30 超巨大宇宙要塞建造風景
超巨大宇宙要塞建造のために土魔法・採掘を使って、掘り掘り掘り。
巨大岩石を掘り掘り掘り。
この作業を担当しているのは、大賢者の塔のエルダーリッチや中位魔神たち。
一口に穴掘りと言っても、直径60キロにもなる巨大岩石の穴掘りだ。
その工事は巨大トンネルを作り、岩石内部に巨大な地下都市を作っているんじゃないかって、勘違いするほどの規模になる。
そのため、魔力の低い者が採掘を使っていてはすぐに魔力切れを起こす。
一度に採掘できる範囲も限られてしまう。
なので魔王レベルの実力がある中位魔神や、準魔王級と言っていいエルダーリッチたちが、手早く採掘の作業を進めてくれた。
彼らは、要塞内部の施設と、施設間を結ぶ連絡用通路のための空間を、掘っていってくれる。
将来的には宇宙艦隊の母港にする予定なので、艦隊を収容するための港部分は、中位魔神たちを大量投入して、一気に採掘作業を進めていった。
そして次に掘り進めていくのが、要塞外周部に位置する、武装を収めるためのスペースになる。
我が塔には中位魔神だけでも500柱、そこにエルダーリッチまで加わるので、この作業は驚くべき速度で進んでいった。
ファンタジー世界の魔王を使っての土木工事と考えれば、もはや過剰戦力の投入といっていい。
「世界征服をする予定がないので、実に平和的で建設的な使い方だな」
「宇宙要塞って、軍事施設ですよ。それを作る作業が平和的なんですか?」
「……ぐ、軍事目的で使う予定はないから、平和的だろ」
クリス、余計なことに気づくんじゃない。
これはあくまでもロマン。そう、ロマンのための建設作業だ。
そうして各スペースを大雑把に掘り進めたら、次に掘り進めた場所を平坦で平にならしていく。
その作業でも採掘が活躍するが、それ以外にも塔で生活しているドワーフの技術者たちが作業に加わる。
もともと鉱山などで、穴を掘っているのがドワーフの習性。
採掘が大好きで、手先が器用、彫刻だってお手の物。
さらに、日のあたらない地下都市を建設して、そこで生活しているくらいだ。
彼らの手にかかれば、整地作業などお手の物。
「大将、給料は弾んでくださいよ」
「任せておけ。今回の仕事は、1人金貨1枚の大盤振る舞いだぞ」
「「「ウオオオーーッ」」」
ドワーフのやる気を出すためにも、給金は大盤振る舞いだ。
この塔では、フロアの設定をいじることで、金鉱脈のフロアを作ることができる。
鉱石を加工する手間がいるものの、金鉱石を無尽蔵に採掘することができた。
今の俺にとって、金の価値などあってないようなもの。
神の力を舐めないでいただこう。
成金パワー全開だ。
もっとも金鉱石の採掘、精練作業に従事しているのも、ドワーフの技術者たちだけど。
そんなドワーフ技術者たちによる整地作業が終わると、次は整地した箇所に不懐金属製の板を張り付けていく。
宇宙要塞の通路や各部屋は、岩石むき出しの床や壁のため、不懐金属の板で覆って補強していく。
ところで、この塔には不懐金属より、遥かに硬い物質が存在している。
俺としては、その点が気になってしまうので、傍にいるリッチ技術者に尋ねてみた。
「なあ、不懐金属を張り付けるくらいなら、破壊不能物質の板を張り付けたほうがいいんじゃないか?」
「アーヴィン様、上位魔神の方々であれば破壊不能物質を簡単に捻じ曲げたり、加工できるのでしょうが、それ以外の方々に破壊不能物質の加工なんて出来ませんよ」
「そ、そうか」
神化前の時代から、俺の部下が散々好き勝手して破壊不能物質を破壊して回っていた。
そのせいで、俺の中では破壊不能物質は、簡単に壊れる物質との固定観念ができている。
でも、違ったんだな。
「兄上、僕も破壊不能物質は壊せないですよ」
とは、クリス。
クリスの実力は、この塔の中では下の上といったところ。
しかも、下の上と、中の下の間には、一つの越えられない壁が存在していた。
中の下レベルで、既に魔王クラスの実力になるからだ。
昔はもう少し実力の基準が低かったのに、部下たちが神化してしまったせいで、実力の基準が変化してしまったのだ。
「フッ、私ならぶち抜くことができる。火力は大正義」
