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異世界転生したら魔神王だった 魔王よりヤバい魔神たちの王だけど、世界征服も世界破壊もしたくない。マジで。  作者: エディ
第1章 魔王になって世界征服も世界破壊もしたくないと言っていたら、なぜか魔神王になっていた。意味が分からん
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26 魔神王陛下の即位

「っと」

 転移で地上に戻ったら、突然体が重たくなって、思わず尻餅をついてしまった。


「つつっ、そういえば地上には重力があるんだったな」

 長い間宇宙空間での戦闘続きだったせいで、重力の存在を忘れていた。

 あと、かなり長い期間戦い続けていたせいで、自分で思っていた以上に、疲弊していたようだ。


 体だけでなく、瞼も重い。


「主、大丈夫ですか?」

「……」

「おやおや、相当お疲れだったのですね」


 体が動かないどころか、瞼が重くなって持ち上がらない。

 メフィストに返事すら返せない。



 そりゃそうだよな、

 普通でノーマルな人間が、宇宙空間で、何日も飲まず食わずで戦い続けたのだ。

 しかも酸素の補給も、滅多にできずに。


 あと、今の俺の体は12歳。


 疲れに負けて、いつの間にか俺は瞼を閉じて、その場で眠ってしまった。

 眠ったというか、もはや気絶したといっていいだろう。




 それから次に目を開けた時、目の前にイリアの顔があった。


「おめでとう」

 イリアから、突然告げられた。


 長く戦い続けていたせいか、イリアの顔が物凄く懐かしく思えた。

 それと寝起きのせいで、頭が完全に回っていないというのもあった。


「ありがとう?」

 と、俺はよく分からないままイリアに返事を返す。


「兄上、無事でよかった。戦っているのは地上からでも分かりましたけど、1年も宇宙にいたんですよ」


 クリスもこの場にいた。

 俺の方を見るクリスは、目に涙を溜めて、俺のことを心配してくれているようだ。


 って、ちょっと待て。


「1年……だと」

「そうです。兄上、よく生きて戻ってこれましたね」

「お、おおうっ」


 マジですか!?

 俺、宇宙空間で1年も戦い続けてたの。

 そりゃー、疲れて気絶するのも当然だよな。


 ……完全に人間やめてるわ。


 俺、まだ自分のことを人間だと思いたいのに、自信がどんどんなくなってしまう。



「主、神々の世界になると、戦闘が1年など普通です。私も神だった頃に原初の魔とやり合った際は、7年ほど戦い続けましたから」

「……」


 メフィスト、お前何言ってるの。

 俺は、そんな化け物じゃないぞー。


 人間の自信を無くしかけたけど、こいつの顔を見たら、俺はまだ人間だという思いが強く沸いてきた。

 メフィストが常時うさん臭すぎるからだろう。



「コホン。それはともかく、主もようやく御心を決めていただけたようで、臣下として感激にございます」

「俺の心?」


 こいつ、また訳の分からないことを言いだしたぞ。



「主、おめでとー」

「ありがと、う?」


 クレトにもなぜか祝われた。

 やはりまだ頭の働きが完全でないようで、俺は首をかしげながらも、そんな生返事を返した。


 そういや俺、12歳と思ってたら、1年も宇宙にいたせいで、13歳になってたわけか。


「これって、俺の誕生日……」


 誕生日なのかなーと思って、そこで周囲を見渡せば、途中で言葉がつかえてしまった。


 周囲に広がるのは、闇に包まれたかのような、黒一色の部屋。

 漆黒の床に、暗黒の天。

 どこまでも続く闇の天に向かって、黒の列柱回廊が無限に建ち並んでいる。


 魔王城じゃないか!

 玉座の間じゃないか!


 俺たちの戦闘で散々ボロボロになったのに、もう元に戻ってやがったのか。


 ダンジョンの自動修復機能め、こんなところで仕事をきちんとこなさなくてもいいだろうに!



「なんで、この部屋にいるんだよ!」


 戦闘がぶっ続いたせいで、疲れた状態で転移してしまった。

 地上に転移したつもりが、よりによってこんな悪趣味な場所に転移したとは、あの時の俺は、そこまで頭が回らなくなっていたようだ。

 自分のバカな行動に、蹴りを入れてやりたい。


「ハッ!」

 だが、それ以上にマズいのは、俺が今座っている場所だった。


 大慌てて、立ち上がる。

 だが、完全に手遅れだ。


「我ら魔神たちを統べる偉大なる王、魔神王陛下のご即位に、我ら一同寿ぎ申し上げます」

「ウオオオーッ、魔神王陛下万歳」

「世界征服だー」

「世界破壊だー」

「ヒャッホーイ」


 周囲にはイリアたちだけでなく、魔人たちが勢ぞろいしていた。


 それだけでなく中位魔族……だと思う連中も勢ぞろいしている。が、どうにも進化か神化を遂げたようで、以前の姿と変化していた。

 おまけに魔力量が向上していて、最低でも魔王と同等の気配がした。

 下手すると、魔王より魔力量が多い奴までいる。


 あと、下級魔族のゴブリンたちも勢ぞろいしていた。

 こいつらも魔力量が増えているようだが、俺のレベルからすると、ゴブリンの魔力が2倍になろうが、10倍に増えようが、誤差程度にしか感じられない。

 でも、明らかに以前より、強化されているのを感じとれる。


 1万体が勢ぞろいしているおかげで、ゴブリンたちの魔力量が増加したのを、感じ取れたのだろう。




 だが、いま最も重要なのは……


「ええっ、イヤだ……」


 この場にいる全員が喜びの声を上げているせいで、俺が小声で口にした言葉なんて、誰の耳にも入らなかった。

 俺が気絶して座り込んでいたのは、よりにもよって玉座の間にある、魔王の玉座だった。


 いや、今や魔王どころか、魔神王の玉座にクラスチェンジしている。


「新たな神の王の誕生に、捧げ(つつ)

