ギルド長の旅人への思い
「ここのステーキは美味しいぞ。どんどん食え。ジェイドくん、今日はありがとうな!あのアルミニュームは、旅人用の鍋なんかの調理用具を作るのに必要なんだが、みんなミスリルやら金銀ばかり目指してなかなか集まらないんだ。ホントに助かったよ♪」
「掲示板に貼ってあっても誰もうけてくれないの?どうしてなんだろう……」
「まあ、あそこに潜ってる奴等はだいたい一攫千金を狙ってるからなあ。Kg当たりの報奨金は鉄とそれほど変わらないんだが、比重が軽いから同じだけ稼ごうと思ったら7~8倍は採らないとダメだからな。どうしても稼ぎたいヤツからしたら効率が悪いんだ」
「そう言われたら、確かにめっちゃ嵩高いなぁって思った!ミスリル100Kgと同じ大きさぐらいのアルミニュームだったら、15Kg程しか採れてないってことなんですネ。なるほどです」
「しかし、旅をする人たち、行商人・キャラバンや護衛の傭兵達は少しでも荷物を軽くしたいから。普通の鉄で出来た調理用具だと、馬にも負担がかかるからね。最近ついに在庫が無くなりかけてさ、ジェイドくんに頼んだんだ」
「……保管場所さえ有るんなら、明日からもアルミニュームを採りましょうか?ジョージさんたちがいつまでこの街に滞在する予定にしてるのかはわからないけど」
「それはありがたいけど、ジェイドくんはいいのかい?労力の割に実入り少ないよ?」
「人のためになるモノを作るんだから、やる価値アリですよ♪ミスリルやオリハルコンなんかは他の人に任せます!」
「ありがたいよ、他所の街の鉱山でも請け手がいないのか、アルミニュームそのものが無いのか……産出量がこの街以外はほぼゼロなんだよ」
「じゃあ他の鉱山に行った時には探ってみますね♪」
「そうしてやってくれたら沢山の旅人が助かるな♪頼んだんよ!」
昼ごはんをご馳走になり別れたあと、そういえばこの街の屋台や商店めぐりしてないな……と思い、いろんな店で買い物をした。
「冒険者もいいけど、こうして屋台とかしながら街の人たちと仲良くする、こんなお仕事も良いなあ~」
雑貨屋や可愛い小物等を売っている界隈で、ジェイドの事を心配してくれた守衛さんとバッタリ出会った。
「守衛のおじさん、こんにちは!お買い物なの?この前はありがとうございました。修理して使えるモノがいっぱいあって助かりました♪」
「おお!ジェイドくん……だったかな?1人なのかい?パーティーの人たちはどうしたの?」
「鉱山の向こうの方で、キャラバン隊なんかを襲っている魔物の退治に行ったの。僕も行くって言ったのに、危ないからってギルドの依頼請けときなさいって……ホントにみんな過保護なんだから!」
「そうだったのか。みんなに可愛がられているんだね、良かった。確か、けっこう被害が出てるあの狼だよね。」
「うん、そうみたい。おじさんはお買い物?可愛いお店だね、お嬢さんへのお土産なの?」
「うん、この前学校の課外授業で魔物に襲われてね、といっても小さなネズミのような魔物だったらしいんだが……傷は大したこと無いんだがカラダがダルくてあまり歩けなくなってきて……
お医者様は精神的なモノだって言ってたよ、小さいとはいえ魔物に噛み付かれてショックを受けたんだろう。鬱ぎがちでね、何か気晴らしになりそうなモノがないかな?と、見に来たんだ」
「……ふ~ん、僕お見舞いに行っても良いかしら?」
「ああ、お願いするよ。他の街の話とかしてやっておくれ♪仕事柄、長い休暇が取れないから、旅行も連れてってやれないからね、喜ぶと思うよ♪」
守衛さんの家に着くと、優しそうな奥さんに迎えられた。
ヒツジとスライムの形のぬいぐるみをプレゼントし、娘さんのリュートさんとたくさんの話をした。
特に、龍神様の話は「で?どうなったの?」と、ハラハラしながら聞いていた。
母親が飲み物を持ってきてくれた時に鑑定してみる。
(【リュートさんの病気を治す方法は有るかな?】)
=鑑定=
リュート・イグネッサ
*ラッティジストロフィー発症2週間目
サーティラットによる感染症
サーティラットに咬まれた際、稀に起こる病
下肢より徐々に筋肉が萎縮し発症後約30日で肺・心臓等の臓器にまで萎縮が達し死に至る
*投薬により完治(錬金術使用)
*錬成素材
・上薬草
・エビデンドルム
・ラグナリアの実
・ディアニコルの角
(よし、治療方法は有る♪またジョージさんに頼まなくちゃ)
その後も話が弾み、夕食も食べていけば?と言われて時間を見て慌てた。
「あ~~大変だ!もうこんな時間!きっとまたギルドの中でやきもきしてるよぉ!
