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勇者 アシナ=ジョージ


「ねぇねぇジェイド君、この辺りの魔物たちすべてお片付け出来たの?

どこに置いてあるのかしら?」


「そうだよ、山のようにあった魔物をいったいどこに……」




「なんかね、大きな倉庫みたいなのの中に入れるんだけど、そこにそれぞれ『薬草』の棚とか『耳ウサギ』の棚とかあって、種類毎に分かれるんだ!」




「「それってアイテムボックスだね、多分」」





「戦闘に巻き込まれた薬草とかハーブも一旦お片付けしといたら、綺麗になるからとっても助かるんだ!」



「「いやそれマジで?」」




「うん、僕お洋服もこれ1枚しかないからさ、夜寝るときに仕舞っといたら朝には綺麗になってるの、便利でしょ♪」





「なぁなぁジェイド。

ちょこっとコレ仕舞っといてもらえね?」






そういって出されたモノは、即座にハエが寄ってきそうな程の異臭を放つアルの洋服。

あちこち破れている上、ぐしゃぐしゃに丸められてこんがらがって、いったい何着あるのかわからない団子状態。





「うわーん!アルさんの洋服【お片付け】」





「アル、あなた……洗濯くらいこまめにしなさいよ!」



「いやぁ~あとでまとめて洗おうって思いつつ、ついつい放置してたらあんなことに」




「あなた、そんなんだからイケメンなのにモテないのよ!」



「いやいやいや、モテないとか関係ないだろっ!」



「みんなへの気配りとか出来るし優しいのに、そのズボラさと身形に構わないところがダメなのよねぇ~」





「あははは、ホントだよアルさん。

あの助けられた魔術師のお姉さんも最初、真っ赤な顔して目をハートにしながら魔物を殲滅してるアルさん見てたけど、その見てくれに気づいたら逃げてっちゃった♪」



「うるせぇ!親父の形見の剣を修理するまでは色々節約してんだよっ!」




「ふ~ん、でも次々服を買うよりきちんと洗濯した方が節約になると思うけど?

はい、アルさんのパンツ。

僕、30枚もパンツ持ってる冒険者さん初めて見たよ」



「えぇ~!!アル、あなた……」


「いやはや、言い訳のしようもござりませぬ」




「あとは、ズボンにシャツ靴下……

この破けたシャツやズボン、一晩預かってもいい?

……それとお父さんの剣って一度預からせてもらっていいかな?」



「なんだ?ジェイド。修理できるのか?それなら助かるんだが……」




「うんとね、服やズボンはなおると思う。

僕の服も、破けたから明日繕おうと思ってたら綺麗になってたから。

でも武器や防具は試したことがないからわかんない」



「悪いな、頼むゎ!」





「で、アルさんミナさん。

魔物たちの振り分けどうする?

冒険者さんだけで分けたとして大小強弱平均しても、1人あたり100匹以上になるけど。

今回は誰がどれを倒したとかわからないから、レベルや熟練度に関係なく一律にしちゃう?」






「えぇ!いったい何匹いたの?」






「ワイバーンが243匹・レッドイーグルが307匹・フライングデビルが114匹・ツインファルコンが710匹・ミノタウロが627匹・ブルーオークが902匹・ワイルドウル……」



