41 巨大宇宙生命体現る
まえがき
しばらくSFのターンです。
ファンタジーさんが、全く息していない状態が続きます。
私はグレー連邦、首都星防衛軍司令官。
グレー連邦は、惑星グレーにおいて誕生した、グレー種族によって構成される国家である。
同星を首都星と、高度な科学力を持つ文明を持っている。
我々の祖先は、今より2万年、この星を管理していると自称する、”神”と呼ばれる存在を相手に戦った。
神と呼ばれる存在は、我らの文明に干渉し、文明が一定水準以上に育つことがないよう、影から干渉し続けてきた存在である。
時には自然災害を巻き起こすことで、文明レベルで甚大な被害をもたらし、またある時は病原菌によって、星の人口を1割以下にまで減らされたこともあった。
しかし戦いによって神を、我らの星から追放することに成功した。
その時より、我らは宇宙空間への進出を開始した。
ワープ航法の確立とともに、近隣の恒星系へ植民活動を開始し、今では10を超える有人惑星と、50に及ぶ星系を支配する恒星間国家となった。
神がいなくなったことで、我らは比類なき力を有する国家となったのである。
そんな我らの母星グレーは、日に数百から千を超える宇宙船が往来する、一大経済拠点でもある。
大きなものであれば全長10キロを超える大型貨物船が、小さくなれば富裕層でなければ所持できない、小型のプライベート宇宙船が行き来している。
それだけの船が行き来している首都星の宇宙港では、常に検疫と不正品の検査が行われている。
数が多いために、ひとつひとつ精査することが困難であるが、宇宙船より運び込まれる病原菌や、不正薬物、取引禁止の品々などを、厳格に取り締まっている。
その日の宇宙港では、未開惑星の生物を不正に殺害し、体の一部を研究と称して持ち込もうとした、バカな連中がいた。
通常であれば防衛軍司令官である私の元に、そんな話が来ることはない。
だが、その日は職務でたまたま宇宙港の視察があったため、件の現場に居合わせてしまった。
その後、バカどもは宇宙港の保安員に捕縛されたので、留置場に送られたのち、厳格な裁判に処されることだろう。
「まったく、未開惑星の生物の体を持ち帰るとは狂っている。病原菌が持ち込まれでもしたら、免疫力が低い我が星の住民が、大量感染する事態になりかねぬのだぞ」
我らグレーは科学力は強大なれど、反面、科学に身をゆだね過ぎたことで、身体的な能力が著しく退化している。
我らにとって最大の脅威は、戦争や経済危機などでなく、未知の病原菌が持ち込まれること。
病原菌が感染拡大しようものなら、種としての致命傷にすらなりかねない。
バカな犯罪者どもは、そのことを理解しているのだろうか?
「いいや、犯罪者にそのようなことを期待するだけ無駄だな」
犯罪者の頭には、法と規律というものがないのだろう。
そう思い、私は自身の職場である防衛軍司令部のオフィスにて、書類仕事に戻ることにした。
防衛軍の司令官にとって、デスクワークは抜かすことができない職務である。
「最近、頭のテカリがなくなってきて、私も老けたものだな」
仕事の前に鏡に映る自分の姿を見て、つい愚痴が出てしまった。
我らは年を取ると、銀色の肌のテカリがなくなってくるのだ。
「司令官閣下、非常事態です」
そんなところに、ドアのノックもせず、副司令官がやってきた。
今の独り言を聞かれていないだろうな?
