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72 ダイワの帰還と女フューラーの殴り込み

まえがき




 今回はアーヴィン視点となります。

 俺の方針は、大賢者の塔のご近所さんとは仲良くやっていくこと。

 まかり間違っても、ご近所さん相手に喧嘩を仕掛け、血みどろの戦争なんて起こしたくない。


 ……

 というか、うちの連中が戦争通り越して、世界の終焉を数限りなくしでかしているが、俺は可能な限り見てみないふりをしている。


 最近神としてさらにパワーアップしたせいか、離れた場所にいる魔神たちの行動を見ることができるようになった。


 ……なってしまった。


 だが、奴らのしでかしている光景を見ていると、俺のメンタルが死ぬ。

 胃袋に穴ができるでは、済まなくなってしまう。


 なので、できる限り無視している。


 さすがに俺の部下が死んだ場合は、見過ごすことができないが。




 さて、メンタル虚弱体質と言われても仕方ない俺だが、その日は大賢者の塔近くに生えている、世界樹の視察を行った。


 俺の胃袋の救世主である世界樹を、たまには見物しておかないとな。


 世界樹が生えている場所には、ハイエルフとエルフが住んでいる村もあり、そこで俺は歓待を受けた。


「偉大なる神々の王よ。なにとぞ我らの世界樹に永久の祝福を施してくださり、未来永劫枯れることがないよう……」


 以下ナンタラカンタラ。


 ハイエルフの村長さんによって、宗教儀式に強制参加させられてしまった。

 おまけに俺が、世界樹に祝福を施してやる流れとなる。


 祝福と言っても、単に俺の魔力を分け与えるだけ。

 気分的には、巨大な世界樹の根元に向かって、ジョーロで水をやるような感じで、魔力を撒いてやった。


「おお、世界樹が急激に成長している」

「空の果てまで伸びていきそうだ」

「大賢者の塔に匹敵する大きさに育ってますな」



 俺が魔力を与えたことで、世界樹が急成長し、マジで大賢者の塔並みのデカさになってしまった。

 樹の頂上部分が宇宙空間まで届いているが、酸素がなくても世界樹は枯れないのだろうか?


