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32 女軍神エストアーナと大天使アナスフィア

「てか、エストアーナにアナスフィアって、誰?」


 俺の問いに、メフィストはしばし目を閉じて考えた後、説明を始めてくれた。


「私の前世での名です。この世界の神であった頃の私は、軍神エストアーナとして、神の1柱に名を連ねていました」

「お前、軍神だったのかよ」

「ええ、神の中ではそこそこ強かったんですよ」


 メフィストは、大賢者の塔ナンバー2の実力者。

 前世はこの世界の神の1柱で、原初の魔と呼ばれる最初の魔族と戦い、相打ちになって死んだ過去を持つ。

 その後神の記憶を持ったまま悪魔へ転生し、なんだかんだで、今は俺の部下の魔神となっている。

 しかし前世が軍神となれば、強くて当然だな。


「そこそこというか、お姉さまは最強でした。ヒャンッ!」

 そこで大天使が口を開いたが、またしてもメフィストに踏まれた。


 悲鳴を上げていると言いたいが、悲鳴には過分に嬉しそうな響きが含まれていた。


 この大天使、絶対にMだ。ドMだ。



 しかし、それよりも気になるのが、

「お姉さま?」

「……」

 だんまりを決め込むメフィスト。


「メフィスト様の前世は、最強の女軍神エストアーナお姉さまだったのです」

「黙れ、この駄天使」

「ギャフッ」


 またしても後頭部を踏みつけられる大天使。

 本人は嬉しそうにしているが、この大天使の個人的な趣味については、触れないようにしておこう。

 ヤバい世界に巻き込まれたくない。


 俺は普通でノーマルだからな。



「メフィストは女神だったわけか。へー」

「主、言っておきますがそのネタで私をいじらない方がいいですよ。ここにいる皆も、そのことを口走れば斬りますから」


 メフィストはにこりと笑いながら、手に持つ原初の魔の牙を一振りする。

 刃からでた余波で、玉座の間の列柱回廊の柱が、何本か切れた。


 放っておけば自動修復するけど、危ないな。


「おお、こわっ。その剣は俺らにも通るから、気軽に振り回すなよ」

 相変わらずメフィストの笑顔が怖い。



「エストアーナちゃーん……ゲフッ」

「女だったのか……ゴハッ」

「性転換したのか……グ、グベラボハーッ」


 恐れを知らず、からかったバカな高位魔神が3柱ほど、即座に切り裂かれてしまった。

 腕がとび、腹に剣を突き立てられ、最後の1柱は頭が砕け散る。



「か、回復しねぇー」

「その剣反則だろう」

「どうせなら、前世のエストアーナちゃんに斬ら……グハッ」


 対神用の武器に攻撃されたとあって、高位魔神たちでも傷が回復せず、ヒーヒー言わされる羽目になっていた。



「そのくらいにしておけ、メフィスト。部屋が汚れる」

「そうですね。では、そこの3柱、続きは後程別の部屋で行いますので」

「「「エエエエーッ!」」」


 1回斬った程度では、許してはもらえないらしい。

 今日のメフィストは、とことんおっかないなー。


 それと、対神用の武器で切られた高位魔神たちだが、回復速度が極端に遅くなっているだけで、時間をかければそのうち傷は塞がる。

 対神用武器で攻撃されれば、低位の神では傷を回復できなくなってしまうが、うちの塔の高位魔神たちは、とっくにそういうレベルを超えた神になっていた。


 ただ神としての位は高いが、それに反比例するように、頭の方が残念なことになっている。



 まあ、こいつらのことはどうでもいい。


「それでアナスフィアってのは、そっちの大天使の名前でいいのか?」

 と、俺は尋ねてみる。


「ええ、そうです。前世では、私たち神の下僕として働かせていました」

「メフィスト様の下僕、アナスフィアです」


 メフィストが大天使を下僕扱い。

 いや、神だからそういう扱いをしても間違ってないのだろうが、それにしても扱いが酷い。


 あと、頭を踏んづけられたままの姿勢で、大天使アナスフィアが自己紹介をしてくるので、やめて欲しい。

 俺には、そういった性癖はないので、勘弁してもらいたい。


 もし変な扉が開いてしまったら、どうしてくれる。

 俺は普通でノーマルに生きていきたいんだぞ。




「メフィスト、いい加減足をどけてやれ。顔を見ながらでないと話がしにくい」

「そうですか……主のお許しが出ました。頭を上げることを許しましょう」


 そう言いながらも、さらに靴裏で2度、3度と大天使を小突いてから、足を離すメフィスト。


「ああっ、せっかくのご褒美がー」


 一方の大天使アナスフィアも、危ないことを呟いていたが、俺は聞かなかったことにした。



「改めまして、高位の神々の首座にあられる、魔神王アーヴィン様にご挨拶申し上げます。この世界を管理している神々に仕えています、大天使のアナスフィアです」


 そうして顔を上げた大天使の顔は、白い肌に緑色の瞳をしていた。