一方、クリスのことをダメ兄扱いしてるイリアは、破壊不能物質を破壊可能とのこと。
「ぼ、僕だっていつかは壊せるようになってみせる」
「頑張ってね、クリスお兄様」
イリアが、物凄く上から目線になっていた。
クリスも妹から下に見られて大変だな。
この塔では、力が全てという考えの魔神たちが大勢いるので、力の弱いクリスは肩身の狭い立場にいた。
それと話題に昇った高位魔神たちだが、宇宙空間から岩石を拾ってきた以外では、今回の作業に不参加だ。
奴らは星を壊すことはできても、土木工事なんて小さなことができる繊細さがない。
採掘魔法を使ったら、巨大岩石の真ん中に大穴を開けて、ドーナツ型にしてしまったなんてオチになりかねない。
さて、こうしている間にも作業は進んでいき、不懐金属の板が張られ、要塞内部の床や壁、天井が、金属質の色合いを帯びる。
岩石むき出しだった内部が一転、物々しい雰囲気に様変わりだ。
要塞内部の強度も、これでかなり上昇した。
最後に、要塞内部に必要になる設備を搬入、取り付けていく。
この作業にはドワーフたちとともに、科学者のリッチ。低位魔神へと神化したゴブリンの中から、工作技術に優れたゴブリン工作兵の部隊が動員される。
さらに各設備の搬入は重労働になるので、この世界において重機的な存在であるゴーレムも動員され、資材搬入で大活躍してくれる。
要塞のメイン動力になる核融合発電機に、電力設備、空調関連の施設と各種の配管工事。
忘れてはならないが、宇宙要塞は真空空間で運用されるため、空調関係は、特に念入りに気を付けなければならない。
各施設と通路の気密性が厳重に確認され、気密隔壁が設けられていく。
もし要塞内部がダメージを受けた際、損傷個所から空気が漏れ出さないよう、気密扉を閉じて、空気の流出を最小限に抑えなければならない。
他にも要塞の中枢となる指令室の設置。
モニターや通信設備が設けられていく。
要塞内部の命令伝達に、さらに将来的に建造される予定の艦隊との連絡を行うための、オペレーターたちのためのスペース。
指令室の広さは、まるで巨大なダンスホールといった感じだ。
それも単に必要な設備を用意するだけでなく、壁や床には装飾が施されていき、それが余計にダンスホールのイメージを強く補強させた。
この要塞指令室が要塞内部において、2番目に広い場所になる。
一番大きいのが、宇宙艦隊の港部分で、次が要塞指令室、三番手に核融合発電の部屋となる。
なお、核融合発電機は要塞内部に複数個用意されているため、戦闘などで1基が動作不能に陥っても、即座に要塞の機能停止とはならない。
「さすがは超巨大宇宙要塞、ロマンがマシマシだ」
見ているだけで、目から鱗だ。
感動ものだ。
要塞内部の設備が終われば、最後に要塞の外周部分にレーザー砲群や、対小型戦闘機用の機銃群など装備されていく。
「まさに宇宙要塞。決して沈むことのない、圧倒的なパワーを感じる」
「ええ、まさに私たちの夢と希望とロマンの塊です」
素晴らしい軍事要塞だ。
俺と、今回この要塞の計画を立案してくれた科学技術者のリッチは、2人して要塞の勇壮な姿に感嘆の声を上げた。
まあ、この後も要塞の細かい調整や不具合確認があるとのことなので、完全に完成するのはまだ先のことだ。
ここから先の作業は、ゆっくりと報告を待たせてもらうことにしよう。
「……宇宙艦隊」
「分かってるよ。要塞が完成すれば、ちゃんとそっちもするから」
最後にイリアが忘れないでと言いたげに、呟いてきた。
どこまでも自分の欲望に忠実な妹だ。
あとがき
領地経営や内政系の話だと、村や町を作ってる風景の描写があるので、なんとなく要塞建設の風景を書いてみたり。
働いている人員はファンタジー世界の住人なのに、やってることはSFになっている有様。
なお、要塞の外見は、ガンダムに出てくるソロモンやアクシズを、イメージしていただければいいかと。
(あれをもっと丸くした感じですかね)
なおソロモン仕様なので、試作二号機にアトミックバズーカを撃たれても完全崩壊しません。
またアクシズ仕様なので、核を積み込んで惑星に落とすと、核の冬が到来します。




