指名依頼とスラムの子供たち
『チクショウ!畜生!!ちくしょ~~う!!!
いったい俺がナニしたってんだ!?チクショウ!!!』
` -廃棄場-
廃棄場に着くと、山のように武器も防具も、そして生活用品等も積まれていた。
「あ!そういえば今までの街にも、壊れた椅子とかを積み上げていた場所あったな、あれが廃棄場だったのかぁ~」
その山の中の、まずは生活用品のところから家具調理器具食器などを収納していく。
その後も衣類や布製品をあらかた収納した頃、痩せて汚れたボロ切れのような服の子供たちがジェイドを睨んでいた。多分スラムの子供たちであろう。
「こんにちは!僕、ジェイドっていうの♪よろしくね!」
「……ああ、オイラはキジ。よろしく……。ところでお前、何してんの?見たところ服も装備も良いモン身につけてんのに、何で廃棄場漁ってるんだ?」
「えっと……君たちはスラムに住んでる人?」
ズザザザっと後退して戦闘体制だ。
「……?どうしたの?」
「オイラたちがスラムの住人だったらどうだってんだ!?」
「僕たちのお家をスラム街の東端に置かせてもらったから、ご挨拶に行こうって思ってたの。邪魔だなぁ~って思っているんじゃないかな?って気になってたからね……。
武器屋のおじいさんから、武器や防具を君たちに貸し出してるって聞いたから、この山からイイ感じのヤツを修理して持って行こうかな?って思ってたの。ダメだった?」
「ああ!あの突然建ってた屋敷か!」
「そうそう、ご近所さんだよ、よろしくね♪」
「……なんか気が抜けるヤツだな(笑)」
「のほほんとしてる……とはよく言われる。ヒドイよね、僕だって色々考えてるのにさっ!!」
クスクスからあははははっ!に変わり、ジェイドが「もぉ~~!」と叫んで、より大きな笑い声が響いた。
「悪い!オイラたち、街の人からはよくしてもらっているけど、他所から来た人達には殴られたり蹴られたりするからさっ、ちょっと警戒したんだ。すまん!」
「え?何もしてないのに暴力ふるうの?ヒドイなぁ……
ホントだ!怪我しているじゃない!ちょっと待って。【綺麗になれ】えっとコレだね」
キジの後ろにいた子たちにポーションをかけると、皆が慌てた。
「おい!そんな高価なモン使うなよ!こんなの放っといたらそのうち治るんだから」
「うちのリーダーのジョージさんがね、小さな傷だからってそのままにしてたら、そこから『ばいきん』ってのが入って熱が出たり、ヒドイ時には脚を切ったり死んじゃったりするから、スグに治しなさいって言ってた♪」
「あ……ありがたいけどオイラたちに払えるお金ないぜ」
「ん?僕が勝手にバシャ~ってかけたんだからお金なんて貰わないよ?」
当たり前だよね!って感じで不思議そうにするジェイドに、今度は心を込めて「ありがとう」を言った。
「僕、明日からギルドの依頼受けようって思ってるの。鉱山はコツさえ掴んだらけっこうな儲けになるって冒険者さんが言ってたから、それをやってみようかな?って♪君たちもギルドの依頼受けるんでしょ?」
「ああ、子供が入れるところではそんなに良いモノは採れないけど、少しは金になるからな。薬草を探しまわるよりは安定してるからな」
「あの、いいおじいさんから『しめいいらい?』ってのもらえないの?やっぱりいい人たちには恩返ししたいじゃない!」
「依頼自体はランクに見合ってるから大丈夫だけど、果たしてあのじいさんらが依頼出してくれるかどうか(苦笑)」
「僕、おじいさんたちに頼んでくる!」
止める間もなく走り去るジェイド。
一瞬ポカーンとしたキジたちだったが、あわてて追いかけた。
武器屋に着くと、既にジェイドが交渉している。
店主は、う~んと唸っていた。
