなってきた。



周囲の赤熊はナギが6割ほど倒していたが、ボス熊の攻撃によって今や残り数体である。



回復薬はもう残っていない。今までの戦いで全て使い尽くしてしまった。



HPも残り2割といったところだ。MPはスキル〔MP回復強化〕によって早く回復するためまだ多少の余裕はあるが、ボス熊を倒すには至らないだろう。



頑張ったが、ここまでか。



仰向けの状態から膝立ちになり、隣で瀕死になっている赤熊に爪でとどめをさしておいた。








ーーーーーーーピコン



突如脳内に鳴り響いたレベルアップのアナウンス。


こんなピンチの時にも淡々と流れやがって、とナギはどうしようもない文句を零した。



そんな時にアナウンスされたある情報がナギに一握りの希望を持たせた。



「そうか....まだ....こんなスキルが残ってたか........」



ゲーム開始の最初らへんに多少触れただけだったもの。



まだまだ先の話だと思って特に気にしていなかったけど、もう自分はその域に達したのか。



しかし、これを使っても倒せるかどうかはわからない。



だからどうした!!!!?



もともと勝てるかわからなかった戦いだ!!せいぜい最後まで足掻いてやる!!!!



MPは十分足りる。これが僕の悪あがきだ!!!!



「....〔龍化〕!」



そのスキルを唱えるとナギの全身は白銀色の光に包まれ、変化を始める。



身体がメキメキと音を立てて大きくなっていき、腕や脚、胴体に首など全身が硬い銀色の鱗に覆われる。


身体が成長するにつれ尻尾も伸びてきた。表面は銀色の鱗に覆われる


頭も龍の形に変わっていき、角も徐々に姿を見せる。


牙も徐々に生えていき、鋭く尖った牙が生えそろっていた。



翼も音を立てて大きくなっていき、最終的に龍の身体の2倍もの大きさへと成長した。



最後に目を開けるとその瞳孔は金色へと色を変え、光を反射し輝いている。



最後に空に向かって大きく顎を開き、雄叫びを上げた。




「ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア!!!!!!」




空気が震えるほどの声量で自らの誕生を示す白銀の龍にボス熊は唸り声をあげる。



龍となったナギの体長はボス熊の全長の半分ほどの大きさとなっていた。



ナギは大きな翼を羽ばたかせ空へと飛び立つ。


「(制限時間は20分、この姿の間はステータスが爆上がり中だからこの時間で必ず仕留める!!!!)」



ナギはそう決意すると、顎をガパッと大きく開き、ボス熊に向けて〔龍魔法〕“炎“を放つ。




突如大きなブレスが目の前に現れたボス熊はなす術なく炎に全身を包まれる。



「!?グオォォォォ!!!!?」


全身の肉が焼ける痛みに声をあげるボス熊、刺激臭が周囲へと撒き散らされる。



そんなボス熊へナギは飛びかかり、ボス熊の顔面を渾身の力で殴り飛ばす。



ボス熊は数十メートルほど飛ばされ、仰向けに倒れる。すぐに立ち上がろうとするが飛びかかってきたナギに阻止された。


ボス熊の腹の上に乗ったナギは、龍化したことによってとても逞しくなった腕でボス熊の腕を押さえつけて地面へと固定した。


そのままボス熊の首に勢いよく牙を突き立てた。



ボス熊の毛皮は結構硬かったはずだが、今ナギがとても柔らかく感じているこの歯応えは間違いなくボス熊の首だ。


皮をブチブチと引きちぎり、ブニュッとした生肉の柔らかい食感。



噛み付いたことでナギの口にはボス熊の血液が流れ出る。どろっとした感触が舌を伝い、鉄錆の臭いが口から鼻の奥へと突き抜ける。


ボス熊は首元に走る痛みの原因を取り除こうと首元に張り付くナギに腕で攻撃しようとするが、腹の上のナギが腕を押さえつけているため動くことができない。



ナギはボス熊の首に噛み付いた状態のまま首を大きく動かし、ボス熊の首を噛みちぎった。


血がシャワーのように吹き出し、ボス熊の動きが見るからに弱くなった。


しかし相変わらず力は格上のため、ナギは固定していた腕を解かれ逆に掴まれると遠くへと投げられた。



空中でうまく体勢を立て直したナギは、相手の残りHPを確認した。



残り6割といったところか。首元を噛みちぎったので血が流れ続けており、そのHPも徐々に減っていく。



ボス熊はナギを視界に収めると地面から掬い上げるように多くの岩を放ってきた。


身体が大きくなったため小さめの岩は回避することが叶わなかった。しかしこれぐらいでは全く減少しないナギのHPだが、本人は大きめの岩の対応で手一杯のため気が付かない。


