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魔王復活

「なあジェイド、良かったのか?ランクアップ出来たのにサ!」


「だって僕が掲示板を見て、コレ受けますって言ったんじゃないもの。それでランクアップするっておかしいんじゃないの?」


「普通はこちらの方から、コレってランクアップできるんじゃないですか?とか言いそうなモンなのに断るなんて、受付嬢困ってたじゃないか(笑)」


「まあな、採掘は本来冒険者のする仕事ではないからな、薬草・毒消し草の採取並みの、初心者用に設定してあったんだろう。たまたまジェイドがやらかしたから受付嬢もびっくりしたんだろうな。青菫石やアルミニュームはランクアップ断るのも良いけれど、ナックルマーラやサーティラットは素直に上げてもらって良かったんじゃないか?」


「そうだったの?あまりギルドのシステムわからないから、依頼を受けずに討伐したのもダメだったのかなあ~って思ってた♪ギルド長のおじさんの御厚意で特別扱いをしようとしてるのかと」


「まぁそれはギルド側からランクアップしますと言ったら違反してないって事だから、素直にうけたらいいよ♪」


「わかった。今度からはそうする♪」


「でないとジェイドの場合、いつまで経ってもランクアップ出来ねぇぞ(笑)

向こうから面倒ごとがやって来るからな!」


「もぉ!アンリさんひど~い!」



そんな風に話をしながら、次々と村や町を回った。

搾取するばかりで村人を虐げている領主もいれば、私財をなげうって己れも村人と同じようなクズ野菜のスープで過ごす領主もいた。


魔物避けの柵の設置を手伝ったり、水源の遠い村には井戸を掘る手伝いもした。



そうして旅を続けてきた中で、ジェイドはクロスボウだけでなく、ナイフ・槍・剣……みんなからあらゆる戦闘訓練を受けてどんどん逞しくなっている。


だが、訓練の時はいつも、やられてばかりだ。不思議な程に、べちゃっコケッ……と、無様なものである。


その様子を見ていた村人達は、

「あんたら、あんな小さい子にひでぇ仕打ちするだなぁ!もうちょい優しくしてやらんかね!」等とジョージ達にくってかかる。


苦笑するジョージ達だが、ジェイドはへたってもへたっても気にする事なく

「もう一回お願いしまぁ~す♪」と、やる気満々だ。


クロスボウの静止的すら、まともに当たらず「あれ~?」と本人も不思議そうにしている。


「うん、だいぶわかって来たよ♪ジェイドの場合、魔法と一緒だな。本番のみ効果アリって感じ?」


「え?どういう事?」


「お前自身は戦闘訓練せずに、俺達の闘ってる姿、剣筋を見とけって事サ!魔法も、俺やミカのを見てしっかりイメージするんだ」


「あ~~確かにジェイドってばそんな感じ!訓練の時の理屈っぽい教えより、実践の直感的閃きみたいな方がしっかり身につくみたいだよな!」


「意味わかんない……」


「ん~~例えば、ドラゴンの鱗は硬く、剣を通さないので鱗と鱗の間のすき間を狙うと良い……とか、ファイアボールとは拳大の炎を球状にしたものを相手に向かって飛ばすことである……とか、そんな風にして習うだろ?

お前は頭がいいから、何を聞いても『理解』は出来るんだが、それではうまくイメージが出来てないんだ。だからまずは自分自身が身体を動かすより、他人の、しかも達人の動きをしっかり見てイメージを固めた方がより効果的だと思う」


「じゃあ、しっかりイメージできるようになったらちゃんとしたファイアが出来るの?」


「あぁ!現にサーティラットや巨大マーラをやっつけた時は凍ってたろ?」


「そうだった!凍っていた!でも何でなんだろう……」


「お前、村で冒険者のお兄さんが魔物をビシバシ凍らせてたのを見たんじゃないか?『カッコいい~♪』とか言って」


「はっ!そうだ!めっちゃカッコ良かったの♪ぱきぱきに凍って、ぱり~んって砕けたの!」


「ボルトもな、龍神様を思い出してイメージしてみたら?で、ボルトじゃなく『龍神様』とか『雷鳴』とか、他の呼び方にしてみたらいいかと思うよ♪

もう、ジェイドの中では『ボルト』はマッサージのイメージが定着してるかも」


「あぅ!それはその通りかも……もう僕の中ではボルトは村長さんの腰のマッサージとか、『じゅうでんき』の代わりのイメージしかない……」


「ファイアもウォーターも他の呼び方考えろよ。あっでも名前考えるより先にイメージな!せっかく良い名前を思い付いても、ファイアと同じものって考えたらせっかく良い名前を思い付いても、チロチロした火しか出ないぞ!」


「ふふふ……ジェイド、この機会に魔方陣も覚えたらどうだ?俺の暮らしてた国にはケータイ小説ってのがあるんだけどさ、そこで出てくる異世界の魔方陣ってのが、コレまたご都合主義ってかサ、日本語が古代文字だったりして、主人公がバンバン魔方陣に強くなるってのがあるのさ♪この際、この長旅の合間にみんなで『漢字』覚えねぇ?」


「リーダー、この前見た『メール』とかいうやつに載ってたやつだろ?あれはちょっと難しすぎるぜ。あんなん読めるのって、ほんの一握りの人だけだろうよ、無理だよ」


「はは……日本ってね、識字率が高くてさ、それに数の計算なんかもほとんどの人が出来るよ。ジェイドぐらいの年頃には、かけ算わり算なんかも習うしね。15歳までは義務教育って言ってね、必ず学校に通えるんだよ。こちらに来て驚いたことは、トイレだけじゃなくて、貧しいからとかそういう理由で学校にも通えない子供の多い事だな。教育をしっかり受けられなかったら、将来とても苦労するからね、せめて読み書きできるようになればいいなあ……」


