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60 ガルデミラン帝国軍巡洋艦隊との闘い

「左舷方向、約200万キロの距離にワープ反応。ガルデミラン帝国軍巡洋艦5隻が、ワープアウトしてきました」


 ガルデミラン帝国、それは我々とは不倶戴天の敵。


 ……と言いたいところだが、この前クレト艦長に率いられた我々が、ガルデミラン帝国軍駆逐艦相手に海賊行動を行ったので、それ以来目をつけられて攻撃されている。


 身から出た錆と言われればそれまでだが、我々は元が魔族だからか、攻撃行為にそこまで躊躇というものがなかった。


 ただ相手が隣の銀河系を支配していて、最近は我々が住んでいる銀河系にまで進出しているような、恒星間国家を超えた、銀河間帝国だったというのが、かなり致命的だった。


 ダイワ1隻で渡り合うには、あまりにも巨大すぎる敵だ。

 とはいえ目をつけられている段階で、向こうの帝国から本格的に敵対行動をとられるまでにはなっていない。



「一斉攻撃で、ドカーンといっちゃおう」


 向こうさんは海賊狩りの気分でいるだろう。

 戦闘を回避できなければ、するつもりもないので、クレト艦長が景気のいい戦法を取ろうとする。


「了解、主砲、および副砲ドカーンといっちゃいます。おまけでミサイルも全弾発射……」

「命令撤回!」


 艦長の命令に、ダイワの戦闘部門を統括するゴブリン戦闘主任が応えようとしたが、副長の私が急いで撤回させた。


「一斉射撃は攻撃が外れた際の隙が大きすぎる。まずは一番砲塔を発射。その後誤差修正を行い、二番砲塔による修正射を行え」


 修正を繰り返しながら主砲を撃つことで、敵艦に攻撃を必ず命中させる。

 堅実な戦い方をするべきだと、私は命令を変更させた。


「ええーっ、主砲を1発ずつ撃っていくとか、堅実だけど地味すぎるよ。ドーンと行こうよ、ドーンと!」

「クレト艦長、主砲の一斉射は確かに派手ですが、全弾ハズレたらただの間抜けですよ。次弾を装填するまでの間、こちらはかなり無防備な状態になってしまいます」

「ブーブー、つまんない」

「我々は宇宙戦闘のプロですので、戦い方は私にお任せください」

「ブーブー」


 クレト艦長が頬を膨らませて不服そうにするものの、口出ししてくる様子はない。


「ゴブリン戦闘主任、そう言うわけで第一主砲を斉射。着弾の確認後、誤差修正して第二主砲を放て」

「了解で―す」


 私の命令に、ゴブリン戦闘主任はやや元気なく答える。

 クレト艦長と同じ考えで、主砲の一斉射をしたかったのだろう。

 だが、戦場で派手な戦い方など無用。


 高位魔神様たちの戦いであれば、見た目重視でいいのだろうが、我々は元はただのゴブリン。

 戦場で派手に振舞ったところで、一瞬で命を刈り取られてしまうザコだから、堅実に戦うことで、生き延びる戦い方をするべきだ。



「第一主砲、発射!」


 さて、命令の修正後、ダイワの第一主砲が斉射された。

 ダイワの主砲は、45センチ3連装レーザーカノン砲で、主砲1基から3門のレーザー砲撃が放たれる。

 光の速度で宇宙空間を直進したレーザーが、ガルデミラン帝国の巡洋艦に肉薄する。


「主砲命中せず。修正情報を戦闘部門に伝達します」

「ゴブリン戦闘主任了解。第二主砲、上下角プラス2修正」


 レーダーを担当するクリスタさんからの報告で、攻撃はハズレと分かる。

 だが続く第二主砲のために、誤差修正が行われる。


「第二主砲、撃て!」

「第二主砲、発射!」


 続く主砲の2撃目。

 私の命令を受けたゴブリン戦闘主任が主砲を放つ。