一通りの岩を〔龍魔法〕“旋風“で消しとばし、処理仕切れなかった分は手で払って破壊した。


そしてそのまま“旋風“をボス熊へと放ち続けながら周囲を飛び回る。



そうしているとナギの正面にボス熊が飛び上がり、爪を振り下ろす。ナギは慌てて両手でガードするが力ではまだ敵わず、両腕の鱗に傷がつき地面に叩きつけられた。


地面に横たわるナギの上に降り立とうとするボス熊だが、ナギは即座に立ち上がりその場を避ける。そしてボス熊の着地とタイミングを合わせて渾身の拳をお見舞いした。


ボス熊の下顎に拳がめり込み、ズザザザと後方へと後ずさるが倒れることはなかった。



しかしナギの攻撃は一発では終わらない。


再度空中へと飛び上がると、ボス熊を目掛けて勢いをつけて突進した。

ボス熊が地面へと倒れたことを確認すると再度飛び立ち、空中で“雷槌“のブレスをボス熊へと放つ。


立ち上がりかけていたボス熊はナギのブレスが直撃し地面へ再度倒される。そしてそのまま立ち上がれないようにナギのブレスはボス熊の頭へと直撃する。


そしてまたナギは空中を旋回して勢いを付け、ボス熊の顔面へダイブする。



そして再度距離を取ろうと翼を羽ばたかせた。



その瞬間、ボス熊はナギの翼を掴むとそのままナギを地面へと引きずり倒す。

地面へと倒されたナギの背中へ片足を乗せると、雄叫びを上げながら片方の翼を引きちぎった。


「!!!!グガァァァァッッ!!!!!!(痛あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“!!!!!!)」


