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第7話 揺れ動く事態と葛藤!

まだまだつたないところもありますが、時間の許す限り続きを書きたいですね。

 ロックは立ち上がると大きく体を伸ばす。

「帰るか」

 誰となく呟くと、ゆるりとした傾斜を下っていく。今日も何も変わらない。そういう一日だった。

 真上に上がっていた太陽も傾きはじめている。一日はあっという間だな、と思いながら、ロックは歩き出した。

 何事もない一日だった。はずだった。


 どぉぉぉぉん!

 

 ロックは音の氏他方を見やると一筋の黒い煙が立ち上っていた。

 轟音は町の東側から響いてきた。事故だろうか? 気にはなるが、ここアクビアの町はそれなりに大きな商業都市だ。王の次に大きなこの町には、国から派遣された衛兵がかなりの人数いるはず。

 自分がしゃしゃり出る必要などない。衛兵たちがすぐに事件を解決するに違いなかった。ロックは自宅についたときには、兵隊が二人待っていた。

「ロックさん、お待ちしてました」

「どうした?」

「実は東門の少し先に魔獣が出たそうで。冒険者として功績のあるロックさんにご助力願えないかと思い、こうしてお願いに上がりました」

「魔獣? さっきの轟音と煙、そうか。だけど、俺が出るまでもなく、この町の兵士たちで事足りるのでは?」

 魔獣と聞いて、全身総毛立つ。平静を装いつつ、ロックは言った。

「そ、それが。おそらく、その魔獣はベヒーモスではないかと」

「ベヒーモス!?」

 象のような頭と牙をもち、全身は分厚い毛に覆われているそれは、二足歩行も出来る巨大な魔獣で、割と伝説の存在となる魔獣である。

 爪は鋼鉄をも切り裂き、重量もあるので人など簡単に押しつぶせる。体格も成獣となればドラゴンと見まごうほどの大きく育つと言われているが、それを見たものは百年ほど昔に実在したといわれる伝説の魔導士だけだと言われているが、真実の程は分からない。幼獣でも馬の数十倍の体調と体格がある。

「……」

 ロックは下唇をかみしめる。嫌な記憶が甦る。先ほどの夢もそうだ。魔獣の姿は夢の中では再現されていなかったけれど、それがベヒーモスであることはロックの記憶が告げていた。

 町の東の方から逃げてくる人々。町の人もそうだが、旅人も安全な場所を探してごった返している。

 なぜ、平和な町に急にこんな事が……。誰もがそう思う。しかし、現実に魔獣がこの町に迫っているのは間違いないことだった。

「ロックさん、どうかお力添えを。もうギルドからは冒険者を手配してもらっていますが、それでも撃退できるかは。運悪く、高ランクの冒険者は今この町に滞在しておりません。ロックさんが冒険者を引退されたことは聞き及んでおります。ですが、この町の人々を守るため、一度だけお力添えいただけませんか?」

(町の人を守る? 俺が……)

 ロックは手を握りしめる。

「大変です。隻眼のベヒーモスが東門に迫っています。門は閉めて魔法や弓矢で応戦しておりますが、効果のほどはいまいちで。突破されるのは時間の問題かと思われます」

 伝令に来た兵士は肩で息をしながら、淡々と状況を伝える。

 隻眼のベヒーモス。奴だ。

 ロックは踵を返すと家の中に駆け込んだ。

「ロックさん」

 衛兵たちはその姿を見て、少し待つがロックが出てくる様子はない。

「引退した冒険者を頼りにした俺らが間違っていたか」

 どこか失望した面もちで、リーダー格の男が呟いた。

「急いで戻ろう。俺たちが少しでも時間を稼いで町の人が避難する時間を稼ぐんだ」

 その言葉に二人の兵士は頷き、三人は東門へと向かって駆けだしていった。


 家に駆け込んだロックは、ドキドキする心臓の高鳴りをどうにか押さえ込もうと必至だった。

 まさか、あの時の奴か。怖さもあったが、それ以上にこれはチャンスだとすら思った。みんなの敵を討つ絶好の機会だ。

「アルト。俺の剣と鎧を。防具は出来るだけ動きやすそうな奴を」

「そうおっしゃると思って準備済みです。こちらへ」

 アルトが案内した隣の部屋には俺が普段使っていたものではなく、この家に置いていた剣と防具だった。ミスリルでつくられたブレストプレートに籠手など腕と急所を守る防具。露出する部分もあるが、その分動きやすい割と軽装に当たる防具だ。

 剣もロングソードであるが、この間まで使っていたものではなく、柄には煌びやかな装飾が施され、刀身は碧みがかった金属で綺麗に研がれ怪しげな光をうっすら放っている。

「この剣……」

「亡きお父様がお使いになられていた剣です。旅に出るときもお持ちするようお声かけしたはずですが……」

「ああ、この剣に見合った実力が持てるまでは、と言ってその時はここに置いたままだった」

「今こそこれをお持ち下さい。必ずや災いからロック様をお守り下さるはずです」

「……わかった」

 ロックはそれらを素早く身につけると、家を飛び出した。

 アルトは外まで見送り、

「いってらっしゃいませ。どうかご無事で」

 と姿が見えなくなるまで見送り続けた。

「あ、あの。今走っていったのは、ロックさん?」

 丁度帰宅してきたレイチェルは目の前を走り去っていった男の横顔に、気づいたのだが声をかけそびれた。

「はい」

 アルトは淡々と答える。

「ベヒーモスが現れたって聞いて。それで……」

「大丈夫。ロック様ならきっと無事に帰ってきます」

「ええ、きっと……」

 レイチェルも見えなくなったその姿を追いかけ、東門に目を向けるのだった。


 東門の外、門から程なく進むと森がある。王都とこの町を隔てる森なのだが、この国の南の地区とも繋がっている。大きな森だ。

 今までこの国のましてや町の近くにベヒーモスのような強力な魔獣が現れた記録はなく、人々に大きな影響と同様を与えていた。また互角以上に戦える戦力なども当然揃っていない。

 そもそも、ダンジョンの奥深くにいるボスクラスの存在として人々は認識している程度。まさに伝説級の魔獣なのだ。

 そんな魔獣が町の近くに現れたというのだ。前代未聞の出来事だった。衛兵たちは町への侵略をくい止めるのが精一杯。戦い方も分かるはずもなく、前線に出た兵士たちが傷つき倒れる様を後方にいる隊長らは為す術もなく見守るしかなかった。

「町への進入は許すな。なんとしてでもここで阻止しろ!」

 命令を飛ばす体調も、部下やギルドの冒険者が傷つくことに心を痛めていたのだった。

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