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異世界転生したら魔神王だった 魔王よりヤバい魔神たちの王だけど、世界征服も世界破壊もしたくない。マジで。  作者: エディ
第1章 魔王になって世界征服も世界破壊もしたくないと言っていたら、なぜか魔神王になっていた。意味が分からん
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3 魔法の使い方は、うーんとやってえい

「いいかい、魔法はこうやって撃つんだよー」


 大賢者の塔から離れた場所で、本日は魔法の勉強。



 授業を受けるのは、この世界に転生して6歳になった俺と、弟のクリスと妹のイリアだ。



 クリスは金髪碧眼のショタ少年。

 男なのにかなりの女顔で、しかも年に比べて背が低い。

 美少年というより、美少女と言った方がしっくりしてしまう見た目だ。


 俺は心の中で、生まれる性別を間違えた弟と思っている。


「兄上ーっ」

 そんなクリスは、見た目通りと言うべきか、気弱な性格をしていて、いつも俺の服の裾を掴んで、後ろをついてくる。



「……」

 一方妹のイリアは銀髪に赤い目。

 病的なまでに白い肌をした美少女だ。

 白い肌とは対照的に、血のように赤い唇をして、まるで人形のような美しさ。


 吸血鬼の美姫なんて言葉が、自然と浮かんできそう。

 俺たち兄弟には魔王の血が流れているので、当たらずとも遠からずと言ったところだろう。


 ショタの弟と違って、ロリの妹は口数が少なく、感情が乏しい。

 本当に人形みたいな感じだ。




「魔法を実際に使ってみるから、よーく見ててねー」


 そんな俺たち3人の前で、魔法の授業を受け持つのは、大賢者の塔で俺に仕えている執事の1人、クレト。


 赤髪茶目のノッポのお兄さんだ。

 陽気と言うか、能天気な声を響かせながら、空へ向かって片手を突き上げた。


「うーん、とやって」


 な、なんというアバウトな説明。


 だけど、クレトがそう言った途端、彼の頭上に火の玉が現れた。


 炎の球は最初は直径1メートル程度だった。

 だが、すぐさま巨大化していき、みるみる間に10メートル……ひょっとするとそれ以上の大きさを持つ、巨大な火炎の塊になった。


「はいっ!?」

「ええーっ!?」


 俺とクリスの2人は、巨大な炎の塊を見てビビる。


 俺は驚きのあまり、間抜けな顔になっていただろう。

 クリスの方なんて悲鳴だ。


 ただ1人、イリアはぼんやりとした表情のまま。

 妹の肝が据わりすぎだろう。



「えーい」

 そんな中、クレトが呑気な声を出しつつ、手を振り下ろした。


 手の動きに合わせて、巨大な火炎の塊が地面へ大激突。


 爆発はしなかった。

 ただし、火炎の塊が地面に激突した瞬間、地面が赤い色になって融けた。

 あまりの高温にさらされ、地面が溶岩に変化してしまったのだ。


 一瞬で幅10メートル以上の大地が、赤いマグマの池と化し、溶岩がトプンと音を立てて跳ねる。


 離れた場所にいる俺たちの所まで熱波が届き、肌がヒリヒリ焼けて痛い。



「いいかい、うーんとやってえい。それで魔法は使えるから」

「……」


 平然と地面を溶岩に変えたクレトは、陽気な笑みを浮かべながら、アバウトすぎる説明をする。


「イヤイヤ、わけわかんないから。うーんとやってえいで、どうしてこうなる!」

「はいはい、主は黙ってようね。まずはイリア様からドカーンっと行っちゃってください」


 魔法の授業を担当するクレト。

 彼もまたメフィストと同じく、人間の姿に化けている高位魔族で、今では俺の支配下となっている。


 だけど、主人であるの俺の意見は、あっさり無視された。



