5 大賢者の塔に眠る超兵器の数々。世界征服も破壊も可能ですよ
前書き
せ、世界が崩壊する前に、世界"観"崩壊の危機が!?
大賢者チートが、ついに始まってしまう……
大賢者の親父が死んだ。
最後まで、「飯はまだかいな」と言っていた。
俺としては前世の記憶があるせいか、どうしても大賢者のことを父親と思いきることができなかった。
生まれた時から爺さんだった上に、ボケてたし。
とりあえず、近所の顔見知りの爺さんが亡くなった程度の悲しみを抱きつつ、親父の葬儀は粛々と進行した。
「……」
なお、妹のイリアも親父が死んでも、特に何も思うところがない様子。
「ポテトパイ、ミート味」
「イリア、それはどういう意味だ?」
「お腹が空いた」
葬儀の場でこいつ何言ってんだ?
まさか爺さんが死んだことで、腹ペコ属性が乗り移ったんじゃないだろうな?
なんて思いつつも、イリアは感情のよく分からない顔で、その後の葬儀にも参加し続けた。
相変わらず、よくわからない妹だ。
「父上、今までありがとうございました。う、ウグッ、ヒクッ」
……どうしよう。
俺とイリアはかなり淡泊に親父の葬儀を見届けているけど、クリスだけはちゃん悲しんでいた。
そりゃ、自分の親が死ねば悲しむのが普通だよな。
特に我が家の場合、母親が生まれた直後に亡くなっているので、片親状態だったわけだし。
そんなクリスの姿を見ていたら、俺とイリアは人として大切なものをなくしてないかと、良心が苛まれてしまった。
「どうかアンデットとして蘇らないでください。二度と起き上がらないように、天国でも冥府の底でもいいので、とにかく黄泉の世界から戻ってこないように」
そして予想外と言っていいのだろうか?
この葬儀の場で、もっとも真剣に祈りをささげているのが、なぜか悪魔であるメフィストだった。
死者の安寧を祈る……のとは少し違う気がするが、それでも爺さんに安らかに眠っていてもらいたいようだ。
「メフィスト、なんだかんだ言って、お前にもちゃんと良心が……」
「何言ってるんですか、主。この世界では、死者がアンデットとして蘇ることがあるんです。大賢者の事です、アンデットとして蘇ったら、何をしでかすか分かりません。もしも頭はボケてるのに、実力は全盛期の状態で黄泉がえりでもしたら、ヴヴッ」
あのメフィストが、怯えている。
普段笑顔で嘘をついている悪魔とは思えない姿だ。
だが、メフィストの言葉に、俺も危機感を抱いた。
親父の全盛期の実力を俺は直接知らないが、おそらく今の俺と同格かそれ以上の魔力を持っているに違いない。
そんな親父がボケて蘇ったら……
「飯はまだかいな」
なんて言いながら、風魔法を使って世界中にその声を響かせかねない。
いくら親近感が乏しいとはいえ、実の父にそんなことをされたら、超恥ずかしい。
「よし、親父には深い眠りに永久についてもらおう」
「ええ、それがいいです。ただし大賢者の場合、アンデッドにならないよう浄化魔法を使った程度では安心できません。亡骸は塔の最深部に封印しましょう」
「そうだな」
てなわけで、俺とメフィストの判断で、葬儀ののち、親父の亡骸は大賢者の塔の最奥にある、封印の間に安置することにした。
かつて魔法を使って、様々な異世界をいろいろ旅してまわった親父。
旅した世界でいろいろな品を手に入れてきたのはいいが、その中には明らかにヤバすぎるものもあったので、それらを封印するために、塔の最深部に封印の間がある。
封印の間は、核の直撃にも耐えられる金属製の巨大な扉によって、厳重に隔離されている。
見た目は巨大ロボの発進口か、はたまた巨大宇宙戦艦のドッグの入り口かという、物々しさと、巨大さ、そして重厚感を漂わせている。
なんでそんなものがファンタジー世界にあるんだって突っ込みたくなるが、親父が拾ってきたものだから仕方ない。
死んだ親父の日記を読んで分かったことだが、なんでも、核戦争をやらかして滅びてしまった異世界に残っていたので、そのまま失敬してきたとのこと。
人類が絶滅した後なので、パクっても文句も言われないだろうという判断からだそうだ。
「親父の頭の中がどうなってるのか、マジで分からん」
「あの大賢者の頭は、能天気バカのクレトでも理解でませんから仕方ないですよ」
