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63 中位魔神クリスタ戦う

 宇宙戦艦ダイワの旅は今日も続く。


 前回はガス惑星で艦の修理を行った我々だが、今回は燃料収集のために、小惑星に着陸した。


 ……のだが。


「小惑星地下にガルデミラン帝国軍の秘密基地が存在しました!きわめて機密性の高い基地のため、事前のレーザー索敵に引っ掛かりませんでした」

「現在、燃料採集のために艦外作業をしていたクルーが戦闘状態になっています!」


 あろうことにも小惑星はガルデミラン帝国の支配下にあり、艦外作業に従事していたクルーとガルデミラン人の間で、銃撃戦になってしまった。


「艦外作業を中止。クルーを船に呼び戻すとともに、ダイワの発進準備を急がせろ!それと敵の戦力が人間だけのはずがない。直ちにクルーを戦闘配置につかせろ」


 ブリッチに残っていた私は、すぐさま指示を出し、現状からの離脱を最優先とする。


「艦外作業員、帰還しました」

「えっ、もう帰ってきたのか?」


 私が指示を出してから10秒と経たずに、クルーたちが帰還した。


「エルダーリッチの科学者が同行していたので、転移魔法で戻ってきたそうです」

「高位の魔族って優秀だな」


 我々ゴブリンは今や低位魔神となったが、個々人の実力は非常に低く、エルダーリッチクラスの魔族に劣る戦闘能力しかない。

 弱さを科学の力で補っているが、それでも強力な魔法を使える存在がいると、科学力で補った力を容易に覆してしまう。


 むろん科学がすべての面で負けているわけでなく、エルダーリッチでも、ダイワの主砲並みの攻撃力は出せない。



「艦長、緊急発進の準備をさせているが、それでも10分近く時間がかかる」

「さらに悪い知らせだ。艦の動力炉を停止させていたため、主砲を含めたレーザー兵装のほぼ全てが使用不能だ。再起動を急がせるが、すぐに戦いは無理だ」


 艦外作業員は無事に戻ってこられたが、ダイワ本体にて問題発生だ。


 燃料補給中であったため、今のダイワは極めて無防備な状況。


 ドワーフ技術主任と、グレー科学主任からの報告に、副長の私は思わず頭を抱えたくなった。


 いくら強力な武器を持っていても、今使えなくては意味がない。


「レーダーに反応。小惑星地底部より、ガルデミラン帝国製のミサイル砲塔が地上に複数現れました。さらにレーザー砲塔の存在も確認。ダイワに向けて、照準を定めているものと思われます」