「うーんとやって、ドカーン……分かった、やってみる」

 イリアの方も、クレトがやらかした溶岩池作成魔法に、なんの驚きももっていない。


「いやいやイリア、もっと驚こう!」

「?」


 イリアの奴、小首をかしげて、「何のこと?」って顔して、俺を見てきた。

 お前の頭の中がどうなってるのか、兄として物凄く心配になってしまうぞ。



「うーん」


 そんな俺の思いなど気づかず、イリアはクレトと同じように声を出した。

 ただしクレトの時と違って、イリアの場合、片手でなく両手を空へ向ける。


 そして火の玉が浮かび上がった。



「あっ、大きい」

 この状況に早くも慣れてきたのか、クリスがそんなことを言っている。


「本当だ、大きい」

 俺もクリスと、同じ感想を口にするしかなかった。



 だって、イリアが掲げた両手の上には、直径3メートルになろうかという、火の球が浮かんでるんだよ。


「あのアバウトすぎる説明で、なんで魔法を成功させてるんだ……」


 俺は激しく突っ込みを入れた。



「はーい、そのままドカーンってやっちゃいましょうね」

 そんな俺の前で、クレトが能天気な指示を出す。

 てかお前、さっきは「えい」だったのが、いつの間にか「ドカーン」に変わってるぞ。



「ドカーンッ」

 何の疑問も抱かず、クレトの言われるがまま魔法をぶっ放すイリア。



 ただしイリアが腕を振り下ろすと、炎の塊が地面に激突するとともに、大爆発を起こした。


 ――チュドーン

 ドカーンって音が可愛くなる、大爆発だ。


 地面に激突すると同時に、衝撃波が起こり、音が振動となって周囲に襲い掛かる。



「あ、これ死んだわ」

 爆発と同時に大量の土煙が巻き起こり、それが俺たちの視界一杯に広がって迫ってくる。



「わー、凄いねぇー」

 そんな中、超能天気な感想を口にするクレト。


「バカ、クレト(おまえ)何とかしろよ!」

「兄上―!」

 俺とクリスの2人は、涙目だ。


「はいはい、フーっとね」

 クレトの奴は取り乱すこともなく、どこまでも能天気だった。


 まるでロウソクを吹き消すかのように、口から息を吐きだす。

 途端、俺たちに向かって迫ってきていた大量の土煙が、強力な暴風によってまとめて吹き飛ばされた。



「はい、それじゃあ次はクリス様行ってみようか」


 ひと吹きで、爆発で飛んできた土煙を、すべて吹き飛ばした。

 だけどそれをやった本人は、全く気にすることなく、魔法の授業の続きをする。



「……死ぬかと思ったのに、なんでこいつ、こんなに能天気なの?」

「兄上―」

「と、とりあえず次はクリスの番だ。やれるだけやってみろ」

「……は、はいっ!」


 なんだか、俺とクリスの2人だけビビっているのが、馬鹿に思えてきた。



「火力こそ正義……」

 イリアはイリアで、小声で何かとんでもないことを口走っている。


 俺はそれを聞かなかったことにして、クリスの様子を見ることにした。




「うーんとやって、えいっ」


 さて、クリスも見様見真似で、クレト式魔法術を発動した。

 クリスが両手を掲げ、地面に向かって振り下ろしたが、何も起きない。


「あれ、おかしいな。うーん、うーん、うーん」


 何も起きないので、両手を突き上げて、何度もうーんと言い続けるクリス。

 だが、クレトやイリアの時と違って、炎の玉は全く現れない。


「ク、クレトー」

 まったく魔法が使えないことに、クリスが半分涙目で助けを求める。


「クリス様は、魔法の才能がないですね」

「ええーっ、そんな―」


 ばっさり切り捨てられてしまった。



 だけど、無理だろう。

 あんなアバウトな説明で魔法を使えるのなんて、お前とイリアだけだ。

 クリスはまともで、イリアの奴がおかしいんだよ!