 葉が青々と茂っているので、問題なさそうだが。


「兄上―」


 ただそんな俺の横で、宗教儀式に強制参加させられたメンバーの1人、クリスにジト目で睨まれた。


「俺は悪くない」


 やらかしてしまった感満載だが、俺だって魔力をちょっと撒いただけで、世界樹がこんなになるなんて思わかなかったんだよ。


「これからも俺の胃薬として頑張ってくれ。お前がいないと、俺の胃がヤバイ」


 もともと天に届くような大きさをしていた世界樹だが、急成長した結果、本当に天に届いてしまった。

 とりあえず、これからも俺の胃薬の提供元として、この樹には頑張ってもらおう。






 そんな視察行が終わり、大賢者の塔へ帰ることになった。

 帰り際に、ハイエルフとエルフたちに五体投地されて見送られたが、既に俺を信仰する生霊が毎夜毎夜枕もとに立っているので、勘弁してもらいたい。


 エルフの生霊まで増えなくていい。

 美人のエルフお姉さんの生霊ならば、少し考えるかもしれないが。




「ただいまー」


 ところで大賢者の塔への帰り道、クレトの声がしたと思えば、宇宙戦艦ダイワが帰ってきた。


「クレト、しばらく見なかったが、どこで何やってたんだ?」

「隣の銀河系まで行って、ドンパチー」

「……続き聞きたくないから、もういいぞ」


 多分、星レベルの文明がいくつか消えたな。

 そう直感して、それ以上聞くのをやめた。



「戻ってきたからには、今回の出来事を全てゴブリン提督に報告しなければ」

「生きて、生きて、また帰ってくることができた。この銀河系に戻ってこれたぞー!」

「ふうっ、命がいくらあっても足りんな。いや、死んでも生き返らされたが……」


 あとクレトの傍では、ゴブリンとグレーとドワーフが、そんなことを口にしていた。


 その中のゴブリンに、見覚えがある。


「ゴブリン副長も帰ってきたんだな。クレトに巻き込まれて、大変だったな」

「ねぎらいのお言葉、ありがとうございます、主よ」


 律儀なもので、俺に向かって敬礼するゴブリン副長だった。



 しかし何をやらかしてきたのか。

 ……俺は聞き出すつもりはないので、あとは彼らの好きにしてもらおう。


「アーヴィン様、お久しゅうございます」

「よっ、クリスタ」


 あと、クリスタル魔神のクリスタが俺に挨拶してきたので、適当に返しておいた。




 ところで俺は、妙な気配を感じて空を見上げた。


「なあ、クレト。あれってどこの船だ?」

「ガルデミラン帝国の船だよー」

「ガルデミラン帝国?」


 まだ距離があるが、ローラシアの遥か彼方の宇宙に、見知らぬ宇宙船の姿を見て取れた。

 視力を魔力で強化した上で、ようやく見えるところにある。


 しかし聞いたことのない国名に、俺は首をかしげる。


「隣の銀河系を支配していた帝国だよ。でも、今じゃ母星がきれいさっぱりなくなって、ガルデミラン人が抑圧していた異星人たちが大暴走して、銀河レベルで内乱状態になってる国だけどー」