「クッ、なんてことだ。艦長、どうしましょう」


 現在無防備な我々では、手の打ちようがない。

 私はクレト艦長の方を見て、現状を何とかできないかと縋る思いで見つめた。


 私はゴブリン提督と共に、いつか高位魔神様の戦う世界にも立って見せると誓い合った。

 そんな私が、都合が悪くなった途端、高位魔神であるクレト様に縋るは間違っている気がする。

 だが、私の拘り(プライド)だけで、艦のクルーを危険にさらすわけにいかなかった。


 最悪、抵抗できないまま艦ごと破壊されてしまう危険がある。



「クリスタちゃん行ってみる?たまには暴れないとつまらないでしょう」

「まあ、暴れてもいいんですか」


 私が危機感を抱く中、クレト艦長はいつものように呑気な顔をして、クリスタさんに話しかけた。


「えっ、クリスタさんが暴れる?」


 可憐な姿のクリスタさんが暴れまわるなんて、私には全く想像できない。

 しかしそんな風に思っている私の前で、2人の会話は進んでいく。


「ドカーンとやっちゃっていいよ」

「フフフ、では久しぶりに、頑張って戦ってきますね」

「うん、頑張ってきてねー」


 クレト艦長がいってらっしゃいと手を振ると、クリスタさんの姿が転移魔法によって消えた。


「ああ、クリスタさんが行ってしまった。……じゃなくて。艦長、可憐なクリスタさん1柱だけに戦わせるとか、何を考えているんですか」


 私は艦長の考えに賛同できなくて、つい咎めるようにきつく言ってしまう。


 だけど艦長は、そんな私に対してニヘラと笑った。


「大丈夫だよ。クリスタちゃんって星は壊せないけど、ガルデミラン帝国の艦隊くらい相手できるから」

「ええっ、あんなに可憐なのに……」


 私は可憐なクリスタさんの身に何かあったらどうしようと、心配になってしまう。


 だけど、クレト艦長は私の心配など全く関心がないようで、なぜか艦長席で折り紙を取り出すと、それで紙飛行機を折り始めた。


「皆は艦の発進準備を急いでしてねー」

「言われずとも急いでるよ!」


 私を置いてきぼりにして、艦長の命令に、ドワーフ技術主任が答えていた。








 私の名前はクリスタ。

 クリスタル魔神の1柱であり、我らの偉大なる王アーヴィン様より、クリスタの名を賜った名前持ち(ネームド)

