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74 元フューラーと元皇帝の後始末

「ク、クレト様、私のお酒をどんどん飲んで下さい。ウフン」

「ワーイ、お酒だー。グビグビグビー。んー、まろやか―」


 (クレト)は元フューラーにお酒を注いでもらって、それをごくごく飲んでいく。

 いやー、このお店にある竜殺しってお酒最高だねー。

 鬼の僕でも、クルクル酔いが回るほどおいしいやー。


「フューラー、もう1杯」

「……毒を混ぜたのに、なんで死なないのよ。ガルデミラン人だったら1億人は殺せる、原液を入れたのに。ウ、ウウウッ、私はフューラー。栄光あるガルデミランの最高権力者だったのに―。ウワアアーンッ」


 もう、元フューラーってば大きな胸を机で潰しながら泣き寝入りしちゃて、お酒に弱いんだねー。


「アハハー」


 僕が楽しくお酒を飲んでいる傍で、同席しているお爺さんも、どんよりオーラを纏わせて、お酒をクグビグビ口にしている。


「余は、余は銀河帝国皇帝、皇帝であるぞー。皇帝だったのだぞー。う、うう、うあああっ」


 まるでこの世の終わりみたいな顔をして、泣き叫びながら器用にお酒を飲んでいた。


「アハハー、楽しいねー」

「「全然楽しくない!」」


 僕は他人の不幸をおつまみにとっても楽しいのに、なぜか2人から同時に拒絶されちゃった。


「アッハッハー、2人とも声がハモってて息がぴったりだね。お似合いだよー」

「誰がこんな権力失ったしわがれたジジイとお似合いよ」

「こっちこそ、頭が悪くて権力失った乳デカ女などゴメンだ!」


 またしても2人は息ぴったりに、僕に言ってきた。


「もう、そんなに照れ隠ししなくていいんだぞ。エヘッ」


 そのあと、2人が僕に向かってパンチとビンタをしてきたけど、なぜか僕をひっぱたいてきた2人の方が痛そうにしていた。


「どうしてビンタした私の手の方が痛いのよ」

「余のザ・パワーを纏った拳なのに、なぜ余の拳が通じぬ。グオオッ、指の骨が折れたかもしれぬ」

「アハハー」


 本当に、この2人って仲良しさんだね。








 大賢者の塔の商業フロアにある高級酒店から、俺宛に苦情が来た。


 大賢者の塔の主である俺は、この塔最大の権力者。

 高級店とはいえ、たかが酒店からきた苦情など、本来俺のところにくることがない。

 だが、今回は内容に問題があった。


 俺が拾ってきた銀河帝国元皇帝と、クレトの被害者であるガルデミラン帝国の最高権力者だった元フューラー。

 この2人が連日クレトと一緒になって、酒店の席で大泣きしているそうだ。

 そのせいで、他の客が全く来なくなった。


 金払いは3人とも物凄くいいが、連日泣き寝入りしているダメな大人と、その姿を見て笑っているクレトに、嫌気がさしてしまったそうだ。


「……元フューラーは、クレトがやらかしたのが原因だから、流石に弁償しないとまずいよな」


 クレトが原因とは言え、魔神がやらかしたことには、魔神王である俺に管理責任がある。


 部下連中の仕出かすこと全てに責任を持ちきれないが、相手はお隣の銀河系を支配していた人物。


 同じ世界で、銀河的にはご近所という間柄。


 仕方がないので、弁償するとしよう。


「国の権力者に戻すのは無理だが、ちょうど管理者のいない銀河系が2つある。このうち一つを、元フューラーに差し出すか」



 そう、なぜだか分からないが、どこの神も管理していない、銀河系が2つあるのだ。


 どこぞの魔神王が、部下たちのやらかすストレスに負けてしまい、以前二度とやらないと誓った銀河創造魔法を、またしてもぶっ放してしまったのだ。


 魔法を使った瞬間は、銀河レベルの爆発が起きてすごく持ちよかった。

 だが結果、新たな銀河系が誕生したことに、物凄く後悔した。

