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坑道での出逢い

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これが、リック(まだ名無し)とミックの出会いだった。


最初は警戒して唸ってみたが、意に介さずにこにこしながら「あぅあぅ」と話しかけるミックから、微かにあの男の匂いがした。


……ということは、あの男の群れの赤子か……と見当をつけ、しばらく様子を窺っていた。


「おやミック、ここに居たのか。遊んでもらってたのか?

そうだなお前にミックの友達になってもらおうかと思っているんだ。だからリックって名前にしよう!今日からお前はリックだぞ!」と笑いながら、ミックとリックを抱き上げ、ぎゅっとくっ付けた。


元気を取り戻し歩けるようになったリックのあとを、高速ハイハイで追いかけるミック。


そうして成長していくうちに、ミックの両親もいつしかリックを信頼し二人だけで過ごす日も増えた。


二人が12歳になった頃、あの男……リックを助けてくれた男が死んだ。

名前は知らない。

みんなは、じいちゃんとかお父さんと呼んでいた。


そしてミックは大きくなり、木こりの道を選んだ。

村にある両親と暮らす家の他に、森のなかに樵小屋を建てて村と森を行き来した。


やがてミックは結婚し、出来た子供にムックと名付け、リックはまた赤子の世話をする。


そんな風に穏やかに過ごしていたが、村は山から貴重な鉱石がたくさん産出されたおかげで街となった。


どんどんと人が増え、見知らぬ人の方が多くなった頃、流石に今までのようには村(街)に入るのは憚られ、リックは森の樵小屋の傍で暮らすようになった。


ムックも成人し働きだした事もあって、ミックは街を出てリックと共に樵小屋で暮らすようになった。


時折訪れるムックがそのうち女性を連れ、赤子を連れては来たが、ミックは同居しようとすすめられても、樵小屋でリックと暮らすことを選んだ。


いつしかミックの寿命が尽きようとしている。

ミックが書いた手紙をリックが街まで届け、顔見知りの門番が慌ててムックを呼びに行ってくれた。


家族みんなが樵小屋に駆けつけ、最期のお別れをした。


ムックは、リックの首筋にしがみつき、

「リック、ごめんな。俺は街で仕事をしているから、ここには住めない。でもお前の事は忘れないし、子ども達孫達にずっとずっと伝えていくからな、もし誰かが逢いに来たらその時はよろしくな!」と、大粒の涙をこぼした。


そして10年と少し、ムックも時折顔を出したが、その後は誰も訪れなくなった。


いつしか樵小屋も崩れ落ち、リックは共に過ごした森がよく見える丘の上で日向ぼっこをする日々を過ごしている。



『……とまぁ、こんな感じだな。ミックやムックの子孫が街に居るかもしれんが、流石にこれだけ発展すると侵入は出来んな……と言いつつ、今居るがな(笑)』


「狼さん……リックさんは長生きなんだね。人はすぐに不老長寿とか羨ましがるけど、いつも自分だけが取り残される孤独を知らないからなんだろうね」


『そうだな。親しければ親しい程、その別れは辛いモノだ。人間というのは、理不尽な死でなくとも「死」を恐れるものなんだろう。我等には理解出来ない感覚だな。

……1つ気になる事があるんだが……。

今日のお前達から、なにやら懐かしい匂いがする』


「ねぇリックさん、僕たち明日から鉱石と薬草の採取ですごく忙しくなるかも。

だから今後の話は、あと4~5日待ってもらっても良いかな?」


『ああ、それはかまわん。反対にこちらが世話になりっぱなしで、メシの調達の手伝いも出来ずに申し訳ない』


深夜になり、ジェイドも舟を漕ぎだしたので各々寝室に戻った。



翌朝、ジェイドは元気に家を飛び出す。

ジョージらに薬草の事を頼むと、一目散にギルドに向かった。


「お姉さん、おはようございます。今日は早く採掘に行きたいので、キジくん達によろしく言っといて下さい!」


「わかったわ♪気を付けて行ってきてね!」


ジェイドが奥に進んで行くと、もう早くも大人達が来ていて、どんどん掘り進んでいた。


「おはようございます!僕も今日はこの辺りで作業させてもらいますね♪よろしくお願いします!」と挨拶をしてから一生懸命掘り出した。

もちろん、あの歌を唄いながら。


ぼろぼろとアルミニュームを掘り出すジェイドを見て、まわりの大人達が

「おいおいボウズ、何でそんなに採れるんだ?歌か?その歌か?」と問い詰める。


「あはは♪どうしてみんなそう言うんだろう?これはただタイミングをはかってるだけだよ♪あっおじさん、そこからちょっと右、そうそうその辺りを20センチぐらい掘ったらミスリルが出てくる気がします!」


