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魔王さまは寝起きが悪い

『……王……ま、おめ……か?魔王さま?』



(……あぁ!うるさい!)




『魔王さま、みな心待ちにしておりますぞ。早くお目覚めになってくださりませ』


『やかましいゎ!あと5年や10年寝ていてもたいした違いはなかろうが!』


『魔王さま、勇者が現れましたぞ。すぐにでも迎え撃つ準備をしていただかなくては……』


『なんだ、その勇者が魔族をいたぶり殺しておるのか?』


『……いえ、そういうわけではございませんが。しかしここで魔王さまが皆に声をかけて下さると、士気があがるというものですぞ!』



……また不毛な争いを部下たちにやらせるつもりなのか。

幾度目覚めても静観すると言う大臣はいない、むしろ積極的に事を起こしたがるヤツばかりなのが余計にイライラさせる。

いつぞやのように、何の抵抗もしていない魔族の子どもを人質にとり攻め込もうとした愚か者でない限り放っておけばよいではないか……



『我が出るまでもなかろう。各々に警戒を怠るな、戦闘に備えて訓練をしておけと伝えておけ!』


『お言葉ですが魔王さま!なにもせずにいるなどと、人族どもに舐められてしまいますぞ!

それに我々は訓練等という事をせずとも生まれつき強さが定められております故、いくら日々鍛練しようとも、ホレこの通り弱者は強者の前では無力でございます。

このような者共は、我ら強者にいたぶられる為に生まれて来たのでございますよ!』


大臣の斜め後ろで膝を折って控えていたコボルト兵隊長のアタマを掴み、兜ごと無造作に潰した。



『なるほど…… 強者は弱者をいたぶっても良いのか。それは良い事を聞いた(笑)

寝ていることにも飽きた故、暇つぶしに弱者いじめをやってみようか』


魔王の間に、緊張が走った。

今ここにいる者達の中で一番強かったのは、先ほどのコボルト兵隊長。

それが魔王さまではなく、大臣でさえあっさりと無造作に命を奪うことが出来るのだ。

シンと静まりかえった部屋の中、カタカタと鎧の音だけが鳴り響いていた。


『それでこそ魔王さま!さあお心のままに!情け容赦無く蹂躙することこそが魔王さまのあるべき姿ですぞ。

このような弱者どもでは満足されますまい、今すぐ憎き勇者どもを殲滅しに参りましょう!』


唾を飛ばし興奮する大臣を無視し、壁際に整列する兵たちに声をかける。


『おい、お前らの中で一番強いのは誰だ?』



その場にいる兵士たちは皆フリーズしてしまった。

自分だと言えば必ずいたぶり殺される……その恐怖のあまり全員が目をふせてしまった。

誰か名乗り出てくれ!と必死に祈りながら……


その時、一人の兵士が姿勢を正し声をあげた。


『はっ!おそれながら申し上げます。我々の中では、……そちらのコボルト兵隊長が群を抜いて強う御座いました。その次ともなれば、あとは地の利や体調などで変わりますが、私めでございます!』


『ふん!このような軟弱者が群を抜いておったのか、笑止!

魔王さま、やはり城の兵士などではつまりませんぞ、人族の街を襲いましょうぞ!』


『おい、今答えたそこの兵士!名はなんという?』


『お耳汚し失礼いたします。わが名はイーブンともうします』

イーブンは、直接お声をかけられた事や強者が弱者をいたぶるのを肯定したような物言いに、失禁……いや、失神しそうになりながらも、然りと魔王の目を見つめ、答えた。


『そうか。ではイーブン、今より弱者いじめをするからお主、ついて参れ。

今からお主は環境大臣である』


『環境……大臣?』


『魔王さま!お戯れを!このような虫けらに役職を与えるとはどういう了見でごさりまするか!?』


『だって(嘲笑)

大臣一人減らそうと思ってるからな。だから一人増やさなきゃいけないだろ?

ここにいた中でこいつが一番しっかりしてて忠誠心も高そうだからね。

きっと良い大臣になると思うぜ♪』


『はて?誰かを罷免されるのですか?しかしこのような虫けらを登用するのはいかがなものかと……

我が一族に相応しい者がおります故、お考えなおし下さりませ!』


『お? 身内にいい人材がいるのか?

まぁ枠はあまり無いからなぁ……どうやって決めようか悩んでるんだ。

いっそのこと大々的に発表して立候補してもらうか?われこそは大臣に相応しい!とかな!』


『そのような……

魔王さま、我が一族は皆優秀でございますぞ。是非ともご一考下さりませ』


『よっしゃわかった。お主の一族を皆連れてこい。

そこで筆記試験と能力試験をしてみよう。

お主の一族が一番秀でているのか?