「おいおい、オイラたちは道具等をじいさんらの厚意で貸してもらっているんだから、そんな無理を言わないでくれよ~。依頼料を上回るほどのアガリがなかったらじいさんに迷惑かかるからよ、無茶だよ……」
「ううん、大丈夫♪明日は君たちとっても良い鉱石が見つかるからね♪だからこそ、おじいさんたちに依頼して欲しいんだ。
だって、せっかく良い鉱石が採れてもギルドに納めたらおじいさんたちのところまでまわってこないかもしれないじゃん。だからお願い♪」
「おやおやジェイド、何やってるんだ?店先で大声出したら迷惑だからね、もっと落ち着いてしゃべりなさい。
すみません、オヤジさん。まだまだ子供なモンで。
目にあまるようなら、教育的指導をガツンとやっちゃってください。俺達だと、ついついこいつには甘くなってしまうんで(笑)」
「あっ!ジョージさん、今ねおじいさんに明日の鉱石の採取を、この子たちに『しめいいらい』してって頼みに来たんだけど、おじいさん、う~ん……って唸って返事してくれないの。
僕、間違って無いよね?」
「うん、おもいっきり間違ってるね」
「えぇっ?どこが間違ってるの?」
「そもそも指名依頼ってのは、信頼と実績で成り立つんだ。
例えばジェイドが採ってくる薬草はとても高品質だろ?
どうしても高品質な薬草が必要な時に、普通に『高品質薬草を20枚』って依頼してもなかなか数も品質も揃わず難しい。
そういう時に『ジェイドに高品質薬草を20枚』って依頼するのが、指名依頼だ。
依頼主が『この人に頼めば大丈夫』って信頼する人に自分の意思で頼むもので、こちらから『指名して』っていうモンじゃないんだよ、わかった?」
「……でも明日この子たちすんごくたくさん採れるもん……」
「あ~~わかった。すみません、オヤジさん。今回に限り指名依頼してやってくれませんか?(依頼料はこちらで持ちますんで)なんかジェイドが試したいみたいなんで。よろしくお願いいたします」
ジョージが深々と頭を下げると、その横でジェイドも同じように頭を下げる。
「はぁ……わかった。今から依頼を出してくる。3日間だけでいいんだな?」
「おじいさんありがとう!僕って無理言っちゃったの?ごめんなさい……」
「まあエエよ、こやつらの為に色々してくれるつもりなんじゃろ?こっちこそ、ありがとうな」
そう言いながらギルドに向かう武器屋の店主を見送りながらジェイドが「あっ!」と声を出した。
「ん?どうした?」とジョージが尋ねると、
「そうか!僕が先におじいさんたちに『キジたちに指名依頼して』ってギルドに指名依頼出せば良かったんじゃないの?」
「「「「………」」」」
「もう俺、何て言っていいかわからない……。
ところで君たちはスラム街の子供たちだよね。あの端っこに家を置かせてもらったんだ。ご近所さんだね、ちょっと狭くなってごめんね。よろしく♪」
((((同じこと言ってる……))))
「そうだよジョージさん、ご近所さんだからアレ♪ね?」
「じゃあミカに頼むか♪」
「やったぁ~!」
ジョージとキジたちの間を8の字を描くように軽やかに走るジェイドに、何がなんだかわからないが、皆も笑顔になった。
夕食の時間、ハウスの前辺りで『懇親会』なるモノを開き、みんな仲良く飲んで食べて、明日から一緒に採掘しようね♪と約束して御開きとなった。
「なんかいつの間にかみんなで一緒に依頼受けることになっちゃったけど、良かった?
1人で受けなさいって言われたけど……」
「大丈夫さ。みんなをちゃんと見てあげるんだよ♪」
「はい!」
初めてパーティーの面々がいない依頼、不安と期待が入り交じって、枕をギュッと抱いて眠りについた。
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