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村長さん、激おこ


村に戻って村長さんを訪ねる。




「はじめまして、アシナ=ジョージと申します。

実はジェイド君を私共のパーティーに参加させたく、ご両親に報告に行きたいのですが、ぜひ村長さんに立ち会っていただきたいと思いまして罷りこしました。どうぞよろしくお願いいたします」




「ジェイドをですか?

アルさんやミナさんから話はお聞きですかな?」




「えぇ、彼らともきちんと話をしました。

ジェイド君は明るく元気で素直なお子さんです。

もしご両親から反対の声がありましても、よほどの事情でなければ後押しをお願いしたいのです。

本人もやる気満々ですし、我ら全員で彼を守りますのでどうかよろしくお願いいたします」



と深々と頭を下げるジョージ。





村長としても、あの両親のもとでずっとこの村で使い潰されるより、僅かな可能性でもあの子が強くなれたら……と、快諾した。





「わかりました。あの子にとっても良い機会ですじゃ。

出来ることなら広い世界を見て逞しく育って欲しいのですわ。

ずっとこの村にいてはあの子は可哀想じゃで、どこかで職人の修行でもさせた方が良いのではと常々思うとりました」






ジェイドが村長と話しながら自宅へと戻ると、ちょうど一つ年下の弟たちがオヤツをもらっていた。




「(わざと)おや、ジェイド、ちょうどいい時に着いたのう。オヤツの時間じゃの。話はあとでいいから先にオヤツを食べておいで」




「ジェイド、あんたの分はないよ!

オヤツを食べれるほど働いてないじゃないか!」





「ほっほっほ。ではギルとジャルはどれだけ働いたのかの?

ワシは今まで一度もこやつらが働いとるとこを見たことが無いがの!」




「こ……この子らはバカのジェイドと違って頭がいいんだよっ!

だから勉強が仕事なんだよ!」




「ほう?では問題じゃ。

一つ銀貨3枚のピーチを12個買うのに、金貨1枚渡した。

さて、お釣りはいくらじゃ?」





え~とえ~とと指をおる子供達を庇うように母親が吼える。




「この子らはまだ8歳なんだからそんな難しい問題解けるわけないだろう!」




「そうか……のうジェイドや。お主はわかるかの?」



「うん、お釣りは64銀貨だね♪」






「……ちょっと頭がいいからと得意気に!」






「お主はちょっと母親として贔屓がすぎるようじゃの!

ところでジェイドや、母さんに報告することがあるんじゃろ?」






「あっ、うん!母さん僕ね、荷物係としてジョージさんのパーティーに雇ってもらうことになったから、この村を出て行くね♪」




「はっ!荷物係かい、お似合いだね。

でも畑仕事は誰がするんだい!」




「え~と。ギルもジャルももう8歳だし充分お手伝いできるよ♪

5歳の時の僕よりすごく大きいし、2人いるんだから大丈夫だよ♪」





「お前の仕事を何でこの子らにさせなきゃいけないんだ!」




「5歳の僕が出来たことだし、2人いるんだから絶対大丈夫だよ、母さん」






「ナ・ニ・を・勝手なことをぉぉ!」







「勝手なのはお前さんじゃバカモノ!

昔っから、ジェイドが何も言わん事をいいことに!

ギルたちを働かせたくないんじゃったらお主らがもっと働け、バカもんが!

今まで誰が一番重労働してたのか、これから思い知るがいいわ!

ジェイドや、かまわん。ジョージさんたちの迷惑にならぬよう、しっかり働くんじゃぞ」





「はい、村長。お母さん、今までありがとうございました。

ギルとジャルもしっかりお母さんのお手伝いしてあげてね♪

じゃあ僕、荷物も無いし、このまま行くね♪さようなら行ってきます」






「え?着替えとか無いのかい?」






「うん、僕の持ち物この服1枚だけだからこのまま出れるよ♪」





「それはまたなんとも………

じゃあみんなと合流したらジェイド用の日用品を買って、そのあと歓迎パーティーだな」




「え?パーティー開いてくれるの?嬉しい!

僕、荷物係頑張るねっ♪」




「あぁ、頼りにしてるぞジェイド」






ジェイドとジョージは家から出たが、村長はまだカミナリを落としていた。




「あんな明るい子を何でそれほど嫌うのじゃ!

あの子がお主らに何かしたのか?

お主らが辛くあたってもいつも一生懸命手伝いをしておったろう!

いったい何が気にくわんのか……呆れてモノも言えんわい」




「気味が悪いんですよ。

赤ちゃんの時からじっと見られてるようで。

それに私たちに少しも似ておりませんし」





「……甘えたくとも自分は捨て置かれて弟たちばかり可愛がられとったんじゃ、そりゃじっと見つめて当たり前じゃ。

これから思い知るじゃろうな、いかにジェイドがこの家の為に頑張ってくれていたか」





「……もうあの子は死んだものと思って忘れますので帰って来なくていいと伝えておいて下さい」






「お主………まぁいいじゃろう。

その代わり、もしあの子が有名になって金持ちになったとしても、名乗り出ることは許さんからの!」




「ふっ……承知してますよ。

あんな……魔法もろくに使えないやつが有名になるとも思えませんがね。

一生荷物持ちで終えますよ」







家のトビラを開けっ放しで話していたのでアルやミナにも話は聞こえていたが……





「ちょっとジェイド君、あんたのお母さん強烈だわね。

よく今まで我慢してたわね、感心しちゃうわ」





「なんかもう物心ついた時からあんな感じだし慣れちゃったよ♪

それに、オヤツって言ったってミナさんたちのくれるお菓子の方が100倍美味しいんだもん、かえってギルたちが可哀想だよ」




「ぷくくっ、言うな、ジェイド。

確かにミナたちよくお菓子食ってるよな(笑)」



「もう!………ふふっ」




「しかし村長さん……温厚な人だと思ってたけど、なかなかの激おこ具合だったな(笑)」



「激おこ?」




「あぁ、すんごく怒ってるってことさ。

ジェイド君、一緒に旅をするようになったら、俺の故郷の話も色々聞かせたげるからね、楽しみにしていてね♪」





ジョージの語った情勢に、少し不安はあったけれど、両親のもとから離れることができ、まだ見ぬ仲間のお兄さんお姉さん、そしてこの世界に胸を膨らませるジェイドだった。











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