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トミー、スライムと出逢う


「くぁ~~!よく寝た」



懐かしい夢を見た。




ふふっ、アルさんやミナさんたちどうしているんだろう?


あれからもう少なくとも40年は経ってるだろうからしわくちゃのジジババになっているのかな?

それとも?




いかんいかん。

まぁ、多分此処とは違う世界だろうから、時の流れも違うだろうし確かめる術もないな。





何故だろう……

両親や弟妹の顔も名前も思い出せないのに、アルさんたち冒険者の人たちや勇者パーティーの事は今でも鮮明に覚えている。



『僕自身』を愛してくれてた人々だからかな?




想い出に浸っていたけど、もう朝食の時間だし早く着替えなくっちゃ!





「パパ、ママ、おはようございましゅ!」



「あぁ、おはようトミー。ボタンがずれてるぞ」



「ぁ~~ホントでしゅ!んしょっんしょっ!

あれ?サムにぃたんはもう学校に戻ったですか?」



「いや、昼前の馬車に乗るって言ってたな。

部屋を片付けてるんじゃないかな?」




「あとでご挨拶に行くでしゅ。

う~ん、今日から僕お昼ご飯お弁当にして欲しいでしゅ。

お友達と一緒にお弁当食べてもいいでしゅか?ママ!」



「あらあら♪いいわよ~♪

食堂にいるのはおじさんばっかりだもんねぇ。

ごめんね、寂しくない?」



「大丈夫でしゅよ、僕もう3歳のお兄ちゃんでしゅ!

今日はおうちの探検したあと、公園行くでしゅ!」



「はいはい、わかりました。

今日のヒヨコ豆のスープを全部飲めたら立派なお兄ちゃんね♪」



「ぇえ~~~」



「なんだ?トミーはヒヨコ豆のスープが嫌いなのか?

栄養満点なんだぞ」



「違いましゅ!嫌いなんじゃないでしゅよ、好きじゃないだけでしゅ!」




「………あははははっ!うまいこと言うなぁトミーは。

さぁ私も出勤時間だ。じゃあ行ってきます」






皆が出掛けたあと、書斎から本を引っ張り出す。




『う~ん……こちらの方がちょっと文明は遅れてるかな。

まぁでもそれほどの差は無いな。

魔方陣を活用してるか否か……ってところの差か」




昼からは、公園……を通りすぎそっと村の外に出てみる。


スゴい解放感だ。


しかし今僕はまだ3才。。。



1人で遠出する事も出来ないし、この近辺を探索するぐらいしか出来ないな。



いや、サムが在籍してる学校のある町は此処から馬車で5時間弱、僕の脚なら多分30分もかからないだろうから、行けないことはないけれども、見知らぬ3才児が町を歩けば目立ってしまう。



とりあえず1Kmほど向こうにある丘でしばらくは探索するか。




途中で料理に使えるハーブやら解熱効果のある薬草やら色々採取しながら丘にたどり着く。





「ひゃ~~!でっかい樹だなぁ。木陰が涼しくて気持ちいいな」



ごろごろと寝っ転がり、ひんやりとした草の感触と匂いにリラックスしていたのだが、けたたましい鳴き声が聞こえてきた。






「コッカドゥードゥルドゥー!!!!コォー!コォー!!!!」


「ぴゅぃ~ん……ぷるぷる、ぴゅぃ~ん……」




「あれ?あの鳴き声はコックウか?」




樹の反対側を見てみると、コックウがナニかを足蹴にし、そして嘴で激しくつつき回している。



蹴ってはつつき蹴ってはつつき。



あれは捕食しようとしているのではなく、いたぶっているのだ。





「感心しないな、コックウさんよ」




ビシィ!と投石したら、ちょうど頚椎に当たり沈黙した。




その足元を見れば、ぷるぷるとつぶらな瞳で見上げるスライム。



誰かに飼われていたのか?なんか人懐っこいナ。




「おいお前、誰かに飼われていたのか?」


「ぴゅぃ~ん!」



「捨てられたのか?」


「ぴゅぃ~ん!」



「野生なのか?」


「ぴゅぃ~ん!」




「……………………」


「ぴゅぃ?」




「さ……さぁ、そろそろ戻るか。お前も気をつけて帰れよ」


「ぴゅぃ………ん…………」



ぷるぷると見上げる瞳は、今にも涙が溢れそうになっている。





「ああっ!くそ!飼ってやれるかはわからんぞ?

親がダメって言ったら無理だからな」


「ぴゅぃ~ぴゅぃ~!!」


肩に跳びのって来て、おいおいと泣き出す。



服がびしょ濡れなんだけど。。。




「じゃあ帰るぞ。しっかり掴まっとけよ」




コックウの首をガシッと掴み走りだした。





村まで戻って、食堂を目指す。





「じぃちゃじぃちゃ!コックウでしゅ!

悪いことしてたからエイってしたら岩に当たって死んじゃったでしゅ!」



「ぴ~ぃょ~~~!!」



普段はぽっちゃり滴型のスライムが、びよ~んと斜めに伸びて目を見開いている。




「なんじゃ!スライムかいな。何でそんなに伸びとるんじゃ?」




「さぁ?わからないでしゅ。何かびっくりしてるみたいでしゅ。

コックウがスライムをいじめてたんでしゅ。

だから石をエイって投げたら飛び上がって、岩に衝突しました。

じぃちゃ、スライム飼ってもいいでしゅか?

コックウやっつけたらついて来たんでしゅ」




「ママがいいって言ったらいいんじゃないか?

おいキャシィ、トミーがスライム飼いたいって連れてかえって来たぞ」




「まぁトミー。生き物はオモチャじゃないんだから飼うって決めたら途中で飽きたとか言ったらダメなのよ。

ちゃんとお世話できるの?」



「うん大丈夫♪僕の言ってることちゃんとわかってるよね♪

良い子にできるよね?」



「ぴゅっ!」


ぺこりとお辞儀したあと、嬉しそうにゆらゆら揺れている。



「じゃあ今日から、¨ぷよちゃん¨ね♪」



「ぴゅぃ?…………ぴゅぃ~~」





自室に戻り、まだ名前に不満がありそうなスライムに、


「仕方ないだろう?僕はまだ3才なのに、お前の名前を¨アレクセイ¨とか¨キングダム¨とか付けられないだろが!

3才児らしく、ぷよちゃんだ!異議は認めん」



「ぷひゅ!」




「なんなら前世の勇者が言っていた、標準的なニホンジン名の¨タロウ¨にするか?」



「ぴゅぃ~!!ぷよっぷよっ」




「ふふっ。よろしくな、ぷよちゃん

僕がお世話になった勇者は、アシナ=ジョージと言って、ニホンという国から召喚されたんだよ。

ホントに素晴らしい人だった」






















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