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『魔王』という偽者

『魔王さま……このイーブン、とても感動しております!

歴代の魔王さま方は、我々兵士を『盾』どころか『柵』ぐらいにしか思って下さらず、何時も軽視されておりました。

訓練を視察に来られたこともございません。

このように、我等の事を少しでも考えて下さる魔王さまは初めてでございます。本当にありがとうございます!』


『ん?歴代の魔王?』


『はい!今までの魔王さまは、世界征服やら我が野望やらと仰り、事あるごとに人族の街へ攻め入り、そして最終的には滅ぼされ……

幸いにも、人族がこの魔国にまで攻め込んで来ることはなく今日まで無事に過ごせておりますが……

先ほど申し上げましたように、わたくしは皆が笑顔で過ごせればと思っておりますので不要な争いは出来ましたら無いほうが良いかと……』


と、申し訳なさそうに告げる。



『……我がこの世界に誕生してもう既に数万年経ってるが、その間、我がずっと魔王だぞ?』


『…………は!?』


『もうホントに嫌になるぜ!毎度毎度、昼寝から目覚める度にヤヌスのようなヤツが大臣で!

人族の街を襲えやら滅ぼせやら、鬱陶しくって寝起きも悪くなるってもんだ!

今回はお前ら兵士が傍に居ったから少しいつもと違いはあったが。

昔は、助けた仔コボルトが狩人になりたい!って言うから、弓術やらナイフ、解体の仕方等教えてやったこともあったな(笑)

我もどちらかというと平和主義というか、のんびりだらだらするのが好きだ。

牙を剥くモノには容赦せんがな』


『……はぁぁあ!?』


『うるさいな、耳元で叫ぶなや!』


『ぁ……あぁ!もも申し訳ございません。でもしかし……300年近く前にわたくしの父を蹴り殺した方は、魔王である!と……

では、では!あの男は!!』


『う〜ん。我が昼寝してる間に勝手に魔王を名乗っておるのか?けしからんな!

ん?……てことは、それ以外の時にもそのような事が有ったかもしれんな!?』


『……歴代魔王様の偉業という書物がございます。

幾つの人族の街を滅ぼした、とか英雄の首を取った……等と、書かれております書物です。兵士に登用された者は必ず読んでおくようにと言われておりました。確か図書館にあると思いますが……』


『そうか。一度目を通しておくか。とりあえず今からはコボルト兵隊長の自宅に向かうぞ!』


『魔王さま自らでございますか?』


『そりゃそうだ、我が行かずに誰が行くと言うのだ?家族は多いのか?何か手土産を持っていった方が良いのかな?』


『そうでございますね、まだ幼いお子さまもたくさんいらっしゃいます。わたくしの事情を察してか、何度か夕食に招いて頂きました。

奥様もとても気さくでお優しい方でございます』


『本格的な魔国の改革を終えたら一度視察に国内をまわってみたいものだな!』


『はい!わたくしめもお供させてくださいませ!』


『ははは、楽しみが増えたな。サクサク進めて行くぞ!』



兵隊長の自宅前に着いた。

リンゴ〜ンと呼び鈴を鳴らすと、とてとてと足音がし、扉を開けるや否や魔王の脚にしがみつき『パ〜パおかえりなさ〜い♪……あれぇ?』と不思議そうに見上げた。


『おかえりなさいボクシー、今日は遅かったのね♪

……!!あっ!申し訳ございません、お客人さま。てっきり主人が帰って来たものだと……

これ!セリカ離しなさい。あぁ!御召し物にソースが!申し訳ございません!』


娘を抱き上げ、汚してしまったズボンを見て青ざめる。


『どうせ帰ったら着替える予定だったのだ、別に構わん。それより奥方、兵隊長の件で話がある。中に入れてくれまいか?』


『主人のことで…… あっ、申し訳ございません。散らかしておりまして恥ずかしゅうございますがどうぞ』


居間に招かれ着席すると、頭を下げ伝えた。

『我の不用意な一言のせいで兵隊長が命を奪われた。誠に申し訳ない』


『…………主人が…………』


気を失いかけた兵隊長の妻の身体を支えるイーブン。


『あぁ……イーブンくん、いったいどういうワケで……』


『今すぐ人族の街を襲えと言った愚か者に、不測の事態に備えて訓練を強化しておけと伝えたら、いきなり兵隊長の命を奪ったのだ。訓練等ムダな事をせずともすぐにでも侵略すべきだ!などとほざいてな。誠にもって申し訳ない』


『なんという…… 理由もなく攻め込む等、蛮行と言わざるを得ません!そんな人物に主人が!あぁ〜〜!』


母親の泣き叫ぶ声に、隣の部屋から、お客さまだぁ〜♪と覗いていた子ども達のうち、人間で言えば7歳前後の男児が魔王に掴みかかった。


『お前が!お前のせいでお父さんは殺されたのか!?許さない!僕がお前をやっつけてやる!』と、殴りかかった。


『すまんな、ボウズ。突然のことで防げなかったのだ。

………う〜む。。。それにしてもお前の顔は見たことがある顔だなぁ?……誰だっけ?