翼を千切られたことで血が噴水のように吹き出し、痛みに雄叫びと心の叫びをあげるナギは自分の上に片足を乗せるボス熊の脚を尻尾で払った。


バランスを崩して倒れ、ボス熊が自分の上から退くとナギはすぐさまその場を離れる。



この姿でいる間はもう飛べないな。


この後は接近されやすくなるから注意しなければ。



そう考えているとボス熊は地面を踏み鳴らし土杭を地面から突き出す。



ナギはそれを尻尾を振り回すことで破壊する。


そして勢いよく跳躍するとボス熊の顔面の至近距離から“炎“を放ちボス熊の顔を焼く。そのまま飛びかかりボス熊の顔面を殴り飛ばす。


倒れたボス熊の腕へ喰らいつき、勢いをつけて食いちぎる。


痛みに声をあげるが、その間にもナギは自慢の爪や牙でボス熊のHPを削っていく。


ボス熊からも岩や爪での攻撃が続き、ナギのHPが徐々に削られていく。



そんな怪獣大戦争のような状況がしばらく続いた。





************************************************************************************



.....残り時間はあと2分。



ボス熊の残りHPは1割を切っている。



ナギとボス熊はお互いに満身創痍だ。


ボス熊は片腕がちぎれ、脚は切り傷まみれ。顔は焦げ跡と切り傷で溢れている。


対するナギは片方の翼はなくなり、片腕はあらぬ方向に曲がっており全身の至る所の鱗が割れている。



ボス熊が腕を振り下ろすとナギは後方へと退避する。


ボス熊がそのまま地面へと腕を振り下ろすと地面からいくつもの土杭が飛び出し、ナギの割れた鱗の上から肉を突き刺した。


「ッッグゥッッ!!!」


肉を刺す痛みに思わず声をあげるナギだったが、即座に“旋風“を口から放ち土杭を壊す。


そしてそのままブレスをボス熊へと向け、ボス熊周辺の地面をあらかた吹き飛ばし土杭を破壊する。



砂塵が舞い、ボス熊からナギのことが認識できなくなるとナギは勢いよく踏み出しボス熊へと接近する。



砂埃を掻き分けてナギがボス熊の目の前に現した時、ボス熊は腕を横なぎに振るったところだった。その腕は真っ直ぐにナギの横っ面に吸い込まれていった。



頬に走る鈍い痛みに負けずナギはボス熊へとさらに接近し、ボス熊の腹部へ爪を鋭く尖らせた腕を突き出した。



ブチブチと肉を貫く感触を腕に感じ顔をあげると、口から血を吐き出すボス熊と目があった。


ボス熊はHPが大幅に減少し最後まで削り切るかと思ったが、ギリギリのところで耐えた。

後一発何かしら衝撃を加えればすぐに倒すことができるだろう。



しかし耐えられてしまったのだ。ギリギリで削り切ることができなかった。


ボス熊は再度腕を振るい、ナギを吹っ飛ばした。


腕の攻撃をもろにくらったナギはゴロゴロと転がり、地面に引き摺られたような跡を残して止まった。


そして全身を光が覆い、光が収まったときには人型のナギが仰向けに横たわっていた。



「はぁ...はぁ...ん...間に合わなかったか.....」



ナギは空を見上げながら呟き、考えていた。



だいぶ健闘したと思う。〔龍化〕スキルに頼りきりであったが、格上相手にしてはほぼ互角以上に渡り合った。


ナギもあと一発石でもぶつけられればHPを全損するだろう。そうすればあの噴水の前に戻るだけだ。



しかし



「こんな終わり方はカッコ悪いな.......」



最後の最後で諦めるなんてカッコ悪いにも程がある。


まだ負けたわけでもないのに。


たかがゲームだが、されどゲーム。


大袈裟かもしれないけど、ここで諦めたら今後癖がついてしまいそうな気がする。



諦める癖が。



自分が辛くて、苦しくなって、めんどくさくなった時。



何かと理由をつけて諦めてしまいそうだ。



というか今まで決して諦めたことはなかったのに、初めて諦めるのが「ボスを倒せなくて諦めた」ってことにするのか?



いくらなんでもそれはカッコ悪すぎだろっ!!!!



「.....いよいしょ.....っと」


重い腰を上げ、ボス熊を正面に見据えたナギは再度〔龍の翼〕を発動させる。



もう〔龍魔法〕を打つMPも残っていない。他のスキルも後1回くらいしか使えないだろう。〔龍化〕スキルの影響でMPの回復スピードも低下している。



ボス熊のHPも残りわずかだ。


一度、攻撃を当てれば僕の勝ちだ!!!



ナギは両手で頬を叩いて気合を入れるとボス熊に向かって駆け出した。



ボス熊は地面を踏み鳴らし土杭で攻撃してくるが、ナギは左右に大きく動き回避する。


そして多少接近したところで空中へと飛び立った。



高く飛び上がったナギを見て、ボス熊は地面から多数の岩をナギの方へ投げてきた。


空中で全ての岩をかわしたナギは、ボス熊に接近する。



なけなしのMPを使って〔錬成武装〕で短剣を作り出すと、ナギはそれを両手でもち、ボス熊の顔目掛けて全速力で飛んだ。



横なぎに振われた腕も上に回避し、一直線に顔へ飛び込んでいく。




「いっっっっっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!!!!!」



そう叫びながらナギは飛び込み、ボス熊の眼に短剣を突き刺した。



「グオォォォォォォォォォォォォン........」


ボス熊は悲鳴のような声をあげると膝から地面へと崩れ落ちる。そしてその大きな身体を地面へと倒した。



そしてそのまま光の粒子となって空へ消えていった。




「やっったぁ....か..勝ったぁ....」



ナギはそう呟くと仰向けに倒れた。


そしてそのままゆっくりと目を閉じるのだった。




『EXTRAクエスト【森の主への挑戦】がクリアされました。

 初クリア報酬は自身のメニュー欄下段の【未確認報酬】よりご確認ください。

 称号:【単独制覇者】【森の主を超えし者】を取得しました。』






次の話は戦闘終了後のナギは...みたいな感じです。



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最後まで読んでいただきありがとうございます!

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