「……」


 OK。

 つまりクレトが、ガルデミラン帝国の母星をきれいさっぱり消し去ってきたんだな。

 こいつがいない間に、何をしでかしたのか分かった。



「ヴッ、胃が……」


 有人惑星が確実にひとつ消えたと分かって、俺の胃がキリキリと痛み出す。


「アーヴィン様、こちらを」


 傍に控えるメイドが、即座に俺の胃薬(世界樹の葉の雫)を差し出してきたので、俺はそれを口に含んで垂下した。


「相変わらず、全然効いた気がしない」


 ストレスが限界突破しているせいで、死者でも生き返る薬なのに、まったく効果を実感できない。




 とりあえず、俺は胃の痛みをこらえつつ、念話(テレパシー)を介して、件のガルデミラン帝国の宇宙船に話しかけようとした。


 だが、話す前に女性の絶叫が聞こえてきた。


「ダイワのクソどもが、お前らを母星ごと消し去ってくれる。マイクロブラックホール砲発射―!」



 直後、宇宙空間にいたガルデミラン帝国の船が、何かを発射した。


「何か発射したな」

「そうだねー」

「俺の勘違いかもしれないが、あれって惑星破砕砲よりヤバくないか?」

「んー、おいしそう?」


 クレトに聞いた俺がバカだった。

 こいつはバカを司る魔神なので、まともな答えが返ってくるわけがない。


 しかし宇宙船から発射された攻撃が、確実に惑星ローラシアを吹き飛ばせる威力がある。

 直撃したら星が終わるので、俺は間に合わせで結界を張った。


 最近俺の使う結界が、惑星レベルの防御シールドと化しているのだが、なんとかならないだろうか。

 俺は惑星を守る守護神でなく、普通でノーマルでいたいのだが。



 そんな俺が張り巡らせた結界に、マイクロブラックホール砲とやらが命中した。


 結界とマイクロブラックホールが激突し、地上から見るとそこだけ重力が歪曲し、青い空に、歪に歪んだ空間が発生する。

 とはいえ、俺の結界を貫くにはまるで威力不足で、このまま放置しても問題ない。


「いや、惑星(ローラシア)は無事でも、衛星がまずいか」


 そのうちマイクロブラックホールは消え去るだろうが、思った以上に重力の力が強く、それがローラシアにある衛星(つき)の軌道に影響を与えかねない。


 なお、ローラシアには7つの衛星がある。

 まったくもって、ファンタジーの世界らしい衛星の数だ。


 それはともかく、衛星の軌道が変わるとマズイ。

 天体規模での自然破壊現象は、急いで阻止しなければならない。


 俺は次元魔法を使って、マイクロブラックホールとやらを、別の世界へ捨てた。


 ゴミは異世界にポイだ。



「なあああっ、マイクロブラックホール砲が、ブラックホールが。第二射、直ちに斉射せよ!」

「了解しました、フューラー」


 マイクロブラックホールを異世界に捨てたのは良かったが、ガルデミラン艦の内部からヒステリックな女の声が聞こえてくる。


 直後、第二射が放たれたので、それも俺が異世界に捨てた。


「第三射よ、撃て撃て、撃って撃ちまくれー!」

「フュ、フューラー、お気を確かに!」


 ガルデミラン艦の内部が騒がしすぎるな。

 特にこの女の声が、常軌を逸している。



「触手魔神、あれを拘束してくれ」

「分かった、ボス」


 このまま攻撃され続けても面倒なので、俺はローラシアの衛星軌道上にいた、触手魔神に任せることにした。

 触手魔神は、俺のいるローラシアに手を出す奴を、許さない性格をしてる。

 ヤクザの下っ端のごとく、縄張り(ローラシア)の見回りをしている魔神だ。


 当然縄張りを荒らす奴が現れたら、許さない。


 そんな触手魔神が、“向こう側”から”こちら側”に姿を現す。

 巨大な触手の群体が、宇宙空間にいるガルデミラン艦へ向かっていった。


 触手魔神は、見た目は巨大なミミズが群れを成した姿で、見ているだけで嫌悪感が沸いてくる姿。


 その姿が、地上にいる俺たちからも見て取れる。

 何しろ触手魔神は、惑星レベルの大きさをしているからな。



 そして宇宙空間で何かある度に、ローラシアの人々の間では、世界終焉だとか、末法思想が巻き起こっているらしい。


 なので後日、ローラシアを管理している駄女神と駄天使が、俺のところに苦情を言いに来るだろう。




 ところで、宇宙空間では、


「い、イヤー、化け物。とっとと消し去りなさい!」

「マイクロブラックホール砲、直ちに発射!」


 触手魔神に迫られたガルデミラン帝国艦が、またしてもマイクロブラックホール砲を発射した。


「フハハハ、効かんな。そんなちんけな重力魔法など、俺の重力魔法で相殺だー!」


 対する触手魔神も、重力魔法を使って、マイクロブラックホール砲に対抗した。


「ヌガーー!俺の体が2割消えたー」


 まあ、相殺しようとしたが、残念ながらマイクロブラックホール砲の威力が上だったため、相殺しきれなかったブラックホールが触手魔神の体を吹き飛ばした。


「触手は高位魔神最弱だから仕方ないな」

「弱いよねー」


 俺とクレトは地上から、触手魔神とガルデミラン艦の戦いを見学だ。




 そのあと、触手魔神とガルデミラン艦の戦いが続いた。

 重力の歪みに、華々しいレーザー兵器。それに対する炎魔法による熱線の応酬。


 魔法で視力を強化しなくても、地上から見て取ることができた。



 宇宙戦闘って感じで、かなり派手に見える。


 あれで触手魔神の姿が、ミミズの集団がのたうち回る姿じゃなきゃ絵になるんだが。



「ギャー、気色悪い触手に艦が拿捕されたー!」

「ウヒョヒョ、嫌がる女が乗る船を、触手責めにして戦闘不能にしてやるー!」


 この後触手魔神が体の半分以上を消し飛ばされながらも、ガルデミラン帝国艦に巻き付いて、無事に拿捕した。


 なお、体が消し飛んでも3日あれば元に戻るので、触手魔神のダメージはたいした問題でなかった。

あとがき




「私はゴブリン副長、ダイワの副長にして主人公……あ、ごめんなさい、ウソです、ほんの冗談だから……だから許してください、主ー!」



 チャンチャン♪

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