 以前、私が人間の姿を真似ているのをご覧になったアーヴィン様が、「きれいな女性像だな」と言って、私の姿をお褒めになってくださった。

 その時から私は、クリスタルの体で、人間を模した姿をとっている。


 だが、あくまでも人間の姿を模しているだけで、私本来の姿ではない。

 私もまた、魔神の1柱。

 栄えある魔神王アーヴィン様の配下たる魔神として、本来の姿を顕わにして、戦いに臨むとしよう。



 私は転移魔法によって小惑星の空に移動する同時に、本来の姿になって出現する。

 私の本来の姿は、6面の立方体型クリスタル。

 青い光沢を帯びたクリスタルで、全長は300メートルほどになる。


 私は小惑星の空中に出現するとともに、地表に存在するガルデミラン帝国のミサイルやレーザーの砲台を確認した。


「滅びなさい、”天上よりの裁きの光”」


 私は、私と同じ種族だけが用いることができる光魔法(スキル)を用いて、地上のゴミを攻撃する。

 ガルデミランの汚らわしい武器を、天空から放つ光魔法のシャワーによって貫く。


 ダイワのレーザーとよく似た力で、地上にあったガルデミランの砲台をことごとく破壊。


 十数基の砲台を、一度の魔法で破壊し尽くした。



「クリスタさん気を付けてください。ガルデミランの艦隊も出てきました。戦艦クラスを含めた、20隻から成る艦隊です!」


 だけど敵はこれで終わりでない。

 念話(テレパシー)によって、ゴブリン副長からの声が届いたので、私は新たに敵が出現したポイントへ意識を向ける。



 小惑星の地平線の向こう側。

 そこから緑色の塗装をされた、ガルデミラン帝国の艦隊が出現した。


「消し飛べ”浄化の光”」

 私は本体の中心部にあるコア部分から魔力(エネルギー)を放出し、それをクリスタルの体内で高速回転させる。


「危険です、超高出力の陽電子砲が……」


 ガルデミラン側の人間が考えていることも、念話(テレパシー)を介して私は聞いていた。

 何やら慌てているようだが、全てが遅い。


 私は体内で回転させた魔力(エネルギー)を、ガルデミラン艦隊に向けて発射した。


 直後、私のクリスタルの体の一角から、超魔力(エネルギー)の光が放たれる。

 ダワイの主砲など鼻で笑える威力を持つ、魔力の一撃。


 それが薄汚いガルデミラン帝国の戦艦を、一撃のもとに融解させた。

 貫通ではない。

 私の魔力に触れただけで、艦の全てが溶けて蒸発していく。


「せ、戦艦撃沈。一撃です!艦の装甲がまるで意味をなしていない!」


 ガルデミラン側のクルーたちの慌てる声が聞こえる。



「愚かな者たち。その程度の戦力で、魔神に戦いを挑む愚かさを教えてあげましょう」


 私は再度体内で光魔法の力を高速で回転させ、”浄化の光”の第二射を放つ。


 今度は直線に放つのでなく、攻撃を放ちながら横向きに振るうことで、周囲一帯をまとめて薙ぎ払う。


 私の攻撃を受けて、ガミラン帝国の艦隊がさらに5隻沈む。

 攻撃の余波が及んで、小惑星の表面も少々融解したが、さしたる問題はない。


「脆すぎる敵」


 敵の弱さに、私は思わず笑いそうになる。

 その程度の力で、魔神である私に戦いを挑んでくるのが、理解できない。


 私でさえ、ガルデミラン帝国の艦隊相手にこれなのだ。

 クレト様がわざわざ出張る必要がないのも、理解できるというものだ。



 だけど、私が一方的に攻撃を続けるだけでは終わらなかった。


「反撃しろ、全レーザー砲を、クリスタルの飛翔体に向けて発射!」


 ガルデミラン艦隊から、レーザー砲による攻撃が発射される。


 もっとも強力な戦艦を沈めたために、残りは駆逐艦と巡洋艦級のレーザー砲撃だった。

 でも、私の体はクリスタル。

 光系統の攻撃に対して、私の体は無類の強さを持っている。


 レーザー攻撃が私の体に接触すると同時に、クリスタルの体によって光が歪められ、バラバラの方向に反射して飛んでいく。

 レーザー攻撃が私のコアに届くことはなく、何もせずに無力化した。


「ダメです、クリスタルの体がレーザーを屈折させてしまいます。レーザー攻撃が通じません!」

「ならばミサイルを撃て。クリスタルの船体であれば、爆発系の武器には弱かろう」


 レーザーを無意味と判じて、ガルデミラン帝国艦隊は次の攻撃を仕掛けてきた。


 確かに、私の体はクリスタル。

 光攻撃に対しては何もしなくても無力化できるが、爆発系の攻撃はあまり受けたくない。


 もっとも、私は魔神。

 ただの宇宙船を相手にするような戦い方で、この私に勝てると思ってもらっては困る。


「土魔法・結晶の壁(クリスタルウォール)


 私は魔法を使って、迫りくるミサイル攻撃に対して壁を作った。

 光を反射して輝くクリスタルの壁が、地上からせり上がり、私を守るように展開。

 横幅は3キロ以上、高さも1キロに及ぶ、巨大防壁となる。

 そこに立て続けにガルデミラン艦隊のミサイルが命中し、派手な爆発とともに、クリスタルの壁が砕け散っていく。


 攻撃の激しさによって、クリスタルの壁が崩落していくが、術者である私を守るには十分な役割を果たしてくれた。


「なっ、クリスタルの防壁が現れただと、どういうことだ!?」


 私が用いた魔法に、ガルデミラン艦隊のクルーが動揺しているが、私の行動(ターン)はまだ終わっていない。


 私は砕け散った水晶の壁の残骸に、再度魔力を流す。


「土魔法・水晶の雨(クリスタルシャワー)


 砕けた水晶が私の魔力を受けて空中に浮かび上がり、ガルデミラン帝国艦隊に向かって、クリスタルの刃の雨となって降り注いでいく。


「主砲塔に被弾、主砲使用不能」

「左舷第4エリアの防壁が突破されました」

「ブッリチ、ブリッチはどうした。まさか敵の攻撃を受けてやられたのか!」


 水晶の雨(クリスタルシャワー)により、多くのガルデミラン艦が被害を受ける。


 私の放つ、”浄化の光”に比べて攻撃力は劣るが、ガルデミラン艦隊を相手にするには、十分な被害を出してくれた。



「クリスタちゃん、地下基地から小型戦闘機もてできたよー」

「はい、クレト艦長。そちらもきちんと滅菌しておきますね」


 クレト艦長から念話が届いて、小惑星にある地下基地から、ガルデミラン帝国の戦闘機部隊が出てきた。

 数は80といたところ。


「”天上よりの裁きの光”」


 私は汚いばい菌を駆除するために、光のシャワーを降り注がせて、戦闘機を消毒していく。

 空中で私の攻撃を受けた戦闘機が爆発し、小さな光を無数に作り出す。


 ただし砲台と違って、戦闘機は小さいうえに動き回るので、私の攻撃を回避したものも多い。


「まるでハエね。ウロチョロ飛び回って面倒な奴ら」


 それどころか私の攻撃を掻い潜って、レーザーとミサイル攻撃を、私の体へ放ってくるものまでいる。


「やったぞ、命中だ」

「対艦ミサイルの直撃だ、これならばさすがにクリスタノルの化け物でも……」


 レーザーはともかく、ミサイルをこの私の体に当ててきた。

 体の表面にひびが入り、水晶のボディーが剥落する。

 深刻なダメージには程遠いが、私がダメージを受けたことに違いはない。


「”天上よりの裁きの光”」


 ハエごときが、私の体に傷をつけるとは許されない。

 私は再度”天上よりの裁きの光”にて、うるさいハエどもを叩き落とす。


「艦隊よりミサイル接近、クリスタさん注意を!」


 と、ゴブリン副長の念話が聞こえた。


 ハエに構っている間に、生き残った艦隊が、私に対して再度攻撃を敢行してきた。


「土魔法・結晶の壁(クリスタルウォール)