確認したいところだが、聞かれていなかった場合、余計な恥をかくことになる。
「……非常事態だと?」
「はい、我らの星を目指して、未知の宇宙生物が接近中です。大きさは少なく見積もっても10万キロを超える、惑星クラスの化け物です」
「なんだと、そこまで巨大な宇宙生物など、私が知る限り初めて聞くぞ!」
「はい。ですので、急いで司令室へお越しください」
「分かった」
私は副司令とともに、急いで防衛軍司令室へと向かった。
「偵察艦をステルスモードにて派遣中。最大望遠にて捉えた映像を、モニターに映します」
私が司令室に到着するとともに、司令室のスタッフがてきぱきと行動する。
「これは……触手の群体?まるで古代にいたと言われる、ミミズという生物の塊だな」
モニターに映し出された巨大宇宙生物は、一言で言ってミミズ、もしくは触手だ。
ただし1匹だけでなく、千、いや3千はあろうか。
それが宇宙空間の中を、塊になって動いている。
「気色悪い。生理的に受け付けん姿だな」
母星グレーは、地表の全てが機械化されているため、自然の大地というものはない。
あのような原始的な姿の生物を目の当たりにして、私は思わず眩暈を感じてしまった。
なんと、原始的で醜悪な生き物なのだ。
だが、私がそんなことを気にしている間にも、有能な司令室のオペレーターたちからの報告が入ってくる。
「触手状の生命体ですが、1体当たりの長さは、およそ5千キロから1万キロ強あります。推定個体数は約3600。群れで活動する生命体と推測されますが、群れを引きするボスと思われる個体は現在確認できません」
「該当の触手生命体の群れですが、約10分前に突如出現しました。防衛軍麾下の監視網に引っ掛からず、亜空間に潜伏していた存在が、通常空間へ出現したものと思われます」
亜空間より出現した。
その言葉を聞いて、私は愕然とした。
「なんだと、あのような見た目の生き物が、亜空間に潜んでいたというのか。だが、どう見ても、高度な能力がある生物には見えんぞ」
「未知の生物ですので、見た目から能力を判断するのは危険です、司令官」
「むうっ、そうだな。副司令官」
副司令官に窘められてしまったが、確かに未知の生物である故、余計な先入観を持って事に当たらない方がいいだろう。
「っ、該当の触手生命体の1体より、高エネルギー反応を検出」
「なんだと!」
「熱エネルギーの収束を確認。高出力熱戦砲に類するエネルギー兵器が、照射されました。照射先……ステルス中の偵察艦です!該当生命体からの攻撃行動です!」
「直ちに、攻撃軌道より退避させろ!」
「ダメです、間に合いません!」
司令室のモニターに映し出されていた、偵察艦からの映像。
そこに白い光となった高出力熱戦砲が迫り、次の瞬間偵察艦の防御シールドと激しく激突し、互いの力がせめぎ合う。
だが、シールドが持ったのは、ほんの1秒足らずの時間。
モニターが白一色に埋め尽くされたかと思うと、突如モニターは黒一色の画像となった。
そして、通信エラーの文字が記される。
「本星のレーダーにて確認。偵察艦が撃沈されました」
「なんだと、あのような生き物の攻撃1発で沈むだと!」
「それだけではあまりません。今の攻撃から、宇宙戦艦のレーザー主砲に匹敵する、エネルギー量を確認しました」
「……」
戦艦のレーザー主砲は強力な一撃だ。
それに匹敵するエネルギーを、ただの生物が放った。
その事態に、私は思わず言葉を失った。
「触手生命体群ですが、偵察艦の撃破後、進路を本星へと向けています。現在の速度ですと、5時間とかからずに本星へ到達します」
偵察艦だけではない。あの気色の悪い触手が群れなして、我らの首都星グレー星へ向かっているという。
明らかに、我らに対してよからぬ行動をとるだろう。
「ただちに、首都近隣の艦隊を招集させろ。政府首脳部に現状の報告を行うとともに、非常事態宣言の発令を大至急要請しろ。我々はこれより、首都防衛戦の準備に取り掛かる」
我らの星を、あのような生物に蹂躙されてはならぬ。
既にあの生物が本星へ迫っている以上、我々に戦い以外の選択肢があるはずがない。
あとがき
惑星グレーに迫る巨大宇宙生物の影……
種の存亡をかけた戦いが、今ここに始まる。
(銀色の肌をした宇宙人の、種の存亡をかけた話を書く日が来るとは、自分でも思っていませんでした。
この話、カオスすぎて、書いてる私もワケワカメです)