 強力なレーザーが再び宇宙空間を切り裂き、それがガルデミラン帝国の巡洋艦の1隻に命中した。


「主砲、ガルデミラン帝国巡洋艦に命中。なれど損害は軽微の模様」


 相手の宇宙船もただの張りぼてではない。

 ダイワの主砲は非常に強力なレーザー砲で、この威力は現在の大賢者の塔では模倣できないレベルにある。

 それでも相手は沈まない。


 だが命中が確認できたので、それでいい。


「第三から第五主砲までを斉射。巡洋艦に集中攻撃を行え」

「了解、前部第三主砲、および後部第四、第五主砲発射!」


 続く攻撃は、ダイワの残る3基の主砲からの一斉攻撃。

 3基の主砲から、合計で9つのレーザーが斉射され、巡洋艦に情け容赦なく襲い掛かる。

 強力な集中攻撃を受けて、巡洋艦はなすすべなく装甲を貫かれ、艦内にレーザー攻撃が及ぶ。


「攻撃の命中を確認。敵巡洋艦を撃沈しました」


 攻撃によりガルデミラン帝国軍巡洋艦を破壊した。



「ワッホーイ、戦艦の攻撃はこうでなくちゃ。敵を一撃で落とす。これこそが戦艦の浪漫だよー」


 敵を1隻破壊して、クレト艦長がうんうんと頷く。


「各員警戒を緩めるな。敵はまだ4隻残っている。主砲の再発射までの間、こちらの攻撃力が落ちる。敵に対して船体を縦にし、被弾面積を可能な限り抑えろ」

「ゴブリン航海長、了解しました、艦の針路を修正します」


 戦闘はまだまだ続く。

 クレト艦長は艦レベルでの戦闘指揮では役立たずなので、私が順次命令を出していき、部下たちが従っていく。


 敵に対して、艦を縦に向け、そこにガルデミラン帝国艦隊の攻撃が襲い掛かってくる。


「敵弾、全弾回避しました」


 艦の操舵を行うゴブリン航海長の腕の良さか、ガルデミラン帝国艦隊の攻撃をやり過ごした。


「主砲、再装填完了」

「第一主砲を発射。その後、誤差修正を行って第二射を放て」

「ゴブリン戦闘主任了解しました。第一主砲斉射!」


 そして今度はこちらが再度攻撃を行う。

 主砲を1発ずつ撃ち込んでいき、そのたびに誤差修正を行って、敵艦に確実に有効打を与えていく。

 命中が確認できれば、装填済みの主砲全門を使っての攻撃に出る。


「うんうん、ロマンロマン。少し地味な気がするけど、まあいいかー」


 私は戦闘の指揮で忙しいが、クレト艦長はそんなことを言って、どこからともなくお菓子を取り出して食べ始めた。


「艦長、ここで食べ物を食べるのはダメだって、この前も言っただろう」


 それを見咎めるのが、ドワーフ技術主任。


「はーい、じゃあ、艦長室に行ってるー」

「……艦長が、戦闘中にブリッチを出たらダメだろう」

「じゃ、ここで食べてる。モグモグー」

「……」


 まったく緊張感のないクレト艦長。

 しかし、そこでダイワ全体が振動する。


「敵巡洋艦のレーザー主砲が艦首部分に被弾。なれど損害は軽微」

修理班(ダメージコントロール)は、至急急行せよ!」


 艦長と違って、ブリッチクルーはてきぱきと働く。

 ドワーフ技術主任も艦長の相手をしていられなくなり、部下であるダメージダメージコントロールチームへの采配を行いだした。


「敵艦隊、副砲の射程内に入りました。装填完了次第、順次射撃を開始します」


 そして戦闘によって、ダイワとガルデミラン帝国艦隊との距離が縮まった。

 今までは主砲の打ち合いだったが、そこに射程ではやや劣る副砲の攻撃が加わる。


 ダイワの主砲に対して、ガルデミラン帝国は巡洋艦クラスということもあって、主砲の攻撃力が劣っている。

 さらに副砲の性能に関しても、ダイワが優れていた。

