奇妙な唄とミスリルフィーバー
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「おはようございます!」
翌朝、ハウスの前に集合して、いよいよ鉱山に向けて出発だ。
おっと忘れてた、ギルドに指名依頼を受けに行かなくちゃ。
「受付のお姉さん、おはようございます!僕たち今から鉱石採りに行ってきますね♪」
「おはようございます。頑張ってくださいね♪
昨日、武器屋と防具屋の連名でキジ君たちに指名依頼が入ったの。代表は武器屋のジープさんですね。
これが依頼書よ、ちょっと変な依頼なんだけど、うふふ♪」
「ありがとうございます!僕、どこが変なのかわからないけど、みんな一緒に頑張って来ます!」
ジェイドはきょとんとしながら依頼書を受け取ったが、キジたちは汗だらだらだ。
「ふふっ、普通は『100Kg欲しい。最低でも80Kg』という依頼の仕方なのよ。でもこれ、100Kgまでなら全て買い取るってなっているでしょ?ということは、例えば5Kgしか採れなかったとしても『依頼成功』ってことになるのよ」
「へぇ~!おじいさんたち優しいんだね♪自分たちだけで独り占めにせず、ギルドさんにもちゃんと納品できるように気を遣ってくれてるんだぁ♪やっぱりいい人♪」
「……ぇ……ええ、そうね。頑張って沢山採ってきてね」
(((((……やっぱ何かズレてる)))))
「は~い♪さぁ行こう、みんな♪」
意気揚々と進むジェイドの後から、呆然とする受付嬢にペコペコ頭を下げながら続くキジたち、出発前からドッと疲れが押し寄せて来た。
キジたちには、武器屋のジープさんの心遣いが理解できた。
ろくな装備も道具もないキジたちに、100Kgもの鉱石が採れる筈もなく、しかし5Kgや10Kgを指名依頼の達成条件にできるわけもなく、苦肉の策……というわけだ。
ありがたいことなんだが、ジェイドの自信たっぷりな発言に困惑している。
鉱石採取が初めてだ!と言っていたので、基準がわからないから~にしては、確信を持っている感じの言い方に不思議さを感じていた。
「とうちゃ~く!さぁ、みんな頑張って沢山採るよ!」
「あぁ、わかった」
「あっ!そうだ。昨日言ったけどさ、武器屋のおじいさんたちがくれたの修理してみたの♪試しに使ってみてね♪」
「「「「「これは!」」」」」
「へっへ~♪イイ感じに修理できたでしょ?」
「お前、これは修理ってレベルじゃないだろ……」
「話は依頼達成してから♪おじいさんたちの為にも、1人100Kg以上やったるぞぉ~!」
「「「「「1人?全員でじゃなく?」」」」」
「あはは、何言ってんの?当たり前じゃない。みんなで100Kgなんて1時間もかからないよ、1人100Kgだと昼過ぎ位までかかるかな?それにギルドさんの分も採らなくちゃ~だから、夕方まで頑張ろうね♪」
どんな風に言っても、ピントのズレた答えしかかえって来ないだろうな……と諦めの気持ちで、キジたちは、のろのろと配置についた。
「カンカンカンカン岩をうつ~キンキンキンキン鉄が出た~♪」
「「「「「……」」」」」
「カンカンカンカンミスリルは~コンコンコンコンここですか~♪」
「「「「「……!!!」」」」」
ジェイドの奏でる奇妙な唄に合わせて、ぽろぽろと貴重な鉱石が顕れる。
「あれ?みんなどうしたの?頑張らないと今日中に依頼達成できないよ!じゃんじゃん掘るよ!」
「あ……あぁ。しかしジェイド、何でそんなに採れるんだ?
もしかしてその奇妙な唄に、何か呪文でも込められてるのか?」
「奇妙!?ヒド~い、くすん……
コンコンコンコンで軽く叩いて、違和感のある岩肌見つけたらガツンと叩くんだよ、その調子ってか、タイミング測ってるの!
