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ノスタルジア

「あぁ!はははっ、確かにあの時の村長さんだっ!」


「でしょ?村長さん、よくこんな風に『お前ら早う○○せんかぁ~~!』って杖を振り上げ怒鳴ってたの♪」


「う~ん、ラムウのイメージは近所のカミナリオヤジで作ったのかな、あのゲームの発案者……」


「カミナリオヤジ?」


「うん、俺の生まれ故郷は『日本』っていう島国なんだけどね、町内に1人や2人はコワイおじさんがいてさ、イタズラしたり悪いことしてるの見つかったら『コォ~~ラァ~~!』ってやって来て、ガミガミ怒鳴られて、たまに拳骨喰らったりする。そういう人の事を俺の国では、カミナリオヤジっていうのさ♪

んで、そのガミガミ怒鳴ってる様を『カミナリを落とす』っていうんだ。

そうかそうか、あのゲームの発案者は町内のカミナリオヤジをモデルにしてたのかぁ~♪なるほどなるほど♪」


うんうんと何の根拠もない思いつきにご満悦だ。



「ゲームって僕の中では『盗賊と冒険者』とか『オーガごっこ』とか『かくれんぼ』とかなんだけど、ジョージさんの国では『カミナリオヤジ』さんに怒られるのがゲームなの?なんかスリルあるね♪」


「いやいや違う!最初に言ったけど、俺の生まれ故郷の星には魔法は存在しないんだ。

だけど不思議な事に昔っから魔法使いの物語はたくさんある。

で、魔法が無いからか科学が進歩して色んな便利なものが出来たんだ。

さっき言った発電所から各家庭に電気を送ってもらって、夜にはスイッチ1つで灯りが点り、蛇口を捻れば水が出て、夏は冷風・冬は温風が出る。

そういう生活の中で、テレビゲームってのが発明されてな、指でぽちぽちやりながらクエストを達成させるんだ。

なんかもう、どう説明したらいいかわからんゎ(笑)

ある村の少年が勇者に選ばれ仲間と共に旅をして魔王をやっつける話だとか、世界を支えるクリスタルを何者かに奪われ取り戻しに行く……とか、色んなゲームがあるんだ。

もちろん、こちらの世界みたいに本物の魔王や魔物がいて実際にやっつけるとかじゃなく、指でキャラクターを操作するんだ。

たたかう・ぼうぎょ・まほう・どうぐ……みたいなコマンドを押して相手をやっつける。

その途中途中にクエストが発生するのよ。

ダンジョンにミスリルを採取しに行った父が帰ってこないので探して来て下さい……とかね。

そんなゲームの中で、召喚獣として出てくる、イフリートとかリバイアサンなんかはもろモンスター(幻獣?)なのに、なんでラムウだけどっかの長老みたいなんだろう?って思ってた♪」


「ちょっと難しくてよくわからないけど、ゲームを作っている人が、ボルト系の魔法を使うキャラクターを考えてた時、子供の頃の近所のコワイおじさんを思い出して、それをイメージしてあの姿になったってこと?」


「そうではないかと推測する」と胸をはるジョージ。


「「「「…………」」」」



「ふふっ、ジョージあなた最初の頃は誰にでも敬語で一線引いた感じだったのに、最近は少しは打ち解けて来たなぁ~って思ってたけど、ここにきて一気にくだけたわね♪

ジェイドのおかげかしら?良かったゎ♪」


「はっ!そう言われたら、初めて会ったときの『俺はアシナ=ジョージと言います。よろしくね♪』と言って微笑んだ……神様かしらと思ったあの感じがしない!」


「うわぁナニさ、みんながいじめる!」と、ガイにしがみつくその様を見て、皆でひとしきり笑った。



色んな話を聞いた。


羽ばたかなくても空を飛ぶ『飛行機』

馬がいないのに走る『自動車』

鉄の棒の上を走る『電車』

帆がなくても速く海を渡る『船』


これらは金属を薄くのばして作るらしいぜ!と聞いて皆ビックリ。


何十階にもそびえ立つ建物が建ち並び、アスファルトというものに覆われ見えなくなった土の地面の話の時には、


「俺、自然が好きでさぁ……。じいちゃんの住んでいたトコはホントこんな感じの山の麓の集落でさ、子供の頃は入り浸りだったな(笑)

電車で6駅位でもう別世界だもん、自分のお小遣い握りしめて通ってた。

ついには父親の転勤について行くのヤダッて駄々こねてじいちゃんに預けられることになったんだ。ジェイド位の歳の頃かな♪

厳しかったなぁじいちゃん。

朝の5時に起こされて庭の井戸で水を汲み……ちゃんと水道あるんだぜ、でも井戸で水汲みだった。

それを持って道場を1人で雑巾がけして、そのあと素振りと型の練習。

やっとシャワーを浴びて朝食食べたら学校に行くんだけど、徒歩で40分近くかかるところなのに授業開始の25分前まで家を出してくれない、要は走って行けってことだね」と苦笑い。