あっ!!ムーヴか?……いやそんなワケないか。もうあれから7〜800年は経ってるからな、何時までもこんなちびっこなハズはないな』


『え?』


『誰かワシを呼んだか?』

奥の部屋から老人が現れた。少し足が悪いようで杖をついている。


『あっ!お義父様……』『じいちゃん!』


『おお!魔王さまではございませんか!お久しゅうございます。ムーヴでございます。覚えておいで下さりましたでしょうか?おかげ様でこのような歳になるまで穏やかに過ごさせて頂いております!』


『『魔王さま!!?』』


『ムーヴ!すっかりジジィだな(笑)一流の狩人になったと噂では聞いておったが。

そうか……兵隊長はお主の息子だったのか』


『はて?ボクシーが何か失態を冒しましたのでしょうか?

ワシが言うのもなんですが、アレは愚直な男でございます。決して魔王様の災いになるようなことはせぬと思いますが……』


『いや……我の不用意な言葉のせいで命を奪われたのだ、すまない'』


『な!なんと!』


『魔王たまぁ〜〜?じぃじがいっつもおはなししてくれる魔王たまぁ〜?』とてとてピトッ!


『そおですよぉ〜〜魔王たまですよ〜〜じぃじは何ていってるのかなぁ〜?』


『『『『…………』』』』


『ん〜〜とねぇ、わるいオジサンにつかまったけどぉ〜たすけてくれてぇ〜おけがもなおしてくれたの♪魔王たまありがとぉ!』


『い〜え、どういたしまして〜♪』


『うふふ♪』


『あはは♪』


『『『『…………』』』』


『魔王さま、なにやら色んなモノが崩壊してございます。速やかに元にお戻り下さりませ。話が進みませんので』


『おう!すまんすまん。とにかく自分の口で奥方には伝えたかったのだ。それにしても、本当に申し訳なかった』


『兵士の妻ですから……常に覚悟は出来ております。しかも魔王さま自らお伝えに来て下さり、これ程の名誉はございません。きっと主人も誇りに思っております。ありがとうございました』

涙を見せながらも気丈に振る舞う妻に再度頭を下げる。

その後はムーヴも交えて色々と取り決めをした。主に生活費の事など。恐縮し固辞する妻やムーヴに、兵隊長が今までイーブンをはじめとする兵士達に教えてくれた事……兵士として、人としての心構え等、称賛に値すると伝えその功績に報いさせてくれと伝えた。


魔王達が家を出たあと、魔王に殴りかかった息子が、

『ボク……魔王さまを殴ってしまった。どうしよう。謝らないといけないよね……』と、青ざめた顔で呟いた。


『セレステや。なんと言って謝るのじゃ?』


『魔王さまとは知らずに失礼しました……って』


『それでは魔王様は許してくれないだろうて。

もしお前さんが殴りかかったのがイーブンだったら謝らないのかな?』


『あっ!ううん、ボクの勘違いで殴ってしまったんだもの、それをきちんと言って謝る!』


『そうじゃ。謝る……というのは、ただごめんなさいというだけのものではないんだよ。何処が間違っていたのか、ちゃ〜んと伝えないとな、うわべだけの謝罪になってしまうからの。心を込めた言葉は相手がまともであればきちんと伝わるもんじゃ。忘れるでないぞ?』


『わかりました。ありがとうじいちゃん!』


『ふほほ、これもワシがお前位の頃に魔王様から教わった事じゃ。あの方は本当に真っ直ぐなお方じゃ。

そもそも、不用意な一言のせいで……と仰られておるが、聞いた相手がまともであれば、こんなことにはならなかったであろうて。

それでも魔王様は、一兵士の自宅にまで来てきちんと謝罪された。

普通のお偉方なら、そんな事はせん。部下に任すじゃろう。そういうお方じゃ。ご尊敬申し上げ、我が身を賭けるに値するお方じゃと、ワシは思う』


『そうだね、ボクもそう思うよじいちゃん!』



『ムーヴ、マジでジジィになってたな(笑)

そうだよな……いくら我等魔族が長寿な種族とはいえ、普通は寿命があるもんだよな。

イーブン、お前もいつしか我の見た目を越してジジィになるんだろうな……』


『魔王さま……』


イーブンは、魔王の孤独を垣間見て切なくなった。

自分を理解し協力してくれる参謀にも恵まれず、孤高を貫いて来たのであろう。

滲む涙をこらえ、

『魔王さま!このイーブン、たとえ腰が曲がろとも総入れ歯になろうとも命尽きるその瞬間まで魔王さまに付きまとい、間違った事を仰ろうモノなら、ガミガミ意見します故、覚悟為されませ!』と、宣言した。


『おう!頼んだぜ♪ちゃんと入れ歯ははめて来いよ、ふがふが何言ってるのかわからんって事が無いようにな!』



二人、笑いながら城に向かい夜道を歩いた。





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