こんな感じだよ、やってみて♪」
言われた通りに真似してみると、あらフシギ!次々と出るわ出るわであっという間に山積みだ。
「何でこんなに採れるんだ?おかしいと思う。ジェイドが何かしてくれてるのか?」
「え?違うよ、今まで君たちダガーで掘ってたんでしょ?アレは戦闘用であって採掘道具じゃないから、うまく掘れなかったんじゃないかな?唄はあくまでタイミング♪それと最初から、ガツガツやるんじゃなくて、コンコン表面を探ってここだってところで、ガツンと叩くとイイ感じに採れると思うんだ♪」
「そうなのか……ホントにそうなのか!? もしお前が居なくなってもイケるのか?」
「大丈夫だいじょうぶ♪イイ道具と見る目があれば、いくらでも採れるサ♪」
「今こんなに採れていても……なんだか信じられない。夢を見てるんじゃないのかと、疑ってしまう……」
「採れて文句言われるとは思わなかったょ!採れたヤツ、さっき渡した袋にどんどん詰めてってね。めちゃくちゃ狭くなって来ちゃった」
「あ?なんだこの袋、入れても入れてもいっぱいにならない!」
「便利でしょ♪これからランク上がったらキジたちは、採掘だけじゃなく魔物の討伐のクエストも請けるんでしょ?これがあればいちいち荷車借りたりしなくても大丈夫だよね♪」
「……この袋、どうしたんだ?」
「僕の住んでいた村にねぇ、魔物がたくさん襲って来たんだ。ダンジョンからわいて来たんだよ、凄かった。でも冒険者のお兄さんたちがやっつけてくれたの。
それを闘ったみんなで分けた時に、ギルド長さんがみんなにその袋をくれたんだ♪」
「ジェイドも闘ったのか?」
「僕が結界?ってのを村に張ったら、魔物が当たって死んじゃったらしいんだ、ウソかホントかはわからないけど。
で、僕も素材とか分けて貰えたんだ♪」
「じゃあ、貴重なモノじゃないか。貰うわけにはいかない」
「僕、けっこう大容量のアイテムボックスがあるから、特に必要ないんだ。あっ!でもソレ、ちょっとずつだけど時間経過があるから気をつけてね♪」
「こんなに色々してもらって良いのだろうか?」
「もちろん♪バンバン使っちゃって♪僕、キジ君みたいに頑張ってる人、ダイスキ!小さい子たちにも優しくてみんなで頑張ってるじゃない♪そういう人、ダイスキ♪」
「……ジェイド、お前……恥ずかしい言葉をサラっと言うな」
「う~ん、恥ずかしいかな?素直な気持ちをあらわしただけなんだけどね♪」
お互いの色々な話をしながら、どんどん採掘しては収納袋に入れていく。
気が付けば、夕方になっていた。
「さぁそろそろ帰ろうか。僕、もうお腹ペコペコだ!」
「ホントだ、もうこんな時間だ。みんな帰る用意してくれよ~」
「「「「わかった♪」」」」
「(……!!)僕、忘れてた、此処に今日知り合いが来てたんだ。ちょっと話してくるから、先に帰ってソレ納品しといてくれないかな?もしかしたらギルドまでジョージさんたち来てるかもしれないから、スグに帰るから~って言っといて♪」
「何だったら一緒に行こうか?」
「ううん、うちの人たちはめちゃくちゃ心配性だからきっと早い時間からギルドまで来て、やきもきしていると思うの。だから先に帰って言っといて欲しいんだ♪」
「わかった。手早く済ませて帰って来いよ!」
「うん、わかった」
手を振りながらキジたちを見送った後、奥の方に向かうジェイド。
分かれ道で人気の無い方に向かう。
違和感のある場所を探っていくと、不意に空洞が現れた。
中を覗くと、銀色とも緑色とも言えない美しい狼が、後ろ脚から血を流し、こちらを睨んでいた。
『小僧、何しに来た!どいつもこいつも!いったい俺がナニしたってんだ!?』
「こんにちは、僕ジェイドっていうの。ナニしたって怪我したんだよ、キミ。早く治療しなくちゃ」
『あっ!おい!』
するすると穴の中に入り、後ろ脚のところまでいくと、ポーションをかけた。
それからカラダに目をやると、明らかに呼吸がおかしい。