「「「スパルタだっ!………」」」


「実際おかげで逞しく育ったよ。たまにイノシシ狩りに行くから、お前はコレ持っとけって渡された釘バット見て半泣きになったこともあるけどね♪」


「魔物いないんじゃないの?釘バットって武器なの?」


「うん、魔物じゃなくて野生動物だね。姿はウイングボアをちょっと小さくした感じだけど、魔法が使えない地球人からしたらとても脅威だよ。

釘バットってね、ホントは野球っていうスポーツでボールを打つ時に使う『バット』ってのに釘を打ち込んで攻撃力を高めるのさ。こちらの武器で似てるのは『メイス』かな?

もちろんお巡りさんに見つかったら怒られるし、ヘタしたら牢屋にいれられるような危険なモノさ」


「お巡りさんって衛兵さんみたいな人?メイス持ってるだけで牢屋にいれられちゃうの?日本コワイ!」


「あははっ、法律でね、決められてるんだ。コレくらいの刃渡りのナイフでも持ち歩いちゃダメなんだ」と、親指と中指で示す。


「ナイフやダガーもダメなの?どうやって身を守るの?」


「どこの世界にも悪い奴はいるけどね、まぁ日本は武器の類いを持たなくてもきちんと安心して暮らしていける平和な国なんだ。とっても衛生的だしね、道路に鳥の死骸すら落ちていない。知らせたら引き取りに来てくれるからね」


「……じゃあ、こちらに来て魔物と戦ったりした時、とっても勇気がいったんだね、すごいよねジョージさん♪」


「「「「!!」」」」


「あはは……ありがとうジェイド。

日本ってのは肉も魚も店に行けば切り身で売ってる国だからね、自分の剣が相手の命を絶つその時の感触はホント堪えたよ(苦笑)

勇者だから、神様から強い力を与えられたから、って言われても……実際身にあまる程の力をもらったけど、小さい時からこの世界で覚悟を持って生きて来た人達には俺のその時の恐怖とかわからないんだろう。

羨ましい限りのことなんだろうね、こいつらや国王達以外のほとんどの人から『強い力をもらったんだから魔王倒しに行って当然』みたいな態度をとられて、一時人としゃべんのイヤになった(笑)」


「やっぱ勇者様って色々苦労しているんだね……」


「前にもそう言ってくれたろう?あの時からジェイドに惚れた!(笑)」


「なるほど……リーダーがジェイドに向ける視線はそういう事だったのか♪」


「いやいや、真剣にとらないでぇ~!」


「わかってるよ、リーダー。ジェイドって、一見『空気の読めない子』みたいな雰囲気だけど、おかげで緊張がほぐれたり怒りが収まったり……なんというか、他人に自然に寄り添えるんだよ。多分本人に自覚は無いんだろうけどね。

オレ達は『希望の星が来た!』って期待?が強すぎて、リーダーの心の奥にあるそんな思いに気づきもしなかった。さっきジェイドが言った『とっても勇気がいったんだね』の言葉を聞いて、初めて……初めて『理不尽にこの世界に呼んでしまった』んだと気付いた。

今までゴメンなリーダー。オレはこんな無神経な男だけど、出来たらこれからも共にいさせて欲しい!」


「やぁねぇ、湿っぽくなるじゃない。でも私も……私も何もわかっていなかった。

ジョージ、ごめんなさい。そして気付かせてくれてありがとうジェイド!」


オレもオレもと、みんなジョージに抱きつき、より一層相手を思いやる心が芽生え、真のパーティーになったようだ。



その後もジョージの話を聞いた。


赴任先の国で事件に巻き込まれ両親が亡くなったこと。

労災その他の遺産は、祖父が全てジョージの為に管理してくれたこと。

祖父のスパルタのせい(おかげ?)であらゆる格闘技の免状をいただけたこと。

17歳目前でイラストレーターを目指しているとカミングアウトしたこと。

自分が決めたのなら、挫けずその道を邁進せよと応援してくれたこと。

イラストレーター一本では採算が合わず、副業に肉体労働系を選んだこと。

祖父が体調を崩し、道場を手伝った時の子供たちとのエピソード。

祖父が亡くなり、叔父から道場の手伝いはしなくていいと言われたのを機に、独り暮らしを始めたこと。

山で山菜を採りながらスケッチしていた時に召喚されたこと。





自分の中にあるスベテを吐き出して、ジョージの顔は今までより一層穏やかに輝いていた。









`


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