 どうして同じ過ちをしでかしたのかと、あの時の俺に説教したくなる。


 でも、それだけストレスがたまりまくってたんだ。


 なお、創ってしまった銀河系は、現在大賢者の塔のフロア内に隔離している。

 困った際は、大賢者の塔に押し込んで、問題を隠してしまう癖がついてるな。




 それはともかく、元フューラーを呼び出して、弁償として銀河系ひとつ渡すことにした。


「フューラー、知的生命体はいないが、銀河系をひとつやる。弁償としては不足かもしれないが、これで気を収めてくれ」

「銀河系を一つ?」


 場所は魔神王玉座の間。

 呼び出したフューラーは、俺からの提案を聞いて、物凄く胡乱な表情をした。

 連日酒浸りのせいか、目の下にはクマができていて、初めて見た時には色つやの良かった金髪からは、潤いがなくなっていた。


「銀河系に知的生命体はいないが、ひとまずガルデミラン人が住むのに適した惑星をひとつ創っておいた。そこを拠点にして、銀河を管理してくれ」

「……」


 やっぱり駄目だろうか。

 元銀河系の支配者に、銀河系をひとつ任せようと思ったのだが、フューラーの表情があまりよくない。


「知的生命体のいない銀河系……フ、フフフ。ガルデミラン帝国には下等な異星種族どもがいたけれど、それが存在しない銀河系なんて素敵ね。ガルデミラン人しか存在しない、至高の世界を作り上げてみせましょう。フフフフフ」

「……」


 狂気的な笑いをしている。

 巨大オッパイの美人が、そんな笑い方をすると怖いのだが。


「う、受け取ってくれるってことだな。銀河系もちゃんと管理しないと、いろいろ問題が出てくるので、管理には気を遣ってくれ」

「ええ、ガルデミラン人しかいない理想の天国ならば、銀河の管理くらい造作ないですわ」


 今度は男を魅惑するような笑みを浮かべる、元フューラー。

 とはいえ、俺はこういう笑みが苦手だ。

 心惹かれるものが全くない。


 欲望にまみれた、ドロドロとしたオーラを感じるんだよ。


「じゃあ、銀河系の管理は任せる」

「ありがとうございます、魔神王陛下」

「それと銀河系を管理するならば、神かそれに匹敵する存在の方が都合がいい。なのでフューラーとその部下たちには、不老不死の祝福を与えよう」

「えっ?」


 銀河の管理というのは、意外と大変な仕事らしい。


 俺は直接銀河系を管理していないが、俺が最初に作りだした、アカシックレコードのシルバさんの銀河系なんて、今では直径500万光年の超大型銀河に成長している。

 これ以上銀河系が大きくならないように、シルバさんが苦労しているとのことだった。


 頭脳において、大賢者の塔随一の存在が苦労しているという時点で、ただの人間では解決不能な問題だろう。


 なので銀河系の管理をするならば、最低でも不老不死くらいは必要なはずだ。


 俺はフューラーと、彼女に付き従ってきたガルデミラン帝国艦隊のクルーたちに、魔神王として祝福してやり、不老不死の存在にしてやった。


「てことで、銀河系の管理は任せた。……管理人を探す手間が省けて助かったぞ」


 後半はフューラーに聞かれないように小声で言った。


 俺は心の中でガッツポーズ。

 これはフューラーへの弁償だが、同時に銀河系の面倒な管理を押し付けることもできた。


「えっ、不老不死!もしかして私、これ以上老けることなく、この姿のまま生き続けられるのかしら?」


 だけどフューラーは銀河系の事より、不老不死のことがより気になるようだ。


「ウ、ウフフ、権力者にとって不老不死は永遠の憧れ。魔神王陛下に任された銀河系は、私が責任をもって繁栄させてみせますわ」


 なんて言って、フューラーは俺にウインクしてきた。


 見た目は居乳のゴージャス美女だ。

 結構破壊力があるな。


 胸に!





