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28 超巨大宇宙要塞はロマンだから仕方ない

まえがき



 この話から2章目になります。


 本来は1章の番外編という形でいこうとしたのですが、アイディア出してたら想像以上に伸びてしまったので、2章という形で独立です。

 俺がこの世界に転生してから、14年目になる。


 俺は一昨年まで、大賢者の塔で2代目大賢者を務め、魔族たちの主をしていた。

 部下の魔族どもが好き勝手して散々やらかすし、塔に所属しているマッドや魔法キチな研究者は時に暴走するので、尻拭いで散々苦労させられてきた。


 部下の魔族どもは、俺に「魔王になれ、世界征服をしよう、世界破壊をしよう」と言ってくる始末で、気の休まる時がなかった。


 ……ああ、胃がキリキリして痛い。

 この塔の連中を相手にしているせいで、俺の胃がストレスで常にヤバい。



 だが、その頃はまだよかった。

 よかったというか、マシだったと言うべきか。



 その後、部下の魔族どもが”神化”して、魔神になってしまった。

 魔神とは言え、”本物の神”になってしまった。

 以前よりも、格段にパワーアップを果たしてしまった。


 そこに不幸な出来事が重なって、俺は魔王を通り越し、魔神たちの王である”魔神王”として、即位させられてしまった。



 異世界転生したら、魔神王になったでゴザル。

 チートを通り越して、今の俺なら低位の魔法1発で星を木っ端微塵にできる。


 この前ストレスから遠い宇宙空間に転移して、星魔法・超新生爆発(スーパースターノヴァ)を使ってしまった。

 星魔法の最高位、新生爆発(スターバースト)のさらに上位にある魔法で、神の領域にある魔法らしい。


 そんな魔法を宇宙で使った理由は、ストレスがたまりすぎて、意味もなく破壊衝動に走ってしまったからだ。


 そして魔法を使った結果、星が爆発した後に、小型の銀河系が誕生してしまった。

 破壊魔法を使ったら、なぜか銀河系が誕生したんだよ!


