揺れる想い
-キャンベラ大森林 -
鬱蒼とした森のなか、ジョージたちは進んだ。
馬は連れてくるのは可哀想だと、近く(……といっても結構遠い)の村に預けてきた。
どんどん森の中に入って行く度、魔物に遭遇する。
セシルが彼等に
「襲って来ない限り、何もしない、縄張りなら通る許可をおくれ……」と伝えながら。
多くの魔物はそのまま無視・素通りしたが中には好戦的な者達もいて、その度にジェイドに討伐指示が出た。
まぁ心配性のジョージが後ろでハラハラしながら構えていたが、「てぃっ!」とほとんど一撃であった。
「ジェイド、だいぶ上達したなぁ♪よく魔物の動きも見てるし、冷静に弱点をついてる。
こりゃもう立派な冒険者だよ。よく頑張ったな」
「うゎぁ……ジョージさんから不吉な言葉。。。
僕、明日死んじゃうの?やだぁ!
死んぢゃわないようにもっともっと努力する。
こゎこゎ!」ぷるぷる
「なんでやねん(笑)真面目に言ってるし♪
ホントにすごいよジェイド!
まぁ1つ言うなら、チーム戦の時は「てぃっ」は止めれ、「てぃっ」は!
何気に笑っけてくるんじゃ! ひとりの時なら別に言ってもいいけど、気が抜けるし(笑)
膝かっくんされたみたいになる。
笑いが止まらん!」によによ
「おぅ、ジェイド! 奇襲してるくせに雄叫びをあげるヤツよりゃマシだけどよ、マジで腰砕けになるゎ(笑)」
「えへへ…… なんとなく言っちゃう♪
でも僕が無言で、す〜んとした顔でサクサクやっつけちゃってたら不気味じゃない?」ほよよん
「。。。(考え中っ考え中) あっ!怖いわー!
無表情でジェイドが……あっ無表情じゃねぇ!
うっすら笑ってるよ!ぎゃぁぁあ!」
「もう!怖い想像を勝手にしないでよ!」
「「「あはは!」」」
周囲を警戒し注意深く、しかしジェイドは珍しいモノを見つけると、うっひょ〜〜と叫びながらも採取に没頭しつつ深い深い森を抜ける。
「はぁ〜〜!やっと抜けた!……けど何、この長閑な光景は」
「……そうね、ホントにここは魔界かしら?
もしかして迷いの森で方向を間違えてどこかの村にたどり着いたんじゃ……」
「あっ!」てててててっ
「すみませ〜ん!僕、ジェイドって言います、こんにちはぁ!
あの、魔王さんはいますか?お会いしたいんですけど♪」
「あれ、人間か?珍しいな。よくこんな深い森を通ってこれたな。
魔王様ならそこの畑を耕すのを手伝って下さってるぞ。」
「うゎぁ、ホントに?魔王さんって王様なんでしょ?
それなのに農家さんを手伝ってるの?すごい!
とってもいい魔王さんなんだね♪」
「おぅよ!魔王様は乱暴者の魔族連中を処罰して、平和を取り戻してくれた。
そして国中を回りながら困窮してる国民達の手助けをしてくださってる。」
「そうなんだ!あのねぇ、最近魔族の人達が人間に酷いことをするから、どうなってるのか訊きにきたの。
魔王さんが命令してるのかなぁ〜って」
「あぁ、アイツらか……半年ほど前に魔王様が人族とは争わず国内の改革をおこなう……と言った時に弱腰とバカにしながら出ていったヤツらだ。
やらないんじゃない、出来ないんだろう!だから俺らがやってやるぜ。あんな下等生物に怖じ気づきやがって、せいぜい指をくわえて見てな!と捨て台詞をはきながら。。。
そうか……そんなことを……」
「そうなんだ。どこの組織にも一人や二人はそんなおバカさんがいるよね。
自分が正しい、間違えてるのはオマエラだぁ!って妄言吐くひと……」ふんす!
