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大量の鹿角と薬草の採取

`

丁寧な言葉遣いで自分の名を名乗った少年が、物騒な事を言った。


~角が欲しいんです角が欲しいんです角が欲しいんです~



出る筈もない汗が、額を伝った気がした。



しかもこの少年、にこやかに話してはいるが、隙が全く無い。

おまけにシルバーウルフの匂いがする。

ヘタな答え・動きをしたら一瞬で命が消えるな……


あかんわ……詰んだな(自嘲)


しかし、吾も一族の長。

群れの仲間の命だけは守らねば!


『ウム、よろしく頼むジェイド少年。して、角が必要とな?どれぐらい必要なのじゃ?』


「街で病気が大発生して、たくさんの薬を作らなきゃいけないので出来るだけたくさん欲しいんです♪」


『……そうか。脚を骨折して、もう立てないヤツがいるのだが……コイツだ。これだけでは足りぬか?』


骨折の痛みに耐え、必死に生きようとするその雄鹿は、その言葉を聞いて抵抗するように立ち上がった。


じっとその雄鹿を見ていたジェイドが動いた。


長にはその動きが全く見えず、雄鹿も脚を掴まれ初めてジェイドが動いた事に気付いた。


恐怖のあまり声も出ない雄鹿の脚の骨の位置を直しポーションを振りかけた。


「どう?くっついたと思うんだけど、念のため飲んでもおいた方がいいと思う♪」

今度は口を開けさせ、ポーションを飲ませた。


呆然とする2頭に、にこにこと笑いかけるジェイド。


『何をしたのじゃ?』


「え?これはポーションって言って、ケガや骨折の時に患部にかけたり飲んだりするお薬です。人間用に作ったモノなんだけど、この前狼さんに飲ませても大丈夫だったから多分イケると思って♪」


まだ少し痛みは残っているようだが、骨はちゃんとくっついたみたいだ。確かめるように地面に脚をつけている。


『忝なく思うが、これから命を奪おうとする者の傷を治してなんとする?』


「え?命……ですか?僕は『命』じゃなく『角』が欲しいんですけど……」


『なんですと!?』


「病気の治療薬の材料のディアニコルさんの角が欲しいん……ですけど……」


『……我等を狩りに来たワケでは無いと?』


「まさか!角取る為だけにそんなことしませんよ!

皆さんに少しずつでも頂けたらきっとたくさんになると思うんです。どうかよろしくお願いします!」


『少しずつをみんなで……』


「はい、角は権力や強さの象徴かもしれないし、僕にはその辺がわからないので、問答無用で切り取って行くのは何か違うでしょ?だから、まずボスさんに聞いてみようかな~って♪」


『では、群れの殲滅に来たワケではない……ということなのか?』


「もちろんです!違いますよ、角が欲しいだけです!あっでも角を切る時に痛みがあったりするのかしら?」


『大丈夫だ、痛みは無い。吾の群れは角のある者は120頭ぐらいかの。まぁ呼んでみようか』


長が高く長く鳴いて仲間を呼んでくれた。

集まったみんなに長が事情を説明してくれる。


『角を短くされるのはちょっと困るが、脇から枝のように出てきた部分なら構わんぞ。むしろ切って貰えたら助かるな』と笑いながら言ってくれたので、ジェイドは大喜びだ。


「皆さん、ありがとう♪魔族のせいで色々たいへんな事が起きて……

ホントに助かります、ありがとう!」


順番に切って行くと、どの個体も頭が軽くなったと喜んでいる。

5割ほどを切り終わった頃に、そういえば……と、ジェイドは長に尋ねる。


「最初、狩られると思ってたんでしょ?何であのケガしてたニコルさんを指名したの?確かに野生でケガしてたら致命的だけど……ちょっと冷たいなぁ~って思っちゃう」


『……あれは吾の息子だ。次代の長として、皆からも認められ慕われていたが、中には自分が長になりたいと思う者もいてな、嵌められたようだ。本人は詳しく言わないがな。見ていた者がおった。