「ナニコレ、意味が分からない」

 俺も本当に意味が分からないから、これ以上聞かないでくれ。


 その銀河、その後も拡大を続けて大きくなり続けている。

 さすがに拡大を続けた果てに、宇宙全体を呑み込むなんてことはないと思う。

 少なくとも銀河が拡大する速度は、天文学的な時間がかかるはず。宇宙終焉の原因になったとしても、その頃には俺は生きていないだろう。


 ……多分。




 そんなことがあったので、俺としてはストレスをため込みたくない。


 だけど部下の魔神たちは、みんな好き勝手して生きている。

 魔族だった時が天国に思えるほどで、今のこいつらは魔法一つで星に壊滅的な被害を与えられ、”異世界転移”なんて芸当までできるようになってしまった。


 俺の知らない異世界で好き勝手やっているようで、

「我は神、お前たち人間は奴隷だー」

「惑星丸ごと屠殺パーティーだぜぇー」

「世界よ、僕と一緒に滅びろ、ドッカーン」

 なんて具合だ。


 俺の知らない場所で、滅びてしまった世界の皆さんごめんなさい。

 でも、俺にはもう部下の統制をとるなんて無理です。


 一度力で上下関係を教え込んだものの、こいつらは犬のように、待てやお座りができない。

 基本本能で生きてる連中なので、やらせても長く続かない。

 むしろ、待てを長くさせてしまうと、ストレスをため込んで、余計ひどい形で暴発してしまう。


 結果、魔神が仲良く勢ぞろいして、銀河系1個吹き飛ばしやがった。

 一体、何やってるんだよ……


 もはや、惑星内での大規模自然破壊なんて次元で済まない。

 宇宙規模での、超規模自然破壊だ。




「ヴヴヴッ、俺の胃が、俺の胃がー」


 マジで穴が開いてそう。


 部下のせいで様々な世界に滅びがもたらされ、俺の良心はズタボロ。

 魔神という、悪魔の上位互換みたいな神にとってはこれが平常運転なのだろうが、このままでは、俺が精神(メンタル)的に死んでしまう。


 平凡で常識人な俺には、部下たちの殺戮に耐えられるメンタルが、とてもではないが足りてなかった。


 前世持ちの転生者だけど、前世知識なんてなんの役にも立たない。

 むしろ、良心が前世基準のせいで、余計にストレスがたまる。



 ああ、モウイヤダ。


「いっそ、連中ごとまとめて心中魔法でぶっ放してしまうか。この世界(うちゅう)が巻き込まれて滅びるだろうけど、世界(うちゅう)ひとつで済むなら安上がりだし……」


 フ、フフフッ。

 そうだよ、そうすればすべての世界に安寧が訪れて、俺もストレスから解放される。

 とてもいいアイディアじゃないか。



「あ、兄上、しっかり。しっかりしてください―」

 なんて考えていたら、弟のクリスに泣きつかれてしまった。


 弟のクリスは、金髪碧眼の美少年。

 昔は女顔で、どこからどう見ても男に見えなかった。

 だが14歳になった現在では、女顔がだいぶ緩和され、中性的な顔立ちになってきた。


 初めての人が見れば、多分7対3くらいで判断してもらえるだろう。

 7が女で、3が男として、性別を判断するはずだ。


 いまだに身長が低いせいで、女とみられる割合が増えてしまうのは仕方がない。

 だが、これでも昔に比べれば、見た目がかなり男に近づいたのだ。


 そんなクリスは、エンシェントドラゴンの皮(近所に住んでるエンシェントドラゴンの皮ではない)でできた、白を基調にした、学生服っぽい服装をしている。

 もっとも学生服でなく、肩章が施されているので、どちらかという軍服に近い感じだろう。

 見てくれはショタ王子様。もしくは本人には気の毒だが、男装した王子様といったところだ。



「魔神王様、世界樹の葉の雫です」

「ありがとう」


 ところで大変不本意ながら、今の俺の公式的な地位は”魔神王”。

 当たり前のようにメイドが控えていて、彼女が薬を差し出してくれた。


 世界樹の葉の雫という、死者でも蘇らせることができる伝説的な薬だが、これは俺の胃薬だ。

 もう一度言う、俺の胃袋に穴が開かないようにするための、大切な胃薬だ。


 俺は差し出された薬を、口に含んで垂下する。




 なんでも俺の親父である初代大賢者が、一時期ガーデニングにはまっていた時期があり、その時にどこからか世界樹を持ってきたそうだ。



 当時を知っている執事のメフィスト曰く、

「3日坊主ならぬ、3年坊主で飽きてしまい、その後ハイエルフとエルフを連れてきて、世界樹の管理を投げてしまいましたよ」

 とのことだ。


 うちの親父は大賢者と呼ばれる知者で、700年以上の時を生きている。

 だが、実際にはわけの分からないことを平然としでかす、ボケ老人になり果てている。


 親父にとって、世界樹を拾ってきたり、この世界に100体といないハイエルフを誘拐してくることなど、造作もないことなのだろう。


 まあ、世界樹の管理をできると知って、ハイエルフとエルフは涙を流して、喜びまくったとかなんとかという話だ。

 誘拐されたのに、感激して泣くとか、わけが分からないな。


 そんな世界樹は、現在俺たちの住んでいる大賢者の塔の南に広がる大森林地帯で、すくすくと元気に育っている。


 近場に世界樹があるので、世界樹の葉の雫は割と簡単に手に入る薬だ。




「……んー、やっぱり効いた気がしない。所詮は気休めか」


 世界樹の葉の雫を飲んだが、薬を飲んだという安心感分しか、効いてない気がする。

 相変わらず、キリキリした痛みが完全に引かない。

 伝説なんて言っても、所詮は広告の売り文句程度の効果なのだろう。


 前世(にほん)のダイエット薬の広告で、絶対に痩せるとか、○○キロ痩せましたなんて書いてるのと同じだな。


 単なる名前倒れのインチキ薬だ。