長い時間お邪魔してすみませんでした。また遊びに来てもいい?」
皆に挨拶を済ませ、慌ててギルドに向かうと、ギルド長が何故かみんなに囲まれていた。
「ただいま♪狼さん退治できたの?それとジョージさん、今日このおじさんにお昼ご飯ご馳走になったの♪とっても美味しかった♪」
「ジェイドくん!みんな君がいないから誘拐されたり事件に巻き込まれたんじゃないかと心配なさって……」
「ごめんなさい。今日お友達の女の子の家に遊びに行ってたの」
「お?女の子かぁ、やるなジェイド!」
「ふふっ♪で、ジョージさんに相談があります!」
「……材料は揃ってるのか?」
「エビデンドルムが無いの……」
「「「はぁ~またか……」」」
「ギルド長、エビデンドルムの在庫あります?」
「いや、今は無いなぁ。しかし君たち、今ので会話が成立してるんだ……」
「こいつといてたら波瀾万丈、いつでもスリル満点だぜ!」
「もう!アンリさん、ひどい!」
「とにかく採取に行かなくてはな。どの辺りに生えてるかわかりますか?」
「此処から乗り合い馬車で南南東に1日ぐらいのところに、ミリオネアルという街がある。その馬車道の途中に巨岩があるんだが、そこを左に曲がってまっすぐ行くと、オリヴェイラの森ってのがあって、そのけっこう中心付近まで行かなくてはならんのだが。そこには他にも薬草類がたくさんあるぞ」
「じゃあジョージさん、お願いネ。でも僕も一度行きたいから、ちゃんと場所覚えといてね♪」
「ん?ジェイドは一緒に行かないのか?」
「うん、僕はしばらく鉱石の採取するの。でもジョージさん、出来るだけ早くお願いします。出来たら5日以内に」
「ジェイドくん、そっちが急用なら別にいいんだよ?」
「いいえ、ジョージさんに任せたら大丈夫♪僕は僕で自分のやることがあるから」
「了解♪明日の出発でも大丈夫かな?」
「もちろん!でも気を付けて行ってきてね♪ごめんね、いつも勝手なことばかりして……」
「ジェイドは自分の為じゃなく、他人の為に言ってるんだから気にするな!な、リーダー」
「ああ、そうだよジェイド。ホントに君は偉いよ、尊敬する♪」
「ありがとう!僕ホントにジョージさんに誘ってもらえて良かった♪」
そしてふと思い出した。
「おじさん、解体もう終わってます?引き取って帰ろうかな?と思って!」
「出来てるぞ♪
ところでアシナガのリーダーさん、この子の弓の練度はどれぐらいなんだ?」
「あ~~一昨日買って装備したばかりだから、まだ一度も練習していないな」
「それマジで言ってるの?今日、坑内にナックルマーラが出たらしく、27頭全部眉間に一発で仕留めてたぞ」
「「「「「マジか!」」」」」
「ナックルマーラが出たって聞いてびっくりしたけど、1人で全頭仕留めたって聞いて腰抜かしたわ!まさかのはじめてとは……
しかも冷静に相手を見て、攻撃が直線的だとかバーサク状態だから気配がよくわかったとか、その辺の奴らよりよっぽど闘い慣れてるのかと思ったんだが……
この子には色々と驚かされるわ!」
ジェイドが引き取りに行ってる間に、ジョージらに色々伝えられ、そしてアルミニュームの件も伝えられ、ジョージたちにも感謝の意を顕した。
ギルド長と別れて帰宅すると、待ちわびていた狼が走り寄って来た。
『どうなった?首尾よくいったのか?』