言われた男が試しに掘ってみると、本当にミスリルが出てきた。


「出たよ!マジで出たよ!どうすんの?コレ……!」


「あっ!そこにはオリハルコンが少しあるみたいです。それを採り終わったら、斜め右に進むと金か銀がありそうです」


「おおお!」


みんなに推測した場所を伝えながら、どんどんアルミニュームを掘り出すジェイド。


「お前、人に貴重な鉱石教えて何で自分はアルミニュームなんか採ってんだ?」


「う~ん、今はアルミニュームが一番貴重だからなの。おじさん達が持ってるそのカンテラにもお弁当箱にもアルミニュームが使われてるけど、なかなか集まらないから無くなりかけてるんだって。だから」


「だからって……。採っても採っても全然稼ぎにならないから、アルミニュームは誰も採らないんだよ」


「僕ね、家賃も生活費もいらないの。パーティーのみんなが、この街のクエストはみんな僕のお小遣いにしていいよって言ってくれたから、今足りなくて困ってるアルミニュームを採ってるの」


「そうか、ありがとうな!俺達の街なのに恥ずかしいなぁ」


「そんな事ないよ!人間は綺麗事だけでは生きていけないもの。僕だって自分で家賃払ったり家族養ったりしなきゃならなくなったら、高いのばかり採るようになるのかもしれないでしょ?

その時のその人の環境で変わるんだから。ただもし出来ることなら、例え1Kgでも500gでもいいから、たまにはアルミニュームもお願いしますネ♪

僕もこの街に居る間はアルミニューム頑張るけど、もうすぐ出発するから。」


そんな話をしながらもジェイドの手は止まらない。


どんどんアルミニュームを採っていた時、

「あっ!またモウルが出てきた!」と、ハンマーで殴ろうとしているのを見て、慌てて庇う。


「おじさん、モグちゃんは悪いことしないよ?ただみんなが掘ってるのに興味があって見てるだけ♪ねっモグちゃん」


モウルは土中のミミズを食べるらしいから、ワームでも食べるかな?と、細かく切ったワームを置くと、ふんふんと匂いを嗅いでパクンと食べた。

その瞬間、ピキーンと背を伸ばして慌てて穴の中に戻ってしまった。


「ありゃ、お口に合わなかったか……」とまた採掘していると、足下をチョンチョンと叩かれた。見てみると、モウルが輝陽石を抱えている。

その石をジェイドの靴の上に置きながら、ズボンをカリカリしだした。


「え?美味しかったの?もっと食べるの?」というと、手のひらを上に向け、ちょうだいのポーズをした。


「可愛い~♪」と言いながらワームを出すと、我も我もとモウルが手を出す。

そして食べると、どの子もピキーンと背を伸ばして急ぎ穴に戻る。

「あはは♪おもしろ~い!」


しばらくすると、またよいしょよいしょと貴金属を手に穴から這い出てくる。


これを5回ほど繰り返してやっと落ち着いた。


「モグちゃんたちお金持ちなんだねぇ!これ貰っても良いのかな?」


まわりの大人達が呆然とその様子を見ていた。


「今まで……こいつ等は俺達の採った鉱石を狙って見てるんだと思ってた。だから見かけたら追い払っていたんだが……」


「う~ん、反対に『何で人間は食べられないあんな石コロ採って大喜びしてるんだ?』って思っているのかも?多分これ、今まで見学してて、おじさん達が大喜びした石を持って来てくれたんじゃないかな?