 唖然とする俺の前で、ゴブリン兵士たちがライフルを構えて、俺に敬礼。


「撃てー」

 さらにライフルを空に向けて、祝砲が撃たれた。


「ちょっと待て、お前ら。これは間違いだ、俺は魔神王になんて……」

 ……ならないぞ。


 そう言いたかった。

 だけど、イリアが突然俺めがけて飛びついてきた。


 妹が飛びついてきたので、慌ててキャッチすれば、顔に口づけをされてしまった。


 一体何が何やら……

 固まってしまう俺。



「私からのお祝い」


 イリアの顔はいつものように無表情だった。けど、若干の照れが含まれているのを感じとれた。

 長い間一緒にいる兄弟だからこそ、感じ取れたと言うべきだろうか。



「兄上なら、きっと大丈夫です。大変だと思いますけど、頑張ってください、魔神王を」

「いや、だからこれは事故でだな……」


 クリス、誤解だ。

 これは誤解だから、お前までそんなことを言うんじゃない。


 それと大変って意味は、どう考えても俺の部下連中が暴走するのが分かっていて、言ってるよな。


 俺も、この場にいる魔族改め魔神どもが、好き勝手暴走して、俺の胃袋をストレスで苦しめる未来像しか浮かんでこない。



「心よりのお祝いを申し上げます、主……いえ、魔神王陛下。即位後は、この世界の神を始末し、陛下が正当なる世界の支配者となりましょう」

「イヤだっつってんだろ。世界征服も、神の世界での虐殺もしないから!」


 メフィスト、そこは笑うところじゃない。

 いつも毒々しい笑顔のお前が、穢れのない少年みたいな笑顔を浮かべるんじゃない!


 表場とは裏腹に、言ってることが悪魔以外の何者でもないぞ。

 今じゃ悪魔どころか、魔神だけど。



「主ー、閻魔からもお祝いだって。これを好きにしていいってさ」

「なんで、こいつらまでいるんだよ……」


 クレトの後ろに、アンデッドたちが並んでいた。

 見知ったアンデッドたちで、地獄の最奥にいた、歴代魔王と闇落ち勇者たちだった。


「お、おめでとうございます」

「ど、どうか殺さないで」

「もう地獄に戻りくないので、陛下には誠心誠意お仕えいたします」


 そんな殊勝な連中じゃなかっただろう。

 お前ら、散々俺のことを殺しにかかってきておいて、なんで借りてきた猫みたいに大人しくなってるんだよ。


「わ、我も貴様の実力を認めてやらんでもないからな。か、勘違いするな、我は別にお前のことを主と認めたわけでは……」

「なんで大魔王が、ツンデレキャラに変身してるんだ!」


 俺が封印したはずの大魔王までいた。


 なんで地獄の閻魔は、嫌がらせのような連中を俺によこしてくるんだ。

 俺に恨みでもあるのか。

 会ったこともないのに、嫌がらせをされる覚えなんてないぞ。


「それと閻魔から書状を預かってきたから、読んでおいてねー」

「今すぐよこせ」


 クレトが能天気に差し出してきたのは、地獄の支配者である閻魔大王からの書状。

 なぜこんな嫌がらせをするのかと、俺は大慌てで書状を開いて読んでいく。



 様式美というもので、閻魔大王からの書状は装飾過多の文章だったが、要約すると次のようになる。


『地獄にクレトが帰ってきても、地獄(うち)では手に負えないので、そちらにお任せします。ストレスでワシの胃袋に穴が開かないように、絶対そちらで面倒を見てください。そのためなら、地獄の最奥の罪人どももプレゼントしますから、絶対にクレトをこっちに送り返さないで!』


 クレトのバカ、地獄でもろくでもないことをしまくってるようだ。

 閻魔大王の胃にストレスで穴を作るとか……俺も似たようなものなので、閻魔大王の気持ちを理解できた。


「でも、こいつらいらねぇ……」


 クレトはともかく、地獄から送られてきたアンデッド連中は、このまま送り返したい。

 もう魔王とか、そういうレベルの連中はいらないんだよ。


 今じゃ中位魔族だった連中でさえ、魔王クラスの化け物に”神化”してしまったせいで、この塔にウジャウジャ溢れている。


 魔王なんて持ってこられても、俺には管理しきれないぞ。




「俺悪いことしてないのに、どうしてこんな目に遭わないといけないんだ」

「陛下の日頃の行いが、よろしいからでしょう」


 俺が天を仰いで嘆けば、メフィストがそんなことを言ってきた。



「魔神王になんてならないからなー」

 最後に無駄な抵抗をしてみたものの、この場に集う魔神達が大声ではしゃぎまくり、俺の声は誰一人として聞いていなかった。




 大悲報、俺、魔神王になってしまった。

あとがき



 主人公が魔神王になってしまいましたが、まだまだ完結しません。

 これは終わりでなく、始まりにすぎませんから。

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