「ハイ、狼が操られているだけなら助けられるかも……と、先に魔族を倒したんですが、せっかく強力な力をもらったのに!とご立腹で暴れまくったので、プチっとやっつけました」
『そうか。力を持つ……という事の本当の意味を理解出来なかったのだな。しかし魔族の前ではあれほど尻尾を丸めておったのに、人間には態度がデカいんだな(笑)』
「その場にいた冒険者には、あなたの事を伝えました。そしたらあなたが、怪我を負う前から一度も反撃することなくずっと避けているばかりで不思議だったと、証言してくれた人がいて、みんなが謝っていました。
まぁ中には、魔物にかわりはないんだから討伐するのは当たり前だ!という勘違い野郎もいましたがね。今日ギルド長にその者達の名前を告げたんで、そのうち『魔物の討伐』に行ってもらいますよ」
((((悪い顔になってる……))))
『ジョージとやら、何やら邪悪な空気が漂っとるぞ』
「あはは♪リーダーは実力も無いのに今の自分の地位・権力を振りかざして上から目線の奴らにめっちゃ厳しいからね。きっとその『魔物の討伐』ってのも何か企んでるんだろう(笑)」
「嫌だなぁ~♪人にも魔物にも害のあるモンスターを成敗しに行くだけですよ♪」
『怖い!怖いぞお前!目が笑っとらん』
「まぁまぁ。ところで狼さんには名前は無いのかい?君の纏う空気には人間の存在を感じるんだが……」
「セシルさん……」
『俺の名は、リックだったな。もう80年程も呼ばれていないが』
「テイムされてた感じではないよね。普通に友達、家族だったって感じだね♪」
『そうだな、家族として迎え入れてくれていた。
俺の両親はシルバーウルフなんだが、産まれてきた4頭の中で俺だけが緑色の毛が混じっていた。先祖帰りか突然変異かと気味悪がられ、長老から群れからの追放を言い渡された。
まだ歯も生え揃わぬ赤子だったので抵抗する術もなく、瀕死の状態で放り出された。両親はその様を冷たい眼で見下ろし、助けてもくれなかった』
その日の夜は、とても長かった。
きっとこの80年、誰にも語らなかった彼の歴史だ。
皆は静かに聞いていた。
カラダが徐々に冷たくなっていくのを感じ自嘲した。
もしかすると両親が助けに来てくれるかも……等と甘い期待を抱いた自分に嗤いがこみあげる。
頭が地面にスゥっと吸い込まれそうになった時、不意に温かいモノに包まれた。
『母さん……?』
パチパチと木がはぜるような音がして目を覚ますと、籠の中たくさんの藁と毛布に包まれていた。
辺りを見回すと、ニンゲンが笑いながら何かを持っていた。
よっこいしょ!と抱き上げられ膝の上に乗せられたが、恐怖のあまりその腕に噛み付いた。
……が、まだ1~2ミリの牙は通る事もなく、その太い腕に小さな口が敵う筈もなくアゴが外れそうになった。
「おうおう、噛み付けるだけ元気になったか!」とスカルを撫でながら嬉しそうに話すこのニンゲンに、少し心を開いてまた眠りに就いた。
そうしてキズの手当てをしてもらい、少しずつ回復してきたある日、目を開けると
「あぅ~だぅ~」と言いながら、キラキラした眼でこちらを見つめるニンゲンの赤ちゃんと目があった。
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