「それじゃあ、最後にアーヴィン様行ってみようかー」


 結局クリスは放置され、最後に残る俺の番が回ってきてしまった。



「ううっ、僕には魔法の才能がないんだ……」

「クリスは残念な子ね」


 いじけるクリスと、そこに追い打ちをかけるイリア。


「いや、クリスはまともだから。クレトのアバウトすぎる説明を理解できる、イリアがおかしいだけだから」


 いじける弟を、俺はフォローしておいた。


「兄上―」

 俺に抱き着いてくるクリスの頭を、とりあえず、よしよしと撫でておく。


 なんだか子犬みたいで、つい可愛がりたくなってしまうな。




「アーヴィン様、早く魔法撃っちゃってくださいねー」


 ……

 弟を可愛がっていたのは、現実逃避だよ。

 だって、俺もクリスと同じで、あんな説明で魔法を使える自信が全くない。


 能天気な顔したクレトに、

「アーヴィン様も才能がないですねぇー」

 なんて言われてしまうのがイヤで、少しでも魔法を撃つのを遅らせたかっただけだ。


「クッ、やるしかないのか」

 クレトに急かされ、俺はイヤイヤながらも、魔法を撃つことにした。



 うーんとやって、えいだろう。

 う、うわー、恥ずかしい。


 前世の記憶があるだけに、いまさらガキみたいな掛け声出しながら、魔法を使うなんて、羞恥心が沸いてくる。

 しかも、どう頑張ってもまともに魔法を発動させられる未来が見えない。


 間抜けな掛け声を出して、魔法は不発。

 なに、この羞恥プレー。

 誰か助けて。



 そう思っても、助けはどこからも入ってこない。


「スーハースーハー」

 仕方ない、覚悟を決めよう。

 とりあえず深呼吸して、できるだけ羞恥心を感じないように心を強く持つ。


「う、うーん」

 片手をあげて、クレトたちがやったように、間の抜けた掛け声を口にする。



 その瞬間、俺は自分の体の中で、電流が駆け巡るかのような衝撃を感じた。

 体中の神経を稲妻が駆け巡り、細胞すべてが剥がれ落ち、まったく別の何かへと書き換えられる。


「へっ?」

 それはまるで、今までの自分が、まったく別の自分へ生まれ変わるかのよう。

 これまで微睡の中で眠っていた自分が、初めて覚醒の時を迎え、起きたかのよう。


 今まで自分だと思っていたものと、まったく別の自分になった。



 そう直感した途端、俺の頭上に火の玉が現れた。


 ただし、大きさがかなりおかしい。

 イリアが作った3メートル級の球でなければ、クレトが作った10メートル級の球でさえ、まったく比較にならない大きさ。


「……これ、ヤバくね」

 俺は自分の頭上にできた、巨大な炎の塊を見上げた。


 視界の端まで行っても収まらない巨大さ。

 本来であれば見えるはずの空が全てに隠れてしまい、俺の上には”太陽”の如き炎が滞空していた。


 単位はメートルで収まるのだろうか?

 下手すると、キロで計算しないといけない、とてつもなく危険な太陽が出来上がっている。


「さすがは主、始めての魔法でこれはすごいね」

「さすがはアーヴィンお兄様。どこかのヘタレ兄様とは大違いですね」


 クレトは感動している。

 ただし、そこに驚きという要素は微塵も感じられず、ただただ能天気に感動している。


 イリアの方は、クリスをけなしてるよな。



「ううっ、僕だけ魔法を使えなかった」

 一方、けなされたクリスは涙目。


 ただ、クリスは涙目になりながらも、俺の方をじっと見てきた。

「兄上、その炎……というか”太陽”はどうするの?」

「……」


 聞かれたはいいが、どうしよう?

 俺もいきなりの魔法で、まさかこんなものができると思ってなかった。

 どうしたらいいのか分からない。


「えいってやっちゃいましょう。何なら、『世界よ我とともに滅びろー』って言いながら、投げてもいいですよ」

「バカ、なんで俺が世界と一緒に死ななきゃないけないんだよ。ってか、その時はこの場にいるお前らも、全員お陀仏だぞ!」


 クレトの奴、頭おかしすぎだろ!

 俺が作った”太陽”で、さすがにこの星が滅びるまではいかないと思う。

 だが、地図を書き換えないといけないレベルの、巨大な溶岩湖を作ってしまう気がする。


 溶岩湖というか、溶岩海?

 しかもその湖だか海には、本物の溶岩がコポコポと音を立てながら、流れているだろう。


 規模の話はどうでもいい。

 今は何とかして、この”太陽”の後始末をしなければ……



「こ、こうなりゃヤケだ。宇宙に向かって飛んでけー」

 地面に向かって投げるのは論外だ。


 俺は野球の球を投げる感覚で、とにかく地面に落ちるなと祈りながら、空に向かって”太陽”を投げた。


 次の瞬間、”太陽”から超極太レーザーが飛んだ。


 何を言っているのか分からないと思うが、とにかく”太陽”からレーザーみたいな形状の光が、ぶっ飛んでるんだ。


 それが遠くにある山の頂に命中……いや、そのまま貫通して通過していった。

 そのまま空の彼方へ、レーザーは飛び続けていく。


 時間にして約1分だろうか。

 超極太レーザーは衰えることなく、”太陽”から発射され続けた。


 やがて時間が経過したのち、レーザーの光が消えるとともに、俺の頭上にあった”太陽”も消え去った。



「何、あのレーザー。コロニーレーザーか、俺はコロニーレーザーでもぶっ放したのか……」


 自分でぶっ放した超極太レーザー魔法に、そんなことを口走ってしまう。

 あの一発で、宇宙艦隊を半壊できそうな威力がある気がする。


「兄上、見てください、山の形が……」

 クリスが指さす方向、超極太レーザーが通過していった山の方を見た。


「わー、きれいになくなっちゃってるね」

 クレトの能天気な言葉通り、山の頂上部分が消え去っていた。


 超極太レーザーによって、頂上部分が全て蒸発してしまったのだろう。


「まあ、お兄様ってば素敵」

 イリア、これのどこが素敵なんだ?

 お前はクレト並みに、頭の感覚がおかしいぞ。



「……」

 俺は自分がやらかした魔法の威力に、何も言葉を出せなくなった。

 思わず、その場に両手をついて地面に跪く。


 怖いよ、俺が使う魔法って、一発で地形変えられる威力なんだけど。

 まるで核だ。

 自分の使う魔法が、”アメリカ大統領にしか押せない世界破壊スイッチ”みたいに思えて、怖すぎる。


 こんなの、個人で持っていい力の次元を超えてるぞ。





「おやおや、強力な魔力を感じてきてみましたが、さすがはアーヴィン様。我らにとって怨敵とはいえ、あの大賢者の血を引いてるだけのことはありますね」


 そんな中、この場にやってきたのはメフィスト。

 この性悪執事は、ニコニコと嬉しそうな表情をしていた。



 だが、大賢者である親父のことを引き合いに出されて、俺は素直に理解できたことがある。


「……親父が、魔王を圧倒できた理由がこれかよ」


 こんな大自然破壊魔法をポンポン使われたら、魔王だって生きてられないよな。

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