 私は再度クリスタルの壁を作り出して、ミサイル攻撃を防ぐ。


「クッ」


 ただ、最初に比べて術式の練り方が甘かったようで、壁を突破した攻撃の一部が、私の本体にまで届く。

 クリスタルの体にさらにダメージを受け、体の一部が剥落し、小惑星の大地へ落ちていく。


 私はコアさえ無事であれば、戦闘を続けることができる。


 だけど。


「ゴミどもが、私の体を傷つけて、無事に生きて帰れると思ってるのかしら?」


 女の体に傷を作る奴らを、許しはしない。



 私は念動(サイコキネシス)を用いて、砕けた体の一部を空中に浮かべる。


 その砕けた体に向かって、私は”浄化の光”を放った。


「ひ、光が、光が乱反射して、辺り一帯に凄まじい攻撃が及んでいます」

「艦の装甲が突破されました」

「不味い、乱反射した光の一部が小惑星の地表を溶かして……地下基地内部にまで攻撃が届いています!ウギャアーッ」


 私の最大火力である”浄化の光”。

 それを乱反射させて放つことで、辺り一帯に無差別の攻撃をまき散らした。


 攻撃でガルデミラン帝国艦隊と、うるさいハエども、さらに地下基地にまで攻撃を届かせた。



「のああっ、第二副砲が溶けちまった。この前修理したばかりなのに、完全に溶けちまったー!」

「ドワーフ技術主任、落ち着いて!」


 でも、少し無差別にやりすぎたようで、ダイワのブリッチクルーまで騒ぎだした。


 でも私にとって大した連中ではないので、顔色をうかがうつもりなどない。


「クリスタちゃん、フレンドリファイアはほどほどにねー」

「はい、クレト艦長」


 ただし、クレト艦長は別。

 完全に別。


 私にとって崇拝すべき主とは比べられないものの、それでもクレト様は偉大なる高位魔神様。


 私は、不機嫌なのが念話(テレパシー)に出ないように注意しながら、クレト様に返事を返した。


 この後、生き残っていたガミラン帝国の戦闘機(ハエ)がいたので、私はそれを適当に破壊しつつ、戦闘を終わらせた。





 そして戦闘終了後、発進作業を終えて宇宙空間へ飛び立っていたダイワに、私は転移魔法で戻った。


 アーヴィン様に褒められた人間の姿に戻った私だったけど、戦いで体の一部を欠損してしまいで、そのせいで人間の姿が完全に取れなかった。

 体の一部が欠けて、美しさが損なわれてしまった。


「おかえりクリスタちゃん、今日はもう休んでいいからねー」

「はい、クレト艦長。こんな汚れた姿を見せてしまって、申し訳ないです」


 私は自らの欠けた体に恥じつつも、クレト艦長からお休みの許可をいただいたので、今日はゆっくりと休ませてもらう事にした。

 この程度なら、1日あれば元に戻るだろう。



「うへー、”高位魔神”の戦闘能力って凄いんだな」

「なあ、グレー科学主任。ダイワより強い、クリスタの戦いを見て驚くのは分かるが、あれでも”中位魔神”だぞ」

「へっ、中位ってマジ?高位魔神じゃないのかよ!」


 私がブリッチを出ていく直前、グレー科学主任とドワーフ技術主任がそんなことを口にしていた。

あとがき



 高位魔神ばかり戦っていてもあれなので、今回は中位魔神の戦闘風景です。


 中位魔神の段階で、魔王と同程度か、それ以上の戦闘力となります。

 ただし高位魔神みたいに、星を砕くことは出来ません。



 クリスタの本体に関しては、エヴァンゲリオンのラミエルみたいな感じかなー

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