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69 ガルデミラン帝国母星の死闘……死闘だよな?

 ガルデミラン帝国絶対防衛戦。

 数百になるガルデミラン帝国艦隊の防衛網を突破したダイワは、ついにガルデミラン帝国の母星にして、首都星である星にたどり着いた。


 距離にしてわずか100万キロ。

 地上においてはとてつもない距離でも、宇宙空間においては、ほんの目と鼻の先といっていい距離しかない。



 しかし、銀河系を支配する一大帝国の首都星に辿り着いたダイワとて、無事とはいいがたい状況だった。


「第一、第二主砲損壊、完全に使用不能。第三主砲は旋回装置が故障したため、発射角度をとることができない。第五主砲も使用不能。上部ミサイル発射管も損壊により使用不能。艦内の気密が50パーセントの区画において破られている」

「艦内クルーの死傷数は120を計測。宇宙空間に放り出されて、回収不能になったクルーもいるぞ」


 ブリッチにおいて、ここにたどり着くまでに支払った、壮絶な被害報告が上がってくる。


「機関出力も低下。主機関(メインエンジン)の出力は40パーセントまでしか出せない。さらに副機関(サブエンジン)は第一、第二ともに完全に使用不能。ワープ航行も不能だ」


 戦闘能力が激減するばかりか、宇宙船としての航行能力すらほぼ失われている。


「搭載していた戦闘機の8割が未帰還。残りも小破以上の損害多数。本艦のダメージコントロールチームでは、もはや手に負えない状況だ」


 搭載していた戦闘機も、ダイワに負けず劣らず悲惨だった。


 今のダイワは、中破と言っていい状況。

 既に自力での修理にも限界がきている。




「ダイワの諸君、よくぞ、よくぞ我らの母星まで辿り着いた。単艦に過ぎない船が、ここまでたどり着けたことに、ガルデミラン帝国総統(フューラー)として、畏敬の念すら覚える」


 そしてダイワのモニターには、引きつった笑みを浮かべる、ガルデミラン帝国女フューラーの姿があった。

 絶対の自信を持つ防衛線を突破され、その顔に余裕が見られなくなっている。


 もっとも、クレト艦長のやりたい放題な行為に何度も巻き込まれているので、素の表情に比べれば、今の方がまともに見えた。



 しかし、ダイワが戦闘を継続できない状況なのに対して、ガルデミラン帝国には母星が残されている。

 そして突破した最終防衛戦にしても、すべての船を撃破したわけでなかった。


 時間がたてば、防衛線を生き残ったガルデミラン帝国の船が、この場へ駆けつけてくる。


「艦長、これ以上の戦闘は不可能です。クリスタさんも負傷して、しばらくは行動できません」


 ダイワより強力な戦闘力を有するクリスタさんも本来の姿で戦ったが、敵はガルデミラン帝国の大艦隊。

 数百の艦隊を相手にしたため、流石のクリスタさんとて無事では済まなかった。


 中位魔神のため彼女が死ぬことはないが、それでも今の彼女は身動きをとることすらままならない。


 ああ、可憐なクリスタさんがあんなにボロボロになるなんて、私の胸が張り裂けんばかりに痛む。



「んー、とりあえず惑星破砕砲発射」

「か、艦長!」

「ガルデミラン帝国母星にドッカーンといっちゃおう」


 状況は絶望的。

 だが艦長はこのような中にあっても、さらに戦闘を続けるつもりだった。


「ドワーフ技術主任?」


 私は艦長の命令を聞いて、この状況でも惑星破砕砲を使用できるかと尋ねる。


「発射は可能だ。ただし1発だけだ。しかも発射した反動で、この船が無事に済む保証もない」

「危険な賭けだな」


 ドワーフ技術主任の顔に余裕がないが、それでも彼はニヤリと笑ってみせた。


「ここまで来たんだ。このまま撃沈されるなんて、間抜けな終わり方はできないだろう」

「そうだな、技術主任」


 ドワーフ男の心意気。

 それを見せられ、私もドワーフ技術主任に笑い返した。


「艦長、惑星破砕砲の発射準備に取り掛かります」

「よろしくねー」


 ゴブリン戦闘主任が惑星破砕砲の使用準備に入り、艦長は呑気に返事する。

 1注だけ、この緊迫した空気の中にあって浮いている。

 浮きすぎている。


「これが最後かもしれないのか。ああ、俺の人生って長いようで短かったな」


 この空気の中、グレー科学主任は黄昏ていた。



「フフ、惑星破砕砲か。だが無駄なことだ。我らガルデミランの母星は、対惑星兵器への防備も完璧。惑星破砕砲を1、2発撃たれたところで、母星のシールドを突破することはできんよ」