「がははっ!毒舌だなボウズ」
「ぎゃっ!また毒舌って言われた!普通に話してるのに(泣)
んじゃ魔王さんとお話してくるね、ありがとうおじさん♪」ぶんぶん
畑の方に駆け寄り、ひときわ凄まじいオーラを放つ人物に
「すみません、魔王さんですかぁ?」と尋ねたジェイド。
『ん?』と言いつつ振り返った魔王は一瞬のフリーズのあと、ジェイドを抱き締めた。
「「「「ジェイド!」」」」
慌てて駆け寄るジョージ達に我にかえり、
『あ……すまん、知った人に似ていたものだから思わず……』と頭を下げた。
「あぁびっくりした!魔王さん、僕ジェイドと言います。よろしくお願いします。
そしてこちらはアシナ=ジョージさん。勇者さんです。
こちらがミカさん、賢者さんです。
こちらが……」と、一人一人紹介をし皆もそれぞれ挨拶をした。
チャウダーくんを紹介し忘れ、こっぴどく髪の毛を引っ張られた。
『よく来た、勇者どの。では城に招待しよう。
お〜い、お客さんが来たから帰るなっ!また来るぜ』
『魔王さま、ありがとうございましたぁ!』
深々と頭をたれる人々に手を振って別れを告げた。
━ 魔王城 ━
すたすたすた
『魔王さま、また仕事をサボってどこかにいらしてたんですか?もう!
今日というきょ………あっお客様でしたか、失礼いたしました。わたくしはミラージュと申します。お見知りおきを』
『お、ミラージュ。今夜の夕食と部屋の用意を頼むな!』
『はい、畏まりました』
『ジェイドくん、君は貴族とか言うやつなのかい?』
「いえ、僕は農家の出なんですよ。さっき魔王さんがやってたような畑仕事をしてました。
ジョージさんがパーティーに誘ってくれて一緒に旅をしています」
『そうか。旅をしてたら危ないことも多いだろう、大丈夫なのか?』
「たしかに村にいる時は平和で危ない事はなかったけど」ちらっ
『ん?』
「ここにいるみんなが過保護過ぎるくらい愛してくれるから、村にいた時よりもずっと幸せ♪」にこにこ
ジョージ達は、この穏やかで礼儀正しい雰囲気をもつ者が極悪非道な魔王とは思えず、話し合いの機会を持つことができるかもしれないなと考えた。
和やかに夕食が終わり、ジョージが話がありますと伝えたら、
『今日はもう遅いしここまで来るのに疲れただろうから朝食のあとにしよう』とこたえた。
個室では不安だろうから、二人部屋にした……と言われたので、必然的にジェイドはミカと同室となった。
「僕、別に他の人とでもいいのに。
ミカさん、ガイさんと一緒の方が良かったんでしょ?」ふゎぁ
「え……えぇぇ!そんなことないゎよ!そんなのムリムリ!
てか、ジェイドくん、知ってたの?」
「気付いてないのはガイさんとアンリさんだけだよ。
肝心のガイさんが気付いてないのは何でかわからないけど」むにゃむにゃ
「ふふふ、そんな事はいいからもう寝なさいな。目が半開きよ。
しかし気づかれてたとは……恥ずかしい!」
明日から、ジョージやセシルと顔をあわすのがつらい。。。どんな顔してたらいいのよ!と思うミカであった。
皆が寝静まった頃……
『なぁ、見ているんだろう?エルグランド』
「やぁ、久しぶりだね。元気にしてたかい?」
『あぁ元気にぼっちやってるサ♪
今、ミラージュという宰相が出来た。イーブンという大臣もな。
二人ともそれはそれはこの魔国を大事に思い腐心してくれている。
立派な後継ぎが出来た。なぁ、もういいだろ?』
「ヴェルファイア……」
『アイツのいない世界は我にとっては無意味なんだ。もう眠りにつきたい……』
「わかった。長い間君には無理をさせたね」
『わがまま言ってすまんな、ありがとう』
そうして魔王は儚く笑った。