 ところでフューラーに銀河系をひとつ任せたら、そのことを知った銀河帝国元皇帝が俺のところにやってきた。


「ま、魔神王陛下。どうしてあの頭空っぽのフューラーに、銀河系を任されたのですか。余には、余には……」


 そこで涙声になって、プルプルと震え始める元皇帝。


 見た目は老人だが、この爺さんは(シャドウ)魔神によって不老不死になっている。

 なので、年のせいで体が突然いうことをきかなくなって、震えだした訳ではない。


「フューラーは、俺の部下が原因で権力の座を追われたからな。あれは弁償だ」

「そ、そんな、あんな乳重尻軽女に騙されて、余には何もないのですか……」

「俺はフューラーの色気に惑わされて、銀河系の管理を任せたわけではないのだが」

「ですが……」


 そこで物欲しそうな目で、俺の方を見てくる元皇帝。

 爺さんにおねだり目線で見られても、げんなりさせられるだけで嬉しくもなんともない。


「余も魔神王陛下に対しては、惑星をひとつ滅ぼして捧げましたし、余の部下たちは毎日陛下を賛美しております。ですので、なにとぞ神のご慈悲を賜りたくございます。銀河系を支配するのには慣れてますし、あの乳牛女よりも見事に統治して見せますぞ」

「……」

「陛下、陛下―」


 この爺さんどうしよう。

 俺の目の前で地面に倒れ伏したかと思うと、俺のズボンに縋りついて、必死のおねだりを続けるんだが。


「……ま、いいか。どうせ管理人がいないから、この爺さんに投げちまうか」


 皇帝が、まるで惚れた男から捨てられた女みたいになっていた。

 捨てられまいと、死に物狂いになって離さないって感じで、俺にしがみついてくる。


 鬱陶しすぎる。


 あと、この光景を傍にいるメイドが見ているので、物凄く外聞が悪い。



 そんなわけで、俺は元皇帝にも銀河系の管理を任せることにした。


 どうせ管理人に困っていたし、失脚したとはいえ、銀河帝国の皇帝までやった人間ならば、銀河系ひとつくらい管理できるだろう。


「分かった。それじゃあフューラーたちにしたように、元皇帝の部下にも不老不死の祝福を与えて、銀河系の管理を任せる」


 銀河系の管理と共に、皇帝の部下たちも不老不死にして管理を委ねる。


 皇帝の部下と言えば、30億人のクルーを有する艦隊だ。

 その全員を不老不死にするが、俺の魔力量だとどうにでもなる。


 自分でも、魔力がどこまであるのか分からないからできる力業だった。


「おお、ありがたき幸せ。……ところで、部下たちは良いのですが、余には魔神王陛下から直接祝福をいただけないのでしょうか?」

「お前は既に不老不死だろ」

「そうなのですが。あれはシャドウ魔神様からいただいたもので、魔神王陛下からの祝福ではないのですが」

「知らん」


 皇帝の部下にしてやるのは、不老不死だけだ。


 俺からでもシャドウ魔神からでも、どちらでも同じじゃないかと思い、俺は元皇帝の願いを却下した。


「とにかく、銀河系は任せた。じゃあな」

「陛下、魔神王陛下―!」


 俺はその場から急いで逃げると、マジで捨てられた女みたいに、元皇帝が叫び声をあげて泣き叫んだ。



 あの爺さん銀河帝国の元皇帝で、ザ・パワーの暗黒面の王とか名乗ってたのに、本当に貫禄がないな。

 あんなやつに銀河系を任せて、本当に大丈夫か?




 なので後日、俺は元皇帝よりも現実がよく理解できている、銀河帝国艦隊の司令官に面会した。


「艦隊司令、俺はお前のことを信じている。あのバカ皇帝がやらかしそうになったら、お前が軌道修正するんだぞ」

「陛下よりの神命、謹んで拝命いたしました」


 艦隊司令は元皇帝より現実が見えている人だけど、俺のことを崇拝するのが大きな欠点だった。

 俺に対して、五体投地してこないでもらいたい。



 君、毎夜毎夜俺の枕元に生霊になって現れ、魔神王とかいう変な神を賛美してるよな。

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