48 グレー連邦とのお付き合い
復活させたグレーの母星を元の公転軌道に戻したり、触手魔神たちと戦って壊滅した宇宙艦隊なども元に戻しておいた。
「んー、俺が求めているロマンと方向性が違うんだよなー」
俺以上に、イリアが宇宙艦隊に対して並々ならぬ情熱を持っているが、グレーたちの宇宙艦隊は円盤だったり、円柱形をしている。
そんな宇宙船が1000隻以上揃った光景は圧巻だが、しかし形が違う。
俺の求めている形とは違うのだ。
俺の求める宇宙艦隊は、エイリアン方式とは相いれないのだ。
なお、時間を巻き戻してグレーの宇宙艦隊を蘇らせたのはいいが、その際戦闘中だと混乱した宇宙艦隊から、攻撃されてしまった。
せっかく母星を復活させたばかりなのに、それを台無しにする重力魔法……重力兵器というのが正しいか……を撃ってきたので、とりあえず俺が魔法を使って握り潰しておいた。
「ええーっ、片手で消し去るとか、ボスってどうなってるんだ」
「俺らじゃ勝ち目ないよなー」
「俺たちが魔族だった頃もボスは異常だったけど、どこまでパワーインフレしてるんだ」
重力兵器を握りつぶした結果、触手、星魔、ディラックから、そんなことを言われてしまった。
「失敬な、俺はごくごく普通の一般人だ」
「主、普通の人間は宇宙空間で生きてられませんよ」
「主ってバカだよねー。アハハー」
ク、クソウ。
メフィストが正論吐くし、クレトにまでバカ扱いされてしまった。
とはいえ、うちの高位魔神連中が与えた被害を、全て巻き戻してなかったことにした。
戦ったという記憶は残るが、それ以外は万事元通りだ。
ここまでしたら、ご近所のグレーが、うちと仲良く平和的に付き合ってくれるはずだ。
俺はラブアンドピース精神で、ご近所さんとはやっていきたい。
グレーの母星を復活させた後、俺はグレーのお偉いさんと話す機会があった。
「生と死、破壊と再生を司る偉大なる神よ!我らは自らの科学の力に溺れて傲慢になっていました。これからは、謙虚さをもって神を信仰していき……」
以下、ナンタラカンタラ。
政府のお偉いさんだけでなく、居並ぶグレーたち全てがひれ伏して、俺を崇めてきた。
困ったときは、とりあえず助けを呼ぼう。
「メフィスト?」
「愚かなる下等種が真の信仰に目覚めたのです。素晴らしいことですね」
ダ、ダメだ。
グレーに負けず劣らず、こいつもおかしな目をして俺を崇拝してきた。
もっともグレーの目は人間とかなり違うので、彼らが狂信的な目で俺を見ているとは限らない。
「神よー!」
……限らないが、五体投地までしてきた姿を見て、俺は顔が引きつった。
「ま、まあ、ご近所同士、これからは仲良くやっていこう」
「神のご命令とあれば、逆らうはずもありません。我らグレー種族は、みな全て神への忠誠を捧げます。まかり間違っても、神に逆らう輩がいれば、例えこの身が砕け散ろうとも、改心させてみせます」
「……」
俺、宇宙人の言葉が理解できないや。
こいつらが何を言っているのか、全然理解できない。
「フフフッ、さすがは主でございます」
「これはこれでいいのかなー?」
「「「さすがボスっす」」」
グレーだけでなく、メフィスト、クレト、そして今回の騒動に関わった触手たち3柱までもが、そんなことを言いだした。
よし、俺は何も知らない。
何も見なかったことにして、大賢者の塔に転移魔法で逃げ帰らせてもらう。
「以後、魔神王陛下に絶えることなく祈りを捧げ、誠心誠意忠誠を誓うのですよ」
「ハハーッ」
転移するまでの間に、メフィストがろくでもない洗脳を施していた気がするが、それも俺は聞いてないからな。
聞いてないったら、聞いてない!
そしてここからは後日談になるが、グレーとの間に友好関係を築くとともに、大賢者の塔にグレー連邦の外交官がやってきた。
大賢者の塔では、いくらでもフロアの増設ができるので、外交官の受け入れは問題なかった。
グレーの母星風の、高層建築物が立ち並ぶフロアをひとつ作っておいた。
「さすがは神の御業。1時間と経たずに、我らの母星の姿と瓜二つの都市を作られるとは……」
外交官が感心していたが、その後俺を拝みだしたので、それ以後のやり取りは最小限にさせてもらった。
さらに互いの技術交換という名目で、大賢者の塔にグレーの科学者もやってきた。
「我らグレーの間では、長らく宇宙の質量は常に一定であると考えられてきましたが、その考えは間違いでした。宇宙の質量とは、魔神王陛下の御業によって操られているのであり、その証拠に魔神王陛下が作られた銀河に存在するホワイトホールからは、別宇宙の質量が流れ込んできていて……」
地球はもとより、大賢者の塔よりも科学技術が進んでいる連中のはずだが、なぜか科学者でなく、狂信者がやってきた。
マッドサイエンティストには慣れている俺だが、狂信者なんて初めてだ。
俺をおかしな目で見ないで欲しい。
どうやってこんな連中と付き合えばいいんだ?
「ええ、あなたの考えは正しい。そもそも私が生み出されたのも、造物主である魔神王陛下のおかげです。宇宙の摂理そのものが、魔神王陛下によって創られたものなのです」
あと、できる男だと思っていた全記録保管庫さんまで、グレーに汚染されておかしな意見を述べていた。
じょ、常識人はどこかにいないのか。
これ以上この塔に変人どもが集まったら、俺の胃痛がさらに悪化する……
しかし、これで終わりではない。
「こここそが魔神王陛下が住まわれる神の御在所」
「おお、なんと荘厳な美しさ」
「ああ、もしやあそこにおられるのは魔神王陛下では。陛下―!」
グレーの巡礼者とかいう意味不明な連中が、宇宙船に乗って大賢者の塔にやってくるようになった。
そんな集団に見つかってしまい、俺の顔面が痙攣しまくった。
「ド、ドウシテコウナッター!」
もはや、意味不明すぎる状態に、俺は泣くしかない。
泣くぞ。前世合わせると物凄くいい年してるオッサンだけど、ガチで泣くぞ。
そんな俺に、この塔随一の常識人である、弟のクリスが相談に乗ってくれた。
「兄上、滅びた星を修復して、そこにいた人を全員生き返らせたんですよ。どれだけ控えめに言っても、神の御業ですよ」
「……ロ、ローラシアの駄女神たちだと、そんなことできないぞ」
「兄上はできたじゃないですか」
なんちゃって魔神王だけど、俺も一応神なんだよな。
まだ人間だと思いたいので、認めたくはないことだが。
「ローラシアの女神様たちもですが、グレーの科学技術でもできないことを平然とやったんです。こうなっても、仕方ないと思ってください」
「ええっ!」
「今回は兄上がいけないんです」
「そんなー」
部下連中の後始末を付けたつもりだったのに、どうしてこうなる。
グレー連邦は、高度な科学力を持つ恒星間国家でありながら、俺というなんちゃって魔神王を信奉する、狂信的な国家に変貌してしまった。
トホホ……




