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絶対領域

むにょ〜ん



ぽんっ!


「ぅおっ!ととっ」


『きゅきゅっ!』


「あっ、チャウダーくん、ただいま♪」


「ジェイドくん、大丈夫だった?」


「はい、セシルさん、ただいまです♪だいぶ待ちました?」


「う〜ん……2〜30分かな?」


「そうなんだぁ、じゃ、ちょっとみんなが戻って来るまで薬草採取してるね♪」


ちょっとズルしてチャウダーくんに貴重な薬草の場所を聞きながら採取している。


一時間ほど採取してても他のメンバーは帰って来ない。


「これは……ここにパーティーハウス出して待ちますか?」


「そうだね、そうしよう。……まだ採取するのかい?」


「うん、もうちょっとだけ♪」


「ふふっ、じゃあチャウダーはジェイドくんについててあげてね♪」


『きゅきゅっ』


「え?いいの?チャウダーくん、大好き〜〜」


『きゅ〜〜!』げしげし!


「痛たたっ!もぅ!」


「あはは、馴れ馴れしくすんなぁ〜って言ってるよ、でもシッポはフリフリしてるから怒ってるんじゃなくて照れくさいんだよ(笑)」


『きゅっ!』ぐるっ!ぎろっ!


「あはは♪ごめんごめん♪」


「え?チャウダーくんは何て?」


「あぁ、Ch《ぎろっ!》……いや、何でもない。まぁ、ジェイドくんのことは好きだけど、抱きつくのは止めたげてね♪覆い被さるみたいで、野生の本能的に忌避してるみたいだから。チャウダーは赤ちゃんの時からボクと一緒にいるけど、本質はやはり野生だからね♪」


「ホント?チャウダーくん、僕のこと嫌いじゃないの?」


『きゅきゅっ』こくこく


「良かった♪僕、嫌われちゃったかなぁ〜って落ち込んでたの。抱きつくのはダメなんだね?他にはダメなこと無い?」


「脇に手を入れて持ち上げるのもダメだね、足は踏ん張れないし、腕は爪撃出来ないから無防備に感じて不安になるみたい」


「そっかぁ〜ごめんね、チャウダーくん、知らないうちにヤなことしてたんだ……」


『きゅふっ』ぽんぽん



それからしばらくのあいだ薬草採取をしているとミカさんが、そしてアンリさんも帰ってきたがジョージさんは陽がくれても帰って来なかった。


「仕方ないわね、今夜はここで過ごしましょうか。魔物は出るのかしら?」


「僕、結界張って来る!」



夜、皆が寝静まっていると、急にドガッドガッと音がして家が揺れた。みしみしと壊れそうだ。


セシルが

「いや、そんなつもりはないよ、仲間が帰ってきたらこの家も片付けてここを去るから、ちょっとだけ我慢しておくれ」と言っていた。


「ふぁ〜〜!ブラックタイガーさん?どうしたの?」


「あぁ、縄張りを周回してたら、怪しい建物が建ってて、縄張り荒らしかと思ったんだって。一応納得してもらったよ」


「……う〜ん、あんなに大きな魔物さんだったら、結界がみしみしいってるねぇ。うん、ジョージさんが帰ってきたら相談しよっと♪」


翌日、まだ帰って来ないジョージを待ちながらそれぞれ訓練をしたり書物を読んだりしていた。

もちろんジェイドは薬草採取である。


せっせせっせと薬草採取をしていると、ふと昨日のブラックタイガーと目があった。


「あっ、ブラックタイガーさん♪昨日はごめんなさいね、ジョージさんが帰ってきたらすぐにパーティーハウスどけるね♪」にこにこ


『ぐるる……』


「あっ、そうだ♪お腹空いてない?オークのお肉有るけど、どう?はいっ!」


……すんすん ぺろっ がつがつ!