 我々は覚悟を決めた。

 だが、そんな我々を嘲笑するかのように、モニターに映る女フューラーが笑った。


 女フューラーとて、余裕のない表情をしている。

 であれば、彼女が口にしたことははったりの可能性もある。


 私が知る限り、惑星破砕砲の一撃を防げるような技術は存在しない。

 そんなことができるのは、アーヴィン様の展開する結界くらいだ。

 魔神王の力でもない限り、惑星破砕砲を防げるはずがない。



「艦長、惑星破砕砲発射準備が完了しました」


 そうしてゴブリン戦闘主任が報告し、惑星破砕砲の引き金(トリガー)に指をかけた。


「OK―、皆対閃光防御してねー」


 艦長だけ、相変わらず覚悟なんて関係なしの能天気さ。


 それはともかく、艦長の命令によって、ブリッジクルーは全員サングラスをかけて、惑星破砕砲の光から目を守るための体制に入る。


「総員、耐ショク姿勢。現状のダイワでは、惑星破砕砲の反動を吸収しきれない可能性が高い。体を固定して、飛ばされないようにしろ!」


 通常時であれば惑星破砕砲の反動を、艦のシステムが吸収しているが、今のダイワではそれすらできない。

 ドワーフ技術主任の出す指示が、ダイワの危機的状況を如実に表していた。


「じゃ、惑星破砕砲発射。ドカーンとよろしく」

「惑星破砕砲、発射!」


 そうして艦長の命令の下、ゴブリン戦闘主任がトリガーを引いて、惑星破砕砲を発射した。


「ウオオッ」

「ヌオッ」

「体が……」


 発射と同時に閃光が迸るが、同時に艦に今までにない反動が走る。


 私は副長席で体を固定しているが、今までに感じたことのない反動の大きさに、歯を食いしばって耐えることしかできなかった。


 だが、それでもダイワは惑星破砕砲を発射した。

 発射した惑星破砕砲が、目の前にあるガルデミラン帝国の母星へ直進していく。


「フハハ、無駄な悪あがきを」


 しかしそれをあざ笑うように、モニターからは女フューラーの声が響く。


 発射した惑星破砕砲の光が、ガルデミラン帝国の母星へ直進したが、途中でシールドに接触した。


 惑星全体を覆う巨大なシールド。

 それが惑星破砕砲の光を受け止め、両者の力が均衡する。


 だが、その時間はわずかなもので、やがて惑星破砕砲の光が衰え、消えていった。


「報告します。惑星破砕砲が無力化されました。敵の母星のシールドを突破できませんでした!」


 負傷したクリスタさんに代わり、レーダーを担当していたゴブリン兵からの報告だ。


「な、なんだと」

「ありえない」

「どういう技術力なんだよ……」



 私たちダイワのブリッチメンバーは、最強の兵器が無力化されたことに絶望した。


「アハハハ、諸君よくぞここまで戦い抜いた。だがしかし、お前たちは所詮銀河を飛び交うただの羽虫なのだよ」

「グッ」


 クレト艦長がやりたい放題していたので、女フューラーのことを侮っていた。

 だが、それが間違いだった。

 相手は間違いなく、巨大銀河帝国を支配する権力者なのだ。


「今日ここで、私が直々に君たちに引導を渡してくれよう。惑星破砕砲を発射せよ!」


 勝ち誇るように、女フューラーが叫ぶ。


「大変です、ガルデミラン帝国母星より、複数の巨大エネルギー反応。惑星地表に、複数の惑星破砕砲が設置されています」

「なに!」


 惑星破砕砲に対するシールドを備えているばかりか、あろうことにも惑星破砕砲まで装備している。

 とてつもないガルデミラン帝国の母星に、私は開いた口が塞がらなくなってしまった。


「惑星破砕砲が発射されました。照準先は本艦です!」


 レーダーを担当するゴブリン兵は悲鳴に近い声を上げた。


「ああ、短い人生だった」


 グレー科学主任は、その報告に絶望する。


「ヌウッ」


 ドワーフ技術主任も、歯を食いしばってこれからのことに耐えようとする。



 ここまで来ながら、我らの旅路は終わりを迎えてしまった。

 悲しいことだが、ジ・エンドだ。


 次の瞬間、ガルデミラン帝国より放たれた惑星破砕砲の光にダイワは飲み込まれ、その形はひとつとして残ることなく消え去った。








 クレトだよー。

 ガルデミラン帝国の首都星まで来たけど、ダイワが沈んじゃった。




 残念なことに、僕の掛け金が取られてしまった。

 高位魔神たち相手に賭けをしていたのに、負けてしまった。


「あああー、1千億人分の魂賭けたのにー」

 3か月と8日でダイワが勝利して、女フューラーを生け捕りにするはずだったのに、賭けに負けた。

 ちょうど今日が大賢者の塔を出発してから、3か月と8日目だったのに。


 残念。



 ダイワも沈んじゃって、クルー諸共全滅だ。


 クリスタも、ゴブリン副長も、酒飲み仲間のドワーフ技術主任も、グレー科学主任も、エルダーリッチの研究者たちも、全部宇宙の藻屑だ。



「まあ、僕は惑星破砕を受けても、全然痛くないけどね」


 高位魔神の中でも弱い奴だと死んじゃうけど、これくらいの攻撃で死んじゃうなんて、高位魔神って言っても弱い奴らだとその程度。

 でも僕の場合、これくらいじゃノーダメージだから。



 ダイワが蒸発しちゃったので、僕1人だけ宇宙空間の中に残されちゃった。


「てことで皆、ここから新しい賭けをするよー。ガルデミラン帝国の母星が、僕の撃つ魔法に、同時に何発耐えられるかの賭け。僕は100発以上耐えられるに、高位悪魔の魂1千体でいくよー」