あのクレトよりひどいとか、親父の扱いが物凄くヒドイ。
俺の中では、単なる腹ペコボケ老人程度の認識だったが、どうやら若い頃から、相当ぶっ飛んでいた人間のようだ。
そんな親父が用意した封印の間に入ってすぐの場所には、イエローケーキらしき粉末があったりする。
被爆したら危ないので、近寄らずにさっさと奥へ進もう。
途中、天空の城に出てきそうなロボット1000機以上が立ち並ぶ列などを抜け、最深部を目指す。
このロボット、勝手に動き出しはしないが、空を飛ぶことができ、目から破壊光線を出せて、とてつもなく危険だ。
1機起動させるだけで、1時間とかからずに要塞を溶岩の海に変えられる。
全機起動させたら、それだけで世界征服が可能かもしれない。
「主の魔法なら1発で要塞を消滅させられるじゃないですか」
「俺の方が、このロボットより危険って言いたいのか?」
「おや、自覚がないのですか?」
「……」
メフィストの言葉に、言い返せないのがつらい。
俺が最初に撃った魔法が、例の太陽魔法だからな。
しかも体が成長していくにつれて、俺の魔力量がさらにおかしなことになっていってるし……
「俺は、未来永劫要塞を吹き飛ばす予定なんてないぞ
「そうですか、それは残念です」
残念と言いながらも、メフィストはなぜか笑っていた。
『わかってますよ。フリですね、フリ』
なんて、無言の声が聞こえてきそうだ。
絶対に俺は、要塞を消し飛ばしたりしないからな!
そんなロボットたちの列も越え、いよいよ封印の間最深部へと近づいた。
「宇宙戦艦ダイワだ、いつ見てもデカすぎるな」
そこには、超巨大宇宙戦艦が鎮座している。
ダイワを漢字で書くと、大和。つまりヤマトだな。
これ以上考えると、いろいろ危ない。
「親父、本当に何やってたんだよ……」
親父の若かりし頃の自由奔放さがヤバすぎる。
もう、若気の至りとかそういうレベルを超えて、世界観完全崩壊の危機だ。
「大賢者の話だと、なんでも海の底に沈んで捨てられたので、持ち主もいないだろうと勝手に拾ってきたそうです」
「お、親父―」
海の底に放置されてたからって、ゴミを拾うような感覚で物騒なものを持って帰らないでほしい。
この超巨大宇宙戦艦ダイワだが、艦の前方に惑星破砕砲と呼ばれる超兵器が搭載されている。
艦のすべての動力を使うことで、文字通り惑星を一撃で木っ端みじんにできる超兵器を撃てる。
俺が使った太陽魔法や 核が、子供のおもちゃに見えるレベルでやばい。
もっともダイワの動力炉は故障しているため、惑星破砕砲はもとより、宇宙戦艦として空を飛ぶことも、宇宙へ行くこともできない。
動力炉の直し方は、さすがに親父も調べられなかったようで、この兵器が日の目を見ることは絶対にないだろう。
ただしこの前にここに来た時、クレトが一緒だったのだが、
「主の魔力量なら、惑星破砕砲を撃てるはずだよ。ささ、1発ドーンといってみよう。地面に向けて、ドカーンと1発いっちゃおう」
なんて、嬉しそうにすすめてきた。
「俺は世界破壊なんてやらねえよ!」
超兵器なだけあってすさまじい威力があるだろうが、実際に試してみたくなんてない。
男のロマンなんて単語ですませてはいけない兵器だ。
この艦には、永遠に封印の間で眠っていてもらおう。
そんな物騒極まりない、超兵器群の数々を抜けて、俺たちは封印の間の最深部にたどり着いた。
「親父、絶対に生き返るな。生き返っても、絶対にここから出てくるな」
「そうです、もう2度とこっちの世界に来ないでください。間違っても、あの世からこの世に戻って来ないように」
俺とメフィストの2人は、親父の亡骸に念を押してそう言った。
所詮核の直撃に耐えられる程度の扉しかついていないのが、封印の間だ。
もし親父が蘇ったら、この程度の封印では、全く役に立たないだろう。
なので俺もメフィストも、この時ばかりは真剣に親父が復活しないようにと祈った。
なお後日、封印の間の扉越しに、
「飯はまだかいなー」
という親父の声をクリスが聞いたそうだ。
もちろん俺もメフィストも、それは幻聴だとクリスを諭しておいた。
親父、まさかボケ状態のまま、封印の間を徘徊してるんじゃないだろうな……