だってこの中に、鉄とかアルミニュームは入ってないでしょ?」


「「「「「本当だ……」」」」」


恐縮して辞退する皆に、いいから持ってって~と山分けするジェイド。


そして穴から覗くモウル達に、

「モグちゃんたち、今日は特別なんだからね。君たちは野生動物なんだから人間から餌を貰うことに慣れたら自分で餌を取れなくなって死んじゃうよ?」と話しかける。


モウルたちは、キリッとした瞳で『みゅっ!』と鳴いた。


「あはは♪今の返事したみたいに聞こえた!可愛い~♪」


これは、モウル達に言い聞かせているようで、坑夫達にも言っている。

いくら人懐っこいとはいえ野生動物なんだから、本能を退化させるような事はしないようにと。


その後もみんなでいろんな話をしながら採掘を続けたが、大人達はそろそろ帰るよと言った。


「ボウズはまだ帰らないのか?」と聞かれ、


「今日は過保護で心配性のみんながいないから、もうちょい頑張りたい……の!!!」

と言った瞬間クロスボウを発射し、一番離れた場所にいた人を掠めるように矢が通りすぎた。


「「「「な!な!……」」」」と言い固まった人達に


「おじさん!こっちに戻って来て!」と言いつつ、二の矢三の矢を放つ。

慌てて走り寄り、腰を抜かした坑夫等の前に出た。


今日もまたナックルマーラの大フィーバーだ。


「もぉ!君たち何処から湧いて来るの!?」と言いながら、一撃で倒していく。

やっと全部仕留めた時、皆も平静を取り戻した。


「いやぁ俺が狙われたのかと思ったよ♪」等と笑いながら話していた。

ナックルマーラは食肉としてもけっこう人気らしく、やったなぁ!とみんなに肩を叩かれた。


「じゃあみんなで分けようよ♪あっでも矢は返してね、足りなくなっちゃう!」と言うと、大爆笑。


「お前、マーラ1頭で矢が何百何千と買えるのに、マーラは山分けで矢を返してねって……(笑)」


「だってこの矢はプレゼントしてもらった矢だもん!」


この言葉に坑夫達は感動した。

金が大事オレが大事と、他人より少しでも多く儲けなくては!とがむしゃらに働いてきた自分が恥ずかしくなってきた。


そうジェイドに言うと、

「そんなことない。その気持ちは大事♪みんながそう思って一生懸命頑張るから、技術も文化も発展するんだから。ただ、自分の欲の為に他人を陥れたりせずにみんなで切磋琢磨していける世の中になるとイイね♪」と返された。


もちろん、ジェイドが言っているのは子どもならではの理想論であるのもわかっているが、彼らの心には沁みた。


その時『みゅっみゅっ』と声がした。見てみると、モウルが奥を指さし鳴いている。


「ん?奥にまだマーラがいるの?」と問うと、うんうんと頷きながらも坑夫を指さした。


「もしかして、人間が襲われてる?」と聞くと、『みゅ~みゅ~!』と強く鳴き頷いた。


「おじさん達、この事をギルドに知らせて!僕は行ってくる!」


「おい!危ないぞ!」


「大丈夫♪この子に道を教えてもらうから。ギルドに強そうな冒険者の人がいたら、担架とポーション持って来てって伝えて!急がないと間に合わないかもしれない」


「ああわかった!ボウズも無茶すんなよ!」


急ぎギルドに向かう坑夫達を見送りジェイドは奥に向かって走り出す。


「モグちゃん、分かれ道で指差してね♪」


『みゅっ!』ふんぞり



案内により広い場所まで来ると、たくさんのナックルマーラと坑夫と護衛が対峙している。


「おじさん!怪我してる人にポーションお願い!

【魔物は此処には入らないで】

モグちゃんもここにいてね♪あっおじさん達、このモグちゃんがおじさん達の事を教えてくれたの。いじめないでね♪」


結界の外に出たジェイドに襲いかかるナックルマーラの眉間に矢が吸い込まれる。


30分程も闘ってようやくすべて倒す事が出来た。

「ふぅ……」と一息ついていると、最奥の方にあった洞窟から、高さ5m以上もありそうな、ナックルマーラが出てきた。

その後ろから、普通サイズより一回りほど大きなナックルマーラも10頭ほど出て来てジェイドに向かって襲いかかってきた。


(大きくなっても戦術は同じか……)


鏃がミスリル製の矢を思い浮かべ、それで攻撃すると同じく眉間に刺さり、息絶えた。


あとは、巨大マーラのみ。

試しにミスリル矢で眉間を狙ってみたが、びよ~んと弾かれた。


「う~ん、やっぱり。どうしよう?目を狙うかな?」と考えていたら巨大マーラがのそのそドシンとこちらに歩いて来て、地面に落ちた矢を踏んで、バキッと壊した。


「あ~~僕の矢を壊したな!許さん!お前なんか【痺れろ】【凍れ】ばかぁ~~!」


ストトトっと両目に2本ずつの矢が刺さり、ビクビクしたあと目のまわりから凍りだした。



ズッズゥーンと巨大マーラが倒れる音と、

「くすん……折れちゃった」と矢を撫でるジェイドと、

「大丈夫かぁ~~ジェイドぉ~~!」と叫びながら爆走するギルド長と、

呆然とジェイドを見る坑夫&護衛達……



これが『カオスだっ!』という状況なのか?



重症だった護衛の人もポーションのおかげで安定し、ギルド長の持ってきた担架に乗せられ全員無事帰還出来た。


「君が来てくれなかったらオラ達は全滅してたがな、ありがとうな」


「ううん、このモグちゃんたちが教えてくれたんだよ♪みんなを助けて~って。いつもコンコンしてるの見るのが楽しいんだよね♪」


『みゅみゅ~』と鳴きながら、くるくるまわるモウルを見て、みんな大笑いだ。


「そうだったのか。いつもじっと見ていたから、スキあらば鉱石を盗もうとしてるのかと思ってたよ、疑ってごめんな、そして助けてくれてありがとう!」とみんなからお礼を言われ、大喜びで巣穴に帰って行った。



そしてジェイドはギルドに戻ると、大目玉を喰らった。



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