 副砲が立て続けに発射され、ダイワとガルデミラン帝国艦隊との間で、途切れることのない弾幕の応酬が始まる。


「左舷装甲版、被弾によって温度上昇。されど融解危険温度への到達は確認されず」

「対空レーザー機銃群に被害発生」

「左舷各所に損害発生。第12区画にて火災発生、自動消火装置作動」


 性能差はあっても、さすがに数の差を無視することはできない。

 重厚な装甲のおかげで大きな被害こそないものの、ダイワの各部から被害報告が上がってくる。


「主砲命中を確認。敵巡洋艦撃沈」

「副砲攻撃により、敵巡洋艦1を撃沈」

「艦首ミサイルを発射、敵前進予想ポイントに攻撃を集中させ、敵を減速させる」


 しかしこちらも敵の至近に入ったことで、持てる武装の全てをつぎ込んで、攻撃を繰り出していく。


 ダイワは超巨大戦艦。

 戦艦がたかが巡洋艦ごときに遅れをとらないと、見せつけてやらなければならない。



「主砲、敵巡洋艦のブリッチ部分に直撃。敵巡洋艦戦闘不能」


 そうして戦いが継続した結果、戦況はダイワ有利で進む。


 敵艦隊は最後に1隻だけ残された巡洋艦となる。

 さすがにここまでくると、敵も状況の不利を察する。


「敵巡洋艦のエネルギー反応の増大を確認。ワープ航法へ移るものと推測されます」


 レーダー担当のクリスタさんの報告で、敵が逃げようとしているのが分かる。


「ガルデミラン帝国の本隊に、こちらの位置を知られたくない。逃走を全力で阻止せよ」

「全兵装にて、攻撃を開始します」


 私の命令にゴブリン戦闘主任が従い、ダイワの持てる兵装の全てを用いて、攻撃を開始する。


「みんな、頑張れー」


 艦長もお菓子片手に、呑気に応援してきた。


 完全に観戦気分になっていて、ブリッチクルーの緊迫感に包まれた空気などまるでお構いなし。

 能天気な声で応援だ。


「主砲、敵主機関(エンジン)に命中。機関部の誘爆により、撃沈しました」


 最後の敵も、逃げられる前に沈めることができた。


「総員、よく戦い抜いてくれた。全艦、戦闘態勢を解除。警戒体制に移行して、周辺の危機警戒に当たれ」

「了解しました」


 戦闘は終了。

 敵の増援の可能性があるため、完全に気を抜けないが、それでもひとつの戦いを終えることができた。



 それと、この戦いでの損害報告もすぐに上がってくる。


「クルーの被害はゼロ」

 まず、人命の損失はない。


 我々ゴブリンは死んでも復活できるが、体全てを消し飛ばされればそうもいかない。

 魔神だけでなく、通常のリッチやドワーフなどのクルーもいるので、そういったメンバーにも被害がでてないことに、まずは一安心だ。


「レーザー機銃と、一部装甲が突破され艦内通路に被害が及んでいるものの、航行しながら修理可能なレベルだ。戦闘、航行能力への支障はないから安心してくれ」


 艦自体への被害はあるものの、ドワーフ技術主任曰く、非常に軽微とのことだった。


「技術者としてはもっと盛大にやり合ってくれてもいいんだぞ。修理箇所を直す楽しみが欲しいからな」


 そんなことを言って、ドワーフ主任は笑った。


「モグモグ。あれ、お菓子なくなっちゃった」


 あと、この船の最高責任者であるクレト艦長は、まったく役に立たずで、我々の戦いを観戦しているだけだった。


「クリスタちゃーん、おかわり持ってきてー」

「はいはい、少しお待ちくださいね」


 それどころか我らゴブリンの高嶺の花(アイドル)クリスタさんに、雑用を投げていた。

あとがき




 宇宙戦艦ヤマトのパチモン、その名はダイワ~

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