67 ガミラン帝国軍強襲部隊2
我はダイワに乗り込んでいる科学技術者の1人。
今回の宇宙船での旅は、クレト様の突飛な思い付きであったが、宇宙空間には未知の事象が尽きることなく存在している。
そんな未知を探求し、調べることは、科学者としての天分となる。
そのためクレト様に従い、我はダイワの旅にて、様々な宇宙現象の観測や分析を行い、今回の旅で大変有意義な時間を過ごしている。
本日も、我は研究室に籠って、この前立ち寄った星で見つけた謎の病原菌を研究している。
どのような薬物を投入しても、すぐに薬物耐性を獲得してしまう菌で、研究していて大変面白い。
使い方次第では、薬学的に対処不能な細菌兵器に作り変えることもできるだろう。
強力な大量殺戮兵器になってくれる。
だが、我はそういうことには興味がいなので、そういった方面のことは、やりたい者に任せるのがいいだろう。
何しろ大賢者の塔には、数多の賢人哲人が集っている。
大量殺戮兵器を作ることに、自らの存在をとしている者とて存在するのだ。
ところで我は、かつては自らこそが、世界の心理の最奥にたどり着ける人間だと自負していた。
だが、それがあまりにも的外れな思い込みだったと、今ならばわかる。
大賢者の塔という場所にいれば、あらゆる偉人達が集うため、各々の分野において、他の追随を許さない学識と能力を持っている者たちが集う。
そんな中では、自らの専門外のことに関しては、まるで赤子程度の知識しかもっていないに等しくなる。
心理にたどり着くための膨大な知識は、1人だけで有することは無理なのだ。
大賢者の塔にて、そのことに我は気づかされた。
しかし、各分野に特化した者たちの知性を集めることで、我々はさらなる高みへ至ることができる。
彼の偉大なる初代大賢者殿が、アーヴィン様という高位の神を生み出すことに成功したように、我らの研究は既に神すら作り出すことができるレベルに至っている。
であれば、さらなる先へ至るために、より深淵の研究を……
「ただちに両手を頭の上にあげ、降伏せよ!」
我が病原菌の研究をしていたら、無粋な声が響いた。
「何事か?」
我は顕微鏡から目を離して、声がした方を向く。
パワードスーツだろう。
おもちゃの鎧を着た兵士が、何人かいた。
愚かにも我に対してライフルの銃口を向けているが、このバカは一体何をしにきたのだ?
「手を上げろ!抵抗すれば……っ、骸骨。まさか死体なのか!?」
「当たり前であろう。我はエルダーリッチ、動く死体である」
「化け物が、死ね!」
短絡的な輩は困る。
人間の人生とはあまりに短く、この世の心理を探求するためには、あまりにも時間が足りない。
そこで死という時間の枷から解脱するために、エルダーリッチという存在に昇華する。
不死者となることで、無限の時間を獲得する。
この程度のことは、真理を探究する者にとって、ごく当たり前の手段に過ぎない。
まあ、エルダーリッチに至ることができずに、リッチ止まりの研究者もいる。
が、魔法的な能力の高低が、必ずしも心理へ至る探求心の高低と結びつくわけではない。
探究者たちは皆、あくまでも有限な人生という時間の牢獄から逃れるために、アンデッドになるにすぎない。
そんな我や、我の同胞たちを化け物扱いするとは、なんと嘆かわしい輩だろう。
「オラオラオラッ」
目の前の愚か者が、レーザーライフルを放って、我に攻撃してくる。
しかしその程度の火力では、我の展開する結界魔法を突破するなど不可能。
「暴れられて、我の研究室が荒らされては困るな。死霊魔法・即死」
我は愚か者に対して、命を刈り取る魔法を用いて、生命活動を終わらせてやった。
それと共にパワードスーツが動きを止め、機能停止する。
外見上の変化はないが、パワードスーツの中にいる生物を殺したので、もはや物言わぬ機械の塊でしかない。
「我はこの手のものに興味はないが、ドワーフの技術者であれば好みそうだな。彼らには研究道具の開発で協力してもらっているし、この玩具をプレゼントしてやるか」
我にはパワードスーツなどいらないが、世話になっているドワーフたちの関心をかえれば、我にとってもプラスとなる。
「重力魔法・重力浮遊」
我は魔法を用いて、パワードスーツにかかっていた重力の力を奪い去り、スーツを空中に浮かばせる。
「さて、善は急げだ。ドワーフの所に早速持って行くとするか」
空中浮遊させたので、スーツは我1人でも簡単に持ち運ぶことができる。
我はスーツ片手に、ドワーフたちの元へ向かうことにしたが、道中で何やら戦闘がおこっているようだった。
「やれやれ無学な者たちは、無駄な争いばかりして困る。死霊魔法・魔神王への貢ぎ物」
我は大賢者の塔で独自開発された死霊魔法を使い、広範囲型の即死魔法を使う。
この魔法によって即死した魂は、魔神王への贄となる。
偉大なる神の王へ、贄を捧げるための魔法だ。
我が通りかかった個所で、戦闘をしていたパワードスーツの者達。
だが物理的に強固な鎧をまとっていても、魔法的には何らの防御がなされていない。
そんな者たちの魂を纏めて刈り取るなど、我の力を持ってすれば容易いことだった。
なお、その後戦闘をしていたゴブリンたちが出てきて、感謝された。
「危ないところを手助けしてもらって、助かりました」
ここでゴブリンたちに適当に返事を返して、別れてもよかった。
だが、この場でゴブリンたちと戦っていた者たちは、パワードスーツを着ていた。
その者たちの魂を刈り取ったことで、大量のパワードスーツが主無きまま、その場に残っている。
