表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/78

59 旅立つ船はダイワ

まえがき




 今回から、第2章-εとなります。



 それと最初はファンタジーで書いてたのですが、ジャンル詐欺が激しくなりすぎたため、ファンタジーからSFにジャンル変更しました。

(2019/11/1)

 私はゴブリン副長。

 栄えある魔神王アーヴィン様の配下にして、低位魔神の1柱でもある。

 現在は大賢者の塔にて、ゴブリン宇宙軍次席の地位にあり、ゴブリン提督に継ぐ実力者である。


 ……なのだが、こんな地位は大賢者の塔においてはたいして意味をなさない。


 ゴブリンの中では私は上から数えたほうが早い実力者でも、高位魔神様から見れば、ただの小間使い程度の存在。



「さらばーローラシアよ。旅だーつ船はー、宇宙戦艦ダーイーワー」


 現に本日は高位魔神の1柱、クレト様に拉致られてしまい、300余名のゴブリン宇宙軍の兵士たちと共に、宇宙戦艦ダイワの運用を(強制的に)任されていた。



 既にダイワは大賢者の塔を飛び立って、宇宙空間を航行中だ。

 私はダイワの副長席に腰掛け、隣にある艦長席にはクレト様が座っていた。



 しかし、なんでこうなったのだろう。

 クレト様曰く、隣の銀河系に行くとのことだが。


「クレト様、どうして隣の銀河系にわざわざ出向かれるのですか?」

「放射能除去装置が売ってるからー」

「は、はあっ……」


 クレト様は大賢者の塔において、アーヴィン様、メフィスト様に次ぐ3番目の実力者。

 噂では単純戦闘力だけならば、メフィスト様を上回るとされる高位魔神様で、我々から見れば雲上人と言っていいお方だ。


 ……なのだが、大変失礼ながら、それに反比例するように、頭が悪い。

 何も考えてない。

 魔神王陛下は、バカ扱いしている。



「なぜ、放射能除去装置を買いに行くのですか?」

「主が惑星大気圏内で核兵器を使ったら、放射能汚染が起きて生き物が住めない星になるから、使っちゃダメって言うからだよー」

「は、はあっ」


 言っている意味がよく分からない。


「放射能除去装置があれば、放射能汚染も怖くなくなるよね。大気圏内で核兵器使い放題になるよ。ワッホーイ」

「……つ、つまり大気圏内で核兵器を使いたいから、放射能除去装置を取に行くと?」

「そうだよー」


 クレト様は何も考えてなさそうなに、陽気な声で頷いた。


 しかし、よくよく考えれば理解できる。


「確かに、放射能汚染さえなんとかできれば、地上で核を撃ち放題ですね」

「だよねー。僕って頭いいでしょうー」

「確かに、悪くない考えです」


 核を地上で使ってはならない最大の理由は、威力でなく、放射能汚染によって惑星が死の星になってしまうから。

 しかしその問題を解決できれば、核兵器をいくら使ってもいいと言える。



「大変、素晴らしい考えですね」

「エッヘン」


 目から鱗。

 クレト様は頭が残念な方だとばかり思っていたが、その考えに私は感動させられた。


 世の中の独裁者や軍国主義者なら、垂涎もののアイディアだろう。


 私は支配者ではないが、魔神の1柱として、クレト様の考えに深く賛同した。




「……全然素晴らしくないだろ」


 だが、不満を述べる声が上がった。


 ブリッチクルーの1人。

 今回のダイワの旅に同行した、技術部門を統括するドワーフの男だ。

 現在は、ダイワの技術主任としてブリッチクルーの1人になっている。


「技術主任、クレト様のアイディアに何か不満が?」

「核兵器撃ち放題なんて、星がボロボロになるだろ。そんなことをしたら、うまい酒が飲めなくなっちまう!」


 ドワーフの性か、技術主任はそんなことを言ってきた。


「えっ、おいしいお酒が飲めなくなっちゃうの?」

「そうだぞ。クレト様よ、核なんて使いまくったら、酒の材料がある畑や、醸造所だってだってメチャクチャになっちまう。そうなったら、うまい酒が作れなくなってしまう。そんな世の中、俺は御免だぜ」

