おっさんダンジョン
「はぁ...はぁ...はぁ...」
私は息を切らして膝に手をついていた。
「何なんだ、あの場所は」
ゆっくりと私は顔を上げて振り返る。
そこには、大量のおっさんが『ギュウギュウ』に一つの空間に入っていた。
「少し前まで、あんなにたくさん居なかったのに、少し時間が経つとあんなに増えるなんて聞いてないぞ」
私は、事前に聞いていた話と違う事に怒りが湧き上がったが、今は気持ち悪くなりあのギュウギュウに詰まったおっさんの中から抜け出せた事に疲れていた。
ぐったりした私は、目の前にあった椅子に座った。
「クッソ、汗もかいて気持ち悪い。さて、どうすっかな」
私は、息を整えながらこの後の事を考えていた。
「ここでゆっくりしてる訳には、行かないんだよな。時間もないし。かと言って、何の策もなくあのおっさんの中に飛び込むのは、危険だ」
私の視線の先にある、『ギュウギュウ』に詰まったおっさんの空間は、一定時間で入口が締まり、一定時間後にまた入口が開いて待ち受けていた。
「扉が開いている時に、勢いよく入って行けるが、その後扉が閉まるとあの中に閉じ込められるんだよな。あの中じゃ、身動きなんて取れないし、体も押されておっさんに密着して気持ち悪いんだよな......」
私は、腕を組みながら何か策はないものかと唸りながら考え続けた。だが、良い策は思いつかないまま時間だけが過ぎて行った。
そして『はっ』と私は気付き、腕に付けた時計を見た。
「ヤバイ、変な事を考えてたらこんな時間だ」
咄嗟に椅子から立ち上がって私は、扉が閉まっている方へと歩いて行き、立ち止まる。
そこに真横から、勢いよく鉄の乗り物が目の前を過ぎて行く。
そして、『プシュー』と音を立てて閉まっていた扉が開くと、雪崩のように人が出てくる。
それが終わり、私は中を覗くとそこには『ギュウギュウ』に詰まったおっさん達がいた。
「すーはー」
私は一度深呼吸をして、ゆっくりとおっさんダンジョンへと再び足を踏み入れた。
そして私は心で、ある事を決めた。
「(明日は、10分いや30分は早くでよう....)」