……何故指名したのか……というのは、群れの者を少しでも多く生存させねばならんと思ったからだ。どうせアイツは逃げられん。吾とアイツでこと足りれば良いか……と、尋ねてみたのじゃ』


「そうだったの。でもケガが治ったからまた長候補に返り咲きだね♪良かったねぇ!」


『ああ、まさかこんな事が起きるとは!ジェイド少年、本当に感謝する。長……というモノは、群れを導くものであって我が物顔で威張る為にあるものではないからな』


「じゃあ息子さんのケガが治ってこの群れは安泰だね♪」


『そうなれば良いのだがな……』


「何か不安な事があるの?僕がお手伝いできることがあれば手伝いますよ♪」


そこに、ジェイドの背後に立つ1頭のディアニコル。

『よぉよぉ、お前か?このボンクラの骨折を治したの。ホントに余計なことしやがってヨ!』


「え?良かったんだと思うけど?なんかね、素質も人望もある彼が治らなかったらヘタしたら『卑怯者で頭の悪い俺様』が長になったかもしれなかったんだって!そんなのが長になったら、あっという間に群れが全滅だもん、良かった良かった♪」


しゃべりながらも次々と角を切っていく。話が聞こえてた群れの鹿達は笑いを堪えるのに必死だ。そいつこそが長の息子を罠に嵌め、脚を折ったヤツなのだから。


『なんだと!?このクソチビが!踏み潰してやらぁ!』

前肢を高く上げ、一気にジェイドを踏み潰してしまおうとしたが、振り向きもせずにジェイドから矢が放たれる。


下顎から2本、頭蓋骨を突き抜けて矢が刺さった。


「あっ!ごめ~ん♪後ろから姑息に狙われたから条件反射でつい、プチっとやっちゃった♪てへ♪」


『『『『『『…………』』』』』』


『お主……温厚なのかと思ってたら、なかなか過激ではないか……。何か怒っておるのか?』


「え?別にチビって言われて怒ってなんかいないよ?この作業にも群れにも邪魔なんじゃないかな?と思っただけ♪」


((((チビがNGワードか……))))


「だいぶ角が貯まったから、一度仲間のところに戻るね♪渡したらすぐに帰って来るから、このままちょっと待っててくれる?」


『わかった。このまま待機しておく』


「あっ!この鹿死んじゃったからもらってもいいかな?うちで今居候している狼さんが鹿肉好きなんだって♪いい?」


『何か怖い単語が聞こえた気がしたが……構わんぞ。我々は草食だからな、置いておかれてもどうにも出来ん』


「ありがとう♪んじゃちょっと行ってきます!」


ジェイドがあっという間に見えなくなって、長はふぅっと息をついた。

『話をしているうちにすっかり忘れていたが、やはり最初に感じた通り、扱いを間違えると厄介な少年だったな……』



「ジョージさん、ディアニコルの群れに行って来た~!角をもらって来たからよろしく。また続きもらって来るね♪」

と、角をガイに渡して行こうとした。


「ジェイド、何か細かくなってるけどどうしたんだ?これは」


「群れの長さんに頼んで、みんなから少しずつもらってるの。あと半分くらいが待ってくれてるから、また貰いに行って来るね♪」

じゃあねぇ~と去っていくジェイドを見送りながらジョージは、なるほどねぇさすがジェイド!と笑っていた。


そうして、すべてのディアニコルから角を取らせてもらい、ジェイドは群れのみんなにありがとうと頭を下げた。


『こちらこそ。頭は軽くなったし、乱暴者もやっつけてくれたしありがたい事よ』と返された。


「やっぱりアレがそうだったのかぁ。頭が悪いと、力や……人間なら金にものを言わせて他者を支配しようとするよね。そんなもので築き上げた地位なんて、何かコトが起こればあっという間に崩壊するのに……それがわからないヤツは上に立っちゃダメだね♪」