「お、お酒、飲めない……ウ、ウウウッ」


 ドワーフも酒好きだが、クレト様も大の酒好き。

 互いに気の合うところがある故か、目に見えてクレト様が動揺した。



「でも、ローラシア以外の有人惑星で使えば問題ないよね。僕って頭いいー」


 動揺したけれど、すぐに自己解決してしまった。


「まあ、別の星だったら問題ない……かな?」


 ドワーフ技術主任も、クレト様の考えに適当に頷いた。



「頼むから、俺たちの星でも核を使わないでください」


 ただし、今度は強制拉致られメンバーの1人。科学技術者で、現在はダイワの科学部門主任になっているグレーが嘆く。


「大丈夫だよ。グレーとは仲良くしなきゃダメだって主が言ってたから、グレーの星では使わないよ」

「本当に頼みます。俺たちの星を滅ぼさないでください」

「うんうん、分かってるよー」


 グレーの大きな瞳に、涙らしき汁が流れていた。

 一度高位魔神様たちが原因でグレーの母星が滅びたとあって、グレーの態度はかなり必死だった。




 こんな感じで会話をしつつ、ダイワは宇宙空間を進んでいく。

 ワープ航行も可能なダイワなので、ワープを使いつつ、隣の銀河目指して航海していく。


「……暇だねー」

「星を見飽きたら、宇宙の旅なんてこんなものですよ、クレト艦長」


 星を見ながらの旅だったが、早くもクレト様……艦長と呼ばないとダメだと言われたので、今では艦長と呼んでいる……が、退屈し始めた。


「そもそも転移魔法使えば、隣の銀河系でもすぐに行けるんじゃないですか?」


 高位魔神様の真の実力がいかばかりか。

 その限界を私は知らないが、クレト様ほどの実力であれば、転移魔法ひとつで、この宇宙内ならどこでも一瞬で行けると、私は思っている。


 だけど艦長の考えは、少し違っていた。


「チッチッチッ、旅って言うのはね、道中でブラリと寄り道するから楽しいんだよ。転移魔法を使ったら、寄り道の楽しさがなくなっちゃうよ」

「ハアッ、できないわけじゃなくて、やる気がないってことですか」

「そうそう。お菓子でも食べながら、外の景色見てるのが楽しいよねー」


 なんて言って、艦長はどこからともなくお菓子の袋を取り出して、バリボリと咀嚼し始めた。



「コラー、ブリッチ(ここ)は飲食禁止だ。食い物食いたきゃ、食堂か艦長室にでもいってろ!」

「はーい」


 ドワーフ技術主任に怒られてしまう艦長。

 大人しく叱られて、元気よく返事をすると、さっさとブリッチを出ていこうとする。



「クリスタちゃーん。艦長室でおつまみ食べながらお酒飲むから、お酌よろしくー」

「はい、艦長」


 艦長はブリッチを出ていく前に、ダイワのレーダーを担当している、クリスタル魔神のクリスタさんに声をかけた。


 大賢者の塔にいる魔神たちは、元が魔族なので、種族名はあっても個体名を持つ者(ネームド)は少ない。

 魔族とは、名前がないのが普通の生き物だからだ。


 そんな中でクリスタさんは、珍しく名前を持っている名前持ち(ネームド)だ。

 それも魔神王アーヴィン様から、直々に名前を賜るという、名誉ある存在だった。



「クリスタちゃーん」

「やん、艦長」


 艦長はセクハラ親父の如く、クリスタさんの胸をタッチする。

 クリスタさんも満更ではないようだった。


 見た目が美人のクリスタル魔神のクリスタさん。

 ブリッチのクルーの中では紅一点で、美女のクリスタルの体はとても可憐だ。


 彫像めいた美しさではあるものの、滑らかに動いて見せるクリスタさんには硬質的な硬さがなく、女性らしい柔らがあった。


「艦長羨ましすぎる……」


 そんな艦長の姿に、私は思わず呟いてしまった。

 クリスタさんは、我らゴブリンから見れば高値の花。



「艦長、俺も酒の席に混ぜてくれー」


 そしてそこに、ドワーフ技術主任まで加わろうとした。


「いいよー、お酒の飲み比べで賭けよっかー」

「おうとも、ドワーフ相手に酒で勝負をしてくるとは、艦長も分かってるじゃないか」

「フフン、酒好きなのはドワーフだけじゃないよ。地獄の鬼だって負けてないんだからねー」

「ガハハ、俺様だって負けねえからな」


 そんな風に言い合って、3人がブリッチから出ていった。



「いいな、クリスタさん」

「ゴブリン副長、あんたも行っていいんだぜ」


 ブリッチに残された私に、グレー科学主任が言ってきた。


「いや、どうせ俺なんかクリスタさんの視界にすら入ってないよ。高嶺の花には、俺なんて相応しくないもんな……」

「あんた見た目は怖いのに、案外奥手なんだな。そんなのだと、結婚の機会を逃しちまうぞ」


 生まれた星が違う異星の住人だが、グレー科学主任と私はそんな話をする。



「結婚か。だけど俺、一応神の1柱だから、結婚しても子供ができないんだよな」

「えっ、そうなの!神様ってのは何でもできると思ってたけど、まさかそんな欠点があるとはねえ。生物的に頂点にいるから、繁殖できないのかな?生物学的に気になっちまう」


 やはり科学者だからか、グレー科学主任はそんなことを言いだした。

 とはいえ、大賢者の塔の科学者たちも自分の興味を優先するので、こういうことに私は慣れている。


「私みたいな低位魔神だと子供ができない。高位の方々も子供はできないが、代わりに分体や眷属を作ることができるな」

「分体に眷属?子供とどう違うのか、興味がわくな」


 気が付いたら私の淡い恋心の話から、グレー科学主任の興味へと話が移っていた。




 ああ、クリスタさん。

 あなたは高根の花だけど、ブリッチの中で同じ空気を吸えるだけで、私は満足だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