 美人でありながらも、少女みたいな愛らしさを備えた女性だった。


 なお胸に関しては、そこそこの大きさ。

 大きすぎず、さりとて小さくもない、バランス型といったところか。



 ただ、この天使の顔を見て、俺はすぐに気付いた。


「あの時召喚した大天使」


 以前、死んだ親父がボケた状態で徘徊し続けていたので、なんとか成仏させられないかと、大天使の降臨術を用いて召喚したことがある。

 あの時は、親父をあの世に連れていてくれと頼んだのだが、即拒否されて、そのまま天界へと帰っていってしまった。


 どうやら、規格外のことをしでかす親父は、あの世でも扱いきれないらしく、受け入れ拒否されてしまったのだ。

 日本(ぜんせ)の老人問題で、ボケが酷過ぎるせいで、老人ホームへの入居拒否をされたような状態と同じだった。



「あの時は、大変申し訳ありませんでした。魔神王様」

「まあ仕方ないよな。あの親父だから」

「そう言っていただけると助かります」


 何しろ初代大賢者たる親父の徘徊先は、この世界だけでなく異世界にまで及んでいる。

 そんな規格外大賢者の魂をあの世に連れて行っても、どうせすぐに別の場所へ徘徊しに行ってしまうだろう。


 親父を成仏させることは、もう諦めた。

 俺ではどうにもできないことだと、諦めるしかないのだ。



「まったく、我が主の希望に沿うことすらできないとは、飛んだグズですね」

「あ、あううっ」


 そこでメフィストが貶したら、大天使が瞳をウルウルさせだした。


「も、もっとののし……」


 完全にダメな奴だ。


「こんなのが大天使……この世界って、終わってるんじゃないか」

「激しく同意しますね」


 メフィストが間髪入れずに同意してきた。




「コ、コホン。それより本日私が魔神王様の御前に参上したのは、この世界の神々の主神代行様からのメッセージを伝えるためです」


 大天使が話を突然変えてきた。

 まあ、目の前であんな醜態をさらされるのを見るよりマシなので、このまま乗っかって話を変えてしまおう。



「主神……代理のメッセージ?」


 しかし、主神代理とは一体何だろう?

 神々の主神と言われれば、地球の場合はギリシャ神話のゼウス、北欧神話のオーディンなどが思いつくが、代理ってのはなんだ?


「主、この世界の神々は、原初の魔との争いが原因でそうとう疲弊しています。世界を創造した主神は現在永い眠りにつき、それに代わって代理を務めている神がいるのです」

「そうなのか」


 メフィストから説明される、神様事情。

 原初の魔が神に反逆した神話については聞いているが、その時の戦いがいまだに尾を引いているということは、この世界の神々は相当大変な立場にあるのだろう。



「主神代理様よりの、メッセージをお伝えします」


 そこで、大天使は居住まいを正した。

 ただし、やったのは土下座。


「えっ」

 どうして、いきなり土下座をするのか訳が分からない。


 そういうプレーは、これ以上勘弁してもらいたいのだが。



 ただ、それは俺の勘違いで済む。


「私たちは偉大なる神であられる魔神王様に、全面降伏いたします。この世界の神の玉座が欲しいのであれば直ちに差し出しますし、世界の支配権もお渡しいたします。ですのでどうか、魔神王様のお慈悲で、この世界の神々を滅ぼすことだけはご勘弁ください」


 顔面を床にこすりつけ、大天使は外聞もプライドもなく、俺の前に全力土下座してきた。


 まあ、これまでのやり取りで、既にズタボロの外聞しかなかった駄天使だが、まさかこの世界の神々が、いきなり降伏してくると言われるとは思いもしなかった。



 とはいえ、俺には、この状況がよく理解できない。

 なぜ、いきなり降伏なんだ?


「メフィスト?」

「偉大なる魔神王陛下に、下等な神どもが降伏するのは当然のことです。むしろ今すぐ首を並べて、なで斬りにしないといけませんね。フフフッ」


 尋ねてみればコレだ。

 普段はもっとまともなのに、今日のこいつはダメだ。

 メフィストはこの世界の神を殺したいという、原初の魔が持つ願望を宿しているので、神への殺戮衝動がとてつもなく強い。


 この件に関しては、メフィストは一切妥協しないからな。



「ブーンッ」

 なんてところで、全力土下座中の大天使の頭に、紙飛行機が激突した。



 今までの話を全く聞かず、退屈になって、いつの間にか紙飛行機を作って遊んでいたクレトのせいだ。


「クレト、暇ならどっか別の所に行っていいんだぞ」

「他にすることないから、ここで遊んでるー」


 ここは玉座の間で、幼稚園じゃないんだけど。

 ああ、本日も大賢者の塔はカオスだ。

あとがき



作者

「ヒロインやーい。どこかから出ておいでー」


野太い声のメイド

「チラッチラッ」


メフィスト

「……」

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