そのあとは、近場で薬草採取をしているジェイドを横目で眺め困惑気味だ。


誰もが恐れて逃げるか、やけくそのように攻撃してくる人間。

なのにこの人間の子供は逃げも攻撃もせず、普段通りという雰囲気で話しかけ、背を向けて薬草採取をしている。


セシルが近寄ってきて、「やあ!」と言った。


『がふっ』ちらっ


「あぁ、彼は悪意に敏感でね、君から悪意を感じなかったから普通にしてるんだよ。彼には《人でも魔物でも良い人も悪い人もいる》ってわかってるから、そんなことで差別はしない。魔物だから悪い!なんて偏見はないよ」


『ぐるる』ふしゅぅぅ〜〜


「ふふふっ、まぁ大丈夫だよ。あんな風に見えてけっこう強いよ」



昼食も済んだ頃、ジョージが戻ってきた。


「やあ、みんなお待たせ♪あぁしんどっ!」


「ジョージさん、おかえりなさい♪あのね、結界なんだけどね、昨夜このブラックタイガーさんが結界にあたったの、そしたらパーティーハウスがみしみしいったの!結界が弱いの!」


「なんのこっちゃ……ブラックタイガーさんの縄張りだったのかな?ごめんよ、すぐにどけるね、ありがとう♪」


『るるる』こくん


「さて、ジェイド。どんな風に結界を張ったの?」


「え?普通に、【結界】って言って張ったの」


「じゃあ、村にスタンピードが起きた時は?」


「え〜〜?確かあの時は魔物さんが怖い顔して村に入って来ようとしたから、入って来ちゃダメ!って思った」


「そうだね、イメージしてみ。-ここは聖なる領域、何人も侵すべからず-ってね」


目を瞑って、が弱い女性や子供、老人が恐れおののく姿を想像した。

カッと目を開け、するとすかさずジョージが


「絶対領域!」


「【ぜったいりょういき!】」


パーティーハウスがほのかに光る。


「……結界張れたの?成功した?」


「ブラックタイガーさん、ちょっと家を壊す勢いでぶち当たってくれない?壊れてもまた作り直せるから大丈夫」


だっ!だだだだっ!ガッ!!


『ぎゃうあ〜〜!』


「あぁ!ブラックタイガーさん!」


走りより、ポーションを飲ませる。


「大丈夫?」


『がぅ!がふっがふっ!』


「こんな強固な結界は見たことがない、なんだこれは?って言ってるよ。結界というより神の領域……」


「はぁぁ〜〜」


「ジェイド、今の感覚忘れるな。ブラックタイガーさん、すみません。まさかそこまで強固な結界だとは……」ぺこり


『るるる、がるっ!』


「結界とて弾力がある。その、たわみ具合であと何度攻撃すれば破壊出来るか、経験則で判る。しかしなんだ?これは防御というより拒絶……一切の攻撃を拒絶しているみたいだ!……ですって」


「ごめんなさい、ブラックタイガーさん(泣)」


涙目のジェイドの頬をぺろっと舐めて、『るるっ』と言った。


「!……ジェイド、よぉくお聞き。今のは村や家など、固定物に張る結界だ。絶対領域、忘れるな!次は人、個人に張る結界だ。イメージしてみ、凶悪なドラゴンが君を襲う。大きな爪が!風を切り襲う!」


「ニーソ!」


【に〜そ!】


今度はジェイドがほのかに光る。


「ブラックタイガーさん、悪いけどもう一度お願い。今度は絶対さっきみたいにはならないから。その爪撃でジェイドをぶっ飛ばして」


『……ぐるる!』


ドガッ


ひゅう〜〜〜


「うわぁ〜!」


ドゴォォン!


『がぅ!』たたたっ


ふんふん


「凄ぉ〜い!全然痛くないや♪あはは♪」



じゃあありがとう!と、ブラックタイガーに手を振りネオルーメンに向かう。



ブラックタイガーは思った。

……わたしのことを怖れず、礼節を以て接してくれる人間もいるのだな……と。


20年後、魔盲の赤ん坊を拾い育てて有名になるのは、また別の物語……



ジェイドと言えば、強固な結界が出来てウキウキ♪


そしてジョージは




腹を抱えて笑いをこらえて、ミカ達に白い目で見られているのである。







`


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