「これ、肋骨も折れてるんじゃない?人間用のポーションだけど、飲んでも大丈夫かな?でもコレしか無いし、とりあえず飲んでみて【口開けて】」
返事も聞かず、無理やり口を開けられポーションを放り込まれた。
しばらくすると脚も肋骨も綺麗に治り、初めて冷静にジェイドに目をやった。
キラキラとした目で自分を見つめる人間の子供にたじろぎながら、
『小僧、助かった。礼を言う』と言うと
「こんにちは、僕ジェイド」と返してじっと見つめられた。
『ふいをつかれて怪我を負ったが小僧のおか「こんにちは、僕ジェイド」……あぁ、ありがとうジェイド』
「狼さん、綺麗な毛色だね♪でも何でこんなところで怪我してたの?此処から出ない?僕もう帰らなくちゃ」
『出たくとも出れん。姿を見られたら、問答無用で襲いかかってくるからな人間どもは』
「もうちょっと小さくなれない?僕と一緒に此処を出ようよ♪」
『小僧と一緒に出たと「こんにちは、僕ジェイド」……ジェイドと一緒に出たとて同じことよ。お主の親に切り殺されるだろう』
「僕は今、冒険者のパーティーに入れてもらっているから、親はいないよ♪」
『冒険者?余計にダメだろう。俺達のような魔物の討伐が生業なんだからな(笑)』
「でもうちには森リスのチャウダー君もいるから大丈夫だと思うけど。テイマーさんがいるんだ♪」
『……仕方ないか。俺も、意味もわからず理不尽な目にあうのも、もうイヤだ。お主に賭けてみるか……』
「うん、行こう行こう♪とりあえず【気配ゼロ】」
ギルドに着くと、案の定ジョージたちが待っていた。
そしてギルドの受付嬢の顔が、何故かハニワのようになっている。
「ただいま♪みんなホントに過保護だね、僕は大丈夫だよ!」
「おかえりジェイド、たくさん採れたようだな。おかげで受付嬢がパニックになっているぞぉ(笑)
あいつら全員ランクアップしたぞ。びっくりするほど貴重な鉱石もあったからな」
「ふふっ、ミスリルとかもいっぱい出たけど、銀や金もけっこう採れたからね♪」
「じゃあ、ジェイドの納品終わったら一旦家に戻ろうか」
「わかった!お姉さん、よろしくお願いします!」
ジェイドもキジたちに負けないぐらいたくさんの鉱石を出す。
そして、
「そうだ!お姉さん、この石もいけますか?」と出したのは
綺麗なすみれ色の石。
「……青菫石ですね、よくこんな大きなのが出ましたね。これはすごいですよ、うちで買い取りしてもいいんですか?」
「うん、お願いします!」
「ありがとうございます。ではこちらが買い取り金額と内訳です」と渡された袋は、ずっしりと重く、びっくりしてジェイドは受付嬢を凝視した。
「明細書にある通り、オリハルコンやミスリル、金塊等々とても高価な素材ですよ。それにこの、青菫石はとても貴重な宝石ですから」
そう言ってニコニコ顔の受付嬢。
明日も来ますね~♪と元気に手を振りながらギルドをあとにした。
「で、この子はどうしたんだい?」
「ありゃ!やっぱりバレてたんだ。何かね、意味もわからないままに理不尽に襲われて大怪我してたの。そのせいで洞窟から出られなくなっちゃったんだって♪」
「なるほど。じゃあ狼くん、しばらくうちにおいで。あとのことは原因がわかって解決してから決めたらいいからね♪」
『その提案に有り難く乗らせていただく。鉱山の向こう側にある丘の上に居たんだが、いきなり「居たぞ!ここだ!」と叫びながら一斉に攻撃してきた。正直何がなんだかわからないまま逃げまわって、もう何日もまともに寝ていない(苦笑)』
「僕たちこれからお店に行くんだけど、狼さんは家の中で待っててね♪寝床と食事を出しとくから、食べたら気にせず先にカラダを休めてて♪」
パーティーハウスに狼を匿ったあと、武器屋に向かった。
「もぉ~みんな、心配性なんだから!僕1人でも大丈夫なのに」
「「いやいや、今回の件で1人にするととても大変だということがよくわかったから一緒に行くよ(笑)」」
「え~~?何ソレ!」
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