『ははは、その言葉胸にしっかりと刻んでおく。群れのみんなにも子々孫々に語り継ぐよう、言っておく』

見送りに来ていた皆も、力強く頷いていた。



ディアニコルの群れと別れ、ジョージ達のところに戻ると、ちょうどセシルが転移して戻って来た。


「あっ、セシルさん!街はどんな感じ?パニックにはなってなかった?」


「うん、ギルド長さすがだね♪あっという間にみんな落ち着いて街中みんなで協力しあっているよ」


「はぁ、良かった♪ところで僕、怖いこと思い付いたんだけどさ、この街からミリオネア?だっけ、次の街。そこに向かう途中だった人は襲われたりしてないかな?あの病気の恐ろしいトコロはすぐに歩けなくなるんじゃなく徐々にだから、2~3日してからわかるんだ。大丈夫かな?」


「……そう言われたら!この出来た分持って今から行って来るよ!」


「じゃあ僕はその間、この辺の薬草採取しとくね♪」


結果を待っている間、森リスに手伝ってもらいながら、珍しい薬草や木の実等も集めた。ギルド長が言った通りの豊富な量と種類だ。ついつい我を忘れて採取に没頭する。


そうしているとセシルが帰って来た。


ジェイドの懸念を聞いて、その場に残っていた治療薬を全て持ち、ミリオネアルに転移したとのこと。


日も暮れかけて、材料もいっぱい集まったことだし、残りの錬成はギルドの中でやるか!という事になり、街に戻った。


「あっ!おじさん、リュートさんにもう薬は渡った?」守衛を見つけ、ジェイドが駆け寄る。


「ジェイドくん!君がリュートの病気の治療薬を探してくれたんだって?ありがとう!本当にありがとう!まさか……そんな死に至る病気だったなんて」


「しばらくは脚の筋肉も衰えてるから歩き辛いだろうけど、少しずつ歩く練習したらすぐに元に戻るよ、良かったね♪今からギルドでまた、どんどん治療薬を作って貰うね♪ジョージさんが1人で作ってくれてたんだょ、他のみんなも見つけにくい薬草を探してくれて沢山集まったから、もう大丈夫♪」


ギルドに入ると、まず医師により状態毎に待合所が出来ていて、重い人から治療薬を飲ませてもらっていた。

みんな我が身が不安だろうに、苦情も言わずに順番を守っている。


受付嬢に部屋を用意してもらって、ガイとジョージが錬成を始めた。


アンリとミカ・セシルは順番を待つ人に地図を示し、どの辺りでサーティラットに襲われたのかを尋ねていった。


ジョージ達のいる部屋を覗き、

「僕のするべきことは終わったから、ちょっとだけ鉱山で採取して来るね♪」と声をかけた。


「わかった。気を付けて行っておいで」と手を振られ、スキップしながら鉱山に向かった。


日がとっぷりと暮れる迄に、なんとか400Kg程のアルミニュームが採れて、ウキウキとギルドに戻った。


ディアニコルの解体をお願いし、アルミニュームの納品をしようとした時、ギルド長が帰って来た。


あちらでも5人が発症し、原因がわからず医師も困惑していたらしく、まるで神の遣いのように拝まれたらしい。

念のため、持って行った治療薬は全て置いてきて、同じような病状の人が来て、サーティラットに噛まれた人には飲ませるようにと伝えて帰って来たとのこと。


ジェイドを発見するなり、

「ジェイド~~ありがとう~~♪おかげでたくさんの人が助かったよ♪」と言って、ぎゅう~っと抱きしめた。


「おじさん、いまアルミニュームちょっとだけ採ってきたけど♪それの納品が終わったら、うちで晩ごはん食べない?」


ジェイドがそう言うと、ピンときたのかみんなも「どうぞどうぞ散らかってますけど是非来てください!」と後押しをした。


「いやいや、あなた方も疲れてるでしょうから、どこかのお店にでも……」というギルド長を無視して、ジェイドが背中をぐいぐい押してパーティーハウスまで連れて行った。



「ただいま~♪」というジェイドの声に、ムクッと起き上がったあと、緊張する気配を感じた。


皆が居間に入り、ギルド長とリックの視線が交差した。



「まさか……まさか、リック殿なのか!?」


ギルド長の叫びに、緊張を解き笑みを浮かべたリックがひとこと……



『ああ!』



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