 それでも、他に効く薬がないので、胃が痛くなったら飲むけど。




「アーヴィンお兄様、仕事」

「……はい」


 さて、俺の胃を慰めるのもこれくらい。


 今の俺は塔に関わる執務の最中。

 仕事の書類をイリアが差し出してきた。



 妹のイリアは、銀髪に赤い目をした美少女。

 見た目は奇麗だが、常に無表情な顔をしていて、何を考えているのか分かりにくい。

 おまけにこの塔随一のバカ魔神であるクレトに毒され、年々わけの分からない女の子に成長していた。


 なお、昔はクリスよりほんの少しだけ背が高かったのだが、近年は逆転され、クリスよりも身長が極々僅かにだが負けている。


 そのことをイリアは気にしているようだ。


「あのダメ兄に負けるなんて……」

 イリアにとって、クリスはできの悪い兄らしい。


 そんなイリアは、ミスリルでできた銀色のドレスを着ている。

 麗しの夜の姫君といった感じだ。


 もっともいろいろと発育不足なので、そう呼ばれるためには体と胸の成長が、まだまだ必要。


 なので今は、麗しの夜の姫君候補といったところか。

 ロリヴァンパイア姫って感じの見た目だな。



 なお、俺たちは3つ子の兄弟で、俺が一番上の長兄、クリスが次兄、末っ子にイリアの順番となる。

 俺の弟妹は年に比べて身長がかなり低いが、兄である俺は長身だ。


 もはや大の大人も見下ろすことができる背の高さ。


 黒髪黒目に長身痩躯でイケメンフェイス。

 これだけで、人生勝ち組だ。



 面倒な部下どもがいなければ、今すぐこの塔を飛び出して、逃げてしまいたい。

 この塔で、見た目なんて役に立たない。

 俺の胃の安寧には、何の貢献もしてくれない。


 まあ、不細工に生まれなかったことは、素直にうれしいけど。



 そんな俺も、クリスと似た感じの学生服に似た軍服スタイルで、当然ながら肩章も付いている。

 ただし俺が着ているのは暗黒竜の皮製で、黒を基調とした色になる。

 不本意ながら俺は魔神王なので、クリスの肩章以上に豪華な飾りつけがされていた。


 俺の見た目は、一国の王子様か、現役の若い国王様といった感じだろう。

 クール系に見られるといいな。





 そんなことを考えつつ、差し出された書類に目を通していく。


 この塔には魔神たちが勢ぞろいし、この世界で最も危険なダンジョンと化しているが、大賢者の塔という名が示すように、様々な研究が執り行われている施設でもある。


 塔に所属している研究者たちからの報告や、予算、人員、設備の要求などに、応えていかなければならない。



 その中の書類の1枚を読んでいく。


「ロマンのために60キロメートル級宇宙要塞を作りましょう。宇宙空間を漂っている巨大岩石をくり抜いて、核にも数発耐えられるお手軽低予算宇宙要塞。作った後に使い道がなくて困っても、核を積み込んで地上に落とせば、核の冬を起こせます。人間がいつまでも地上の重力に魂を引かれていていてはいけないのです」


 なんだこれ?


「このトンデモ企画は即却下したいが、超巨大宇宙要塞というロマンは捨てがたいな」

「あ、兄上ー」


 横からクリスが非難がましい声を出してくるが、俺の中にある男の子のロマンが刺激されてしまった。

 ロマンは大事だから仕方ない。


 もちろん、核兵器を積み込んで地上に落とすというのは却下だ。

 人間は大地に魂を引かれたままの方が、絶対に幸せだ。

 地上で作物を育てて、おいしい食べ物を食べて暮らすのが、人間らしさというものだ。


「宇宙艦隊」

 そこでボソッとイリアが呟いた。


「うっ、宇宙を埋め尽くす宇宙艦隊……ロ、ロマンが俺の中でせめぎ合う」


 巨大要塞もいいけれど、大規模宇宙艦隊も捨てがたい。


 ど、どうしてだ。

 俺はファンタジー世界に異世界転生したはずなのに、どうしてSF世界になってるんだ。

 でも、ロマンがあるので、どっちも捨てがたい。


 男の子なので、仕方がない。



「ああ、今日の兄上はダメ人間になっている……」

「クリス、お前は14歳になるのに、まだ理解してないんだな。男の子のロマンは、人生をかけるほど大切なものなんだぞ」

「……」


 クリスから、駄人間を見るような目で見られてしまった。


 クッ、俺はダメ人間じゃないぞ。

 単に、ロマンに忠実なだけだ。


 クリスも日本だったら中学2年生になるのに、どうしてロマンを理解できないんだ?

 なぜ誰もが一度は患う病に感染してないんだ。




 しかし、今の大賢者の塔ならば、宇宙要塞を一つ作るくらい訳無いことだろう。


「そうだ、まずは宇宙要塞を艦隊の母港として作り、その後作った艦隊を収容するという形で、計画を進めていけばいいな」


 何事も順番が大事だ。

 ロマンを求めるのはいいが、計画的にやっていかないとな。


「よーし、この計画は承認するぞ」


 俺は魔神王であるが、同時にこの塔の主人である2代目大賢者でもある。

 自分の権限を使って、さっそく計画にOKを出すことにした。


 宇宙要塞が完成したら、次は艦隊の建造計画にGOサインを出そう。


「兄上―」

 でも、クリスからは非難がましくみられる。


「チッ」

 イリアは舌打ちをしてきた。

 そんなに、宇宙艦隊がよかったのかよ。



「まあ待て、イリア。ロマンは大事だが、まずは宇宙艦隊の母港を作っておかないといけないだろう。ここは焦らずに……」


 厨二病に覚醒しないクリスのことは諦め、まずはイリアを説得していくことにした。

 味方は多いにこしたことはないからな。


あとがき



SF世界「ファンタジー世界、いつまでも貴様の天下だと思うな。これからは俺様の時代だー!」

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