「……ジョージさん、絵が上手いんだからなんか本を作ったらいいと思う」


「ん?本?」


「例えばね、いちごの絵を描いて、いちごってしたに書いて、馬の絵を描いて、うまってしたに書いて……みたいにして、絵と文字を関連づけるの!綺麗な絵だからみんな関心持つと思うよ♪」


「あぁ!そういえば、イトコの家のトイレにそんなん貼った~った!」


「え~~ニホンでもそうやって字を覚えるの?だったらそんな感じの作って、村や孤児院に配ったらどうかしら?

この前の街の屋台のおじさんみたいな人もいるかもしれないし、貧しさで勉強出来なかった人が損をするなんてダメだと思うもの……」


「ふふふ♪あの時のおじさんの顔、笑えたゎ♪ジェイドったらわざと親切そうに忠告しながら暴くんだもの。でも、あの言い方ならお互い喧嘩腰にならなくて良かったのかもね♪」


「そうだな。騙したんだろう!って言い方をしたら絶対にケンカになるからな」


各地を巡っていると、なかには質の悪い人もいる。

人を見て売値やお釣りを誤魔化す商人もいるのだ。

たまたまジェイドがいた時に、少し薄汚れた服を着た子供達が、銅貨を15枚持ってある屋台で買い物をしようとしていた。

安い野菜ばかりだが、塩味で炒めてあって美味しそうな香りがしていた。

一皿4銅貨と書いてあるが、子供達は読めない。

これで二皿買えますか?と聞いた子供達に屋台の男は、足りないけど、銅貨1枚マケてやるよと親切そうな笑顔で言った。

ほっとした様子の子供達の前に出たジェイドが「おじさん、間違えてるよ?一皿4銅貨で二皿なら8銅貨だよ♪今回は多目に間違えちゃったから、こうして誰かが言ってくれたけど、反対に少なく言ったらおじさん損しちゃうよ?それにしてもおじさん優しいネ!1銅貨オマケしてあげるなんて、僕も買っちゃおっと!良かったね、君たち。このおじさん優しいね、オマケしてくれるんだって♪7銅貨でいいんだって、すごく美味しそうだよね♪」とまわりの人にも、いいおじさんアピールをしながらニコニコ笑った。


「そ……そうだな、おじさん間違えちゃったよごめんな!うん、オマケしとくね」と、悔しそうな笑顔という珍しい特技を見せた。


そしてジェイドも注文し食べたが、意外な事に美味しかった。


「美味し~い!おじさん、とっても美味しい!これで4銅貨はお値打ち品だよ♪僕、たくさん買ってもいい?コレに入れて~♪」


ボックスから小さめの鍋を出して、6人前買った。

それを見ていたまわりの人も、どれどれと注文する。


「うふふ、美味しいモノをきちんと売ってたらお客さんにはわかるんだよね♪」と言うと、少しばつの悪そうな顔で頷いた。

ジェイドの思いが伝わっているといいのだが。


ミカは、その時の悔しそうな笑顔の事を言ったのだろう、みんなも思い出してひとしきり笑った。


「ジョージさんが本を作ったら、僕が行商人になったらどんどん配るよ、安くしてね♪」


「やっぱりジェイドは行商人になりたいのかい?冒険者でもいろんな町に行けるんだよ?」


「困ってる人を助けることだけじゃないでしょ、例えば強い武器や防具を作る為に魔物の素材が欲しい……とかさ。掲示板でそういうのを見るたびイヤな気持ちになっちゃうの……」


「なるほどね。ジェイドは特にそういうのがダメそうだよな。魔物ともけっこう仲良しになってるし(笑)」


「悪い事をしてないのに、魔物だってだけでやっつけるのっておかしいよね?良い子もいっぱいいるのにね!」


「世界中の人がみんなそう思ってくれたらいいのにな。でも不用意に近付いてしまうのも危険だし、難しいトコロだ……」


とにかく魔王さんとの闘いが終わったら行商人になるの!と拳を握りしめ、強く叫んで、みんなにぽんぽんと頭を撫でられた。


「もぉ!またみんな僕を子供扱いするっ!」


「ジェイドももうすぐ12歳、そろそろ大人の仲間入りの年頃なんだが、やっぱり9歳から一緒にいるからついつい子供扱いしちゃうな。ごめんごめん♪」


約3年の間に背も伸びてきてはいるが、元が小さかった為にやはりまだ標準よりは小さめだ。

ジェイド自身、昔ほどにはコンプレックスを感じていないようにみえる。

それはみんながきちんと正当に評価し大事にしてくれていることがわかっているからだろう。

改めて、このパーティーに参加出来た事を幸せに思って心が弾む。


風の便りに、アルとミナが結婚したと聞き、セルシオが農地改革に成功したと聞き、みんなで「やったね♪」と喜びながら、ある町の魔物被害の対策をしていた時、それは起きた。


世界の空気が、ズンッと重くなった。


町の人々は普段通り集まって楽しそうに会話をしている。


中堅層の冒険者は首をかしげ、不思議そうにしている。


一部の冒険者が腰を落とし得物に手をそえ、臨戦態勢をとる。




「「「「「「魔王が復活した」」」」」」

お互い見つめあって頷いた。



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