そして誰も居なくなった
『う〜ん。よし!んじゃ第三部の実技テストに行ってくるゎ!お前ら、体調はいいのか?少し休憩しようか。我も魔王辞めたくなってきたから魔王争奪戦にしようか?はぁ〜〜ダラダラしてぇ!』
『では魔王さま、一刻ほど休憩の時間をいただけますでしょうか?』
『おぅ、いいぞわかった。もう早くテスト終えてダラダラ農業してぇわぁ。おいイーブン、茶でも飲みに行こうぜぇ!』
『……かしこまりました』
魔王の少し後ろを歩くイーブン。
少し屈託がある様子に、
『ん?どうした?』と尋ねる。
『思い過ごしであれば幸いですが、なにやらヤヌス様から邪な気配が………』
『ふはは!何も心配する事があるか!我を誰だと思っておる。小細工なんぞ屁の突っ張りにもならんゎ(笑)』
全く意に介さない様子の魔王さまに、ため息をつきながら付いていくイーブンだった。
一方ヤヌスはというと……
『おいお前達!これは千載一遇の機会じゃぞ!おそらく魔王のヤツも参戦するつもりだ。全員で一斉にあやつに襲いかかれ!跡形もなく消し去れ!』
『てぇと、魔王のヤツを殺しちまうんか?親父。誰が次期魔王になるんだ?』
『もちろんこのワシがなるに決まっておる。ふふふ!あのイーブンとやら、今のうちに夢を見ておけ!脚から切り刻んで泣かせてやるわ!』
『父上、それはあまりにも……騎士道に反する事にはわたくしは反対です!』
『ふん!ギュアヌ!やはりお前は!なよなよとしたかんがえではこの魔国には相応しゅうないわ!ワシが魔王になった暁にはお前なんぞ溝さらいにでもなるが良いゎ!』
ミラージュは、その様を横目で見ながら思った。
(あの魔王さまに勝てると思っているのか?本当にバカな御仁だ。この世界に魔王さまはただおひとり。きっと誰も気付いていないのだろうな……)
さて、魔王が帰ってきて言った。
『そろそろ始めるか〜?』
『あの……魔王さま……』
『ん?裁縫上手のギュアヌじゃねぇか?どうした?』
『またそのようなお戯れを……
わたくしの騎士道精神に則り実技テストを辞退いたしたく、お許し下さいませ』
『ん〜〜残念だな。わかった。では沙汰を待て』
『はっ!魔王さまにおかれましては……御武運を!』
『イーブン、ヤヌスの身内でもヤツは強い方だがなかなか……精神の方も真っ直ぐだな。ちょっと愚直だが』
『あっはい。ギュアヌ様は小さな子達からも人気が高く誠実なお人柄とお見受けいたします』
『さ〜て、んじゃ魔王争奪戦を始めるか!』
室内に入った魔王がそう宣言する。
『ここにいる者は自分に実力があると思っている。それで間違いないか?』
『もちろんですとも!誰が魔王に就任しようと間違いはこざいませんからな』
『じゃあ始めるか。イーブン、お前危ないから結界張っておいてやるわ。目ぇ瞑んじゃねぇぞ、しっかり見とけよ!』
『はい!』
張られた結界をヤヌスがギリギリと睨み付け、小声でイーブンに言った。
『楽しみに待っておれ!アヤツが死ねばこの結界も消える。その時が楽しみだわ!』
息をのむイーブンに勝ち誇ったように背を向ける。
『トーナメント制でやるか?それとも総当たり戦にするか?どっちも時間かかるなぁ〜』
『ほっほっほっ!多対1ではどうですかな?お前達、行け!』
おびただしい凶悪な魔法が降り注いだ。5分程、休む暇もなく連続で撃ち込まれる。
『よし!もういいでしょう!』
『へっへっへ!呆気ないじゃねぇか(笑)』
『さぁ!次は虫けらの番ですね!脚からとばしましょうか』
下卑た笑いを浮かべ、ファイアシャベリンを放つ。
しかしイーブンには届かず、びくともしない。
『な……なんだと!まさか!』
驚いて振り返ると、そこには無傷の魔王が立っていた。
『お前ら、今のは殺す気でヤっただろう?ちょっとムッカリ来ちゃったなぁ〜〜』
魔王の纏う空気が変わった。
笑ったのである。
……神は美しくも抗い難い。その笑みは見るものを等しく跪かせその身に歓びを与える。
しかし魔王のそれは、究極の美しさである。ひと度目の当たりにすれば全ての思考を放棄し、魂魄を奪われる。
身も心も……全てに於いて思考が行動が停止し
呆けたように魅いられる。
ほぅら……
魔王の瞳が妖しく光ったよ
『生まれ変わることも叶わぬ。この世界から塵のように消え失せろ』
『ぁ…』
そして
誰も居なくなった。。。。。。
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