パワードスーツひとつより、大量にある方がドワーフ技術者の心証がよくなるだろう。
そう考えると、我はこれらのパワードスーツも、ドワーフの元へ持っていくことに決めた。
「死霊魔法・不死者創造」
我は魔法を用いて、パワードスーツの中にいた者たちを、アンデッドとして蘇らせた。
「ウーガー」
「アアアー」
知性の足りない間に合わせのアンデッドだが、この者たちに命じるのは、ドワーフ技術者の元までスーツを動かすこと。
なので、スーツを動かすだけの能力があれば、それでよかった。
「お前たちは私の後についてこい」
我は蘇らせたアンデッドたちに命じて、複数のパワードスーツを、ドワーフたちの元へ運んで行った。
その最中、またしても戦闘が発生していたが、いずれも我から見れば脅威に値せぬ戦いだった。
エルダーリッチともなれば、準魔王クラスの能力となる。
我が多少戦闘経験に乏しくとも、魔法の力を用いることでゴリ押すことが可能だった。
「カジノルームへようこそ、お客様。サービスして……キャア」
「ふざけるな、俺たちはガルデミラン帝国兵士。貴様らの宇宙船を占拠する!」
大賢者の塔カジノルーム宇宙戦艦ダイワ支店。
偉大なる高位魔神であるクレト様が運営するカジノルームにて、不埒な輩が出没した。
カジノルームに入ってくると共に、頭上に向かってレーザーライフルをぶっ放し、接客に出ていたバニーガール相手に、乱暴な立ち振る舞いをする。
その姿を見て、カジノルーム宇宙戦艦ダイワ支店の支配人を任されている中位魔神の私は、表舞台へ出ることにした。
普段は”向こう側”にいて人前に出ないが、厄介な客の対応は、私の仕事である。
「おやおや、お客様は随分と乱暴なご様子。あまり騒がれては、カジノのスタッフたちが委縮してしまいます。どうか、ここは穏便な態度になっていただけないでしょうか」
私は白い仮面を顔にして、乱暴な客の前で一礼する。
パワードスーツと呼ばれる、随分ときな臭いスーツを着た客だ。
強力な武器や防具を持つことで、気を強くしているのだろうが、私の預かるカジノで狼藉を許すわけにはいかない。
「貴様、おちょくっているのか……面倒だ、死ね!」
スーツを着た相手は、私の言葉を無視。
話しを聞かないばかりか、それ以上のやり取りを拒絶して、私に向けてレーザーライフルの引き金を引いた。
もっとも私には物理攻撃が通用しないので、レーザーは私の体を素通りして、背後にあるカジノの備品に命中する。
「おや、カジノの備品を破壊するとは、どうやら不良なお客様のようだ。フフフ、客でないゴミクズは、早々にご退場願わないといけませんね」
「貴様、ライフルの一撃が効いてないのか」
「フフ、フフフ」
スーツの男は動揺しているようだが、そんなことはどうでもいい。
「さて、これより特別な賭けを始めましょう。この場を覗いている魔神の方々。これより当カジノに侵入したゴミどもに、殺し合いをさせます。最後まで残っている者を当てた方が勝者です。掛け金は人間の魂1千個から。さあ、奮って賭けにご参加ください」
この場にはいないが、離れた場所からでもこの場を覗くことが可能な魔神たちに、私は声をかける。
「貴様、一体誰に向かって……」
私は魔神達と会話をしている。
スーツの男には、私が話しかけている魔神たちの姿が見えないので、私が誰と話しているのか理解できないのだろう。
だが、ゴミの考えなどどうでもいい。
「精神魔法・魅了」
私は魔法を用いて、スーツの中にいる男の精神を弄る。
チャームの魔法は、術の対象者が術の使用者に対して、忠誠を誓うようにする魔法。
ただし中位魔神である私が用いる場合、この魔法の効果時間は永遠となる。
生きている時はもとより、死後の世界にたどり着いた後も、術にかかった者は、永遠に私の下僕と化し、従い続ける玩具となり果てる。
「さあ、仲間たちと楽しい殺し合いを始めなさい。命令はこうです。華々しく戦い、そして最後まで生き残るのです」
私がチャームを放った相手は、1人ではない。
カジノにはさらに多くのスーツたちがいたので、まとめてチャームの魔法をかけて、私の精神支配下に置かせてもらった。
「死ね死ね死ね」
「俺が最後まで生き残って見せる」
「ガアアア、足が足が……でも、俺はまだ死なない……」
そうしてチャームにかかった者たちが、互いに武器を向け合って殺し合いを始める。
このカジノは、元はダイワの下士官食堂だったが、次元魔法を用いることで外の空間とは隔絶されている。
この空間内で、スーツたちが派手に暴れまわったところで、次元魔法の外にあるダイワに被害が出ることはない。
「さあさあ、魔神方。早く掛けないと終わってしまいますよ」
それより私は、現在進行している賭けのために、この戦いを遠くから見ている魔神たちに向かって、さらなる謳い文句を口にしていった。
「あのー、支配人。私たちのことも気にしてもらえますか?」
「ご安心を。あなたたちの周囲には私が結界魔法を展開しているので、攻撃されても怪我をすることはありませんよ」
「んー、だったら大丈夫なのかな?」
戦闘が激化するものだから、途中、バニーガールが私の傍にやってきた。
もちろん従業員の身柄のことも、忘れていない。
そんな手抜きをしては、支配人失格ですからね。
あとがき
現在のダイワの危険度。
エルダーリッチの科学者が、パワードスーツを着たアンデッド軍団を率いて進軍中。
なお、エルダーリッチは範囲型即死魔法を連発可能。
カジノルームの中位魔神は、精神支配によって敵を同士討ちさせている。
なお、この中位魔神は物理攻撃無効の上に、精神支配に特化している。