 残念なので新しい賭けをしようと、”向こう側”から”こちら側”を見ている、高位魔神たちに話しかける。


「んじゃ、俺は1000発以上耐えられるのに賭ける」

「この前すったんで、人間の魂が100万個しかないけどいいか?」

「俺はブラックホール生命体って言う変な生き物を捕まえたから、そいつを賭けに使うぞ。200発くらいは耐えられるだろ」


 僕が主催して、賭けが進んでいく。



「じゃあ、まずは1発目を行くね。ドッカーン」


 僕は魔力を練って、炎魔法・熱線(ヒートブラスター)を撃った。

 威力に関しては、ダイワの惑星破砕砲よりちょっと上だ。


「フュ、フューラー、大変です。ダイワの消失空間から、巨大なエネルギー反応が!」

「な、なんですって、奴らの船は完全破壊したはずよ!」


 念話(テレパシー)を通して、地上にいる女フューラーとその部下の声が聞こえてくる。


「でも、私たちには絶対無敵の盾があるわ」


 女フューラーの声がした。


 そして僕の撃った熱線(ヒートブラスター)が、ガルデミラン帝国の母星に命中したけど、シールドとしばらく拮抗して、無力化された。


「まず1発ではダメでした。じゃ、次は2発同時に撃つねー」


 てことで、今度は炎魔法・熱線(ヒートブラスター)を2発同時に撃つ。


「宇宙空間に人間の姿を確認しました。フューラー、例のダイワの艦長です」

「あ、あの野郎、なんで船が消し飛んだのに、宇宙空間で生きてるのよ!」


 地上が騒がしいようだけど、みんな元気があっていいね。


 そして2発同時に放った熱線(ヒートブラスター)だけど、これもシールドに無力化された。


「じゃあ、次は倍々ゲームで4発でいくよー」


 うんうん、頑丈なシールドでいいね。

 ぜひとも、僕に勝ちを呼んでほしい。


「ま、またしても惑星破砕砲に匹敵するエネルギーを確認。さらに数が倍になっています」

「いかん、このまま攻撃が続けば星のシールドがもたない。今すぐフューラーを安全な場所にお連れしろ」

「何を言っているの!私はガルデミラン帝国フューラー。私が敵を前にして首都を逃げ出すなんてことは……」

「お叱りは後程。今は急いで退避していただきます。衛兵、多少手荒でも構わん、フューラーを今すぐ星から脱出させろ!」


 地上は賑やかだね。

 僕が撃った熱線(ヒートブラスター)は、またしてもシールドに弾かれた。


「てことで、次は8発同時に発射―」


 もちろん、この攻撃にもシールドが耐えてくれた。


「じゃ、どんどん行って16発―」


 今度も無力化された。


「いくよ、いくよ、32発―」


 これも無力化。


「ヌオオオー、俺の賭け金がー」

「もう少し、もう少しだけ耐えるんだ。そうすれば俺の勝ちが来る」

「こんくらいで破れるシールドじゃないだろう。1千発くらい、平気で持ちこたえるだろ」


 賭けが進んできて、”向こう側”から見ている高位魔神たちも、いい具合に盛り上がってるね。


「64発いけー……あれっ?」


 64発同時撃ちをしたけど、母星のシールドの様子がおかしい。


「い、いかん、これ以上はシールドが持たない。我らの星が、ガルデミランの栄光ある星が……」