「いや、ちょっと待ってちょうだい。それを全部収納出来てるの?」




「うん、この道沿いにいて巻き込まれた森リスやスライムもいるよ!」





「はぁ~わかったゎ。とりあえずしばらく預かっててちょうだい。

王都と街のギルドに問い合わせてみるわ」




「わかった♪」






アルとミナに別れを告げ村に戻るジェイドの後ろ姿を見ながら、二人して考え込む。






「ねぇアル。あなたが魔物にのみ込まれそうになった時あの子言ったわよね、『速く逃げて』って。『早く逃げて』じゃなく」



「あぁ確かに。いきなりスピードアップしてあっという間に村の中だった……」




「今にも魔物が村に襲いかかろうとした時に、『魔物は出入り禁止』って叫んでたわよね?」




「あぁ、いきなり見えない壁が出来たかのようにぶち当たって圧死してたな……」





「明日、村長さんに話を聞いてみるわ。彼なら何か知ってるかもしれないし……」




「そうだな、憶測だけで話し合ってもどうにもならんしな」





「もし……もしあの子のチカラがホンモノなら、ミキの力になるかもしれない。

あんな幼い子供に過酷な運命を背負わせることになるかもしれないけど……」



「ミキってお前の双子の妹だよな、確か勇者のパーティーに選ばれた」





「そうよ、流行り病で両親を亡くしてから私たちはずっと二人で生きてきたわ。

わかってるのよ。名誉なことだと。

普通の冒険者だって、今回の異常発生した魔物に襲われる事もあるし、危険を怖れてたら何も出来ない。

でも!でも!魔王なのよ!」




「そうだったのか。今日の魔物どもでもスゴいプレッシャーだったけど、魔王ともなると格が違うわな。

勇者パーティーはとても優秀だと聞いてるが身内としてはそりゃ心配は尽きないわな」







翌日、二人は村長の家に向かった。





「あぁ、アルさんミナさん。

昨日はどうもありがとうございました。

冒険者の皆さんのおかげです。

あんな……空を真っ黒に覆う程の、地面がひっくり返るかと思う程の……

思い出しても膝が震えますわい!

もうこの村は、おしまいじゃと思いましたわい」





「さすがに私たちもダメかと思いましたわ(笑)

ところで村長さん、ちょっとお聞きしたいんですけど。

ジェイド君の魔法のことなんですが……」





途端に、満面の笑みで話していた村長の口元が、ヘの字に曲がった。




「あの……?村長さん?」




「あの子は働き者じゃし明るい子じゃ。

確かに魔法の才能は有りませんが、本人も苦にしておらん。

いや、心の中ではどう思うとるかはワシにはわかりませんがの。

しかしそれで卑屈になったり友達を妬んだりするような子ではありません。

ワシにも毎日ボルトマッサージをしてくれております」





「……そうですか。私たちも明るく元気なジェイド君に助けてもらっています。

もし彼を王都に連れて行きたいといえば、ご両親は反対なさるでしょうか?」




「はっきり申してあの子の両親は『働き手』としか思うとらんかもしれません。

家族の中であの子だけが浮いちょります。

容貌も瞳の色も、両親にも弟妹にも似ておりません。

あの二人の間に出来た子じゃというのは間違いないのですが、知らない人が見れば貰い児やと思うかもしれませんな」





村長と別れたあと、ミナは興奮気味だった。




「ねぇアル。私、王都に行ってきていいかしら?

この事をミキや勇者様に相談したいの。

きっと彼は、いや彼自身も気付いてないみたいだけど!

ほら、私たちにカッコいいって言った時、僕、魔法が苦手だから憧れちゃうなぁ~って言ってたでしょ?

本人も気付いてないのよ!」




「その可能性はあるけど、あいつまだ9歳だぜ?

親元から離すの可哀想じゃないか?」





「とりあえずはパーティーの人たちの意向を聞いてみてOKなら、ジェイドとご両親に話してみるから。

とりあえず緊急事態……ということで、この転移石使うわね」





返事も聞かずに王都まで転移したミナ。






早速勇者パーティーのみんなにジェイドのことを伝える。



大容量のアイテムボックス

絶対防御の結界

身体強化etc




みんな大絶賛だったが……


やはりネックは幼すぎるということだった。


親元を離れデッチ奉公に行くとかいうならまだしも、魔王討伐の過酷な旅に連れて行くとなるとやはり躊躇する。




「みんな!一度俺が会って話してみるから。

ジェイド君自身がどんな風に思ってるかね」







ミナは、勇者を連れて急ぎ村まで転移する。








「やぁ、ジェイド君?

俺はアシナ=ジョージと言います。よろしくね♪

君に聞きたいことがあるんだけど、今いいかな?」
















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