試験を受ける条件はお主が決めて良いが他の大臣らの身内には声をかけんのか?。まあ優秀な奴等が集まるなら好きに決めてくれていいぞ!』


『ほほほっ、ありがとうございます。今回は欠員の補充という事のようでございますので、わたくしめの一族の中より選りすぐりの者を連れて参りましょう!』


『……いや、さっき言ったであろう?試験をするから全員連れてこい。

我も審査員をしてみたいのよ!』


『……全員と申しましても、中にはボンクラもおりますので魔王さまには、お目汚しになりますゆえ……』


『ボンクラはお前じゃ!一見ボヤっとしているようでも何か一芸に秀でているかもしれんぞ。我の魔眼で見極めてやるわ。

例えば魔力が少なくとも、建築やら芸術に秀でているかもしれんしな。さすれば建築大臣として魔王城のリフォームを任せることも出来るではないか。

戦闘能力だけが全てではないぞ、如何にして魔国を堅固なモノにするかじゃ!

お前が連れてきたら腕力やら魔力だけで決めそうだから我も立ち会うぞ絶対に!

そして我の言うことを守らんなら即刻その首をはねる。わかったな!』


『は……はい、承知いたしました。全員連れて参ります』


『気に入った者が居たら役職を増やして取り立ててもやるからな!楽しみにしておれ(嘲笑)』


『有り難き幸せ!』



『……………』



いそいそと大臣が帰って行くのを黙って見つめるイーブンに、問いかける。


『どうした?イーブン』


『……いえ、別に。何でもございません』


『何か言いたい事があるのは我にか?それともヤヌスにか?

我がお主を買っているのは、自分の意見をきっちり持っていて単なるイエスマンにはならないだろうと思っているからだぜ』


『おそれながら申し上げます。単なるわたくしの憶測……と申しましょうか。

魔王さまにおかれましては、ヤヌス大臣に何か含むところがあるようにお見受け致しまして、少々気になりましてございます、ただそれだけでございます』


『あはは!我の人を見る眼は曇っておらぬようだな!』


『魔王さま……』



『イーブン、お前は魔王に何を望む?たとえ気にくわぬ回答であったとしても、いたぶったりせんから正直に言ってみろ!』


『わたくしは……わたくしの考え方は魔族としては如何なものかと自身でも思いますが……

皆が笑顔で過ごせればと思っております。

魔王さまにおかれましては我々国民を争いから守り、豊かな……平和な暮らしが出来ますよう、あらゆる改革、指導をして頂きたく思っております』


『ほう!何故そのような想いを抱く?』


『わたくしの父は、あるお方になぶり殺されました。

貧しくとも、優しく仲の良かった我が家族が草原で遊んでおりましたところ末子がその方の前で転倒いたしまして……

激怒したその方が末子を蹴り飛ばそうとしましたが父が庇って代わりに蹴られてしまいました。

それを見て、「そんな役立たずを庇って蹴られるとはお前物好きだな!そんなに蹴られるのが好きならもっと蹴ってやろう」と、父の命が尽きるまで蹴り続けておりました。

父が亡くなったことで我が家は更に困窮いたしまして……母は狩りが下手くそで(笑)

わたくしが働ける年齢になりましたので、兵士を志願いたしました。このように申しますと魔王さまにはご不快に思われるかもしれませんが。

コトが起きればわたくし等は最前線に立たされますでしょう。そもそも強くもないわたくし等は強者の前では指一つ動かす間もなくチリと成り果てるでございましょうが、確実にお給金を得る事が出来ますから……

もちろん!その責務を果たす為にも日々鍛練を怠ること無く続けておりましたが……此度のコボルト兵隊長の件を見てしまいますと、やはり生まれ持った才能には、抗う術すらございませんでした。兵隊長は誰よりも熱心に訓練に励み、我々にも指導して下さっておりました。それなのに……

それでも……心の奥底には、強い欲望が燻っております。

父がいた頃は、貧しくとも豊かな毎日でございました。少しの食べ物も、皆で分けあい笑いの絶えない平和な生活でございました。

魔族だからと、殺伐とした生き方をしなければならない……等ということは無いのでは?家族、御近所で仲良くしても良いのでは?

いつもそう思って過ごしております』


『……お前、兵士の支給はそれなりなハズなのにえらく痩せているのは食料や金を家族に渡しておるのか?』


『申し訳ございません!大家族な為に給金だけでは足りないかと、頂いた食料も渡しておりました。……が!決して人様の物や城内の物を盗んだりなどはいたしておりません!』


『ふん!やはりお前は環境大臣に決定だな!』


『……その、環境大臣とはいかなるものでございましょうか?』


『そりゃお前(笑) 環境を良くする為に、粗大ゴミを始末したり不要なモノを処分したりする役目さっ!』


『粗大ゴミを?』



『ああ!大変な役目だから覚悟しておけ!その代わり、給金と食料をアップしてやるからな!』


『はい!……ありがとうございます魔王さま!

このイーブン、命にかえましても責務を果たして参ります!』





『んじゃ行くぜ〜〜♪』









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