 地上から拾った声が、絶望に包まれていた。

 それと同時にシールドが消えて、僕の撃った熱線(ヒートブラスター)が地上に命中した。


 ガルデミラン帝国の星は大きくて、事前にダイワのレーダーで調べた時には、地上に720億の人口がいるとのことだった。

 だけど、僕の放った熱線(ヒートブラスター)が命中して、星が崩壊(ドッカーン)しちゃった。


「あ、あれっ。あのシールド脆すぎない。もっと頑張ってくれないと、僕の賭けが……」


 星が砕け散って、僕のいる空間にまで星の残骸が飛んでくる。

 だけどそんなことより、たった64発同時撃ちで、もう星が壊れちゃった。


「おい、あのシールド脆すぎだろ」

「誰も当ててないぞ」

「畜生、胴元が総取りかよ」


 僕の賭けが外れちゃった。

 まあ、僕が胴元だから、皆の掛け金を総取りだけど。



「予想が外れちゃったのは残念。でも、皆の掛け金は僕がもらってくからね。アッハッハッー」

「「「チクショウガー!」」」


 高位魔神の皆が叫ぶけど、僕はとっても愉快で楽しいや。

 アッハッハッ。



 ついでに、ガルデミラン帝国の星が壊れたのが、少しもったいない気がする。

 あそこには、魂が720億個あるんだよね。


「星魔法・核惑星化(プラネットフューザー)


 ということで、僕は魔法を使ってガルデミランの母星の残骸を纏めて圧縮した。

 砕けた星の欠片が巨大な重力で潰され、純粋なエネルギーを放出する塊になる。


 ローラシアとも比較できない巨大惑星だったけど、全部潰した結果、僕の指先くらいの大きさになった。

 角砂糖みたいな大きさだ。


「いただきまーす」


 その塊を食べる。


「モグモグ、ゴリゴリ、ガリガリ。んー、噛み応えがあってデリシャース」


 ゴックン。

 でも小さな欠片だったので、あっという間に飲み込んでお終いだ。

 ついでに、720憶人分の魂もゲットして万々歳。


「ヒャッホー、これで新しい賭けの元手ができたぞー」

「ヒャッホーじゃねえ!」


 ありゃ、僕は良かったのに、念話(テレパシー)で主の叫び声が聞こえた。


「主―、どうかしたの?」

「どうかしたのじゃない!今すぐダイワを元に戻せ、俺の部下たちを生き返らせておけよ!」

「ええーっ、皆跡形も残ってないのに、生き返らせるなんて面倒臭いー」

「面倒臭いじゃない、とっととやれ!だいたいお前が皆を連れて行って、殺した原因だろうが」

「ちぇーっ」


 主がプンスカ怒ってるよ。

 まったく、主ってば怒りっぽいから仕方ないよね。


 ちゃんと生き返らせておかないと、主がもっと怒るから、生き返らせておかないといけないね。


「あーあ、時間系の魔法って得意じゃないけど、とりあえずダイワを元に戻しておくか」


 というわけで、僕は時間魔法を使って、蒸発しちゃったダイワを元に戻した。

 艦内にいたクルーも、全員体は元通り。


 でも、魂がなくなってるから、今から取りに行かないといけないね。

あとがき




 戦闘力の比較


 クレト>超えられない壁>ガルデミラン帝国母星>超えられない壁>クリスタ>ダイワ

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